オリオンさんの小説

【たたかいの彼方に】 第31話 『反応』


第31話『反応』

「俺たち全員が相手だ!」
 まだ日が昇りそうにもない暗闇の中、ドロッチェの声と共に、スピン、チューリン、ストロン、シャドーカービィ、クラッコ、ヘビーモールが立ち向かう。ドクはミラクルマターに壊された後にまた作り直した小型の宇宙船に乗り、ワドルディもそれらを見守る。
「来い! 俺の本気、見せる!」
 向かってくるひとたちに向かい、ダークゼロは目をくわっと開け、体を赤色にさせた。
「気をつけろ。奴は炎を吐いてくる。多勢を利用して、奴の見えないところを突くんだ!」
 ドロッチェがトリプルスターを構えながら、他の者に言い、ダークゼロの周囲を囲むように攻撃を仕掛けた。
 だが、ダークゼロは笑みを浮かべたまま――
「甘い」
 と言った直後、体から空を貫くかのような炎の竜巻を吹き出した。そしてそれは、草原を焼き尽くすとともに、周りの者たちを取り込んでいく。
 灼熱の炎の中、焦げた飴のような色になったクラッコがうぅ、と声漏らす。チューリンたちや、スピン、ストロンも、地に伏したまま火傷に苦しむ。
 しかし、ドロッチェはトリプルスターの力を使い、炎から身を守っていた。そしてダークゼロとの距離を狭め、三つ星を当てようとする。――が、ダークゼロはそれに素早く反応し、ドロッチェの三つ星を体を回転させて、跳ね返した。
 ひとり用の小型宇宙船で火を防ぎながら攻撃を見計らっていたドクは、この隙を逃さず光線を当てようとし、逆側からは、マスターを盾にし攻撃の機会を狙っていたシャドーカービィがダークゼロに近づく。
 だがダークゼロは急に体の色を青に変え始め、凄まじい速さで氷の剣をふたつ作りあげた。そしてほぼ当たる寸前であったシャドーカービィの斬撃とドクの光線を弾き返してしまった。
「攻撃が当たらない……」
 不安めいた言い草で呟くシャドーカービィ。それを聞いたダークゼロが、甘いんだよ、と言わんばかりに嫌な笑みを浮かべる。だが――
(ククク、おれっちがここにいるとは思わまい!)
 その時、こっそりと地中に身を潜めていたヘビーモールが、下からダークゼロの所へ素早く向かい、棘のついたアームでダークゼロに殴りかかり――
 ――見事渾身の一撃を与えることに成功した。
「がぁ、しまった……」
「よし、たたみかけろ!」
 思わぬ奇襲に意表をつかれ動揺するダークゼロに、今度はドロッチェが氷のレーザーで攻撃した。その裏側からはシャドーカービィの斬撃とドクの光線がダークゼロの体を痛めつける。
 しかし、このまま七星は引き下がらない。
「こざかしい!!」 
 ダークゼロが急に声をあげたと思った瞬間、体を緑色に変え、そして――
(まずい!!)
 ドロッチェが何かを察したかのように歯を食いしばるが、既に遅い。ダークゼロの体から何十本もの稲妻が発せられ、その雷に直撃した三にんは、激痛に耐えかね、地に墜ちた。
 ドクの宇宙船も雷によって壊され、真っ黒焦げとなって吹き飛んでいき、見事ダークゼロの形勢逆転となった。
「野郎……」
 必死に立ち上がろうとするも、痛みで立てないのか跪くドロッチェたち。しかし、ここで立ち上がらなければ、敗北への一途を辿ることになり、クリスタルの力を強める秘宝も集められないままとなる。
 ミラクルマターと戦ったときよりも多い仲間で立ち向かってもなおこの結果。流石、マルクを雑魚扱いするだけのことはあった。
 そんな時、ダークゼロが唐突にこんなことを言い始めた。
「……俺、暗黒の支配者と、大いなる力と囁かれ、宝箱の中でひっそりと力を蓄えた後、世界に不安、恐怖、与えようと企んでいた。だが、カービィという奴が俺を邪魔し、戦っても圧倒的な差で片付けられた……」
 復活する前のことを言ってるのか、とドロッチェは息を切らしながらも耳を傾ける。他のひとたちは痛みを堪え続けている。 
「……俺、倒されてずっと悔しかった。あのピンク玉、何の理由で、俺の野望、邪魔するのか。俺、あいつが許せなかった。いつか復活してあのピンク玉を泣かせる程強くなり、もう一度俺の野望、叶える、そう誓った」
 これを聞いたドロッチェは、ブルブルスターで戦った道化師のことを思い出す。
「そういえば……マルクも……お前と似たようなことを言っていたな……」
「そうだ。俺たち幹部こと七星の殆どは、世の中脅かす野望をカービィに邪魔されたこと、怨んでた! しかし、ゼロはその怨みの心見逃さず、俺たち、魔法で復活させてくれた。そして俺たちも悔しさ、バネに、更なる力、手に入れた! 七星みんな、復活する前より強くなっている!」
 ドロシアの実体を絵にする能力も、ナイトメアの幻影攻撃も、マルクの液体を針状にしての攻撃も、全てはこの黒い五芒星が言った通り、体を取り戻した幹部連が、今までの怨み憎しみを糧にして得た技であった。
 強さの根底にあるもの。それが、負の感情による糧と、復活したことで、もう一度叶えんとする願い―― 
「俺たち七星、ゼロと共に、かつて叶えられなかった野望、“お前たちにとっての平和”崩し、恐ろしい世界作る! ……ドロッチェ! お前、本来盗賊だというの、知っている。民から、嫌われる存在のはず。なのに何故、民の味方、するのだ?」
 ダークゼロの唐突な問いに、ドロッチェは震えた足で立ち上がりながら、答える。
「……俺たちは、確かに悪者と呼ばれているような奴等だ。だけど、他の悪党とつるむことは絶対しないのが俺の考えだ。特にお前たちみたいな奴等とはな」
 これを聞いたダークゼロは少し残念そうに見えたが、やがて、目をくわっと開き。
「……そうか。ならば、戦い、続けよう。喋ったおかげで、体力、少しは戻っただろう!」
 ダークゼロは体を赤色に変色させ、そこから炎を吹き出す。
 近くにいたドロッチェはその炎を思い切り喰らう。ダークゼロの御託があったとはいえ、先ほどのダメージが重すぎて、結局逃げる体力すら戻ってはいなかった。
「ふん、それで終わりか?」
 一方相手は容赦無しに、今度は空高くあがり、大量のメテオを落とし始めた。やがて着弾したそれは巨大な火柱をあげ、既にはげていた土を強く焼き付ける。
 しかし、ダークゼロと戦っている者たちは抵抗することもなく、炎に包まれながら、地に倒れ込み続けた。逃げずに見守っていたワドルディもその炎に包まれ、大きな火傷を負ってしまう。
 このまま、負けてしまうのか。そんな未来さえも見えてくる。しかし、誰もがここで諦めようとは思っていなかった。
(……俺たちは、三つの武器を集めてクリスタルも見つける。ダークマターに宇宙の覇権を握らせてはならない。……これは、俺たちがやるべきことなんだ。なのに……)
 諦めない気持ちはあっても、体は少しも言うことを聞いてくれない。やがて、意識もだんだんと朦朧とし始めるのが分かった。
 ――そんな時だった。
(……!)
 マントに隠していたスターロッドが急に輝き始め、薄暗い辺りに目映い光をもたらした。
 ダークゼロもあまりの眩しさに目を瞑り、攻撃を止める。やがて、ドロッチェのマントから星に棒を刺したような杖が、更に強い輝きを放ちながら浮かび上がった。
 すると、黒飴のようになったクラッコがいた近くの地面にヒビが生まれる。
 そしてそれを突き破って出てきた――コーンのような形をした取っ手の上にハートが輝く杖が、そのままスターロッドが居る場所へと向かっていく。
 やがて、スターロッドとラブラブステッキが密接にくっつき、そこから黄色と桃色の強烈な光が辺りを照らした。すると――
(体中が痛く……ない!?)
 先程まで神経全体を擂られているような激痛が次第に引いていくのを、ダークゼロの攻撃を喰らった者全員が感じていた。クラッコも体が元の雲らしい白色に戻っていくことに気が付く。
 やがて、ふたつの武器が輝くのを止め、また暗い景色に戻った頃、死の溝に落とされつつあった者たちは完全に体力を回復し、再び戦う気力を取り戻した。
 そしてドロッチェの手元には――
「これは……」
 今まで隠し持っていたスターロッドの傍に、愛を象徴する武器――ラブラブステッキがあった。そして、それを星の杖と共に拾い上げ、
「……さあ、ダークゼロ。二回戦目だ。今度はこの二つの武器を使う。きっと良い勝負になるぜ」
 と言いながら相手に向かってその二つの武器を構えた。
 しかし、ダークゼロは何もせず、黙り込んでいる。それどころか、急に困惑の表情を見せ――
「……何故だ、力……消えた? 体が素早く動かない……炎の竜巻も出せない!」
 などと喚き始め、ドロッチェたちは呆気にとられた。マルクのように嘘で相手を油断させようとでもしているのか。
 しかし、これを見ていたドロッチェたちはやがて容赦無くダークゼロに襲いかかった。ストロンがハンマーで殴りかかり、スピンが手裏剣を、チューリンたちが爆弾を構える。
「……くそ!! 七星、舐めるな!!」
 攻撃を仕掛けたストロンたちに対抗するべく、ダークゼロは体を雷に適応させるため、体を緑色に変色させる。しかし、その時にできた“大きな”隙にストロンの打撃が加わり、横からも爆弾と手裏剣を喰らってしまう。
 よろめきながら、緑色となった五芒星も、負けじと雷を打とうとするが、先程のような大量の雷は出てこない。四方向にしか向けられなかった攻撃は、相手に見事にかわされ――
「……のろいな」
 後ろからドロッチェが、スターロッドとラブラブステッキをまとめて使い、そこから発射される星とハートの弾をダークゼロにぶち当てた。
「がぁああ……」
 強烈な攻撃を喰らったダークゼロは悶え苦しみ、やがては闇となって消え去った。
 日の光が山々の間から差し込み、夜明けが訪れる。
「倒した……のか……」
 消えていったダークゼロを見て、ドロッチェが呟く。無事に倒せたとはいえ、最後のあっけなさには虚無感すら感じられた。
 そして、ドロッチェはクリスタルの力を強めると言われた秘宝、スターロッドとラブラブステッキを見つめながら、
「おい。この二つの武器が突然光ったのは一体何故だ? お前なら、何か知っているだろう」
 とワドルディに尋ねてみた。戦いに勝てたのは、紛れもなくこの星の棒と愛の杖の力のおかげであることは、団長に限らず、誰もが分かっていた。
「……どうすればあの現象が起こるのかよく分からないけど、オイラが見た本によれば、“ひとびとの強い心が、秘宝の力を引き起こしたりすることがある”らしいッス」
 一息吐いてから、ワドルディが続ける。
「……皆さん、あの黒い星の敵ににやられそうになったとき、何を思ってたッスか? 秘宝が反応したということからも、予想はだいだいつくけど……」
 そして、この質問に対して、誰もが同じ答え――諦めることはしなかった――を出した。
 ダークゼロが急に弱くなった原因は、戦った者達の諦めない信念により引き起こされた、スターロッドとラブラブステッキの力なのだろう。 
 しかし、そんな想いで二つの武器の力を引き出し、ダークゼロをあそこまで弱体化できたのならば、残りの虹の剣と本物クリスタルが集まれば、闇の力を有する者にとってどれほど脅威となるだろうか。
 やがて、しばらく黙っていたワドルディが口を開いた。
「……僕も、そう思ってたッス。思っていただけで行動は何にもできなかったけど。取りあえず、皆さん喜びましょうよ。取りあえず強い敵も倒して、皆さんもこうして無事だったんだから……」
「そうだな。これで、ダークマターの本拠地へ行く準備もできたわけだし……」
 と突然言いだしたドロッチェの方を、ドロッチェ団員が、えっ、と驚きながら一斉に向いた。
「ドロッチェさん……確か、もうひとつがどこにあるか分からないと言ってましたが……」
 まだもうひとつ――虹の剣が見つかってない。そんなストロンのさりげない問いに、ドロッチェは少し恥ずかしそうな表情で言い返した。
「……俺は、肝心なことを忘れていた。虹の剣は既にもう見ているってことを……」
 そう言われて、団長の言う意味が分からずしばらく悩んでいた団員たちだったが――
「……ドロッチェ。もしかして、あの三毛猫が持っていた剣が……」
「そうだ。あの七色に輝く剣、今考えてみればあれがそうとしか思えない。ドロシアに負けた時の屈辱で、すっかり忘れていたよ」 
 この時、ドロッチェとスピン以外の団員も、極寒の星で出会ったナゴが七色の剣を持っていたことを思い浮かべ、ハッと理解した。
 それと同時に、ドロシアに襲われ、ナゴ、チュチュ、ピッチ、グーイ、リボン、そしてクリスタルがドロシアの魔法によってファイナルスターへ連れ去られてしまったことが思い返される。
 その時、虹の剣は何処へ行ったのだろうか。そう考えると、一番可能性として高い場所は――
「成る程。ドロッチェ殿の言う通りですな。とうとうあの巨大な悪の巣窟に殴り込む時が来たようだのう」
「うん。僕もそう思うよ」
 やがて、他のひとたちもダークマターの本拠地へ向かうのが一番話が早いと言い始めた。本物のクリスタルも、虹の剣もそこで手に入る可能性が高いと考えたのだろう。
「悪の巣窟ねぇ……元々悪いことやってる俺たちが悪者を倒すってのも変な話だよな」
「ぷぷっ。ドロッチェさんが一番張り切っているくせによく言えますよ」
 とストロンに突っ込まれ、団長が赤面して怒り出し、周りがそれを笑う。辛い戦いが多かったのもあってか、こんな雰囲気は久しぶりだった。
 丁度その時、日が全姿を現し、優しい光と雄大な青空が笑うひとたちを包んでいった。
 
 しばらく時間が経ち、ドロッチェたちはポップスターに着地した宇宙船の前にいた。探すのに一苦労だったが、運良くダークマターに見つからなかったのか、危害は加えられていなかったので、安心もしていた。
「おれっちは、もう一度夢の泉に戻って、クラッコと残党狩りを続ける」
 ヘビーモールがゆっくりとした口調で別れを決める。
「僕も、ポップスターの平和を守るためにここに残る。ワドルディも、ここに残りなよ。あっちへ行ってもどうせ役立たずにしかならないだろ」
「……流石、闇の心でできたカービィッスね」
 シャドーカービィと、彼に毒づかれたワドルディも、ポップスターに残ることを決めた。
 そんな4にんと向き合うように、宇宙船の前に立っているドロッチェが軽く頷き、
「お前たちとはここでお別れか。……まあ、この宇宙船も、あまり多くひとは入らないから寧ろ助かった。特に、ひとりデブがいるせいで余計に場所をとって……」
 と言いかけた時、ドロッチェは後ろから恐ろしく凄まじい威圧感を感じた。そして、このまま事が進めば、戦いどころではなくなると悟る。
「……あ、いや、とにかく、俺たちは残りを集めるためにもう旅立つよ。お互い頑張ろう! また、ポップスターにも来てやるよ。盗賊としてかも知れないけどな」
 その雰囲気に圧され、焦りを隠せない表情で急に言い換える。そんなドロッチェと後ろに、出っ歯の巨漢がハンマーを構えている様子を見ていた4にんは、やれやれ、と表情を緩めた。
 丁度その時、強い風が彼等の間を通り抜ける。
「……じゃあな」
 先ほどの緩い雰囲気は消えゆき、ドロッチェは真剣な目つきで残る4にんにそう告げた後、宇宙船に乗り込む。その後に、ドク、スピン、3にんのチューリンが続き、最後にストロンが一度振り向いた後、宇宙船に乗り込んだ。
 そして、その宇宙船は、やがて煙を立ち上げながら、空に向かって飛んでいった。

「……ダークゼロがやられたか」
 ファイナルスターの司令室で、闇を彷彿とさせる色をした2つの球状の物体――に加わるかのように出来上がった三つ目の物体を見て、ゼロはそう思った。
 もともと七星と呼ばれた六にんの幹部の体は、憎悪で消え散らなかった心を使って、ゼロが魔法で復活させた物であり、再び体を失った時も、あらかじめ、闇の物体となって戻るようにしていた。
 やがて、これを見た白い球体が微笑する。ゼロは、幹部連をある程度侵略を進めるための道具としか思ってなかったのである。――例え、相手側がゼロに対して強い同盟意識を持っていたとしても。
 しばらくして、ゼロは三つの闇の物体にゆっくりと近寄ってみた。すると――
 クヤシイ……ボクハ、モウイチド、カラダガホシイノサ……
 オレハ、ナンノタメニ、フッカツシタノダ……
 アノネズミドモ、ユルセナイ、コノウラミ、キエナイ……
「……」  
 死んでいった者たちの凄まじい憎悪の念が、ゼロには読み取れた。せっかく体を取り戻したのに自分の目的を達成できないまま、再び失ってしまったひとたちの悲痛の声が、凄まじいエネルギーとなってその球状の物体に渦巻いている。
 やがて、それを聞いたゼロは、ククク、と低く不気味な笑い声を放った。
(……待っていろ。お前たちの負の感情は、全てダーククリスタルが食べてくれる。そして、悪の心で満腹になったダーククリスタルを使い……)
 ポップスターの英雄を七星の本当の七番目として闇に落とし入れる計画は、その仲間たちやドロッチェ団等によって阻止されていると見せかけ、裏では順調に、順調に進んでいた。
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