オリオンさんの小説

【たたかいの彼方に】 第32話 『制覇への道』


第32話『制覇への道』

 ドロッチェ団がポップスターを発った頃、残ったクラッコ、ヘビーモール、ワドルディ、シャドーカービィはカービィ、デデデ、メタナイトなどの頼れる存在が居なくなったこの星を守るため、ダークマターを退治するべく、各地を徘徊し始めた。
 しかし、守ろうとしたその星は既にもう闇に、悪に染まりきり、四にんは偶然にもそれが分かる場面を目にしてしまうこととなった。
「住民共! 我の言うことをよく聞け!」
 ひとりの人型ダークマターが、周りに集まっている住民たちに言い放つ光景が四にんの目に入る。
 しかも不自然なことに、その住民たちは反論も何もせず、寧ろ王を気取るダークマターを慕うかのように周りに群がっている。
 それが気になった4にんは遠くから様子をうかがうことにした。
 やがて、ダークマターはマントを翻した後、喋り始める。
「この世の中は不安であふれている。その原因は全て、他者同士との関わりにある。他のために、迎合し、白い嘘をつき、争いを避ける。そして何より、生き物の心というのはもの凄く不安定だ。どんなに信頼しあう仲でも、生き残るためには欺き、殺し合ったりだろう」
 ダークマターの演説に迫力が増す。
「果たして、そんな脆い友情など本当に必要なのか? そして、ここにいるお前たちが“悪”と見なしていた、他者の損害を求めることは、本当に“悪”なのか? 答えは否。自身の利益のため、他者を蹴落とすのはごく自然的行動なのだ。生まれながらにして弱き者は、強き者のエサとなる。そして、強き者が世界を動かす。どんなに他者との繋がり、平等、愛を求めようと、弱肉強食という自然の概念には逆らえないのだ。さあ! 今こそ、友情という不安定なしがらみから逃れ、自然な世界を作りあげようではないか!」
 このことを聞いた四にんは絶句した。闇の心が実体化して出来たというシャドーカービィさえも既に正義の意識が芽生えているだけあってか、ダークマターの言うことに反感を覚えていた。
 そして、遂に我慢できなくなったシャドーカービィが、黄金の剣マスターを構え、急スピードでダークマターの所へ向かっていく。これを見たクラッコたちも続くようにダークマターを止めに行く。
「……何者だお前たちは? 我に楯突くとは国家反逆罪とみなすぞ」
 演説をしていたダークマターが向かってくる四にんに気が付き、こう言う。すると、
「いつから君が王となった!? ポップスターの住民に変なことを吹き込むな。僕がここでお前を倒してやる!」
 シャドーカービィが威勢よく返し、まるで本物のカービィのように果敢に剣を振り、ダークマターを斬りつけた。
 横からはクラッコが雷を当て、ヘビーモールがアームについた刃で回転させながら殴る。
「さあ、今のうちに逃げるッス!」
 そしてクラッコに乗ったワドルディが他の住民たちに言い放つ。しかし、ひとびとは逃げるどころか――
「!!?」
 ダークマターに危害を加える四にんを攻撃し始めた。ホットヘッドが火を飛ばし、Mr.フロスティが氷を投げつける。
 やがて、何百ものひとたちで四にんの“徒な運動”は鎮圧され、抵抗できなくなった彼等は拘束されてしまった。
「おい! 何で俺たちを攻撃するんだ?」
 必死に話すクラッコだったが、住民のひとりであるバウンダーが冷淡な表情で素っ気なく返した。
「この世界はもうすぐダークマター様の物になる。どうせなら、今のうちに従っておいた方が得策じゃないか。逆らって死ぬくらいなら、僕は、ダークマター様についていく。それに、自分の幸せのために生きることは、自分に正直でとても素晴らしいことなんだよ」
「何言っているんだ? 俺たちは、お互いを尊重して、幸せも喜びも分け合う。そうして暮らしてきた。だから平和な日々が続いたんだ。今ならまだ間に合う。どうか目を覚ましてくれ!!」
「足掻いても無駄だ」
 と、先程攻撃を喰らい、ボロボロになっていたダークマターが図々しくも会話に挟まってきた。 
「強き者には、我から褒美を与えよう。食べ物でも宝石でも何でも。お前たちは、その幸せを掴むために生き、または幸せを掴む者のために死ぬのだ! さあ、自身の幸福、快楽を得たいなら、我について来い!」
 ついて来い――最後のその言葉と共に、ポップスター住民の歓声が沸き上がり、四にんはどうにも出来ない虚しさに浸ることしかできなかった。

 やがて攻撃を喰らい続け、抵抗する気力全てを削がれた四にんは、ポップスターの住民の手によって、洞窟マジルテに幽閉された。入り口は大岩でふさがれ、もうひとつの<<ちていの木々>>に繋がる入り口には、四にんの人型ダークマターが見張りについている。
「くそ……くそ……」
 シャドーカービィが悔しさのあまりに声を漏らす。彼が持っていた剣はダークマターにより没収されていた。隣では、刃を全てもぎ取られてしまいツルツルになったアームを悲しそうに見つめるヘビーモールがいる。
「くくく……逃げられると思うなよ。お前たちはここで死ぬのを待つのさ」
 そしてダークマターの悪魔の声が、四にんの心を劈く。武器も何も無い今では、抵抗も至難の業であった。
(ドロッチェ団……無事でいてくれ……)
 絶望のどん底に突き落とされた四にんは、もうドロッチェたちの身に危機が訪れないことを祈るしかできなかった。

「ゼロサマ。ヨウセイタチヲ、カイホウ、サセマシタ」
「うむ。ご苦労」
 ファイナルスターの司令室にいるのは、赤みを帯びた球体と白い球体。しかし、赤い球体ことダークマインドは、とある出来事により、ゼロに心を操られてしまい、話しからはマインド自身の意志は感じ取れなかった。
 ダークマインドが言葉にする“妖精たち”というのは、もともとクリスタルの居場所を吐かせるために連れてこられたリップルスター住民である。別行動をして、やがて捕まってしまったリボンは、ダーククリスタルの力を受けてしまい、その力を他の者に与える能力を得た。彼女はその力を使い、他の妖精にも闇水晶による影響を与えたのだ。
 ゼロはその能力に目を付け、利用し、ポップスターをはじめ、ミルキーロードにある星々や、ウルルンスターなどの惑星に住まう民に、闇水晶の力による影響を与えた。結果、善の心は消えゆき、自分の幸せのため“だけ”に動く民度の低いひとたちが大量に生まれ始めてしまった。
 ポップスターの住民がそうなり、平和を愛す考えを捨ててしまった根本の原因は――ダーククリスタルの力を受けたリボンによるものだったのだ。
 ゼロはさらに星々に手下のダークマターを配置し、洗脳しやすくなった、利益にのみ関心を働かせるようになったひとたちをまとめ、惑星規模の分権政治を行わせるように言った。闇に染まってしまったリボン以外の妖精たちはリップルスターに戻され、配置されたダークマターに洗脳され、やがてはリップルスター王女ではなく、ダークマター中心の悪の王国を作るようになっていった。
 「これで銀河制覇にまた一歩近づいた。友情、信頼、愛、そんなもの、ひとに必要は無い。闇を好み、孤独に生き、自身の幸せを第一に考える民が生きる。そんな世界を作りあげるのだ!」
 そう言い、笑っていた時、司令室に目玉型のダークマターが急いだ様子で入ってきた。
「用件は何だ?」
「ゼロ様。ただ今ファイナルスター付近で怪しい宇宙船を見たという情報が、見張り担当の方から届きました。あの宇宙船はおそらく、我々の侵略を拒む存在であると思われます。何か対策を打った方が……」
「……」
 聞いたゼロは黙って、モニターでファイナルスターの外の様子を見る。するとそれには、米粒程の大きさの怪しげな宇宙船が映っていた。
「……あれはおそらくドロッチェが率いる盗賊団の宇宙船。奴等を駆逐しに行ったダークゼロは倒されたから、時期にここへ来てもおかしくはない」
「ダークゼロ様が……倒された?」
 七星の一角が崩れたことを聞き、不安めいた言い草で言う下っ端にゼロがまた言った。
「……心配するな。この要塞は余やダークマターが生み出した暗黒物質で作った強固なバリアで貼られている。どんな凄まじい攻撃が来ようと、崩されることなど無い。あんな貧相な宇宙船などに負けはしない……」
「ですが!!」
 下っ端が強く言いに出た。
「相手はダークゼロ様を倒しているんですよね? このまま放っておくわけにも行かないと思います。何より、相手は盗賊団。このバリアを打ち砕くほどの強力な武器を所持しているかも知れませんよ?」
 しかし、ゼロは冷めた口調で、
「余はお前の考えなど聞くつもりは無い。さっさと帰れ」
 と適当にあしらい、これを聞いた目玉型ダークマターは、残念そうな表情で司令室を出て行ってしまった。
 しかし、そう言ったゼロにもちゃんと理由があった。
(七星に勝つような相手に普通の部隊を送り込んでも無駄だ。かといってマインドには他にやってもらいたいこともある。ここは、バリアの力に頼った方が得策だ)
 そう考えた末、ゼロは部下にこう発言したのだった。
 ゼロはモニターで、今度はとある通路を映し出す。すると、ナイトメア、ドロシアと、リック、カイン、クー、デデデ大王、メタナイト、アドレーヌ六にんが戦っている様子が映った。何故か気を失っているナゴ、ピッチ、チュチュもいる。
 やがて、ゼロは不気味にも笑みを浮かべ、心の中でカービィの仲間たちに向かってこんなことを言った。
(さあ、カービィのしもべども。七星に負けて絶望に落ちるか……七星に勝って、地獄を見るか……。余はお前たちに地獄を見せてやりたいが、ここでの戦いの勝敗で決めさせてもらおう!)

「はぁ……はぁ……」
 一方、ふたりの七星とリック等六にんとの戦いは一進一退で決着はつかず、ドロッチェ団がミラクルマターと戦っている時から今に至るまでずっと続いていた。
「こやつら、ここまでしぶといとは……」
 ナイトメアが口を引き気味にして、言う。六にんは勿論、ダークマター軍の幹部を務めるふたりも、疲れの色を見せていた。
「オイラたちは絶対に諦めない。カービィを助けるために」
 リックが荒れた息で、ナイトメアに言い返す。周りのデデデ大王、カイン、クー、メタナイト、アドレーヌも、リックと同じ気持ちだ、と表情が言っていた。
 しかし、ここに来て六にんは、絶望にを味わうこととなる。
「このままでは決着がつかない。……ドロシア! そろそろ“ドロシアソウル”となって本気を見せてやれ!」
 ナイトメアのドロシアに対して言い放つ。
「……いえ。わたくしは、あのような穢らわしい姿を晒すことはしたくないですわ……でも……」
 でも、の後ドロシアの目が急に笑い始め、
「目の前の邪魔者を片付けられるなら……ゼロ様に貢献できるなら、そのプライドも捨てましょう!!」
 言い終えたその後、ドロシアの体は絵の具のように溶け始め――桃色を基調とし、黄色の目のような丸い模様が浮かび上がり、“球状の化け物”となった。
(ま、まだ戦えるのか……?)
 六人は、それを見て、相手の底知れない力に同時に焦りと恐怖を感じていた。しかし、このままでは――
「シネェ……!!!」
 ドロシアソウルは、今度は自分の体を分裂させ、その体の一部を降らして攻撃をした。ナイトメアはこれに星形の弾を加える。
「武器で防げ!」
 メタナイトが剣を振りながら、他の皆にそう言う。しかし、莫大な量となった攻撃弾を防ぎきれることはなく、虚しくも六にんは多大な痛手を受ける。
 そして、痛みで鈍った六にんの動きを見て、ドロシアソウルとナイトメアはふたり同時に体当たりを行った。
「ぐあぁぁ……」
 六にんは見事に直撃し、特にデデデ大王とメタナイトが重傷を負った。大王のガウンは既にボロボロ。騎士の仮面にはヒビが大きく生まれた。
 ここに来て七星側の形勢逆転となり、必死に戦い続けた六にんにとっては、それが精神的にも大きなものとなった。
 ボロボロになって倒れている六にんに向かい、ナイトメアが口を開く。
「私たちをここまで追い詰めたことは褒めてやろう。復活後に戦った相手の中では、お前たちが一番強い。しかし、やはり私たちとお前たちの間には大きな差があった。だからこの現状に至った」
 フゥフゥと息を吐きながら、まだ終わっていない、と言わんばかりに睨み付けてくる六にんに対し、ナイトメアはまた続ける。
「しかし、果敢に戦ったお前たちも、もうここまでだ。そして、お前たちが消えることで、私たちの侵略活動は一気に進展する。つまり、ダークマターの、ゼロ様が統一される、星を超える超巨大王国が出現するのだ!」
 そして、大声で笑いはじめるナイトメア。一方ドロシアソウルは、まるで心を売ったかのように何も言わない。もしかしたら、本当は真の姿にならずして、戦いを終わらせたかったのかもしれない。
「さあ、とどめだ……」
 やがて、ナイトメアは六にんに、向かって手をかざす。このまま星形の弾を撃ち、相手を殺す気だ。
(駄目だ……体が……動かない……)
 しかし、リック等はまるで金縛りにでもあったかのように体を動かすことは出来なかった。想像を絶する長期戦が、六にんの体力を予想以上に奪っていて、彼等自身もそれに気が付いてなかったのだ。
「喰らえ!!!」
 そして、ナイトメアが叫んだ後、猛スピードで星形弾を放った。
 ――しかしだった。

「!!!」
 戦いの様子をモニターで見ていたゼロは、思わず驚いた。何故ならそれは、全く予想していなかったことだったからだ。
「何故だ……何故、こんなことが起きるんだ……」
 ゼロはただならぬ焦燥感を、肌で感じていた。
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