オリオンさんの小説

【たたかいの彼方に】 第22話 『決意』


第22話『決意』

 ミスティックマターに猛毒を浴びせられたギャラクティックナイトは、突然武器庫を飛び出し、激痛を耐えながら体にある翼で飛び続けていた。
 彼は消えた未来に恐怖し自棄になって武器庫を逃げ出したわけではなかった。毒を浴びせられた時、定められてしまった避けられない運命の中でもできることを彼は考えた。
(死ぬ前に……メタナイト達を!)
 ファイナルスターで捕まっているリック、クー、カイン、メタナイトの4にんが入っている牢屋を壊し、ゼロの侵略を少しでも止めたい。その思いが行動に至ったのだ。
 しかし、現実は甘くなかった。
 暗く先の見通しづらいファイナルスター内の通路を駆け抜けていると、やがて3にんの人型ダークマターが待ちかまえているのが見えた。ギャラクティックナイトは反逆者という情報が既にダークマター達に行き渡っていた。
「ダークマターに逆らう者を捕らえよ!」
 こちらに気が付いた瞬間、ひとりの剣士のダークマターの声と共にダークマター達はギャラクティックナイトに襲いかかり始める。動くだけで体が痛む状態で、戦わなければならない状況となってしまい、彼は流石に身震いをした。
(だが……ここで死ぬわけにはいかない!)
 しかしギャラクティックナイトはそう決意し、削られていく体力の限りを信じて、ダークマター達に向かって剣を振った――

 一方武器庫の中では、ミスティックマターを倒すべく、デデデ大王とアドレーヌが戦うことを決意したところであった。
 しかし彼等は、ミスティックマターの脅威とも言える力を予想していなかった――
「我はミスティックマター。七星の一角を担いし者だ!」
 言った瞬間、様々な属性を宿す赤い剣を掲げるダークマターの赤い目は、さらに赤くなっていき、やがて黒……もとい赤目の部分と白目部分の見分けすらつかない程、真っ赤に染まり輝きすら見せる。そして――
「はい。ひとり撃破」
 ミスティックマターの声と共に倒れたのはデデデ大王。しかも彼の体は火傷を負っていた。しかし、ミスティックマターは同じ場所で剣を構えたままだ。
(どうなってるの?)
 わけが分からなく呆然としてしまうアドレーヌ。そんな彼女をミスティックマターは見逃さない。
「隙有り」
 声と共に、今度はアドレーヌが膝をついた。体中が麻痺し、言うことを聞かない。そしてそのまま、彼女も床に倒れてしまい、彼女が実体化させたクラッコも同時に消し去られてしまった。
(どうしよう……みんな倒されちゃった……)
 妖精達が信じられない事態に動揺する。一方的に且つ一瞬でふたりを倒してしまうミスティックマターの恐ろしさを見れば、しないほうが難しいが。
「言っておこう。これが七星の"本当の"力だ。行き当たりばったりの道化師や銀河最強とほざく剣士のような雑魚ではない」
 ミスティックマターが冷淡な口調で言い放つ。よく見ると真っ赤だった目は元に戻っている。
「さて、次は貴公等の番だ」
 赤い剣を再び構え、今度はリップルスターの妖精達に向かって言う。そして、ミスティックマターの目はまた赤く染まり始めた。
 またあの意味不明な攻撃が来る、と妖精達は叫び声を上げながらそれぞれバラバラに逃げ回り出す。しかし、相手は微動だにせず、
「……無駄だ」
 と呟いた。それと共に、今度は妖精全員が虚しくも蚊取り線香を喰らった蚊のように落ちていく。妖精達は酷い凍傷に負われ、気を失う者まで出た。ミスティックマターは剣に氷の属性を宿していたようだ。
(なんて強さ……もう勝ち目は無いの?)
 七星の本当の力がこれほどとは。この場にいたミスティックマター以外の誰もがそう思った。最早これは戦いでもなく、相手の一方的な制裁でしかない。
 その相手も相変わらずその場を立っているだけだったが、真っ赤だった目は、また元に戻っていた。
(これは……?)
 火傷を負っていながらもデデデ大王はこれを見逃さなかった。度々目が変化する特徴を。もしかしたら強さと関わりがあるかもしれない、と。
 やがてミスティックマターの目はまたも変化し始める。そして、剣を構え直し、
「さあ……トドメを……」
 刺してやる、と言おうとした瞬間だった。
「させるかあ!!」
 デデデ大王がミスティックマターの目に向かってハンマーで殴りかかる。しかし攻撃は剣で防がれ失敗。だがそれは、ミスティックマターが剣を動かす所を初めて見せた瞬間だった。
「あまり驚かせるな。もう死んだかと思ってたぞ……」
 と言いながらも落ち着いた口調で話す。一方それを聞いたデデデ大王はあることを察したような顔をした。
「……何か分かったのか?」
 落ち着いた言い草で大王に尋ねるミスティックマターの剣にはとてつもない力が加わっている。大王側は"ファッティホエール"をハンマーのみで支えているような感覚を覚えるほどの。
 しかし、そのデデデ大王も負けることなく持ち前の怪力で相手の剣に押されず言い返した。
「やはり、お前は集中力を高めるために目が真っ赤に変化する。集中することで目に見えないほどの素早い攻撃を繰り出せた。だが、それさえ止めればこっちのモノだ」
 すると、ミスティックマターはフッと笑いこぼしながら言った。
「……そうだ。それが我の弱点。よく見破った。貴公は天才だ。我の弱点を見破れる者など、過去にひとりもいなかったぞ。だが、我の弱点はもうひとつある」
「もうひとつあるだと? しかし、自ら弱点を晒す奴とは余裕ぶっているな……」
「くくく。さあ、どこにあるかな? 死ぬ前に探して当ててみろ!」
 そしてミスティックマターは、大王のハンマーを払い、腹の辺りを斬ろうとする。が、デデデ大王はこれをかわし、相手との距離を取った。
(もうひとつの弱点……どこにある?)
 そんなことを考えながら、デデデ大王はまず、剣を持っている辺りを狙おう、ともう一度ハンマーを振りかぶり、ミスティックマターに向かう。その時だった。
「力の無い奴は頭も無いな」
 とあきれ気味に言うと同時にミスティックマターはデデデの真後ろに回った。
(奴の目が……赤い!)
 気づいたデデデ大王が振り返ってみると、相手の目は真っ赤に染まっている。それを見た瞬間――
「がああああああああああ!!!」
 迫り来る激痛を感じながら、やがてデデデ大王は地に伏した。手を見れば、剣による傷だらけ。意識が吹っ飛んでしまいそうなくらいの痛みもほとばしる。 
 ミスティックマターは倒れたデデデ大王の首の辺りに剣を添え、元に戻っていく目で見つめ、そして言った。
「ハハ。もうひとつ弱点がある、なんて甘い言葉にこうも騙されてくれるとは思いもしなかった」
「騙……され……た?」
「そうだ。……あれは、貴公の念を読み取りやすくするために使った罠に過ぎない。そして貴公の、弱点を探そうとする時に生じるダダ漏れの雑念を読んで攻撃した。どうだ。1秒に"80回"斬りつけられた気分は?」
 1秒で80回も剣が振れることから、やはりミスティックマターは形容し難い程の速さで攻撃を繰り出していたようだ。
(こいつ……心が読めるのか……)
 やがてデデデ大王は痛みのあまりに気を失ってしまう。一度に何十回も斬りつけられたら当然と言えば当然であるが。
「返事もできなくなったか……さあ、時は来た! 貴公等を処罰する! 我々ダークマターに逆らうとこういうことになるのだ!」
 剣を構え直し、ミスティックマターの目がまた赤く染まっていく。ここでミスティックマターの攻撃が決まれば、脱獄者達は一巻の終わり。
 しかし、この武器庫には、"希望"の象徴が保管されていた。
「何だ? この輝きは……?」
 ミスティックマターの目が急に元に戻った。薄暗い武器庫内で、突然輝き出した何かが気になったからだ。そして、その方へ向かえば――
「こ、これは……虹の剣!!」
 ミスティックマターが"虹の剣"と呼んだ剣が、意思を持つかのように七色に輝いていた。

「はぁ……はぁ……」
 一方ギャラクティックナイトは、襲いかかる下っ端ダークマターを振り切り、必死に翼で飛びながら、メタナイト達がいる牢屋へと向かった。しかし、体力はほぼ限界に近づき、止まってしまえばもう二度と進み出せず倒れてしまう状況にあった。
(この突き当たりを曲がって進めば……メタナイト達が!)
 後ろから飛んでくるダークマターのレーザー、閃光弾を躱しながら必死に必死に通路を進み、赤がかかった闇のような色をした壁を右に曲がった。その時――
 翼の辺りに新たな違和感を覚えた。振り返れば、剣で翼を突き刺す憎き黒雲が――
(邪魔だ!)
 口にはせず、そのダークマターを剣で振り払う。すると、その隙を狙った残り2にんがギャラクティックナイトのもう片方の翼を突き刺した。痛みに耐えかねた騎士はバランスを崩し、床に向かって前へ転がっていく。
 立ち上がろうとすると、今度は猛毒による痛みを感じ、思わず跪く。後ろからはダークマターが殺してやると言わんばかりに襲いかかる。
(俺は……必ず……)
 心に決めたことをもう一度思い出した。そして叫び声を上げながら、足で走り出す。全身の激しい痛みにも追っ手のダークマターにも負けずに。己の信念を貫き通すために。
「ついた!!」
 満身創痍で走り抜き、やっとついた場所。そこには、もうどうにも出来ないと希望を失ったリック、クー、カイン、メタナイトの4にんが閉じこめられている。
 今助けてやる、とギャラクティックナイトは力を振り絞り、全力で走り出す。が――
(!!?)
突然だった。ギャラクティックナイトの視界は急に床に近くなっていく。頭がくらくらし、体は痛みを通り越して逆に何も感じない。それ故か、動けと命令しても、体は言うことを聞いてくれない。
 やがて床にぶつかったのか衝撃が伝わった。痛みは無く、ただ分かることはもう二度と動けないということ。
(……もう……ダメだ)
 うつぶせたまま、ギャラクティックナイトはゆっくり目を閉じる。最後の最後で自分は力尽きてしまった、と分かったのは命という名の灯火を失う寸前でのことだった。
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