オリオンさんの小説

【たたかいの彼方に】 第30話 『忠誠』


第30話『忠誠』

 ドロッチェ団殺戮命令を下されたダークゼロが司令室を出て行った後、ゼロはまたモニターでドロシア、ナイトメアとリックたちの戦う様子を見ていた。
「……そういえば、余から逃げ出した4にんの中の妖精がいないではないか」
 気を失っているナゴ、チュチュ、ピッチの姿を見たゼロは、ふと気が付く。彼等に妖精リボンを加えた4にんは、ダーククリスタルの力を受けた後、一斉に司令室を逃げ出していった。
 なのに妖精だけ別行動を取っている。そのことが気になったゼロはファイナルスターの殆どの場所を映すモニターの画面を色々な場所に切り替えてみる。
 すると、武器庫内で、沢山の妖精が濁った、くすんだ、よどんだ目で暴れ回る妖精たちを見た。ダーククリスタルの力を与えたのは桃髪の妖精リボンにのみ。だが、武器庫内にいた妖精全員にダーククリスタルの力を受けたときの症状が現れている。
 しばらくその光景を見ていると、桃色の妖精リボンの小さな右手から発射される小さな黒い水晶が見えた。そしてその水晶と同じ色をした霧のようなものが彼女の腕に帯びている。
 これを見てゼロは思い出した。幽霊のゼロツーだった時、かつてのファイナルスター奥地でカービィがクリスタルを武器として使い、自分と戦ったことを。
(ダーククリスタルは、ここまで生き物の力を引き出すのか……) 
 その時のリボンはクリスタルを武器に戦っていたカービィの飛行を助けていただけにも関わらず、本物のクリスタルも無いまま、かつてのカービィみたく水晶を弾として発する力を使えている。さらに、発射する水晶弾には、見たところダーククリスタルの力が宿っている。
 ゼロはこれを見て、闇水晶の力の凄まじさを再確認した後、後ろで待機していたダークマインドに呼びかけた。
「……マインドよ。武器庫にいる妖精たちを、侵略が完了したリップルスターに戻し、ダークマターの手下にさせるんだ。特に桃色の髪をしている妖精には、ダーククリスタルの力を他に与える能力を持っている。これを使って他の星の原住民にもダーククリスタルの力を与えるんだ。ダーククリスタルの力で原住民共に自分の利益だけを考えさせるようにし、そこから“ダークマターに従えば幸せになれるように”洗脳させるのだ。そうすれば反抗勢力が爆発し、反乱が起こることもなくなる」
「では、我にできることとなると……」 
「まず妖精共をファイナルスターから解放させ、桃色の髪の妖精には闇の力を辺りの星の愚民共にばらまくよう説得しろ。七星で一番強く英知なお前なら、容易いはずだ」
 とゼロが言った。しかし、七星で一番強いと評された者は怪訝そうな表情をした。
「……どうした?」
「ゼロ様。その妖精の力を使うならば、まずナイトメアたちが戦っている忌々しい脱獄者共に向けるべきではないでしょうか? そうすれば、ナイトメアたちにとっても我々にとっても無駄な労力が省かれます」
 すると、ゼロは首……というより体全体なる目玉を横に振った後、厳しく言った。
「任務を必死に遂行している者の邪魔はしてはならない。余は、七星の実力は分かっている。あやつらはあんな脱獄者共には負けない。だからお前は安心して与えられたミッションをこなせば良いのだ」
「……それだけですか?」
 ダークマインドが言いにくそうな表情をしながらも口を開いた。その時、ゼロの表情から僅かな動揺が伺えた。
「ゼロ様はこう言いました。我々七星には、ダーククリスタルのための、ある役割が存在すると。お言葉ですが、貴殿の考えより、我の考えの方が侵略を目的とするなら余程効率が良いと思います。それでもゼロ様はその考えを改めようとはしませんよね?」
 あたりに妙に重い空気が流れた。配下である赤い球体の言葉を聞いたゼロの表情は曇っていき、赤い眼光からは、噴き上がるマグマのような激しい怒りさえダークマインドには感じ取ることができた。
「マインド……結局お前は何が言いたいのだ!?」
「ゼロ様が敢えて、脱獄者共の始末を七星ふたりに任せ続けるのは、先ほどおっしゃったこと意外にも何か理由があると思ったのです。もし、良ければその理由を教えてくれませんか?」
 言い終わった後もゼロとダークマインドはお互い目を合わ続け、またも沈黙が指令室内を支配した。
 ――だが、次の瞬間だった。
「!!?」
 ゼロの目が急に輝き出し、それを直視してしまったダークマインドは自分の意識がゆっくりと薄れていくのが分かった。
 これはゼロの一種の催眠魔法であり、動きまわる相手には難しいが、ひとの心を支配できるものであった。
「ぐぐぐ、ゼロ様……何を?」
「大人しく余に従っていればいいものを……配下の分際であまり調子に乗るな……」
 そして、次にゼロはとんでもないことを言い放った。
「お前が聞きたかった理由とやらを教えてやる。お前を含めた七星共は……死ななければならない。ダーククリスタルをもっともっと強くするために、生け贄にならなければならない。新たな闇の力が手に入るならばお前達など要らないということなのだ」
 だからナイトメアとドロシアは負ける可能性があっても戦いを続けさせ、寧ろゼロは負けるのを期待していることが、ダークマインドには分かり、それが衝撃でもあった。
「……嘘だ。ゼロ様は、マルク、ギャラクティックナイト、ダークゼロ、ナイトメア、ドロシア、そして我を含めた6にんと共に侵略をする……と言ってましたよね。それにゼロ様は『共に侵略活動を行い、銀河制覇が現実となった暁には、お前たちにも褒美をやる』……と言いました」
 ダークマインドの声に怒気が混じる。
「……なのに……ゼロ!! 手前は……嘘をついていたのか? 所詮は……我々を、自分のための……道具だと思っていたのか!?」
 迫るダークマインドに対し、ゼロは先ほどと全く変わらない情調で言い返す。
「何をいまさら。お前たちを道具以外に何と見なければならないのだ? 褒美をやる、なんてお前たちのやる気をかき立てるための口実に決まってるではないか。……余に必死に利用されてくれる為のな!」
 言い終えると、ゼロの眼光がいっそう激しくなる。
「許さない……ぜっ……たい……に……」
 一方ダークマインドは途切れ途切れに言葉を紡ぐもだんだんと自我を失っていき――
「……」
 ダークマインドはやがて何も言わないままに目を瞑ってしまい。また無音の空間が広がった。
 しかし、今までとは雰囲気が違っていた。
「もう一度言う、ダークマインド。“まず”武器庫にいる妖精たちをここから解放し、桃髪で頭に赤いリボンをつけている奴には、闇水晶の力を周りの星に広めるように説得しろ。それ以外のことは絶対するな」
 すると、ダークマインドは目をくわっと開けて、
「ワカリマシタ。ワレハキデンニチュウセイヲツクスノミデス」
 とゆっくり且つ棒読みで喋った後、踵を返す……というより体をくるりと回転させ、司令室を出て行った。 

 やがて独りになったゼロはまたナイトメアたちが戦っている様子を観察していた。そして、苦い表情に変わる。
(それより、グーイのやつがあんなに立ち直りが早いとは思っていなかったな……)
 ダーククリスタルの力を受けている時の言動は、例え正気に戻っても全て記憶している。そこから恐怖を生み、仲間との交流を拒絶し、仲間同士の結束を弱めることができるとゼロは考えていた。
 しかし、最初のダーククリスタルの被験者だったグーイは無事に立ち直り、また仲間たちと共に、必死に戦っている。
(……だが、ダーククリスタルの恐ろしさはこんなものではない。余が復活させた奴等の憎悪の心を取り込んだ“真のダーククリスタル”を完成させるんだ。そして……)
 ゼロが体に赤い筋を浮かべる。
(……カービィの善の心を追い出すことに成功できれば、マルクが100いても足りないくらいの戦力が生まれる。憑依もできない純真無垢で完璧な存在だったカービィを闇に落とし入れることが出来る。……実に楽しみだ)
 やがてゼロは笑い声をあげ、その声は指令室内に響き渡った。――

「はぁ……はぁ……やっとついたか」
 クラッコに案内され、ハイパーゾーンがあった場所に無事についたドロッチェたち。かつてカービィとゼロが戦った場所とは思えないほど、今はなだらかな平野となっている。
「どこにいってもダークマターが襲ってくるから面倒くさい……」
 ひとつ目の雲のような生き物クラッコがボソッと呟く。ポップスターもダークマターの侵略が大分進み、辺りは、忌々しい黒い雲が飛び交うような景色になってしまっていた。
 しかもダークマターたちは部隊の長であるミラクルマターを倒した相手だからか、ドロッチェたちを見つけると執拗に襲いかかってきた。その度にダークマターたちと戦う羽目となり、目的地へ着くだけでも、体力も激しく消耗してしまった。
 ――そんな時だった。
 突然何者かの大声が聞こえたと同時に、凄まじい雷が落ちてきた。3にん各々が素早く回避する。
「こんな時に邪魔者か……!」
 クラッコが苦い表情になる。場所を知っている彼の言動を見れば、ラブラブステッキはおそらくこの辺りに隠されているのだろう。
 そして、ドロッチェ、クラッコそしてその上に乗ったワドルディの誰でもない不気味な笑い声が、辺りに響き始めた。
「お前は……ダークゼロ!」
 笑い声の主である、黒い五芒星に淡い桃色の目玉を有す謎の生命体を見つけたドロッチェはひとつ舌打ちをする。クラッコとワドルディも不気味そうにダークゼロを見つめる。
 肌がピリピリするほど重い空気の中、ドロッチェがダークゼロに向かって言いに出た。
「お前は、かつてカービィに倒されたはずだ。なのに何故堂々と復活を遂げたんだ?」
「教えない。理由はただひとつ……」
 と言いながら、ダークゼロは体を変色させ――
「!!!」
 クラッコとワドルディが驚愕する。ダークゼロがあまりもの速さで炎を吹き出し、そしてドロッチェもまた冷却レーザーを炎に当て互いの攻撃が押し合う状況となった。
「不意打ちとは、どこかの道化師みたいだな……!」
 互いの攻撃が相殺された後に、ドロッチェが杖を掲げたまま口を開く。
「フン。俺、マルクとは違う。あいつ、雑魚過ぎ。七星の中で一番弱い!」
 ダークゼロはまた炎を吹き出し、ドロッチェに攻撃を仕掛ける。
 ――が、ドロッチェは瞬間移動でかわし、ダークゼロの後ろに回り込み、トリプルスターを放つ。しかし、
「甘い!!」
 とダークゼロが叫ぶと同時に、今度は体を水色に変色させ、そこから氷を吹き出し、三つ星をことごとくはじき返した。
 そして反撃のごとくダークゼロは今度は体を緑色に変色させ、目から大量の稲妻を出す。一方ドロッチェはマントからステッキを取り出し、稲妻と氷のレーザーが衝突し、またも相殺された。
「クラッコさん。このふたりが戦っている隙をついてダークゼロを攻撃しましょう」
 乗っているワドルディがクラッコに囁き、それを聞いたクラッコはふたりが戦っているところを狙い、ダークゼロの背後に雷を打つ。すると――
「舐めるな!」
 ダークゼロが振り向いて、クラッコに向かって氷を放射し、それはクラッコの雷をいとも簡単にはじき返し――直撃。何とか耐えたクラッコとワドルディだったが、体中は凍傷を負った。
「苦しめ……」
 そしてダークゼロが不気味に呟きながら電気と思われる光線を放出し、その光線は縄状となり、クラッコとワドルディを拘束させ、電撃を与える。
 裏から来たドロッチェにも、まるで動きを読んでいるかのように反応し、体を瞬時に水色に変え、吹雪を起こす。そして――
「くそ! 動けない?」
 いつの間にか手と足がダークゼロの目と繋がっている氷の縄のような物で拘束され、身動きが取れなくなってしまっていた。
「こんな攻撃……見たこと無いぞ! それに、体の変色もこんなには速くなかったはずだ……」
 ダークゼロが体の色を変えることで炎、氷、雷を操って戦うことはドロッチェは知っていた。しかし、昔戦った時と比べて、切り替えの速さは尋常じゃないほど速く、攻撃方法も明らかに多彩になっていた。
「ゼロ、俺を復活させてくれた。そして、俺もパワーアップした。属性の切り替え、速くなった。お前、勝ち目、無い!」
 言い終えた同時に、ダークゼロの目から太い炎が飛び出し、ドロッチェに目がけていく。
「ここまでか……!」
 どうにもできない、と焦りが募るドロッチェに炎は容赦なく襲いかかり――
 ――炎が消え去った後、彼は姿を消した。そして、
「雑魚はお前の方だ」
 の声と同時に、ダークゼロは背後から、三つ星を喰らってしまい、多大なダメージを受けた。
「お前、どうやってあの炎を!?」
 ダークゼロが睨む先には、すこし帽子に焦げた後が残っているドロッチェと彼の手にあるトリプルスターの杖、そしてダークゼロに執拗に突撃する三つ星がある。
「炎で氷がとけた瞬間にワープを使っただけさ、力はあるが、頭は弱いんだな」
 挑発気味に言いながら攻撃を続けるドロッチェにダークゼロは怒りを露わにする。
「くそが!! お前、絶対に許さない!!」
 猛烈な叫び声を上げた後、一気にドロッチェの攻撃をものともせずに襲いかかってきた。
(乗っ取られる!)
 頭で咄嗟に感じた。だが体が動かない。かつてダークゼロと戦ったとき、負けて相手にのっとられてしまい、しまいにはカービィに助けられるという過去を思い出し、その恐怖がドロッチェを動けなくしていた。だがその時、
「そうはさせない!」
 と太くたくましい声が聞こえたと同時に、大きなハンマーを持ったネズミが横からダークゼロに渾身の一撃を与えた。
 思わぬ不意打ちにダークゼロは地に墜ちる。その所を、謎の宇宙船が光線で攻撃をする。
「お前たち……!」
 その光景を見て、ドロッチェは感慨深い表情に変わる。助けてくれたひとたちは――
「オラですよ! 約束通り生きて会いましたよ!」
「ドロッチェ殿に身の危険がありましたら、わし等が全力で助けてやる」
「僕たちにとってドロッチェさんだけがリーダーなんですから」
「全く心配かけるなよ。心臓が持たないぜ……」
 盗賊団のグループであり、最早家族といっても過言でないくらいの強い結束で結ばれた面々であった。
「結構早かったんだな……」
 ドロッチェは地に降りて、仲間たちと顔を見合わせた。クラッコとワドルディも焦げた体でその方へゆっくりと寄る。
「リボンさんに見せられなくて残念でしたが、オラたちの“本気”の力で黒雲達を余裕でやっつけてやりましたよ」
 ストロンが胸を叩いて自慢する。『余裕』と豪語していたが、よく見ると、彼等の体は沢山の傷跡を抱えている。
「おーい……僕たちを忘れるなよー」
 しばらくして彼等の上から片手に黄金の剣を持っている黒色のカービィとヘビーモールがやってくるのが見えてきた。
「ああ、勿論忘れてはいないさ」
 ドロッチェがシャドーカービィとヘビーモールに手を振り、ふたりがいる場所へ寄ろうとした。
 ――だがその時、再会を邪魔するかのように一縷の稲妻が、ドロッチェたちがいるところへ飛んできた。
 原因は勿論ダークゼロと分かっていたドロッチェだったが、姿を見た瞬間、畏怖とも言えるような感覚を覚えた。
 ダークゼロの体から突然黒いオーラがあふれ出し、今までと全く様子が違っていたのだ。
「うっ……あいつは何者?」
 ミラクルマターを追い払ったほどの実力を持つシャドーカービィさえも、ダークゼロの異様な雰囲気にだじろき、ヘビーモールも何も言わずに目を細めたまま見つめる。
 やがて、黒いオーラを出しながら、漆黒の五芒星はゆっくりと口を開いた。
「俺……怒った。もう許さない。今から本気見せる。群れて図に乗るお前等、殺してやる!」
 おどろおどろしい口調で言葉を放つダークゼロ。しかしドロッチェはこれに食いつき、ダークゼロの前に出て、言った。
「……それならば、こっちはその群れることで生まれる強大な力をお前に見せてやる。……覚悟しろ。俺たち全員が相手だ!」
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