リラさんの小説

【リボンの伝説 神々のトライフォース】第6章 勇気の紋章


 第6章 勇気の紋章

 翌朝。カービィは窓から射し込む日の光で目を覚ました。
 小鳥達の歌声が聞こえてくる。
 隣で寝ていたはずのポピージュニアがいない。先に起きていたのだろうか。
 窓の外から、細波の笛の音色が聞こえてくる。「ハイリアの歌」だった。

 緑の森 天吹く風
 そして空に 歌おう
 光溢れ 山河も清き
 母なる地よ 豊かに

(ポピー?)
 ベランダから外に出てみる。この日の空もよく晴れていた。
 朝日の輝きがまぶしい。
「カービィ、おはよう」
 上からポピージュニアの声がする。振り返って見上げると、
 家の屋根の上でポピージュニアが細波の笛を手にしていた。
「おはよう、ポピー」
 ポピージュニアが屋根の上から軽やかに飛び降りてくる。
「今日はちょっと早起きしちゃった。カービィはよく眠れたかい?」
「うん。バブリークラウズで雲食べてる夢見てた。甘くておいしかったよ〜」
「ははは、カービィらしいや」
 ポピーは麻袋を取り出し、軒先で飼っているトゥーキーの前に餌を広げた。
 トゥーキーが雑穀をついばみ始める。
「じゃあ、僕達も朝食にしようか。兄ちゃんがパンを焼いてくれてるよ」
「わぁい」
 水玉模様のナイトキャップをかぶったまま、
 ポピー兄弟の家の居間へ駆け込んでいくカービィ。
「おはよ〜」
「おっ、起きたかカービィ。じゃ、メシにすっか。
 お前の好きなマキシムトマトのサラダもあるぞ〜」
 エプロン姿のポピーシニアがテービルに皿を並べていく。
 カービィとポピージュニアが席につく。
「いっただっきまぁ〜す」
 トーストにマキシムトマトのサラダ、それに、温かいコーンスープ。
 パンに塗るハチミツは、この地方特産の「黄金のハチミツ」と呼ばれる一級品だ。
 デザートのヨーグルトにも、グラスランド名物のリンゴが入っていた。
 おいしい朝食を、あっという間に残さず食べ尽くしてしまうカービィ。
「相変わらずいい食いっぷりだな〜。
 そのちっこい体のどこにそんなに食い物が入るんだか」
「う〜ん、僕にもわかんない」
 それは、永遠の謎の一つであった。
 食事を終えると、カービィは冒険の支度を始めた。ソードの能力を発動し、
 戦士の盾をメタナイトの剣に引っかける。緑の帽子の中には、
 星のカンテラ。準備万端だ。カービィに再び、旅立ちの時がやってきた。
 玄関先で、ポピー兄弟がカービィを見送る。
「じゃあ、またね、カービィ」
「妖精の試練、がんばれよ」
「うん。2人ともありがとう。またね」
 ププ村を後にし、ピーナツ平野の草原地帯を東へと進んでいくカービィ。
 丘の間を縫って通る街道を歩いていく。穏やかな風が心地良い。
 ウルルン川にかかる橋を渡り、その先の窪地を南東へ。
 途中幾度かデデデ城の兵士達に襲撃されたが、うまく切り抜けた。
 そして昼下がりの頃、カービィはマシュマロ城の城門へとたどりついた。

 グラスランド地方の東、マシュマロの丘の上に立つ、マシュマロ城。
 薄桃色の石で造られたこの美しい城は、
 プププランドの大臣であるパーム公爵の城だ。
 パーム卿はプププランド政府の実質的な指導者である。
 プププランドは形式上、デデデ大王を君主とする王国だ。
 しかし、デデデはおよそ政治には関心を示さなかったため、
 行政はパーム卿を中心とする役人達と、各地域の共同体によってなされている。
 我々の世界の言葉で言えば「君臨すれども統治せず」だ。
 カービィ達の世界は案外民主的なのかもしれない。
 ちなみにマギウスが実権を掌握する以前は、
 軍事・警察部門をメタナイト率いる騎士団が仕切っていた。
 カービィはパーム卿の2人の子供と親交があり、
 これまでも度々ここへ遊びに来ていた。
「たのも〜」
 カービィが衛兵のトライデントナイトに手を振る。
「カービィ、いいところへ来た」
「こんにちは。パームさん達は元気?」
「ああ、大臣閣下もお前に会いたがっていたぞ。さあ、入った入った。開門!」
 城の大きな門が、衛兵達によって開かれた。
 トライデントナイトに城内へと通されるカービィ。
 木々と季節の花で彩られた前庭を抜け、本丸の建物へと赴く。
 ホールの床は、星の紋章が描かれた橙色のタイルだ。
 白大理石の円柱がそこに立ち並んでいる。
 壁にも至るところに星の紋章が彫られ、
 所々に豪奢な赤と青の垂れ幕がかかっていた。
 城の内部も手入れが行き届いていて、美しい。
 パーム卿のこまやかな性格が現れている。
 カービィは、城の3階にある大臣の執務室へと通された。
「閣下、カービィが参りました」
「パームさん、こんにちは」
「おおカービィ、よく来たね」
 黒いスーツに身を包み、赤い蝶ネクタイをつけた初老の紳士、
 パーム卿がカービィを出迎える。
「この間天使の塔から使いが来ていてね、デデデ城でのことを聞いたよ。
 カービィ、リボンちゃんを助けてくれてありがとうね」
「うん。パームさん達も無事でよかったよ。この城には、
 司祭の手下が来なかった?」
「ああ。大王様の使いと名乗る司祭の手先が何度か来ていたよ。
 カービィとリボンちゃんの捜索に協力しろと言ってきおった。
 一応カービィを捕まえるという名目でわしの親衛隊を出動させたが、
 君を探すふりをさせながら司祭のことを探っているよ」
「そうだったんだ」
 そういえばピーナツ平野の街道に、
 たまにカービィが近づいても襲ってこない兵士がいた。
 彼らはパーム卿の私兵だったのかもしれない。
「長旅で疲れただろう。ひとまず昼食を用意しよう。
 詳しい話は食事の席で聞かせておくれ」
「わぁい」
 衛兵に城の食堂へと案内されるカービィ。その途中、
 廊下で2人の子供と出会った。長い髪を一つに結った女の子と、
 頭頂部の髪を青く染めた男の子。パーム卿の娘フームと、その弟ブンだ。
「カービィ、来てくれたのね」
「よう、カービィ」
「フーム、ブン。きみたちも元気そうでよかったよ」
「久しぶりのソードカービィだな。デデデの城じゃあお手柄だったじゃん。
 ププ村じゃ騎士団をやっつけたんだって? 
 悔しそうな司祭の顔がテレビに出てやがったぜ」
 ブンがカービィの背に手をかけた。カービィに肩は無いけど、肩組みのつもり。
「カービィ、本当に無事でよかった。本当に」
 フームがカービィの手を取る。
「姉ちゃんったらカービィの手配書見て顔真っ青にしてさ、
 それから毎晩星に向かって手を合わせてたんだぜ。
 ま、おれはカービィが司祭の手下なんざにやられるわけないって信じてたけどな」
「ブン、あんただって変な願かけしてたじゃない。
 わざわざ夢の泉まで行って。わたしが知らないとでも思ったの?」
「げっ、誰から聞いたんだよ」
「2人とも、ありがとう。心配かけてごめんね」
「まあ、とりあえずはメシだ。行こうぜ」
 食堂の長いテーブルの端を、大臣一家とカービィが囲んだ。
 パーム卿、メーム夫人、フーム、ブン、そしてカービィ。
 使用人のワドルディ達が、次々と料理を運んでくる。
 主菜はヌラフ肉のステーキ。カービィの好物だった
 (とは言っても、カービィは毛虫以外なら
 何でもおいしそうに食べてしまうのだが)。
 カービィは食事の席で、デデデ城での一件以来の出来事について話した。
 司祭がダークマターを操っていたこと。
 司祭の魔物に取り憑かれていたウィスピーウッズを助けたこと。
 司祭を倒すにはマスターソードが必要で、
 マスターソードを手にするには3つの紋章が要ること。
「なるほど。『退魔の剣』か。それがあれば、
 司祭を倒すことができるかもしれないんだね」
 パーム卿が言った。
「うん」
「わかった。わしらも最大限、カービィに力を貸そう。
 司祭の目が光っているから、表立った行動はできないが、
 困ったらいつでもこの城へおいで」
「ありがとう、パームさん」
「それにしても司祭め、ここに来てついに馬脚を露わしたな。
 以前からデデデ城で不穏な動きがあったことは、
 メタナイト卿から聞いていた。だが事がここまで深刻になるとは思わなんだ」
「まさか、司祭が7妖精の封印が解こうとしていたなんてねえ。
 思えば、去年の災難続きも司祭の仕業だったのかもしれないわね」
 メーム夫人が言った。カービィにも思い当たることがある。
 プププランドでは前年、原因不明の災難が続いていた。
 冷夏と天候不順で、グラスランドではリンゴが記録的な不作となり、
 オレンジオーシャン沿岸の村々では不漁が続いた。
 クラウディパークではクラッコやブライトが天候を回復させようと
 してくれたようだが、彼ら精霊達の力をもってしても、
 異常気象は収まらなかった。
 しかも、秋にはコレカラ山の噴火があり、
 火山灰が収穫前の畑を台無しにしてしまった。
 その上、冬には国中でおかしな病気が流行った。
 全身に強い倦怠感を感じ、体が鉛のように重くなるというものである。
 人が死ぬような病気ではなかったが、非常に厄介なもので、
 治療法はなく発病の原因もはっきりとしなかった。
「確かに、あれが全部司祭の仕業だったと考えれば納得がいくわ」
 フームが言った。
「人助けのふりしてたのも全部自作自演だったってことか。とんでもない奴だぜ」
 と、ブン。
 前年の国難の中で彗星のように現れたのが、謎の魔法使いマギウスだ。
 彼は人々の病を治し、断続的に続いた荒天を鎮め、
 不思議な釜から無尽蔵に食べ物を出して人々に施した。
 当時は人々も彼を救世主と崇めたものである。
 デデデ大王は彼を城に招くと、彼に司祭の地位を与えて重用した。
 思えば、デデデはその頃からおかしくなっていた気がする。
 あの目立ちたがり屋なデデデが、
 頻繁に開催していたイベントを一切やらなくなり、
 人々の前に姿を見せることもなくなった。
 城の門は閉ざされていることが多くなり、
 カービィが遊びに行っても相手をしてくれなくなった。
 その頃既に、デデデはマギウスの手にかかっていたのかもしれない。
「それでね、マスターソードを手に入れるのに必要な3つの紋章の1つが、
 この城の地下にあるってウィスピーから聞いたの。パームさん、
 後で城の地下に行かせてくれないかな」
「3つの紋章の1つが、この城の地下に?」
 ブンが驚いて言った。
「ほう。確かに、この城の地下には妖精時代の遺跡がある。
 我が家の大事な宝が隠してあるから、厳重に管理するようにと、
 ご先祖様にも言われてきた。だが、そんなにすごい物が隠されてたとはね」
 と、パーム卿。
「パームさんも知らなかったの?」
「ああ。今までも何度か地下の遺跡を調査しようとしたことがあったが、
 何分遺跡の中は危険な罠だらけで、調査はおぼつかなかったんだ。
 それで、地下への入口はもう何十年も前に閉鎖したままだったんだよ」
「そうだったんだ」
「でも、そうだね。カービィなら、
 あの遺跡に隠された宝を手に入れることができるかもしれない。
 冒険の支度が整ったら、後でわしの部屋へおいで。
 地下への入口を開けてあげよう」
「ありがとう」
 その後、食事を済ませたカービィは冒険の装備を整え、
 パーム卿に地下の入口へと案内してもらった。フームとブンが、カービィに続く。
 中庭にある大きな池。その中央の島にある石造りの小屋が、地下への入口だった。
「この小屋、地下遺跡の入口だったのね」
 フームが言った。
「ああ。隠すつもりじゃあなかったがね、
 不用意に遺跡に入って怪我をする者が出るといかんから、
 ずっと閉めきっていたんだよ」
 パーム卿が古びた真鍮の鍵で、小屋の扉を開く。
 内部には大きなピンク色のスイッチがあった。
 その中央には黄色い星の紋章が描かれている。
 ちょうど、デデデ城の秘密の通路にあったスイッチを大きくしたような代物だ。
 この手のスイッチはプププランド中にある。何故かはわからないが、
 この国におけるカラクリの起動装置は大抵このデザインであった。
「ちょっと待ってておくれ」
 パーム卿は部屋の隅に置かれていた道具箱から、
 デデデ大王のものに似た大きな木製ハンマーを取り出す。
 そしてそれを、スイッチめがけて上段から勢いよく振り下ろした。
「うおりゃあぁぁぁ」
 激しい打撃音と共に、スイッチがペシャンコになった。
 同時に部屋の奥の床が開き、地下へ下る階段が姿を現す。
「ふぅ。さあカービィ、これが地下への入口だ」
「がんばれよカービィ」
 ブンが言った。
「危なくなったら、すぐ戻ってくるのよ」
 と、フーム。
「うん。じゃあ、行ってくるね」
 カービィは、意を決して地下の神殿へと足を踏み出すのであった。

 地下へと続く暗い階段を、星のカンテラで照らしながら下りていくカービィ。
 しかし、カンテラはすぐにいらなくなった。
 階段が終わったところから少し進むと、
 壁についていた無数の電灯のようなものが独りでに光を放ち始めたのだ。
 石の壁に囲まれた通路が、明るく照らし出される。
 通路の先に大きな鉄の扉が現れた。その両側には燭台がついている。
 カービィが扉に近づくと、燭台が独りでに火を灯し、
 大きな鉄の門扉が鈍い軋み音を立てて開いた。
 その奥からは、魔法の力が感じられる。
(きっと、ここから先が妖精の神殿だね)
 カービィは大きな扉をくぐった。
 通路の幅が、少し広くなる。長い通路だった。突き当たりがよく見えない。
 だが、奥に何か黒い物体があるのが確認できる。
 通路の奥から、突然爆発音のような音がした。
 次の瞬間、カービィに向かって、小さな黒い球体が凄まじい速度で飛んできた。
「うわっ」
 カービィすんでのところで横に跳び、その物体をかわした。
 背後で激しい爆発音がする。
(砲弾?)
 黒い球体は、どうやら大砲の弾らしい。通路の奥から、
 砲弾は次々と飛んでくる。跳び回ってそれをよけるカービィ。
 しかし、砲弾をいちいちよけていては先へ進めない。
(そうだ、この盾なら)
 カービィは戦士の盾に込められた魔法の力のことを思い出した。
 この盾は飛び道具を跳ね返すことができる。
 カービィは戦士の盾を左手に構え、通路の奥へと進んでいく。
 砲弾が盾を直撃した。しかし砲弾は盾に弾き返され、
 カービィの前方の、少し離れた場所に落下して爆発した。
 カービィの左手には、砲弾が当たった際の衝撃が全く感じられない。
 魔法の力は本物のようだ。
(よし、これなら先へ進める)
 カービィは次々と飛んでくる砲弾を盾で防ぎながら、
 長い通路を進んでいく。突き当たりで道は左右に分かれている。
 その場所にはカービィが来た方向に向かって、
 2台のシャッツオが据えつけられてあった。
 これが砲弾を飛ばしまくっていたらしい。
 神殿の入口からしてこれほど凶悪な罠がある。
 パーム卿の調査団が入り込めないわけだ。
 カービィも戦士の盾がなければ、
 早くもここで砲弾の餌食になっていたかもしれない。
(これ、ほっとくと帰る時にも邪魔だよね)
 しかし、カービィの爆弾ではこの鬱陶しい大砲を破壊できなかった。
 帰る時は盾を構えたまま後ろ歩きで戻るしかあるまい。
 カービィは能力をソードに戻し、左の通路の奥へと進んでいった。
 通路の奥には、また1枚の扉。それをくぐると、今度は広い部屋に出た。
 中央に祭壇のような台があり、そこには大きな赤い宝箱が置かれている。
 台に上る階段の両脇には、目を閉じたワドルドゥの石像が2体置かれていた。
(わぁい、宝箱)
 台の上に上り、宝箱に手をかける。しかし、鍵がかかっていた。
 やはりお宝は簡単には手に入らないということか。
(う〜ん、ざんねん)
 だがどんなダンジョンも、
 大抵はその建物の内部で全ての仕掛けを解くことができるように作られている。
 宝箱の鍵は、恐らく神殿の中にあるはずだ。カービィは部屋の中を探り始めた。
 宝箱の置かれていた台の奥と、台の左右にそれぞれ扉が1つずつある。
 奥の扉と右の扉は鍵がかかっていたが、左の扉は開いた。
 扉をくぐって隣の部屋に入るカービィ。すると、扉が突然独りでに閉まった。
(罠?)
 小さな正方形の部屋の中には、カービィに似た体形をした紺色の生き物が4体。
 皆ドクロの面をかぶっている。魔物「ガボン」だ。
 魔物達はカービィに気づくと、手に持った何かの骨を次々と投げつけてきた。
「わっ」
 戦士の盾を構え、たて続けに飛んできた4本の骨を防ぐ。
 しかし、ガボン達は骨を拾い直し、また次々と投げつけてくる。
 見れば、床には何らかの動物の骨が無数に散乱していた。
 この神殿で罠にかかって死んだ者達の骨だろうか。
(そうか。この魔物達をやっつけないと、ここから出られないんだ)
 カービィはこの部屋の性質を理解した。ここはいわゆる「お仕置き部屋」だ。
 部屋の中に入ると入口の扉が独りでに閉まり、魔法鍵がかかって閉じ込められる。
 そして、中にいる魔物を全滅させない限り、
 進むことも戻ることもできなくなるのだ。
 この国のダンジョンによくある仕掛けの一つだった。
 カービィは剣を構え、ガボンの1体に狙いを定めると、
 次々と飛んでくる骨をかわしながら間合いを詰めていった。
「えいっ」
 カービィがガボンに斬りかかる。
 しかし、魔物は素早く後ろに跳び上がって剣の一撃をかわした。
 すかさず着地点に走り寄って追撃をかけるカービィだが、またよけられる。
 この魔物、かなり素早い。しかもソードビームが効かなかった。
 カービィは激しく剣を振り回したが、
 なかなかガボンを捉えることができない。
 そうこうしているうちに、
 背後から飛んできた1本の骨がカービィの後頭部を直撃した。
「いてっ!」
 カービィの頭に鋭い痛みが走る。こんな攻撃を何発も喰らってはいられない。
 早く戦闘を終わらせなければ。
(そうだっ)
 カービィは一つ気がついた。ガボン達はカービィの斬撃を回避する際、
 必ず後ろの方向に跳び上がる。
 こうなれば、ガボンを1体ずつ部屋の隅に追い込んで倒すしかなさそうだ。
 カービィは再びガボンの1体に狙いを定めると、
 ガボン達が投げつけてくる骨を巧みにかわしつつ、
 魔物に近づいていく。そして、ガボンの1体に次々と斬りかかった。
 その都度回避されるも、魔物は徐々に部屋の隅へと追い詰められていく。
(よし、ここまで来れば)
 そして、ガボンはついに部屋の角に追い込まれた。
 こうなっては、前方向に回避せざるを得まい。
 カービィが前に剣を振るってフェイントをかける。
 ガボンはやはり、カービィの頭上を越え、
 部屋の中央に向かって退避しようとした。
 カービィはすかさず後ろに飛び上がり、
 剣を前方に構えたまま高速で宙返りした。
 カービィの必殺技「スピニングソード」だ。
 縦方向に高速回転する剣が魔物を切り裂く。ガボンが空中で星屑と化した。
 カービィは同じ要領で、1体ずつガボンを仕留めていく。
 そして、やっとの思いで全てのガボンを倒すと、
 部屋の2箇所にあった扉が開いた。
「ふぅ……」
 気を取り直して、来た方と反対側の扉をくぐり、先へと進んでいくカービィ。
 次の部屋の中央には、小さな宝箱があった。
 しかし、箱の周りは4体の魔物がとりまいている。
 球形の体をした、空中に浮かぶ生物。その体は炎に覆われ、
 中心には大きな一つ目があった。魔物「フレイマー」だ。
(この魔物達をやっつけないと、お宝は手に入らないね)
 カービィが近づくと、魔物達は体を一層激しく燃え立たせた。
 フレイマー達が、回転しながらカービィめがけて突っ込んでくる。
 次々と飛んで来る火の玉を、一つ一つ避けるカービィ。
 フレイマーの動きが止まった隙を見て、ソードビームを放つ。
「えいっ」
 光線が1体のフレイマーを捉えた。しかし、まるで効いていない。
 再び魔物達が飛びかかってくる。
「うわっ」
 4体のフレイマーが、立て続けにカービィに襲いかかる。
 自慢の軽い身のこなしで魔物達をよけるカービィだが、
 一瞬危うく帽子を焦がされそうになった。最後の1体をよける瞬間、
 剣を魔物に当ててみたが、やはり弾き返される。硬い。
(普通に攻撃してもだめみたい。でも、どこかに弱点があるはず)
 弱点はすぐにわかった。カービィめがけて突っ込んできたフレイマーの1体が、
 勢い余って壁に激突した。すると、フレイマーの体から炎が消える。
 同時に浮力も失われたらしく、魔物は地面を跳ね回り始めた。
 しばらくすると体から再び炎を吹き出し、宙に浮かび上がる。
(そうか。強い衝撃を受けると火が消えるんだ)
 再びフレイマー達がカービィめがけて飛びかかってくる。
 カービィは戦士の盾を構えると、
 突っ込んでくるフレイマー達に勢いよく盾を叩き付けた。
 4体の魔物が地面に転がる。さて、どうやってとどめを刺すか。
(そうだ、目になら剣が効くかも)
 フレイマーの体は金属のように硬かったが、
 中心の目は有機質でできているように見える。
 ここになら剣が刺さるかもしれない。
 カービィはフレイマーの1体に狙いを定め、
 その大きな一つ目をメタナイトの剣で突き刺した。
 確かな手応え。フレイマーが青白い光を出して消滅した。
 こうなれば後は簡単だ。カービィはフレイマー達の目を次々と突き刺していく。
 最後の1体は炎を吹き出して体勢を整えようとしたが、
 そこにすぐさまカービィが盾を叩き付け、火を消してしまう。
 炎の魔物達は、ほどなくして全滅した。
 改めて部屋の中央の宝箱を確認する。中には小さな鍵が入っていた。
(やった!)
 これは恐らく、先ほどの大きな宝箱か、閉まっていた扉の鍵だ。
 これがあれば、ひとまずは先に進めるだろう。
 大きな宝箱のあった部屋から続く通路は、この部屋で行き止まりになっている。
 カービィはひとまず、大きな宝箱のあった部屋に戻った。
 祭壇の上に登り、大きな宝箱の鍵穴に先程ほど手に入れた鍵を差し込んでみる。
 しかし、合わない。これは扉の鍵のようだ。
 祭壇の奥の扉の鍵穴にも鍵を入れてみたが、合わない。
 するとこれは、右側の扉の鍵か。
 祭壇の右側の扉の鍵穴に、鍵を差し込む。扉の鍵が開いた。
 小さな鍵が音も無く砕け散る。カービィは扉の奥へと足を踏み入れた。
 隣の部屋に入ると、扉が独りでに閉まり、
 突然砲弾がカービィめがけて飛んできた。
「ひあっ」
 とっさに側転して砲弾をよけるカービィ。
 しかし、そこにまた砲弾が左右から飛んで来る。
 今度は上に跳び上がって避けた。2つの砲弾が石の壁に当たって炸裂する。
(な、なにこの部屋……!)
 見れば、大きな正方形の部屋の中には、
 それぞれの壁に沿って4つずつシャッツオが据えつけてある。
 全部で16の砲台。それらが時間差で砲弾を放ってくる。
 前から飛んで来る砲弾は戦士の盾で跳ね返せるが、
 下手をすると背後から飛んで来る砲弾にやられる。
 カービィは四方八方から飛んで来る砲弾を必死で避けて回った。
 部屋の床には、正方形を描くようにピンクのスイッチが4つ置かれている。
 恐らく、それらのうちどれかが扉を開く仕掛けだ。
 カービィは砲弾をかわしながら、スイッチを一つ一つ踏みつけていった。
 まず左奥のスイッチ。押しても変化無し。
 右奥、はずれ。右手前、はずれ。左手前が正解か。
 あちこちで砲弾が炸裂し、激しい爆発音が鳴り響く中、
 カービィは最後のスイッチに飛び乗った。
 直後、16機のシャッツオが砲撃を止め、部屋の2箇所にあった扉が開いた。
(危なかったぁ……)
 再び気を取り直して、次の部屋へと進んでいく。次の部屋は小さな空間だった。
 中央には1つの宝箱。特に怪しい仕掛けはなさそうだった。
 宝箱を開けてみる。中身はまたも鍵だった。先ほどの鍵よりも少し大きい。
(これがあの大きな宝箱の鍵だったらいいなあ)
 通路はここで行き止まりになっている。
 カービィは再び、大きな宝箱の部屋へと戻った。
 祭壇に登り、大きな宝箱に鍵を差し込んでみる。
 鍵を時計回りに回すと、軽い金属音が鳴った。
(開いた!)
 カービィが大きな宝箱を開く。
 中には、銀でできた弓と木製の矢筒が入っていた。
 矢筒には正三角形を三つ並べた形の図柄が描かれている。
 トライフォースの紋章。古代の妖精王国の印だ。
 弓からは、魔法の力が感じられる。
(やった!)
 カービィはすかさず弓と矢筒を飲み込んだ。
 カービィの体が光に包まれ、緑色の三角帽子が紺色の鍔広帽に変化する。
 帽子には、白いリボンと金色の羽根飾り。剣の鞘は矢筒に変わった。
 左手には、銀の弓。
 コピー能力「スナイパー」。弓矢を自在に操る能力である。
 カービィにまた一つ、強力な武器が加わった。
(あれ? まだ何かある)
 弓矢の入っていた宝箱の隅に、小さな鍵があった。
 この祭壇の奥にある扉の鍵か。
 カービィは鍵を取り、祭壇を降りて扉に向かおうとした。
 その時、天井から4体のガボンが降ってきた。
(しまった、罠?)
 宝箱を開けると魔物が現れる仕掛けだったのか。
 ガボン達が骨を投げつけてくる。カービィは姿勢を低くして4本の骨を避けた。
(こうなったら、戦うしか!)
 カービィは手に入れたばかりの弓を引き、
 ガボンの1体に向けて矢を放った。意外にも、矢はあっさりガボンに命中した。
 銀の矢尻が骨の仮面を貫く。ガボンが星屑と化した。
 彼ら、剣はかわせても飛び道具はかわせないのか。
 カービィは残る3体のガボンを、次々と射抜いていく。
 しかし、まだ終わりではなかった。カービィが祭壇から降りると、
 今度は祭壇の前に立っていた2体のワドルドゥ像が目を開き、襲いかかってきた。
 石の像とは思えない速度で体当たりしてくる。
 カービィは迫り来る2体の石像の間に滑り込み、何とかこの魔物をかわした。
(この石像も、魔物!)
 油断の隙も無い。2体の石像は再びカービィに狙いを定めると、
 今度は目から光線を放ってきた。
 危ういところでしゃがみ、2本の光線を回避するカービィ。
 光線が当たった石の壁から煙が上がった。
 この石像を破壊しなければ先へは進めそうにない。
 しかし、石の塊相手にカービィの武器が通用するだろうか。
(とりあえず、やるだけやってみよう)
 爆弾なら効くか。ボムの能力を発動し、爆弾を投げてみる。
 爆風が石像を襲った。しかし、傷一つついていない。
 何らかの魔法で守られているのか。
 カービィは能力をソードに戻し、渾身の力で剣を叩き付ける。
 しかし、鉄をも切り裂くカービィの剣でも、
 この石像を傷つけることはできなかった。
 魔物が再び光線を放ってくる。
「うわあっ」
 今度は避けきれない。盾で光線を防ぐが、無駄だった。
 カービィの体が閃光に包まれ、凄まじい熱がカービィを襲う。
「ああああああっ」
 強烈な痛みだった。何とか耐え切り、
 カービィは再びスナイパーの能力を発動した。
 銀の弓を構え、石像に狙いを定める。
 普通に考えれば、爆弾でも壊せない石の固まりに矢が効くとは思えない。
 だが、この弓には何か妖精の魔法がかかっている。
 それがもしかしたら効くかもしれない。
 最後の手段だ。カービィは銀の弓を引き絞り、
 矢に気を込めてワドルドゥの一つ目めがけて放った。
 矢が石像の目の部分を直撃する。
 するとどうしたことか、石像はバラバラに砕け散った。
(こ、この弓、強い)
 もう1体の石像にも矢を放つ。石像は、一瞬にして木端微塵になった。
 弓にかかっている魔法がどのような性質のものかはわからなかったが、
 ひとまず窮地を凌ぐことができたカービィであった。
(先を急ごう)
 能力をソードに戻し、祭壇の奥の扉へと向かう。
 宝箱にあった鍵を差し込むと、案の定扉の鍵が開いた。
 扉の先の通路へと進んでいくカービィ。
 通路の先には下り階段があった。階段の奥からは、何かただならぬ力を感じる。
 カービィは階段を下りていった。階段が終わると、小さな部屋に出る。
 別の部屋に続いていると思しき扉は一つ。
 その前には灰色のじゅうたんが敷かれている。
 じゅうたんの中央には、白い糸で悪魔のしゃれこうべが刺繍されていた。
(きっと、ここがボスの部屋だ)
 この先に、神殿の守護者がいる。カービィは意を決して鉄の門扉を開けた。
 隣の部屋にカービィが入ると、大きな音を立てて入口の扉が閉まった。
 扉から魔法の力を感じる。どうやら魔法鍵がかかったらしい。
 試練を終えるまでは、脱出できない。
 勇気の紋章を手に入れるか、さもなくば死だ。
 小さな正方形の部屋の中には、大きな赤褐色の石像が6つ、
 円を描くように配置されていた。人間の男の彫像だ。
 ほとんど裸同然で、異様に筋肉質だった。
(まさか、これが動くとか言わないよね……)
 どこからともなく、低い声が部屋の中に響いてきた。
「よくぞ来た勇者よ。汝、勇気の紋章を望むならば、我らが試練を受けよ」
「望むところ!」
 カービィが剣を抜いた。
 次の瞬間、「グゴゴゴゴゴ」という音を立てて6体の石像が震えだした。
(ええーっ、やっぱりそうなの?)
 マッチョな石像がその両腕を上げ、大きな音を立てて跳ね回り始める。
 6体の石像がカービィを取り囲み、時計回りに回りだした。
〈筋肉漢巨像 マッチョ石〉
 カービィの目の前を、マッチョな男の像が左から右に通り過ぎていく。
 恐ろしい光景だった。しかしこの魔物、積極的に攻撃してくる様子は無い。
 こういう奴には先制攻撃。カービィが渾身の力を込めて石像に斬りかかった。
 マッチョな腕にわずかな傷が生じる。しかし、ほとんど効いていない。
 やはり剣では無理か。
 6体の石像が円陣を崩し、奥の壁に沿って一列に並んだ。
 そして、横隊になったままカービィに向かって跳ねてくる。
(まずい)
 天井は低い。上に退避しても無駄だ。石像に頭突きを喰らう。
 カービィは石像と石像の間のわずかな隙間に入り込んで、
 マッチョな男達の突進をかわした。
 しかし、石像の横隊はカービィが後ろに回りこんだのを察知すると、
 すぐさま引き返してくる。このままではいずれ潰される。
 何とかしてこの石を破壊しなければ。
(そうだ、さっきの弓なら!)
 カービィはスナイパーの能力を発動した。
 ワドルドゥの石像を打ち砕いたこの弓なら、
 このマッチョ軍団を倒せるかもしれない。
 カービィは銀の弓に矢をつがえ、迫り来る巨漢の1人に向けて放った。
 石像に銀の矢が刺さり、赤褐色の筋肉に亀裂が入る。効いているようだ。
 カービィは跳び上がり、石像に向けて3本の矢を立て続けに放った。
 弓を用いたカービィの必殺技「ジャンピングスナイパー」だ。
 矢の1本が男の頭を、2本目が腹を、そして3本目が心臓を、的確に射抜いた。
 石像が青白い光に包まれ、バラバラに砕け散る。
(よし、この弓なら石像を壊せる)
 カービィは残る5体の石像を一つずつ、弓で破壊していく。
 このまま戦いは終わるかに思えた。しかし、石像が残り1体になった時、
 最後の石像が真っ赤に変色した。そして、台座から足を分離すると、
 まるで生身の人間のように動いてカービィに襲いかかってきた。
 マッチョな男がカービィに殴りかかる。
「うわっ」
 強烈な右ストレートを、横に跳んで何とか回避するカービィ。
 マッチョの拳が石の床に激突し、床に大きな穴を開けた。
 すぐさま銀の弓を構えようとするカービィだが、
 そこにマッチョが蹴りを入れてくる。
 石の足がカービィに衝突し、カービィは奥の壁まで吹き飛ばされた。
「うわああああぁっ」
 凄まじい衝撃だった。しかも、カービィが体勢を整える前に、
 マッチョが再び殴りかかってくる。右前方に転がり、
 危ういところでマッチョの拳をかわすカービィ。
 石像の腕が、石の壁に深くめり込んだ。
 マッチョがすぐさま振り返ってカービィに蹴りを入れようとしてくる。
 しかし、体を反転させる際の一瞬の隙を、今度は見逃さなかったカービィ。
「えいっ」
 カービィが矢を放つ。マッチョが右足を繰り出すと同時に、
 銀の矢が石像の胸を貫いた。
 マッチョな胸筋に亀裂が入り、魔物が苦しみに悶える。
 カービィはさらに3本の矢を放ち、石像を射抜いた。
 マッチョな男の像がバラバラになり、青白い光を上げて消滅していく。
「お、終わった」
 ほっと息をつくカービィ。先ほどの低い声がまた、部屋の中に響いてきた。
「勇者よ、よくぞ試練を乗り越えた。汝に勇気の紋章を授ける。
 汝の道に神々の祝福あれ」
 部屋の中央に、緑色に光るものが出現した。
 空中に浮かんだそれを、手に取ってみるカービィ。
 緑色の光が、カービィの手の中へ収まっていく。
 次の瞬間、カービィの手には緑色をした星型のペンダントがあった。
 細い銀の鎖がついている。星型の飾りからは、魔法の力が感じられた。
(これが、勇気の紋章だね)
 カービィが神殿を立ち去ろうとしたところ、
 突然部屋の奥の壁が崩れた。その先には通路がある。
(まだ何かあるのかな)
 通路の奥へ行ってみるカービィ。
 突き当たりの部屋には、一つの宝箱があった。
 開けてみると、大きな白い羽根のようなものが入っている。
(きれいな羽根。何の羽根だろ)
 ひとまず、これも持ち帰ることにしよう。
 カービィは勇気の紋章と白い羽根を帽子の中にしまうと、
 能力をソードに戻し、神殿を(後ろ歩きで)後にした。

 池の中島の小屋を出て、マシュマロ城の中庭へ。
 西から射し込むやわらかな日射しが心地良い。
(あったかいなぁ)
 そんなに長い間地下にいたわけではないのだが、
 随分久しぶりに日の光を拝んだ気がする。
 中庭の噴水のそばで、フームとブンが待っていてくれた。
「おっ、カービィ、戻ったか」
「カービィ、無事でよかったわ」
 2人がカービィに駆け寄ってくる。
「どうだった、勇気の紋章は手に入ったか?」
 ブンが興奮して尋ねる。
「うん。これがその紋章みたい」
 カービィは緑の星のペンダントを2人に見せた。
「きれいね。星のかけらみたい」
「やったじゃん。さすかカービィだな」
「えへへ……」
「カービィ、本当にお疲れ様。お父さんにも報告してあげて」
「うん」
 カービィはフームとブンを伴い、城の建物へと向かった。
 そして、パーム卿の執務室。
「パームさん、勇気の紋章、手に入れたよ」
 緑の星のペンダントを、掲げてみせるカービィ。
「おおカービィ、よくやったね。さぞかし大変だっただろう。
 よく無事で戻ってきてくれた」
「うん、すっごく怖かったよ……」
 シャッツオ軍団に、やたら素早いガボン、それに動く石像。
 妖精族もいたずらなものを残してくれたものである。
「そうだ、ちょうど今、あの遺跡に関する妖精時代の史料を
 調べ直していたところだったんだ。それで、あの遺跡には
 勇気の紋章とは別に、わしのご先祖様によって
 2つの宝が隠されていたことがわかった。
 妖精族が作った魔法の弓と、ペガサスの羽根だ。
 カービィ、この2つは手に入れたかい」
 カービィはスナイパーの能力を発動した。カービィの左手に、銀の弓が現れる。
「おっ、新しいコピー能力か?」
 ブンが言った。
「うん。この弓、神殿の中で見つけたの。パームさん、
 魔法の弓って、これのこと?」
「それだ。間違いないよ。銀でできた白く輝く弓。
 古文書にあった記述の通りだ。それは妖精の弓といって、
 石でできた魔物に対して優れた威力を発揮するんだよ」
「そうだったんだ」
 硬い石像をいとも簡単に破壊できたのは、やはり魔法の力だったらしい。
 ゼロの手下にはあのマッチョ像のような魔物がたくさんいたのだろうか。
 考えるだけでも恐ろしい話だ。
「ペガサスの羽根っていうのは、これかな?」
 カービィは帽子の中から白い羽根を取り出した。
「おお、それもちゃんと手に入れていたんだね。
 それは幻獣ペガサスの羽根でできた飾りでね、
 やはり妖精の魔法がかけられている。
 それを身につけていると風のように速く走ることができるんだ」
「へぇ。すごいや」
「後でメームに話をして、帽子に縫い付けてもらうといい。
 ちょうどいいアクセサリーになるだろう」
「うん、そうするよ」
 また一つ、強力な魔法のアイテムを手に入れることができたカービィであった。
「遺跡の探索で疲れただろう。もうじき日も暮れる。
 今日はここに泊まっていくといい。夕食も用意しよう」
「わぁい」
「よっしゃ、カービィ、メシの後で俺達の部屋へ来いよ。
 『キービィDX』一緒にやろうぜ」
 ブンが言った。
「カービィ、今夜は私達と一緒に寝ましょう」
 と、フーム。
「うん! じゃあパームさん、またあとでね」
 カービィ達はパーム卿の執務室を後にしようとした。
 だがその時、誰かが部屋の扉を開けた。
「閣下、失礼します」
 入ってきたのは、2人のワドルディ。パーム卿の使用人だった。
 2人は台車を押し、布で覆われた何か大きな物を載せて運び込んでくる。
「なんだなんだ?」
 ブンが訝しむ。
「おお、来たか。ブン、フーム、カービィ、悪いが入口を少し開けてやってくれ」
 パーム卿が言った。3人が入口から遠ざかる。
 2人のワドルディが謎の物体を部屋の中に運び込んだ。
「お父さん、何これ」
 フームが尋ねた。
「これはね、ププ村の彫刻家が寄贈してくれた作品だよ。
 何でも妖精時代の建築物に飾られていた装飾品を模したものだとかって話だ。
 どれどれ、ちょっと見てみよう」
 パーム卿が布を取る。カービィが目を丸くした。
「こ、これは……」
 姿を現したのは、異様に筋肉質な半裸の男の石像。
 その目はどこか笑っているように見えた。
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