オリオンさんの小説

【たたかいの彼方に】 第26話 『約束』


第26話『約束』

「スターロッドを元に戻せ!」
 突如夜空から現れた雲にひとつ目をつけたような生き物クラッコは、ストロンに雷を落とし、スターロッドを元の場所に戻せと怒鳴り散らしてきた。
「……返して欲しいなら理由ぐらい言ったらどうなんです?」
 スターロッドを手に持って、泉からはい上がってきたストロンが、スターロッドを何故元に戻してほしいのかを尋ねる。すると、クラッコは言った。
「俺はスターロッドを守るために夢の泉辺りを見回っていたクラッコ。スターロッドの力が無くなれば、俺達は夢を見れなくなる。ダークマター共が幅を効かせている今のポップスターは、とてつもない不安にあふれている。それに加えて良い夢が見れなくなったら、ここに住むひとたちはさらに不安が大きくなってしまう。だから返して欲しいのだ……」
「何を言ってるんだ?」
 初対面にも関わらず強く言い返したのはドロッチェだった。
「俺達も私利私欲のためにスターロッドを盗むわけじゃない。ダークマターを倒すためにそれが必要なんだ! 夢がどうとかなんて、そんなくだらないこと気にするなよ!」
 話にならない、とドロッチェは馬鹿にするように息を払った。
 しかし、ポップスターの住民は、毎晩夢を見て朝はその夢について語り合うのは最早日常であり、かつてナイトメアが起こした事件も相まって夢は特別視される存在だった。出自が違うドロッチェには、夢にそこまでこだわる考えが分からなかったが。
「待って!」
 ワドルディが言いに出た。
「考えてみるとクラッコの言うとおりッス。スターロッドを抜いてしまうと、おいら達は夢が見れなくなっちゃう。恐怖におののく今のポップスター住民の唯一の楽しみは夢を見ること。つまり、これが無くなってしまったら、ここは大混乱になってしまうッス! ここはそういうのを避けて……」
「スターロッドを元に戻そうってか? ……甘いな。ここで目先の欲に釣られたら、もっと悲惨な結果が待っているんだ。ポップスターの住民としてやっぱり国宝は渡せない、なんて今更言うのは止めてくれよ……」
「でも!!」
 力一杯叫ぶワドルディに、ドロッチェは言葉を止めてしまう。
「おいら、ずっと疑問に思ってた。……何で君たちはクリスタルを持っていないの?」
 予想だにしなかった質問に、ドロッチェは腹奥で唸った。
 ワドルディの言うとおり、ドロッチェ達が探している夢、希望、愛の象徴はクリスタルの力を引き出すためのもの。つまり、3つ集めることができたとしても、クリスタルが無ければ、その努力は水の泡となる。
「クリスタル無しでそれらを集めようなんて、よくよく考えれば君たちのやっていることは無駄ッスよ! ここはやっぱりスターロッドを元に戻すべきッス!」
 ワドルディが言い終えると、クラッコがほうら、と言うような得意げな目をした。しかし、このまま下がるのが嫌だったドロッチェはこれに反論を加えた。
「……でもな、例え無駄だったとしても何か行動を起こすのは大事だろ? お前は今の状況を分かっているのか? この星を何度も救ったカービィはダークマターに捕らわれ、リップルスターとか辺りの星はもう既にダークマターの占領下なんだ。宇宙の平和が脅かされている! 時は一刻も争うんだ!!」
 そう言うドロッチェはいつになく真剣な表情で、ワドルディも言葉を失ってしまう。しかしクラッコは、相変わらず冷たくあしらうような目で見て、いいからさっさとスターロッドをよこせ、と言わんばかりに不機嫌そうな表情すらしている。
「……行くぞ」
 やがて、話しても埒が明かないと思ったのか、ドロッチェは団員とシャドーカービィを連れて逃げだそうとした。
 ――その時だった。
 沢山の目玉型ダークマターが何処からか姿を現した。思わず振り返れば、後ろにも虎視眈々とこちらを見つめるダークマターがいる。おそらく、今は亡きミラクルマターが率いていた第20番部隊の隊員達だろう。
「囲まれたか……」
 舌打ちをして、ドロッチェはトリプルスターを構える。それに続くように他のひとたちも、仲間達と背を合わせ、これから始まるだろう戦闘に備えた。
 するとその時、ひとりのダークマターがこんなことを言い出した。
「この夢の泉に強力な力を持っている小さな杖があると聞いたが、それを我らによこせ。そうすれば、痛い目はみなくて済むぞ」
 そんな甘い言葉を物ともせず、その小さな杖を持っていたストロンは、見られないように胸に巻いていた赤い衣類に隠した。ダークマターにスターロッドを取られたら、もう夢の泉には永遠に戻ってこないだろうから。
「何も言わないなら……力尽くで奪ってくれる!」 
 あるダークマターが言い終えた後、一斉に襲いかかってきた。ドロッチェ達もこれに負けじと反撃をし、クラッコも上空から雷でダークマター達を攻撃する。しかし――
「駄目だ! 数が多すぎる!」
 手裏剣を必死に投げるスピンが思わず言葉にした。倒しても倒しても湧き出るダークマター達と対峙していると、スターロッドも結局は奪われるのでは、という悲しい未来が見え始める。
 そんな時だった。
 地面が揺れ始めた、と思ったら、急に何者かが地中から姿を現し、ドロッチェ達を宙にあげた。そしてクラッコが見逃さずに、宙を舞った彼等を体の上に乗せる。
「……どうなっている?」
 真っ暗の夜空の中、ひとまず周囲の状況を整理できた後、シャドーカービィの問いかけにクラッコが答えた。
「さっきお前達を宙にあげたのはヘビーモール。他にもペイントローラーやアイスドラゴンやアクロとかが、ポップスター各地の重要拠点をそれぞれ守っている。俺はあいつとペアで夢の泉を守っていたんだよ」
 下を見れば、ヘビーモールが地面を掘るのに適した腕で地上と地中を行き来し、ダークマター達を惑わせながら戦っている。その様子を見ながらクラッコは深刻そうに言った。
「しかし、あんな大軍を連れてくるとはな……。ダークマターの侵略活動がここまで激しいとは思っていなかった。このままでは俺達だけではこの場所を、スターロッドを守れないと見たし、夢どころでは無くなっていたことに気づかされた。先ほどは無礼なことを言ったな」
 一息吐いた後、クラッコは尋ねた。
「……さっきお前達はダークマターを倒すためにスターロッドが必要と聞いたが、一体どういう事に使うんだ?」
 その質問にワドルディが答えた。
「スターロッドとラブラブステッキと虹の剣を集めて、ダークマター達にとって脅威になるクリスタルの力を最大に引き出し、倒すのに使うのが目的ッス」
 聞いたクラッコが突然険しい表情に変わる。
「……どうしたッスか?」
「虹の剣……あれは確かカービィが持ち出してこの星には無いんだ……」
 今度はドロッチェ達が表情を変えた。
「何故そんなことを知っているんだ!?」
「俺は確かに見た。まだ、ダークマターが表沙汰になっていない頃、虹の島々を暇つぶしに巡っていたとき、カービィが何故か真剣な表情で今は廃墟となったダークキャッスルの中へ向かっていくところを。気になった俺はそこをずっと観察していた。すると、カービィがあの城に隠されていた虹の剣を持って屋上に上がったんだ。そしたら……」
 大分長い間を取ってからクラッコは重く喋った。
「……カービィが突然気を失って、そのまま宙を浮き、何処かへと連れ去られていき、しばらくして虹の剣も姿を消したんだ」
 クラッコが語ったカービィの行方の真相。散歩している途中、カービィはダークマターが侵略活動を始めていることに気がついた。そして、対抗する武器を持っていこうと思ったのか、ダークキャッスルへ行き、そこに隠されていた虹の剣を手に入れた。
 しかし、無念にもカービィは、その時ポップスターの大気圏に居たゼロの催眠術と念力によって捕らわれてしまった。そして城に残された虹の剣は、ダークマターを倒すというカービィと同じ意思を持ったひとたちが集まった戦艦ハルバードへ瞬間移動をして、カービィに変わる持ち主を待っていたのだ。
 リック達がダーク・リムルと戦った時、ハルバード内の武器庫で何故か虹の剣を見つけたのはそういった理由が存在したからだった。不自然かもしれないが、不思議な力を持つ虹の剣ならあり得ないことではない。
「そんな、それじゃあ僕達がやって来た事って……」
 やがてチューリンが不安そうに呟く。虹の剣の行方は、ここにいる誰もが、クラッコすら知らなかったから集めても無駄という考えは生まれて当然である。しかし、これをかき消すようにドロッチェが言い張った。
「そんなことはない! それならもうひとつのラブラブステッキを集めて、虹の剣も必死に探せば良い! 俺達は怪盗だ。狙う物を簡単に諦めるような奴はドロッチェ団失格だ!」
「肝心のクリスタルだって……今は何処にあるか分からないんだよ!?」
「……ならばこのまま何もしないでいるのか?」
 目を鋭くして、チューリンに言いつけた。
「ここでポップスターを守るとしても、ダークマターの侵略は止まらないだろ? カービィはダークマターに捕らわれている。妖精達も捕まって今はどうなっているか分からない。このまま俺たちまで奴等にやられて、この世界、宇宙がダークマターのものになってしまう可能性だってあるんだ! ……そんな危険な状況で、無駄になってしまうかもしれない、なんて心配してたら何もできないぞ!!」  
 彼の口からでる言葉からは、気合いが十分伝わり、なんとしても集めようという意思が、仲間の心に生まれ始めた。止まればその辺りしか見えないが、進めば何か見えるかもしれない、と。
「ここは、ドロッチェ殿の言う通りにしよう」
 ドクが、論破されて半べそになっていたチューリンの頭に手を優しく置くと、チューリンも、ひとつ頷き、彼の意思に従うことに決めた。
 それから、クラッコが喋り始める。
「さて、お前達が探しているラブラブステッキはかつてハイパーゾーンがあった場所に保管されている。俺がそこへ連れて行く……と言いたいところだが、これだけ大勢だとダークマターに目を付けられる可能性が生まれる。この中の何人かは、ヘビーモールが戦っている所へ手助けに行ってくれないか? 宝集めは見つからない程度に、ひとりかふたりくらいにした方が良い」
 その言葉を聞いてドロッチェ団全員が口を噛みしめた。大勢で行くのは危険。だが、クラッコの言うとおりにすれば、一時的にドロッチェ団は必然的にバラバラになってしまう。
「……ここは、団長とはしばらくお別れですかな」
 少し間を持ってストロンが言いに出た。彼の言い方は、ドロッチェだけで宝の捜索を行う、というものであり団長も口にこそしなかったが分かれるのが嫌そうな表情を醸し出していた。
 しかし、これを見たストロンは、眼帯を付けていても分かるように笑みを浮かべ、言った。
「大丈夫。オラ達は絶対に死なない。寧ろ宝集めは、ドロッチェさんがやるべきだと思うんだ。分かれるのは辛いけど、宇宙を救いたい気持ちが一番強いドロッチェさんなら、絶対に成功するから!」
 笑顔でも口調は真剣だったストロン。そんな彼の周りには、ドク、スピン、チューリン達が、同じ考えだよ、と言うように頷いていた。そして、それを見たドロッチェは頼もしいなと感じていた。
「……分かった。だからお前達も絶対に負けるなよ。再び生きて会うことを約束しろ!」
 そう言って、ドロッチェはストロンからスターロッドを受け取り、最後にお互いに拳を合わせた。

 ダークマターによって脅威にさらされたポップスターには、既に夜明けが訪れていた。
 最終的に、ドロッチェとワドルディとクラッコで残り2つの宝を探すことに決めた。ワドルディは色々なことを知っているので、共に行動をすることにした。一方シャドーカービィはドロッチェ団員についていくと言って、夢の泉でダークマターと戦いを繰り広げている。
 ストロンが巨大ハンマーで、チューリン達が爆弾で、ドクが何時作ったのか小型の宇宙船を使い、スピンが手裏剣で巧みに攻撃をしかけ、シャドーカービィもマスターを懸命に振っている。
 混沌の渦に巻き込まれたポップスターは、これまでにない危機に冒されている、というのをこの戦いが表していた。
「……時は一刻も争う! クラッコ。急いでくれよ!!」
 目で了解の返事をし、ドロッチェとワドルディを乗せたクラッコは、かつてダークマターがポップスターを侵略したときに作られた空間"ハイパーゾーン"があった場所へと飛んでいった――

「ゼロ様。無事牢屋の4"匹"を連れて参りました」
 そう言ってダークマインドが、未だに気を失っていたナゴ、チュチュ、ピッチ、リボンを連れて司令室に入室し、その後にダークゼロが入る。
「……ふたりともご苦労」
 ゼロは礼を言った後、念力で4にんを目の前に持ってきた。そして、ダーククリスタルを、これもまた念力で持ち出し、4にんの前に置く。
「さて、カービィへの見せしめに元々は殺すつもりでいたのだが、もっと良い方法を思いついた。……ダーククリスタルよ! こいつらを闇に浸せ!!」
 ゼロが叫べば、ダーククリスタルは急にどす黒い闇のオーラを放ち、やがてそこから黒い光線が飛び出し、4にんそれぞれの丁度胸の辺りを突いた。
 すると、4にんは急に意識を取り戻した。しかし、口は一切開かず、目は輝きを失い深い闇の色をし、姿を見る者は恐怖を覚えるような禍々しい雰囲気さえ持っていた。
「ゼロ。こいつらをどうするんだ?」
 ピンク目の黒い五芒星が尋ねると、ゼロは不気味な笑みを浮かべながら言った。
「ダーククリスタルには生き物の負の感情を露わにする力がある。カービィの仲間共も、信頼しているとはいえ、心の何処かに僅かな恨みを持っているはずだ。ミスティックマターの時は、虹の剣という邪魔者のおかげで力を弱められてしまったが、本来は恐ろしく強力なパワーを秘めているのだよ」
 そして、赤い目玉を4にんの方へ見やる。
「さあ、お前達は余のしもべである。今からカービィが閉じこめられている牢屋へ連れて行く。そこで……」
 目を大きく見開き、恐ろしいオーラを醸し出しながら4にんに――告げた。

「……あいつにこれまでの恨みを全部ぶつけてこい」
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