オリオンさんの小説

【たたかいの彼方に】 第21話 『個々の想い』


第21話『個々の想い』 
  
 ポップスターでは、クリスタルの力を最大限に引き出すと言われている"夢""愛""希望"を見つけるべく、ドロッチェ団が捜索に赴いた。
 しかし彼等は、途中で会ったダークマター軍第20番部隊長ミラクルマターにより、絶体絶命の状況に追い込まれていた。

 光りを発し、爆発寸前となった"ウォーター"と"ボム"をミックスすることによってできた超強力爆弾。ドロッチェ達も深刻なダメージを負い、立つことができない。そんな時――
「なにいい!!? 僕の爆弾が……消えた!!?」 
 周りを包んでいた光りが一気に消え、爆弾も姿を消した。そして、爆弾があった場所には――
(カービィ? 何故こんなところに……)
 ドロッチェは確かに見た。カービィと思われる丸っこい体型をした者を。手には輝く剣を持っている。しかし、それを見た後ドロッチェはすぐに気を失ってしまった。
「むむ! 君はあの時のカービィ! ……だけど、何か色が違う……君は誰だ?」
 ミラクルマターがその者に聞いた。すると、
「僕は、カービィの闇の心が実体化してできたもうひとりのカービィ。シャドーカービィって呼んでくれ」
 と舌なめずりをしながら、自身をそう名乗る。カービィ特有の吸い込みで爆弾を飲み込んだのが原因だったようだ。
「ふん、シャドーカービィか。あまり調子に乗ると、痛い目見るぞ!?」
 一方ミラクルマターは、沢山の目をぎらつかせ、シャドーカービィに向かって何百ものトゲを飛ばす。
 しかし、シャドーカービィは顔色変えず、手に持っていた剣から衝撃波を出してトゲを弾いた。
「喰らえ!」
 シャドーカービィはその直後、高く跳び、体毎剣を回転させ、ミラクルマターに突撃する。しかし――
「いでで! 体が痺れる!」
 直撃した瞬間、彼の体に電撃が走った。ミラクルマターが"スパーク"を使ったようだった。
「ふふふ。君はなかなか面白かったよ。また後で君達を襲いに来るから、それまでにもっと強くなっておいてね♪」
 そう言ってミラクルマターは背を向けて――最も何処が背なのか分からないが、逃げ出した。
「待て!」
 叫ぶシャドーカービィだったが、声は届かず、結局小さくなっていくミラクルマターの姿を見ていることしか出来なかった。

「……くそ。俺達はまた助けられてしまったのか……」
「悔やむことはないよ。今回は相手が悪かっただけだから」
 ミラクルマターとの騒動もひとまず収まり、やがて気を取り戻したドロッチェ達は、ミラクルマターと戦った場所で休養を取っていた。ポップスターは、すっかり暗くなり、輝く星が漆黒の空を彩っていた。
「それより、君はなんというのだね? すごくカービィに似ているが……」
 ドクが、自分を含めドロッチェ達を助けた者に聞く。その者は、かつて宝箱を奪い合ったカービィと姿が疑似していたため、気を取り戻した瞬間それが気になったのはドクに限ったことではなかった。
「僕は、ポップスターの空にある鏡の国で、カービィの闇の心が実体化してできた。みんなに"シャドーカービィ"って言われてるから、そうやって呼んでくれればいい」
「闇の心とな? そんな君が何故わし等を助けてくれたのだ?」
「カービィだからだ」
 ドロッチェが会話に挟まった。
「カービィに邪悪な心なんて無いと言ってもいいくらいに小さい。それが実体化しても、ダークマターみたいに、この世を脅かすようなことはしない。本物のカービィと違うところなんて、若干口調が荒いところくらいしか俺には分からん」
「僕ってそんなに口が悪いか? ……それより、君達は、ポップスターに何の用があってきたんだ?」
「俺達は、ポップスターにあると言われる夢、愛、希望を探しに来たんだ」
 言った瞬間、ドロッチェ団やシャドーカービィの中の誰でもない声が聞こえた。声の主は――
「おいら……その夢、愛、希望のこと……知ってるッス!」
 ワドルディだった。ミラクルマターに乗り移られ、憑依が解けたときからずっと気を失っていたが、ようやく意識を取り戻したようだった。
「なんか……えらい口調が変わってますが、あんた本当に知ってるのか?」
 ストロンが言いに出るが、ワドルディはカービィのような短い手で胸の場所を強く叩き、
「もちろん! その夢と愛と希望ってのは"スターロッド"と"ラブラブステッキ"と"虹の剣"のことを指してるッス!」
 と自信満々に言った。スターロッド、ラブラブステッキ、虹の剣。どれも、かつて英雄が巨悪を討つために使った強力な武器だ。
「それは、本当に言ってるのか!?」
 驚きを隠せないまま、ドロッチェがワドルディに聞く。
「嘘じゃないッスよ! つい最近、見つけたポップスターの書物に"この星の夢と愛と希望の象徴は、光の象徴である水晶の力を最大限に発揮させる"と書かれているのを確かに見たッス!」
 リップルスターにあった書物と似ている、とドロッチェは団員と顔を見合わせる。
「じゃあ……そのスターロッドとやらは一体何処にあるんだ?」
 ドロッチェが真剣な眼差しでワドルディに聞くと、
「まずは夢の泉に来て欲しいッス! 僕が案内しますから!」
 そう言いながらワドルディは"夢の泉"がある場所へ歩き始めた。
「ドロッチェ……本当にあいつの言うこと信用していいのかよ? また乗り移られていて、不意打ちを仕掛けられるかもしれないぜ?」
 後ろをついていくドロッチェ達とシャドーカービィ。その中のスピンがワドルディを指さしながら言うが、
「ダークマターなら僕が追い払ったから大丈夫だよ」
 スピンの問いかけにシャドーカービィが答えた。そのことを聞いたスピンは、一応ワドルディを信じてやると、小さく頷いた。
 それからシャドーカービィはドロッチェ団にあることを尋ねる。
「それより、君達が探しているものは、一体何に使うんだ?」
「スターロッド、虹の剣、ラブラブステッキを見つけて、ダークマターを倒す! そして平和も取り戻す。俺達はそのために探している!」 
 質問に答えたのは団長だった。そんな姿を見て、シャドーカービィは言った。
「成る程ね。それなら僕も君たちについていくことにするよ」
「ありがとう。お前が居ると心強い。でも、何故?」
「僕の住んでいる鏡の国も、かつて悪者に襲われてさ。ダークマインドとかいう奴に。でも、本物がそれを食い止めようと必死に頑張って、そして鏡の国に平和を取り戻してくれた。……だから僕はその恩を返したい。ポップスターにかかる脅威を、かつての本物みたいに少しでも食い止めたいんだ!」
 真剣な眼差しで喋る彼は、チューリン達に本当に闇の心で出来てるのか、と言われてしまうが、本物の性格がうつっただけだと軽く受け流した。
「みなさん! 早く来て下さい!」
 ワドルディの声に気が付いたドロッチェ団とシャドーカービィは、会話を止め、夢の泉に向かうことにした。

 
「う〜む……色々な武器があるな……」
 ファイナルスターの武器庫の中で感心するデデデ大王。その他には、捕らえられたリップルスターの妖精達とアドレーヌ。そして、自らの意思で七星を脱退し、行動を共にしていたギャラクティックナイトがいた。
「!? この剣は!!」
 しばらくすると、ギャラクティックナイトがある剣を見つけ、驚きの声を上げた。その方を見たデデデ大王も、息を飲んでその剣を見つめる。
「デデデも、知っていたか……この剣を……」
「ああ。"宝剣ギャラクシア"だろ? あのメタナイトが、ダークマターの手によって捕らえられてしまったのか……」
 その剣は、デデデにとってかつての同士でもあるメタナイトが愛用していた剣。それがここに保管されていた、という事実を受け入れるということは、同時に持ち主が捕まっているということも知ることだった。
 そしてその横には――宝剣ギャラクシアとはまた違うひとつの剣と五芒星の乗り物が置かれていた。
「虹の剣……それに、これはカービィの……! 何故こんなところに……」
 デデデ大王は口を開けたまま、それらを見つめる。ワープスターと虹の剣は、もともとグーイの口の中に入っていたもので、ドロシアによってファイナルスターへ連れてこられた時にもろとも一緒にここへ連れて来られたのだった。そしてその時――
 扉の方から凄まじい轟音が響いた。デデデ大王は思わず耳を塞ぎ、妖精達もまた起こるだろう出来事に恐怖し、互いに身を寄せ合う。
 何事だと武器庫の中に居た者は音のした方をおそるおそる向いた。すると、さっきまで閉まっていたはずの扉は無惨に壊されていた。そして――
「……やはりここだったか。脱獄者ども! 我は貴公等をもと居るべき場所に戻しに来た!」
 人型のダークマター……よりも一回り大きい体を持つ者が、"赤い剣"を掲げながら武器庫に居た者達に向かってそう叫ぶ。それが終わると急に襲いかかってきた。
「ここは俺が止める!」
 ギャラクティックナイトが咄嗟に飛び出し、赤い剣を持つダークマターの動きを止めた。が、
(何だ? この殺気は!?)
 赤い剣を持つダークマターから突然、思わず逃げたくなるほどの殺気を感じた。交えている赤い剣からは凄まじい力が騎士の腕に伝わってくる。
「貴様。何者だ?」
 すると相手は、血の如く赤い眼光をギャラクティックナイトの目に合わせて言った。
「ゼロ様はこう言った。脱獄者に力を貸すような配下など要らないと!」 
 その瞬間――ギャラクティックナイトの視界は天井に移った。加えて、体中にもの凄い痛みが走り、立ちあがるにも立ち上がれない。
「あ……ぐあ……貴様……何を……?」
 倒れたままのギャラクティックナイトに、ダークマターは煌々と輝く赤い剣を掲げて言った。
「この剣には様々な属性が宿り、我が意思によって属性を変えることが出来る! 貴公を斬った時に、剣に猛毒を帯びさせた。貴公はゼロ様を裏切った。一瞬で死なせない。"裏切り者"には果てしない苦痛の末の死が約束される!」
 そして、ギャラクティックナイトの顔面をめがけて、もう一度剣で斬り刻もうとする。――が、その剣は騎士によって弾かれた。
「七星の恥さらしが! まだ足掻くか!?」
 怒りを秘めた口調で言い放つ赤い剣のダークマターだが、ギャラクティックナイトは何も言わずに――扉が壊された出入り口に向かい――
(逃げ……た?)
 それを見たデデデ大王達は呆気にとられた。失われた未来に恐怖してしまう気持ちもデデデ達に分からないわけではなかった。だが、こんな時に。そんな彼等の横では、
「フハハハ! 逃げた! 自分可愛さにあやつは逃げた! 恥さらし所じゃない! あやつは七星の癌だ、汚物だ!」
 大声で赤い剣のダークマターが笑い、同じ七星に暴言を放つ。そして、デデデ大王達の方に正面を向け、
「……さて。今度は貴公等が苦しむ番だ。我がダークマター一族に刃向かうことの愚かさをここで知るが良い!」
 また剣を突き出して突進を仕掛けるダークマターを、今度はデデデ大王がハンマーで止めた。
「……刃向かって何が悪い。わしらにも、この戦いにおける想いがある! それをお前なんぞに壊されてたまるか!」
「貴公の想いなど我は知らん!!」
 赤い剣のダークマターは大王の槌を払い、その隙を突いて剣で斬ろうとした。が、またも止められた。今度はハンマーではなく突然現れた雷によってだった。 
「アド……助かった……」
 デデデ大王がそう言う先には、キャンバスを立てて、クラッコを実体化させたアドレーヌがいた。彼女が持つ特殊且つ強力な力だ。
「あなたなんかに、絶対捕まらない! あたし達がここであなたをやっつけるわ!」
「……貴公等がその気なら。我も本気を出しましょう! 我はミスティックマター! 七星の一角を担いし者だ!」
 言い終わった後、自らを"ミスティックマター"と名乗った者の赤い目がさらに赤くなっていった――
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