オリオンさんの小説

【たたかいの彼方に】 第23話 『裏切り者』


第23話『裏切り者』
 
 ファイナルスターのとある牢屋の中。閉じこめられていたリック、クー、カイン、メタナイトの4にんは生きる覇気も無くし、時が経つにつれ深くなっていく絶望に浸っていた。
 そんな時、4にんの中のひとりである、牢屋の鉄格子の前で壁にもたれかかったメタナイトの視界にある者が入った。
(ギャラクティックナイト……)
 翼から仮面までボロボロとなって動かないギャラクティックナイトの姿。そして、裏ではボロボロになった原因と思われる3にんの人型ダークマター達が居る。
「くく。とうとうこの"反逆者"、力尽きやがったぜ」
「我が幹部とはいえ、逆らう者はこういう目に遭うのさ。がっはっは!」
 反逆者。この言葉を聞いて、メタナイトはこう思った。ギャラクティックナイトは、やはり自分と戦いたがっていた。ゼロに圧されていたのか、それを素直に打ち明けることができずにいた。が、それでも戦いたい、と牢屋を開けようとした。それ故に"反逆者"と蔑まれてしまい殺されたのだ、と。
(ダークマターどもめ……)
 かつて戦った騎士の死に対する悔やみが何故かこみ上げてきた。これには単純な騎士の死に対してではなく、ダークマターへの怒りも込まれている。一体何のために、生き物の意思も望みも否定し、軽蔑し、侵略を続けるのだろう。
 そんなことを考えながらメタナイトは、ダークマターの会話を聞く。一方ダークマター達はそんなメタナイトを目にも入れず、会話を続けている。
「それより、この反逆者をどうするんだい? もう死んじゃってるし。このままでも良いだろう」
「まて。取りあえず、死体は回収しよう。あと、こいつの"武器"も倉庫に入れておけ」
(武器!?)
 その会話を聞いたとき、メタナイトは急いで辺りを見回す。すると、ギャラクティックナイトの傍――メタナイトが鉄格子の隙間からでも届く程の距離に、彼が愛用していた剣が転がっている。
 取れる。そう思った瞬間、メタナイトの短い手は、鉄格子の隙間をくぐり、ギャラクティックナイトの武器に向かっていく。体がちぎれそうになるまで、メタナイトは手を必死に伸ばす。
(……届く!)
 なんとかギャラクティックナイトの武器を握りしめることができる距離にまで近づいた。その時だった。
「おい! 急いであの武器を回収しろ! 牢屋に居る奴が奪おうとしてる!」
 ひとりのダークマターが振り向き、それに気づいた。そして、ダークマターがすぐさまその剣に向かう。この時、メタナイトはどれほど恐怖したのだろう。掴めそうな希望を、また己の弱さ故に逃してしまうかもしれない。そんな不安に駆られたのだから。
 それでも、メタナイトはがむしゃらに掴んだ武器を握りしめた。すると――
(あぐ……ぐ!)
 メタナイトは急に手に凄まじい激痛を覚えた。どうやらダークマターが持っていた剣でメタナイトの掴んでいる手を斬ったようだ。だが、メタナイトはそれでも剣は放さない。見えた希望を掴むため、取り逃がさないため。
「……足掻くのも大概にしないかぁ!!」
 今度はダークマターの罵声と共に、再び斬撃を喰らう。そして、あまりの痛さにメタナイトは思わず剣を手放してしまった。もう少し早く剣があることに気が付けば、と後悔の念までも沸いてくる。その時――
「おいらに任せろ!」
 突然聞こえた声と共に、手放したはずの剣が牢屋側へと近づいてくる。ダークマター側も予想外の事に思わず動揺してしまい、反応が遅れてしまう。
 メタナイトは体勢を戻し、傷ついた手をもう一方の手で押さえながら裏を見ると、リックがカービィのように"吸い込み"をしている。やがて、その剣は鉄格子に擦れる音と共に、リックの手に渡った。ダークマター達が、剣で鉄格子の隙間を狙って攻撃を仕掛けるが、リックは咄嗟に後ろへ回避する。
「リック……おまえ……」
「おいらもカービィ程じゃないけど吸い込みができる。さあ、その剣でこの牢屋から出よう!」
「……そうだな。私達はこの戦いに勝つ! いや、勝たなければならない!」 
 そう言ってメタナイトは怪我をしていない手でリックから剣を受け取り鉄格子を斬り落とし、牢屋から出られるようにした。
「逃げられる前に殺してしまえ!!」
 ダークマター達が殺気だって襲いかかる。しかし、メタナイトは利き手でないにも関わらず、巧みな剣さばきで、次々にダークマターを倒していった。
「さすが、メタナイトだ!」
「ふっ。口ほどにもないな」
 剣を納め一息をついたとき、閉じこめられていた者達の中の誰でもないメタナイトを呼ぶ声がした。
「ギャラクティックナイト。まだ生きていたか!」
 ボロボロになった"反逆者"が消えてしまいそうな声で言う。
「よかった……無事……脱出……できたんだな……」
「お前のおかげだ。それよりもその傷、大丈夫なのか?」
「心配する……な。俺はもう……助からない。それより……デデデ達が……」
 聞き慣れた名前を聞き、メタナイト等が顔を見合わせる。
「デデデ大王もここにいるのか?」
「ああ……ぶき……こ……に……」
 その時、次の言葉を言おうとしたギャラクティックナイトの体の色は激変し、やがて闇を彷彿とさせる黒色となって――
「消えた?」
 気が付くと、メタナイトが手に持っていた騎士の剣も闇となって消えている。
 怪異とも言える現象に、残された4にんは言葉を失いしばらく立ちすくむ。
(ギャラクティックナイト……)
 二度得た命をダークマターに弄ばれて死んでいった彼をメタナイトは追悼した。他の3にんも険しい表情をしている。
「……おい見ろ。何か紙のような者が落ちてるぞ」
 それからしばらくして、クーが落ちている紙切れに気が付いた。そしてそれを拾いあげ、広げる。
「これは……この要塞の地図!」
 リックとカインが横から覗き見る。紙には、様々な部屋とそこに繋がる通路が明確に記されていた。
 ギャラクティックナイトは元々見回りを担当されていたから、広大なファイナルスター内を効率よく見回るため、地図を持っていたのだろう。

「これは……虹の剣!」
 薄暗い武器庫の中、七色に光り輝く虹の剣の存在に気が付いたミスティックマターは、途端に感情をあらわにし、虹の剣を壊そうとし始める。
「はぁ……はぁ……この剣を見ていると、何故か怒りが沸き上がる!!」
 狂ったかのように、ミスティックマターは赤い剣に炎の属性を宿し、虹の剣を思いっきり斬りつける。普通の剣は熱も相まって粉々になるはずなのだが――
「くそ! なかなか壊れないな……」
 何度も何度も斬りつけても、虹の剣は壊れそうな素振りを見せない。しかし、輝きはだんだんと失い始めている。
「粉々になってしまえ!!!」
 やがて怒りが頂点に昇ったミスティックマターは全力で虹の剣を斬りつけ、壊れこそしなかった剣はついに輝きを失ってしまった。そんな時――
(む? まだ脱獄者がいたのか?)
 ミスティックマターは突然武器庫に入った何者かに気が付く。そして、まず最初にやって来たメタナイトを斬ろうとした。だがメタナイトはこれをかわし、落ちていた虹の剣を拾い、再び来た相手の攻撃をその剣で防御する。
「今だ!」
 その時できた僅かな隙を見逃さず、メタナイトに続いてやって来たリック、クー、カインの3にんがとび上がり、ミスティックマターの体を足で、爪で、ヒレで攻撃しようとした。
 しかし、七星はこの避けようのない攻撃をも――
「動きは見えている!」
 と言いながら、メタナイトの剣を払い、その動きをリック達への攻撃につなげ、3にんまとめて剣で斬り払った。
(体が……体が痛い!!)
 斬りつけられ地に落ちたリック達が体中の激痛に苦しむ。ミスティックマターの剣は様々な属性を宿し、持ち主の意思で変えることができる。どうやら相手は剣に猛毒を帯びさせていたようだ。
 裏から来るメタナイトも、余裕と言わんばかりにミスティックマターに返り討ちにされる。ダークマターが強すぎるのか、メタナイトが利き手では無いから実力が出せないのか。せっかくやって来た4にんは、結局無惨にやられてしまった。
「さあ……トドメを刺してあげよう」
 ミスティックマターの目が赤く染まり始める。何か凄まじい攻撃が来るということを4にんは察した。
(ひとりずつ殺してくれる! まずは……"リック"に決めた!!)
 やがて、ミスティックマターは標的をリックに定め、殺そうとした。が――ミスティックマターは急に攻撃を止めてしまった。4にんはこの光景を不思議に見る。
(リック……何故、我はあの糞ネズミの名前を……)
 やがてミスティックマターは頭が痛くなるのを覚えた。他の倒れているひとを見ると、その頭痛がさらにひどくなる感じがする。
(あの鳥は……クー? あの青いのは……カイン?)
 何で知っているのだろう。そして彼等の姿を見れば見るほど何とも言えない苦しみに襲われた。
「なぜだ? 我は何故敵の名前を知っている? 我は七星の一角を担うミスティックマターなのに! こんな屑共とつるんだ覚えはないのに!」
 やがて、その原因が分からずミスティックマターは唸りはじめ、一方これを見ていた3にんの中のカインは、あることを考えていた。
(僕達を知っている……それとあの赤い剣……)
 もしかしたら、とカインは猛毒による体中の激痛に耐えながら、赤い剣のダークマターに向かってゆっくりと口を開いた。
「君はミスティックマターなんかじゃない。……"グーイ"でしょ?」
 何を言っている、とメタナイトが表情を作る。しかし、クー、リックもカインと同じ事を言い出した。
「やっぱり……グーイなのか? なら目を覚ましてくれ!」
「お前はダークマターの侵略に加担しちゃいけない。正気になってくれ!」
 言われるとミスティックマターは、グーイなど知らない、と狂ったかのように叫び声を上げながら無茶苦茶に剣を振り回す。
 そんな光景を見て、今度はリックが、ひとつ息を吐いて猛毒による痛みに耐えながらゆっくりと立ち上がった。そして、ミスティックマターの所へ向かっていく。
「待て! 殺されるぞ!」
 メタナイトの声も届かず、リックは一歩一歩前へ進んでいく。
「糞ネズミがぁ! 我に近寄るな!! 穢らわしい!!!」
 怒りのこもった口調で言いながらミスティックマターが、近づいてきたリックに向かって剣を振り――
 ……ザシュッ。
「!!!」
 ――肉を切り裂く音がした。結果、メタナイト、クー、カインは直視し難い光景を目にすることとなってしまった。
「ああ……剣が! 剣がリックの……!」
「もういい! 今は自分の命を優先してくれ!」
「……フハハ。痛いだろう! 苦しめ! もっと苦しめ!! そして死んでしまえばいいのだ!!」
 無惨な光景を笑いながらミスティックマターはもう一度剣を上げる。
「逃げろぉ!!」
 メタナイトの叫ぶ声がした時、おぞましい殺意を秘めたミスティックマターの剣は、今度はリックの頭にめがけて動き始めた。
 このまま行けば確実に死ぬ。しかし――そんな状況をものともせず、リックは激痛に耐え、ミスティックマターの体を掴み、"希望"を失わなずにこう言った。
「グーイはおいらを殺したりはしない。目を覚ますまで絶対に放さない、ずっと待ってやる!」
 言い終えた瞬間――"虹の剣"がこれまでに無い輝きを発し始め、あたりは七色の光りにつつまれていった。
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