オリオンさんの小説

【たたかいの彼方に】 第24話 『出発』


第24話『出発』

 突然輝きだした虹の剣はかつてない輝きを放ち、あたりを七色の光に包んでいく。
 赤い剣のダークマターは動きを止め、凄まじい光に思わず目を覆った。
 傍にいたリックも周りが見えなくなる程の眩しさに目を瞑る。その時、あることに気が付いた。
(体中が痛くなくなっている?)
 ミスティックマターに猛毒を浴びせられ、肩に剣を斬り込まれ、体中が痛かったはずが、いつの間にかその痛みが無くなっていることにリックは気が付いた。
 これはリックに限ったことではなく、クー、カインも体中の痛みが消えていることが分かり、麻痺で動けなかったアドレーヌも、凍傷をしていた妖精達も体が治っていることに気づき、傷だらけで気を失っていたデデデ大王も、意識を取り戻し始めた。
 しかし原因は誰も分からなかった。"ミスティックマターの力"が失われていったのか、虹の剣の力なのか。
 やがて、希望の象徴は輝きを止め、また薄暗い武器庫へと戻った。そして、リックは目にした――
「グーイ!!」
 リックの目の前に、2つ目の黒いおにぎりのような形をしたグーイがそこにいた。そして、すぐさまグーイに言いかける。
「グーイ。大丈夫か?」
 クーとカインもそれに気が付き、グーイの所へ駆け寄った。しかしグーイは、
「近づかないで!」
 と怒気を放ちながら3にんを退け、背を向ける。
「何でそんなこと言うんだよ?」
 リックの問いかけに、グーイは重々しく言った。
「今もはっきり覚えている。……僕は、君たちを屑って呼んだ。助けようとしたリックも殺そうとした。たくさんのひとを傷つけた。みんな、そんな僕を軽蔑したでしょ? 所詮は仲間を裏切り、悪事を働く同族の味方をする奴だ、って……」
「そんなこと思ってねぇよ!!」
「そうだとしても……もうみんなと関われないよ。やっぱり僕はダークマターなんだ。またミスティックマターになってみんなを襲うかもしれない。僕の心の弱さが、みんなを傷つけるんだ……」 
 そう言って、グーイは涙をこぼし始め、それからリック達と口をきかなくなってしまった。

 しかし、グーイがミスティックマターとなってしまったのは、彼自身の心の弱さが直接の原因ではない。
 ダークマターが作りあげた、クリスタルの反対の力を持つダーククリスタルの力の実験として使われた故に、ミスティックマターとなってしまっていたのだ。

 司令室の中、武器庫内の様子をモニターで見ていたダークマターの親玉ゼロが、笑みを浮かべながら呟いた。七星たちはまた別の任務でここにはいなかった。
「くくく。"ダーククリスタル"の一番怖ろしい所は、正気を取り戻した後にある。それは自己に降りかかる絶大な恐怖。また仲間を襲うかも知れないという大きな恐怖に蝕まれ、殺戮を行うのはまるで自分の本性であるかのような錯覚を起こす。そしてその恐怖は永遠に続く。これであの"裏切り者"は一生仲間達と関われないだろう」
 言い終えた後、ゼロは横にあった宙に浮いている2つの闇のような黒色をした球状の物体を見て言った。
「しかしだ。ダーククリスタルはまだ成長段階。残り"4つ"の駒が死んでこの物体が6つそろった時、ダーククリスタルは真の力を発揮する! くくく……この"闇水晶"と"6つの幹部共の悪の心"を総称して"七星"と名付けた、というのが真の理由とは誰も気づいてはおるまい。七星の中心となる"本当の"七番目は、ダーククリスタルの真の力を取り入れた者がなる。余が復活させた6にんの幹部共すら、結局は余の手の上で踊らされているに過ぎないのだ!」
 言い終えた後、ゼロは大声で笑い、指令室内はその声で響き渡った。

「グーイ! どうしたんだよ? 返事しろよ! お前はグーイだろ!!」
 リックの叫ぶ声も聞こえず、グーイはただ黙りこくっている。 
「どうしようリック。グーイがこのままだと、僕たちもコピー技が使えない。ゼロと戦うなら、コピー技ができないと苦しいよ」
 そう言われて、リックは歯を食いしばる。心配そうに尋ねるカインの言うとおり、リック達はカービィやグーイと合体をしないとコピー技が使えない。
 しかし、それは杞憂だったようだ。
「あれ? こんな所にフィギュアみたいなのがあるよ」
 アドレーヌの声にグーイ以外のみんなは振り向き、その方へ駆け寄る。すると、
「これは……"コピーのもとデラックス"じゃないか!」
 デデデ大王が、床に落ちて転がっていた沢山のフィギュアを見て、声を上げた。
「"コピーのもとデラックス"ってのは一体何だ?」
 クーの質問にメタナイトが答える。
「これは、敵を吸い込まずして、好きな時に、そのコピー能力が何度も使える代物だ」
「成る程。でも、これが何故そんなところに……」
 そう言われて、分からないと言わんばかりにメタナイトは黙り込む。他のひとたちも勿論原因など分からない。
 コピーのもとデラックスと呼ばれる沢山のフィギュアは、もともとカービィが所持していた。しかし、ゼロによって捕らわれた時、それを全部没収させられてしまい、カービィは何もできなくなってしまった。その没収させられた物が、この武器庫に保管されていたのである。
「でも……これを使えばおいら達もコピー技が使えるって事じゃないのか?」
「無理じゃないのか? 俺達は合体しないと能力が発揮できないんだぞ?」
「……でも、合体すれば能力が使えるでしょ?」
 カインが言いに出た。
「僕達は合体さえすれば、炎も吐けるし、羽も飛ばせる。体中から電気を発することもできる。少なくとも、コピー能力の才能はあると思うよ」
「カインの言うとおりだな。わしはカービィと合体しても火を吹いたりはできない。取りあえず試してみてはどうだ?」
 すると、おいらがやってみる、とリックがあるフィギュアに手を出した。すると、コピーのもとは急に輝きはじめ、リックの口の中に入っていった。
「どうだ?」
 クーがリックの前に行き、様子を尋ねた。するとクーの視界は、一気に炎色に染まり――
「あちゃちゃちゃ! リック! いきなり火吹くなよぉ!!」
 そんなことを言いながら、やがてクーの体は丸焦げとなってしまった。
「すごい。本当にコピー技が使えた……」
 一方リックは合体無しでコピー技が使えたことに驚いている。リックが使ったコピーのもとは、バーニンレオが象られた"ファイア"の力が込められていた。 
「ようし。じゃあ僕はこれにしよう」
 今度はカインが、プラズマウィスプが象られたフィギュアを取った。すると、
「すごい。"スパーク"が使える!」
 薄暗い武器庫を照らしながら、カインは口から豆電球を出した。カービィなら"プラズマ"として能力を使えるはずだが、カインは"スパーク"として能力を発揮した。これはおそらく経験の問題であり、リック達はバーニング、ストーン、カッター、ニードル、スパーク、パラソル、アイス、クリ−ンの8つしか使ったことがないからだろう。
「待て。俺にも選ばせろ……!」
 リックの炎でやられ、みっともない姿になりながらクーは、サーキブルが象られたそれを取る。そして、
「ああ! おいらの背中の毛が!?」
 メタナイトの戦艦の艦首を馬鹿にした時に切られてしまい、やっと生えてきた毛をまた切られてしまったリック。原因は――
「リック。俺の"カッター"で先程のお返しとさせてもらうよ」
「くそ……よくもおいらの毛を! お前なんか"ファイア"で焼き鳥にしてやる!」
 そんなリックとクーを、まあまあ、とカインがなだめた。カービィの仲間達の中でも特に落ち着きがある彼である。いつもボーとしているとも言われるが。
「あーあ。それより、腹が減ったな……」
 デデデ大王が言い出す。すると、リックがニヤニヤしながらクーを見つめ、見つめられた方はくだらないことを考えるな、と羽を振っている。
「それならあたしに任せて」
 その会話を聞いたアドレーヌはキャンバスに食べ物の絵を描き始め、実体化させていく。
「うわ、キャンバスから食べ物が……お前は魔女か?」
 メタナイトがそんな光景を気味悪そうに見る。彼はアドレーヌとは殆ど面識が無く、逆に彼女もメタナイトのことを余り知らなかった。
「失礼ね。アドレーヌって名前がちゃんとあるよ」
「そうか。私はメタナイトと言う。……それより、その食べ物は絵の具の味はしないのか?」
 そんなメタナイトの質問を彼女はあっさり受け流すように、実体化させたサンドイッチを食べながら、おいしいよ、と笑顔で答える。そう言われて試しに実体化させた食べ物を食べてみたメタナイトは驚愕した。
「う……美味いぞ! 何故そんなことができるんだ? きっと並外れで血の滲むような修行を積んだのだろうなあ……」
「アドは元々そういう力を持っているんだよ……」
 勝手に感心するメタナイトにデデデ大王が突っ込んだ。
 
 武器庫に居たリック、クー、カイン、メタナイト、デデデ、アドレーヌ、そしてリップルスターの妖精達は食事も済ませ、これからについて話をしていた。だが、グーイだけは相変わらず何もせず、誰とも口をきこうとしなかった。
「グーイ……本当にどうしたんだろう? 全然僕達に話してくれないよ……」
 カインがため息をつく。グーイが正気に戻れば、共に行動していたナゴ、チュチュ、ピッチの行方も教えてもらうつもりだっただけに、この事態は大きなショックであった。
「グーイにはもう少し時間をあげたほうが良いだろう」
 メタナイトがささやくように言った。そしてひとつ息を払い、話を続ける。 
「……それより、脱獄した私達を潰すために、ダークマター達は本格的に活動を始めるはずだ。私達も一刻も早く活動を始めて、ゼロを討たなければならない。そうすれば全てが分かるはずだ」
「気持ちは分かるが、この広大な星の中をどうやって……」
 心配するデデデ大王に、メタナイトは今は亡きギャラクティックナイトが持っていた地図を見せつけた。
「ここの中心部と思われる司令室に向かう。そこにいるはずのゼロを倒せば、カービィの行方も分かるはずだ」
 とうとうゼロと戦うときが来た。そのことに、リック、クー、カイン、は息を飲んだ。
「この虹の剣はどうするんだ?」
 クーが虹の剣を指しながら皆に言いかけると、メタナイトがそれを拾い上げて言った。
「その剣は私が持っていよう。ゼロと戦うときに必要になるかも知れないからな。……さあ、行くぞ!」
「待って!」
 アドレーヌが言いに出た。
「あたしはここに残っていいかな? 妖精さんを守るのも必要なことだから、武器庫にはあたしとグーイと妖精さんを残して、みんなは頑張ってゼロを倒しに行って」
「待て、アド……わしはここに残るぞ。馬鹿にしているわけではないが、流石にお前ひとりでは心配だ! お前は本当にそれでいいのか?」
「いいの、だから信用して。大丈夫。絶対に死なないから!」
 そう言う彼女の目には自信で満ちあふれている。それを見たデデデ大王も、安心したのか、
「……では、アドの言うとおりにしよう。くれぐれも無茶はするなよ」
 と言って、彼女の意に沿うことにした。
「うん。みんなも気をつけてね」
 そして、この会話を最後にリック、クー、カイン、メタナイト、デデデ大王の5にんは、武器庫を発っていった。
page view: 1520
この小説を評価する:                   (0)