啓太さんの小説

【イベント小説】10えんだまとリックのせなか


いつもは、とても天気のいいプププランド。
でも今日は、くらい雲が、空いっぱいに広がっている。
どんよりとして、なんだかすっきりしないもやもやした感じは、
ぼくの今の気持ちと同じなのかな、と思った。

「はぁ・・・。」

ため息が出る。
きっかけは本当に小さなことだった。
それなのに、なんでこうなっちゃったんだろう。
思い出してみるけど、気持ちが重くなるばっかりだった。

「はぁ・・・。」

また、ため息。
さっきから、これで何回目だろう。
もちろん、数える元気はないんだけれど。

「今ので50回目ね。」

「え!?」

数えていた人がいたことにも、もちろん驚いたけれども、
それくらいずっと、ぼくの近くにだれかがいたことにも驚いた。

「あ、チュチュ・・・。」

ふり返ってみると、そこには大きなリボンをした女の子、チュチュがいた。

「ずっとここでお花つんでたのよ。気付かなかった?」

そういえば、この辺の原っぱは、花がたくさん咲いている。
きれいなものが好きなチュチュもお気に入りの場所みたいだ。
にこにこしながらチュチュはぼくに聞いてくる。

「どうしたの?今日はずいぶん落ち込んでるみたいじゃない。」

「あ、別になんでもないよ。あの、ほら、え〜と、
 お昼に作っためだま焼きで失敗しちゃってね。」

無理やり笑顔を作って答える。
だって、チュチュはせっかく花をつんで、いい気分なんだから、心配かけちゃいけない。
ウソは苦手だけど、めだま焼きが失敗したのは本当だし。

「あら、そうだったの、それは残念ね。」

よし!うまくごまかせたみたいだ!

「そうなんだ〜、あはははっ!」

ぼくが笑っていると、チュチュは、つんでおいたお花を手に取った。
そして、花びらを1まい1まいぬき始めた。
なんだろう?

「ついている、ついてない、ついている、ついてない・・・」

もしかして、花占いなのかな。
でも、何をうらなってるんだろう。
ついているってなにが?

「あ、もしかして今日のぼくの運勢を占ってくれてるの?」

ぼくがたずねたとき、ちょうど花占いは終わっていた。

「・・・うん、やっぱりついているみたいね。」

チュチュがにっこりと笑った。

「え?ぼくの運勢?」

次の瞬間、ものすごい数の花がぼくの顔を直撃した。
全部チュチュがつんだ花だ。
どうやらチュチュがぼくに投げてきたらしい。

「うわっ!なにするのさ!」

「あははっ、ついているのは嘘よ。
 カービィったらウソついてるでしょ。落ちこんでる理由。」

・・・・・・。
全部ばれていた。
やっぱりぼくはかくしごとができないみたいだ。

「わかってたのに、からかうなんてひどいよ、チュチュ!」

「ごめんごめん。・・・なにかあったんでしょ?
 わたしに気を使う必要ないから言ってみてよ。」

チュチュがそういってくれて、ぼくは正直ほっとした。
自分でもどうしていいかわからなくなってたところだから。
そうでなきゃ、ため息を50回も(チュチュカウント)つかないし。

「実はね・・・少し前にケンカしちゃったんだ。」

「え、カービィがケンカなんてめずらしいじゃない!
 いったい誰と?」

「・・・リックと。」

そう、ぼくがケンカするなんてほとんどないことだった。
でも、なぜか今日、リックとしてしまったんだ。
チュチュも半分信じられないといった驚いた目で、ぼくにたずねた。

「それで、ケンカの理由は何なの?」

・・・
ケンカの理由。
本当にこれなのか、自分でもよくわからない。
でも、これしか思いつかない。
だから、ぼくは答えた。

「10えんだま。」

「・・・は?」

思った通り、チュチュの目はてんてんになった。



お昼ごはんに、失敗しためだま焼きを食べた後のことだった。
そろそろ梅雨が近づいてきたので、ぼくはまえにマジルテで集めた宝物の整理をすることにした。
せっかくのお宝だから、カビとかがはえちゃったら困るしね。

そして、全部のお宝を棚から出したころに、リックはやってきた。

「よう、カービィ! 元気だったか?」

そういえば、しばらくいろんな所へ行っていたからか、
リックに会うのも、なんだか久しぶりのような気がする。
前と変わらない明るい笑顔にぼくはなつかしい気持ちさえした。
知らない間にリックのせなかには、ばんそうこうが、はってあった。

「あ、リック!どうしたの?」

「遊びに来ただけさ。・・・・・・おお、なんかすごいな。
 まさにお宝の山って感じじゃないか!」

リックが宝物を見て声を上げた。
たしかに、このながめはすごいものがある。
きっと誰でもおどろくだろうな。

「よく、こんなに集めたよなぁ。たいしたもんだな!」

リックがほめてくれる。
素直にうれしかったけど、ぼくは答えた。

「あはは、ぼくだけじゃ無理だったよ。
 みんなに力を借りてなんとかあつめられたんだ。」

そう、たくさんの助っ人がいたからこそ、洞窟大作戦は成功した。
本当にいっぱい力をかりたからこそ、この宝の山がある。

「・・・ふーん。そっか。」

「?」

なぜだか、リックは気のない返事をした。
ぼくは気のせいかとも思ったけれど、
なんだか少しリックの顔がくらくなった気がした。

そして、しばらくリックは宝物を見ていたけれども、
その中から1つとりあげた。

小さくて、にぶい銅色のそれ。
そう、10えんだまだ。

「なんだこれ。これもお宝?」

「うん、そうだよ。10えんだま。」

「そんなわけないだろ。こんなどこにでもある10えんだまが宝って。」

リックがちょっとばかにしたような感じで言う。

「そう思うのは無理もないけど、ちゃんと宝箱に入ってたから。
 それもきっとお宝なんだよ。」

「そうか?こんなの全然価値もなさそうだし、役にも立たなそうだけどな。」

「・・・そんなことないって。それだってせっかく集めた宝物だし。」

「こんなもの大切にしまっておくなんて、どうかしてるな。」

「・・・・・え。」

ぼくは悲しい気持ちになった。
なんだか、今日のリックは変だ。
どうしてそんなひどいことをいうんだろう。

でも、それからリックがやったことで、ぼくの頭はまっかになった。

「リック選手、10えんだまを〜、振りかぶって〜、投げましたぁ!!」

「・・・え?」

一瞬なにがなんだかわからなくなった。

本当にリックは投げた。
10円玉はどこまでも遠くまでとんでいって、そして・・・みえなくなった。

「リック!!なにするんだよ!」

「・・・いいじゃんか、どうせ10えんだまなんだし。」

「どうせって・・・、ぼくたちが一生懸命集めた宝物なのに!
 10えんだまだって、大事な宝物なんだよ!」

ぼくはもうとにかくリックに向かって叫んでいた。
こんなに叫んだことなんてあっただろうかってくらい叫んでいた。
自分でも何を叫んだか覚えてなかった。
だけど、最後に言った言葉は、はっきりと自分で覚えている。


「でてって!! リックなんて大きらいだ!!」


言ってから、はっとした。
いくらなんでも、これは言いすぎだ・・・。

「あ、ごめん・・・。」

あわてて、あやまろうとしたけど、
・・・でも、もう遅かったみたいだ。

「ああ、でてくよ。じゃあな。」

そう言って、リックは静かに出て行った。
ドアが閉まる前に少しだけ見えたせなかのばんそうこうがなんだかさびしそうだった。



「そんなことがあったのね。」

「うん・・・。」

全部チュチュに話してみたけど、やっぱりもやもやは消えなかった。
むしろ、もやもやはさらに増えた気がする。

「せっかく久しぶりにリックに会えたのに、
 あんなことになるなんて・・・。」
 
「久しぶり・・・か。
 そういえば、カービィがいなかったとき、リック元気なかったのよね。」

「え、そうなの?」

ぼくは少し驚いた。
リックはいつも元気で、明るくて、ってそういうイメージだ。
元気がないリックなんてぼくには想像できなかった。

「うれしそうにしてたのよ、カービィが帰ってきた時にはいつも。」

「そうなんだ・・・。」

チュチュはさっきぼくになげた花を集めている。
花をさわってるときのチュチュは、ずっとやさしそうに見える。

「あのね、カービィ。実はリックには悩みがあったのよ。知ってた?」

「悩みって、リックが?」

やっぱり意外だった。
リックに悩んでいることがあった。
友達なのにぼくは全然わからなかったなんて。

「カービィもみたでしょ?リックのせなかのばんそうこう。」

「うん・・・覚えてるけど。」

ぼくの家を出て行くときにも見えたあのばんそうこう。
確かにずっときになっていたんだ。

チュチュは少しだけ笑いながら言う。

「実はね、リックのせなかにできちゃったのよ。10えんはげ。」

「え、10えんはげ・・・って、え?」

ぼくは、リックとの今日のやりとりを思い出していた。
じゃあ、リックがあんなにひどいことを言ってたのって。

「そうね、リックは10えんだまには、かなりの恨みがあるんでしょうね。
 恨んでも仕方ないのに。」

そう言いながら、やっぱりチュチュは笑っていた。

「チュチュ・・・そんなに笑っちゃだめだよ。
 リック、それで悩んでるんでしょ?」

「んー、それがちょっと違うんだなぁ。」

思わせぶりな様子で、チュチュは答えた。
チュチュはぼくなんかよりずっと大人だ。
だから、ときどき何をいおうとしてるのかわからないときがある。
ぼくは、じれったくなって聞いた。

「違うってどういうことさ。」

「そもそも10えんはげができちゃうのって、悩みがあるときなのよ。」

「え?10えんはげにはそんなに悩んでないってこと?」

「まあ、ばんそうこうで隠すくらいだから悩んでるでしょうけど、
 本当にリックが悩んでいるのは別のことなのよね。」

なんだか、ちょっと頭がごちゃごちゃしてきたような・・・。
ぼくは、とにかく早く答えが知りたかった。

「だから、その悩みっていったいなんなの?」

「うん。それはリックに直接聞くべきね。」

「えぇっ!?」

ここまで話して、それはないよっ!
納得いかない顔のぼくにチュチュは言った。

「ちなみに、リックなら、カービィが来る前にあっちの山のほうに走って行ったわよ。すごくいそいでたみたいだけど。」

「え。」

「たぶん、投げた10えんだまを探しに行ったんじゃないかしら。」

そして、いたずらっぽく笑うチュチュ。
・・・やっぱりチュチュにはかなわないや。



それからぼくは山のほうに走っていた。

リックが何に悩んでいるのかはわからない。
だけど、とにかくあやまらなきゃ。
「大きらい」なんて言っちゃったこと、あやまらなきゃ。

夢中で走った。
とにかく走った。

だけど、リックは見つからない。
山の中に入って、道がだんだん悪くなる。
走りづらくて、どんなにがんばっても速く走れない。

「あっ!!」

つまづいた次の瞬間、ぼくの体は転がった。
山みちから外れて、崖のようになっているところからどんどん落ちた。

やっと止まったと思ったら、体が全然動かなくなった。
いろんなところをぶつけてしまったみたいだ。
とくに足がぜんぜんいうことをきいてくれない。

「リックにあやまらなきゃいけないのに・・・。」

ぼくはだんだん、頭がぼんやりしていくのを感じた。

でも、そのなかで、ある光景が浮かんでいた。
それは、リックのせなかからみえる景色だ。

・・・そういえば、リックってどんなでこぼこ道でも、ぐんぐん走れるんだ。
どんなにつるつる滑る氷の上でも、しっかり走れるんだ。
崖だって、平気で登っちゃうんだ。

全部・・・ぼくをのせたままで。

・・・・・・

「カービィ!おいっ、カービィ!しっかりしろ!」

呼びかける声で、ぼくは目を覚ました。

「り、リック・・・?」

「! 気がついたか!? よかった、よかったぁ・・・。」

リックが泣いている。
・・・あ、そうだ。リックにあやまらなきゃ。

「ごめんね、リック。ぼく・・・」

「とにかく、チュチュに手当てしてもらおう。
 つかまれるか? カービィ。」

「あ、うん・・・。」

ぼくはそれからリックに乗せてもらった。
せなかの毛がふわふわしてやわらかい。
なんていったらいいかわかんないけど、
このせなか・・・やっぱりリックだ。

「よし、いくぞ、カービィ!」

「うん!」



「ごめんな、カービィ。でも、ちゃんとみつけたからさ。これ。」

そう言って、リックはせなかのぼくに、10えんだまをみせる。

「あ、よくみつけたね。」

こんな小さいものを探すのには本当に苦労したんだろうな。
そういえば、リックの体もちょっぴりよごれている。

「ま、自分で投げたわけだしな。」

「それにしてもよく飛んだよね。リック、オリンピック出たら?
 金メダルまちがいなしだよ。」

「まぁ、そうだろうな〜。」

リックがエッヘンといばってせなかをそらす。
そのとき、ぼくがせなかからずりおちそうになって2人で笑った。

「・・・でも、おいらは冒険のほうがいいなぁ。」

「え?」

「楽しかったんだよなぁ。カービィをせなかにのせてさ。
 いろんなところにいって、敵をやっつけて。」

リックは本当に楽しそうにそう言った。
心から楽しそうだけど、ちょっとさびしそうにもみえた。


「あっ。」

そのときぼくはチュチュの言葉を思い出した。

『そういえば、カービィがいなかったとき、リック元気なかったのよね。』

それから、宝を手にいれた話をしたときのリックの様子。

『あはは、ぼくだけじゃ無理だったよ。
 みんなに力を借りてなんとかあつめられたんだ。』

『・・・ふーん。そっか。』

もしかして、リックが悩んでたのって・・・。


「なぁ、カービィ、また一緒に冒険にいこうな!」


そうだ、やっぱり。
リックは、ずっと・・・。

ずっと、ぼくと冒険がしたかっただけなんだ。
ぼくをせなかに乗せたかったんだ。


「・・・ごめんね、リック。」

「え?なんであやまるんだよ、悪いのはオイラじゃ」

「ほんとにごめん・・・。」

それから、ぼくはいっぱいあやまった。
なみだがぼろぼろこぼれてリックのせなかにおちた。

「ど、どうしたんだよ、カービィ。傷が痛むのか?」

リックはうろたえていた。
こんなに心配してくれるのがうれしくて、ぼくは笑いながらまた泣いた。



「はい、これでよし!」

チュチュはぼくの手当てが終わって、救急箱をしまった。

「まったく、追いかけたカービィがケガしちゃうなんてドジね〜。」

また、チュチュがくすくす笑う。
そばにはたくさんのお花のわっかや飾りができていた。

リックはおいしそうにおにぎりをほおばっている。
お腹をすかせたぼくたちにチュチュがたくさんにぎってくれたが、
どんどん数が減っていく。

「っていうか、リック、食べすぎよ。カービィの分もあるんだからね。」

「だってお腹すいてさ。ほら、カービィも食べようよ。」

「うん。」

ぼくも負けずにおにぎりに手を伸ばす。

「そういえば、2人のケンカの原因の10えんだまは?」

「あ、そういえば、リックが持ってたよね?」

リックのほうをみると、ちょんちょんと、自分のせなかを指さしている。

「?」

ぼくとチュチュが2人で見てみると、そこにはばんそうこう。

「なによ。10えんは10えんでもはげのほうじゃない。」

「はげっていうな!刻まれた誇りと言ってくれ!
 ・・・っていいから、ばんそうこうはがしてみろよ。」

「え?」

そう言われて、ぼくはおそるおそるばんそうこうをはがしてみる。
もしかして・・・。

ぺりっ。

「あはははははっ!」

ぼくとチュチュは笑ってしまう。
思った通り、ばんそうこうの下には10えんだまが「はまって」いた。

「いやー、まさか、ほんとに同じサイズだとはおもわなくてさ。」


それからリックは10えんだまぎらいがなおって、
せなかの10えんだまも隠すことがなくなった。

今回のこの「10えんだま事件」。
たぶん、リックのせなかに乗って、冒険に出るたびにおもいだすんだろうな。

おしまい