啓太さんの小説

【イベント小説】ボウシをかぶって


「うわぁ、すごいなぁ〜。」

ちょっといつもより遅く起きた朝、
窓から外を見たぼくは、思わず声を出した。

雪で一面まっしろ。

プププランドも今は冬。
別に雪は珍しいわけじゃない。
だけど、今日は天気が良くてお日さまも出てるから、
雪がきらきらと光っている。

「へへっ。」

ぼくは、うれしくなってすぐに駆け出し、ドアを開けた。
すると、もちろん風がびゅーっと家の中に入ってきた。

「うわ、やっぱり寒いや! …そうだ、ボウシかぶっていこう!」

天気がいいけど、やっぱり冬は冬。
ぼくは、あったかいボウシを探しに、あわてて家の中に戻ろうとした。
そのときだった。

「カーくん!」

向こうからアドちゃんが走ってきた。
でも、なんかいつもと違う。

アドちゃんは髪の毛をさらさらとなびかせながら走っている。
あれ? そういえば…。

「みんなのボウシが、デデのだんなにとられちゃったの!!」

そうだ、何か足りないと思ったらボウシだったんだ。



「…ぼくのボウシも全部なくなってる。」

たんすの中にしまってたはずのボウシが全部なくなっていた。
いつの間に…。全然気がつかなかった。

「デデのだんなが、昨日のうちに国中のボウシというボウシをとってっちゃったみたいなの。
 どうしよう、お気に入りのボウシなのに…。」

アドちゃんは泣きそうな顔で、ぼくを見てくる。
いつもかぶってるボウシだもん、アドちゃんにとっては宝物と同じなんだろうな。

「よーし、ぼくが取り戻してくるよ!」

ぼくが言うと、アドちゃんはすぐににっこりと笑った。

「よかった、じゃあ決まりね!デデのだんなは、広場でもう待ってるわ。
 がんばってね、カーくん!」

え?



広場についたとき、ぼくの目はまんまるになった。

いつ作ったのか、特設のステージができていて、
その上には大きな看板に

『デデデ大王のカービィやっつけショー』

と書いてあった。

「はっはっは、来たな、カービィ!
 今日がお前の命日だ! 何しろ今日のワシには秘策が…!」

「カーくん、がんば!」

アドちゃん、知ってたんだったら、もっと説明してくれたらよかったのにな…。
そういえば、ステージの周りにはたくさんのギャラリーがいる。
デデデ大王準備が早いなぁ。さすが王様だ。

「と、とにかく、ぼくが勝ったら、みんなのボウシを返してもらうからね!」

ぼくがステージに上がると、大王はにやりと笑った。

「ふん、今日のワシは、いつもと一味も二味も違うぞ。」

そういって、そばに置いてあった大きな袋を手にとったと思ったら、
袋を逆さにして中身をざーっと出して見せた。

みんなのボウシがその中からどんどんでてきた。
その中には、ぼくのボウシもある。

「これが今回の秘策だ。いくぞ、カービィ!」

というと、デデデ大王は自分のかぶっていたボウシを、ぐいっとはずした。
そして、すぐにぼくのボムの時のボウシを無理やりかぶった。
なんだろう?

「くらえ! デデデボム!!」

爆弾が次々と投げられてくる。
ぼくはなんとかそれをよける。

「なーっはっはっは、ボウシの力は絶大だろう!」

まさかボウシをかぶっただけなのに、能力まで変わっちゃうなんて…。

そのとき、空から声がした。

「苦労してるみたいだな、カービィ。」

「クー!!」

「またデデデと一騎打ちか?」

「う、うん。デデデ大王がみんなのボウシを使って…うわぁ!」

デデデ大王は全然ぼくに喋らせるつもりはないみたい。
今度はカッターのボウシをかぶって、カッターを投げてくる。

「そうか、それならほれ。」

そういってクーはぼくの頭をつかんだ。

「おい、クー! 助っ人だなんて卑怯じゃないか!?」

デデデ大王がすかさず、クーに向かって言う。
そうしたら、クーがかっこよく、こう返した。


「心配するな。おれはただのボウシさ。カービィのな。」


『えーーーーーーーー!!!???』

ギャラリーの声が広場中にひびき渡る。
寒い日だからよく声が通っていた。
なんだか、どこかの山でなだれでも起きてそうだ。

ぼくはというと、口をぱくぱくしてクーをじっとみつめていた。
それを見てクーが笑いながら声をかけてきた。

「さ、いくぞ、カービィ!」

「う、うん!」

ぼくはクーと一緒に空を飛ぶ。
やっぱりクーはすごい!
デデデ大王がいろんなボウシでいろんな攻撃をしてきても
全部すいすいよけてみせた。

「ふ、ふん。ならばこっちも奥の手だ。」

そういってデデデ大王は、また1つのボウシを手にとった。
赤いベレー帽。間違いなくアドちゃんのだ。

そしてデデデ大王はそれを思いっきり頭にかぶせた!
アドちゃんと大王の頭の大きさってあまりにも違うけど…。
だけど、大王は根性で頭をねじこんだ!
…うわぁ。

「いやー!! 私のお気に入りのベレー帽がー!!」

アドちゃんの絶叫が聞こえる。
それから、デデデ大王はキャンバスと絵筆をとり出した。
そして、なにやら絵を描きだした。

「さーらさらったら、さーらさら♪」

デデデ大王…楽しそうだなぁ。

デデデ大王が描いているのは、なんだかにょろにょろとしてて、
先っぽにはほうきみたいなのがあって、それでぐちゃーっとしてて、
ぬぼーっとしてて、ぼよよーんとしてて、それでいてまったりとコクのある…
って、これ絵なのかな?
ギャラリーからもいろんな答えが出てくる。

「わかった、折れ曲がった、かりんとうだ!」

「ばか、あれは伝説のゴキブリだよ。」

「腐った上に踏みつぶされたナポリタンスパゲッティ。」


デデデ大王の絵が描きあがった。

「さあ、いけ、デデデドラゴン!」

『ドラゴン!?』

広場のみんなの声がきれいにそろった。

そしてデデデ大王が描いた「ドラゴンのようなもの」は実体化した。

………

「あぴゃあ」

鳴いた。

…………

次の瞬間、クーが翼でふきとばした。

「ああぁっ!」

デデデ大王が小さく悲鳴を上げる。
それにとどめをさしたのはアドちゃんだった。

「だんなって絵のセンスないのね・・・」

「んがぁーーーー!!!」

デデデ大王は叫んでそのまま後ろに倒れてしまう。
あんまり急だったので、ぼくのほうがびっくりしてしまった。

「デデデ大王、大丈夫!?」

「く、やるな、カービィ。今回はお前の勝ちだ。がくっ」

「あ。」

というわけで、ぼくは勝ってしまったみたいだった。
……なにもしてない気もするけど。



「そういえば、デデデ大王はいつも同じボウシかぶってるよな。」

みんなのボウシを返し終わった後、クーがぼそっと言った。

アドちゃんはため息をつきながら、
すっかりのびてしまったボウシをいじっている。

ぼくは、今日のデデデ大王が、いつもと違うボウシを楽しそうにかぶっていたのを思い出していた。
もしかしたらだけど、大王もたまには違うボウシをかぶってみたかったのかな、本当は。

「そうだ、わたし、だんなに新しいボウシを編んであげよっかな!
 あ、そしたらクーの羽をたくさん使わせてね!」

「だめにきまってるだろ!!」

2人はそんなやりとりをして笑っている。

ぼくは持っているボウシの中で一番あったかそうなのをえらんで手に取った。
そして、倒れていたデデデ大王の頭にぽん、とのせる。

デデデ大王は一瞬、ぴくっと動くけど、またおとなしくなる。
その顔は少し笑っているようにもみえる。

ぼくはもうひとつ、ボウシを手にとって、今度は自分でかぶる。
デデデ大王のボウシはぶかぶかだ。

「また、ボウシ交換しようね。デデデ大王!」

ぼくは眠ってるデデデ大王に笑って言った。


おしまい