矢五さんの小説

アドとアドレーヌの対決・中編


「はぁ…」
アドのアトリエを飛び出してから数十分後、アドレーヌは
クラウディパークの雲の中の雨水が溜まって出来た小さな池の辺で
一人、ため息をついていました。

「私、アドちゃんに酷い事、言っちゃったかな…」
そう言ってアドレーヌは目の前の水面を覗き込み
其処に映った自分の姿を見て自分とそっくりなアドの事を思い浮かべます。

「‥何で私、アドちゃんと仲悪いんだろう…」
そして、アドレーヌは水面を見ながらまた一つ大きなため息をつくと
静かにそう呟きました。

描いた絵を実体化させると言う、自分とまったく同じ能力を持っていて
カービィやデデデ大王、皆の事をアドレーヌがこの星に来る前から
知っている彼女はアドレーヌにとって他人の筈なのにまるで本物の
双子の姉妹の様に思える相手でした。

しかし、アドレーヌは自分がアドより年下な事もあって
自分でも気付かない内に自分と瓜二つな彼女に対して
対抗意識を持ってしまう事が多くあり

二人で得意の絵を描いている時もアドの絵にはどちらかと言うと
リアルな絵柄のアドレーヌの絵には無い独特の暖かみや優しさがあり
アドレーヌもそんな絵を描いてみたいなと思い努力しましたが
どうしてもアドの絵の様な暖かみがある絵は描けず、そんな事があって
アドレーヌはアドが傍にいると中々素直に接することが出来なくなってしまうのでした。

「‥私、アドちゃんに完全に嫌われちゃったかな…」
先程、自分が言った事で完全にアドに嫌われてしまったと思った
アドレーヌはすっかり元気を無くして、じっと池の辺で塞込んでいました。

「?‥何かしら…」
そうして、塞込んでいた時、アドレーヌの傍にあった雲の塊が
モコモコッと動きアドレーヌがそれに気を取られていると

「!‥きゃっ!?」
その雲の塊の中から突然、何か丸い物体がアドレーヌの目の前に
向かって飛び出してきました。

「アドレーヌちゃん!やっと見つけたよ!」
「カーくん!」
雲の中から飛び出してきたそのピンクの丸い物体はアドレーヌの
よく知っている友人、カービィの姿でアドレーヌの顔を見ると
カービィは嬉しそうに彼女の腕の中に飛び込みました。

「‥カーくんもしかして、今までずっと私を探してくれてたの?…」
「うん!この辺り似たような雲が多くて大変だったけど
アドレーヌちゃんが帰っちゃう前に見つかって本当に良かったよ」
「‥有難う、カーくん」
アドレーヌは勝手に飛び出してきてしまった自分を一生懸命探してくれた
カービィの事を思い、目頭が熱くなって少し涙声になりながらも
彼にそう言いました。

「お礼なんて良いよ、それよりアドレーヌちゃん、お願い!今からアドちゃんのアトリエにもう一度だけ来て欲しいんだ」
「え!?でも…」
「大丈夫!アドちゃんは全然怒ってないよ」
アドの名前を聞いてアドレーヌの顔が一瞬、曇りますが
カービィのその言葉と屈託の無い笑顔で気分は落ち着いた様でした。

「だから行こうよ!アドレーヌちゃん」
「‥うん」
そしてアドレーヌはカービィに手を引かれて再び
アドのアトリエへと向かいました。



「?あれ‥真っ暗…」
アドレーヌとカービイがアドのアトリエに入ると
アトリエの電気は消えていて中は真っ暗でアドの姿も見当たりませんでした。

「アドレーヌちゃん、ちょっと待っててね、今電気を点けてくるから」
「あ、ちょっとカーくん!‥行っちゃった…」
そしてアトリエの中に入るとカービィは中の電気を点ける為
アドレーヌの元から走り去っていってしまいました。

「一人で暗いところに居るのってあんまり好きじゃないんだけどな…」
暗い部屋に残されたアドレーヌは仕方なくカービィが
電気を点けてくれるまで其処で待つ事にしました。

そして、そのままアドレーヌが待っているとアトリエの上の天井の方から
一枚の小さな葉っぱの様な物がひらりと落ちてきて
アドレーヌの顔に当りました。
「何だろう?…これは…」
アドレーヌが手にしたそれは綺麗に色が付いた紅葉の葉っぱでした。

「凄く綺麗な葉っぱ…でも何でこんな所に?」
暗い中でもはっきりと分かる程、鮮やかな色が付いた
その葉は秋にならないと咲かない物でアドレーヌは首を傾げて
真っ暗なアトリエの天井を見上げます。

その時、丁度、電気が点いて広い
アトリエの天井が見渡せるようになりました。

「!‥わぁ!凄い…」
そして電気が点いた時、アドレーヌが見た物は
広いアトリエの天井の一面に秋の紅葉した樹の絵が沢山絵描かれている
光景で、その樹の絵から落ち葉が一枚、また一枚と実体化して
次々と下に向かって舞い落ちてきていてまるで本物の秋の森の中に居る様な幻想的な景色が其処に広がっていました。

「綺麗…」
その光景に見照れたアドレーヌはそのまま落ち葉が
次から次へと舞い落ちるその光景を長い間、じっと見ていました。

「アドレーヌちゃん」
そして、アドレーヌが呼びかけられて気付いた時、目の前に
降り積もった落ち葉の真ん中に立っているアドとカービィの姿がありました。

「えっと‥私達が描いた絵、気に入ってもらえたのかな?…」
アドはそう言って前に出てアドレーヌの方に進み出ると
深く頭を下げて言いました。

「‥さっきは私、あなたに色々意地悪な事を言ってしまったりして…
本当に御免なさい…」
「ううん、いいの…私の方こそ、さっきは御免なさい
私、酷い事を言った上に勝手に飛び出してたりして…」
そう言ってアドレーヌはアドの方に自分の手を差し出します。

「‥だからこれでお互い様って言う事で…これで私達、仲直り出来たら良いなって思うんだけど…」
「…うん」
アドはそのアドレーヌの言葉に頷いて力強く彼女の手を握り返すと
二人はお互い笑顔で向き合いました。
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