啓太さんの小説

【イベント小説】ぼくらはカービィ


「これって・・・」

気がついたとき、ぼくは目の前の光景にびっくりしてしまった。
カービィが9人寝ている。
…というか、もちろんぼく自身もカービィなわけだから
この場にカービィが10人いるということになる。

最後に覚えてるのは
ぼくのからだに雷みたいな衝撃が走ったことだ。
たしか、今日はらっぱを歩いてて空が変な雲でいっぱいになって、
それから・・・

「あ。」

ぼくは思い出して、思わず体がぶるっとふるえた。
あのドクロみたいな巨大な怖いもの。
見つけるやいなや、ぼくはそいつにやられてしまったんだ。
そのときに多分、ぼくは分裂してしまったらしい。

「こうしちゃいられない!」

ぼくは、急いでほかのカービィを起こして、
すぐにでも冒険に出発することにした。



「な、なんで!?」

ぼくは思わぬ答えにひっくりかえりそうになった。

ほかのカービィたちを起こして、かいつまんで事情を説明した。
そして、一緒に出発しよう!ってよびかけた。
みんな、「ぼく」なわけだから、もちろん賛成してくれると思ったのに。

「だいたいお前がぼーっとしてたから、ぼくたちは分裂しちゃったんじゃないか。
 きみとは一緒に行きたくないね。」

「そうだな!それに大勢でいくより、1人で果敢に戦ったほうがカッコいいじゃん!」

1人目と2人目のカービィの言い分。
あ、ぼくもカービィだから、2人目と3人目かな?
…うーん、ややこしいな。
とにかく2人の答えは「NO」ということだ。

「ぼくも1人でいるほうが楽だな、悪いけどさ。」

「つるむのは好きじゃない…」

4人目と5人目のカービィ。
こちらの2人は、いわゆる『一匹おおかみ』タイプなのかな?

「すぐに出かけるのは得策じゃありません。
 しっかりと計画を立ててからじゃないと。」

そういって、どこからもってきたのか、
巨大な本をぶつぶつ読みながら答える6人目。
まじめそうだなぁ。
でも、計画って言ったって…。
その本を読み終えるのを待っている間に太陽とお月さまを何度見ることになるのやら。


「もう、みんなつれないわねぇ。」

みんなの様子を見ながら7人目のカービィがぼくにいった。
このカービィだけは、ぼくに協力してくれるらしい。
よかった・・・。
なんで女の子言葉なのかは置いといて。

「でも、それならそれでいいかもね。
 そしたらぼくたちは2人きりのランデブーよ(はぁと)」

…きみ、本当にぼく?
もしかしてどさくさにまぎれて、どっかから現れてない?
こんなぼく、ぼくは知らない。

「あれ?」

ナナちゃん(7人目だからナナってよんで、と本人からいわれた)の
視線をさりげなくよけたとき、ぼくは気がついた。

1、2、3、4、5、6、7、・・・ぼくを入れて8人だ。
最初は間違いなく10人いたはずだったのに、2人足りない。

「あと2人は?」

1人目のカービィに聞いてみた。

「あぁ、それなら、1人は『ぐずぐずしてられるか!』っていってもう出発して、もう1人は『おなかがすいたから』っていって食べ物を探しにいったよ。」

!!!
なんだって!?

ぼくは急いで走りだした。



それからしばらく2人をさがしてみたけど、みつけることはできなかった。
分裂してしまったとき、力も弱くなってしまったみたいで、
走っても走っても前に進めない感じがする。
ただただ、息が切れていくばっかりだ。

そのうちぼくは石につまづいて転んでしまった。
いたた、あいかわらずそそっかしいな、ぼく。

ぼくはとうとうその場に座りこんでしまった。

ほかのカービィはどうしているかな…。
でも、こうしている間にまた宇宙は大変なことに…。

「…もういいよ、だったらぼくだってひとりで…!?」

ため息をついたそのとき、
ぼくの体は宙に浮かんだ。
いや、浮かんだというよりは何かにひっぱられた。

「な、何なの!?」

みると小さなドクロみたいなのが5ひきもあつまって
ぼくを上空に連れて行こうとしている。

きっとあの大きな敵の子分なんだ!
このままだと連れ去られてしまう!
気がついたぼくはがむしゃらにドクロたちをふりほどこうとした。

でも、全然力が足りない。
そうしているうちにみるみるぼくの体は地上からはなれていく。

「…やっぱり、1人じゃ…」

ぼくがあきらめかけたそのときだった。

だれかがぼくの名前をよんだ。
だれかがドクロに石ころを投げた。
だれかがドクロの体にとびついた。
だれかがぼくの体をひっぱった。
だれかが落っこちたぼくの体をキャッチした。
だれかがぼくに、にこっと笑った。

その「だれか」はみんな

『カービィ』だった。



「5ひきくらいじゃ足りないよな!
 ぼくらを倒すなら100ぴきでも足りないさ!」

いなくなっていた8人目が言った。
それを聞いて、ほかのカービィたちも笑った。

みんなは上空に連れて行かれようとするぼくをみつけて
助けるために集まってきてくれたのだった。

それから五ひきのどくろは撃退された。
あっけないほど、あっという間のできごとだった。

1人よりも2人がいい、2人よりも3人がいい。
ましてや10人が集まったら…。

「1人じゃぼくは何にもできなかったんだ。
 …やっぱり、みんなで一緒に行きたいな。」

ぼくがそうつぶやくと、みんなは顔をみあわせた。
それからみんなは、「しょうがないな〜」とか「もちろん」とか
口ぐちにバラバラなことを言った。
でも、みんな笑っていた。
みていてたのもしくなるような笑顔だった。

「みんながいれば無敵だよ。だからもう1人にはならないでね。」

最後の10人目がトマトを差し出しながらぼくに言った。
ぼくの、いや、ぼくたちの大好きなマキシムトマト。
ぼくたちみんなの分をさがしに行ってくれていたのだ。

ぼくは一口トマトをかじった。
おいしい。
なんでだかわからないけど、このトマトは特においしい気がする。

そしてぼくは、たっぷり息を吸い込んで大きな声で叫んだ。

「よーし!! じゃあ出発だーーー!!!」

「おーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

ぼくらの声がこだまする。
そしてぼくらは一斉に駆け出した。


・・・10方向へと。


「もう言ってるそばからー!」

みんなあわてて元の場所に戻ってきた。
そそっかしいのもみんな一緒みたいだ。

笑いながら、今度こそ1つの方向へ走りだす。


ぼくらはカービィ!
さぁ、今度はもっとにぎやかな冒険になりそうだよ!


おしまい