オリオンさんの小説

【たたかいの彼方に】 第20話 『葛藤』


第20話『葛藤』

「あなたは銀河最強の剣士じゃない! 自分が持てない弱いひとよ!」
 勝負に勝ったギャラクティックナイトは、約束としてまずデデデ大王を殺そうとした。それを見たアドレーヌは咄嗟に落ちていた剣で相手を止めて、そう言った。
 しかし、ギャラクティックナイトは、すぐさま彼女の剣を払い、足で突き飛ばし、壁にぶつけさせた。
「小娘が調子に乗るなよ! ……何が弱いひとだ? 俺はわざわざ正々堂々の勝負を持ち込んで貴様等にチャンスをあげたのだ。そして言ったはずだ。俺が勝ったら皆殺しにする、と。これは約束だぞ! それを守ろうとしない貴様の方が弱いひとではないのか!!?」
 仮面越しでも伝わるほどの恐い雰囲気を放ちながら、アドレーヌに言いかける。
「見れば分かるよ……あなたは、誰かの目に支配されている。常に誰かに見られていると思ってる……」
「ほう……では、何故そんなことが言えるのだ?」
 すると、壁にもたれ座ったアドレーヌは、目を細めて言った。
「旦那と戦っているとき、あなたはほとんど視線を泳がしていた。銀河最強の剣士らしいから、視線を泳がしても、相手が相手なら勝てるんだろうね。……でも、普通は真剣勝負の時にそんなことはしないはずよ!」
「ふん。ハッタリだな! 俺が何故そんなことをしないといけないのだ!?」
 そして、騎士は剣を構え、アドレーヌを斬ろうとする。すると――
「ぐ!? 手が……動かない!」
 倒れていたはずのデデデ大王がギャラクティックナイトの腕を止めていた。
「アドの言っていることは本当だ。お前と戦っていて思った。確かに強いが、戦いに集中できてないように見えた。何かに怯えているように見えた」
「ほざけ負け犬が! 貴様に俺の何が分かる!!?」
「わしも何度か戦い、冒険もくぐり抜けてきたから分かる。お前も本当は騎士道精神を持って生き、無駄な殺戮、戦意の無き者を斬るのは嫌うはずだ。だから形だけでも、と正々堂々の勝負を持ち込んだ。でもお前は、その無駄な殺戮をしないといけない状況下に居る! ……違うか?」
 そう言われて、ギャラクティックナイトは、とある過去を思い出していた。

 メタナイトとの一騎打ちに敗れ、消滅したはずのギャラクティックナイト。――が、ふと目が覚めると、彼は、自分は死んではいないことに気が付いた。
『ん……ここは? 俺は何故生きている? 確か、メタナイトとかいう奴に倒されて……』
 周りの不気味な景色を見渡しながら、ギャラクティックナイトがつぶやく。その後ろから――
『お前を……余の力で復活させてやったのだ』
 白の体に赤い目玉を持つダークマターの親玉ゼロが騎士に言いよった。
『貴様が、俺を蘇らせてくれたのか?』
 振り返り、騎士はゼロに言いかける。すると、ゼロはこう言い出した。
『そうさ。でも理由も無しにお前ごときを蘇らせはしない。余のダークマター軍の……幹部の"七星"として入ってもらいたいのだ』
『……それはできない』
 ギャラクティックナイトは即答した。
『俺にはやるべきことがあるのだ。俺を倒したメタナイトにリベンジを果たす。貴様に構っている暇は……』
 のところで騎士は言うのを止めてしまった。体から赤い筋を浮かべるゼロの放つ雰囲気から味わう、今まで生きてきた中でも味わったことのない恐怖が、彼をそうさせていた。
『お前……余がどんな者かを知らないな? 余の言うことが聞けないなら、すぐさま死んでもらう!』
『……俺を倒せるのか? 俺はかつて銀河最強の……』
 と言った瞬間。ゼロの体から赤い槍状の光線が凄まじいスピードで飛び出し、ギャラクティックナイトの翼を貫いた。
(ぐ!! なんだ……今の攻撃は!?)
 尋常じゃない速さに、避けることも出来ずに攻撃を受けた騎士は言葉を失う。一方ゼロからはさらに恐怖を煽る雰囲気を醸しだし、騎士に言い寄る。
『お前など……余が本気を出せば"5秒"で粉砕できるのだぞ? お前の持っているくだらん願望、信念は全て捨て、余の下僕となれ!!』
『だが俺には……』
 騎士は、また最後まで言い切れなかった。ゼロの――直視するだけで恐怖が沸き上がる禍々しさを放つ、赤く鈍く光る眼光が、彼の口をつぐませ、手足を萎えさせ、心を蝕んでいた。

(それから俺は……結局ゼロの言うがままに従ってきたんだ……)
 アドレーヌに言われたことと自分を照らし合わせると、だんだんと空しくなっていくのが分かった。
 正々堂々の勝負は、"無駄な殺傷"はしていない、と自分を納得させる言い訳を作るためにしていたことにも気が付いた。
(任務を放棄し、自分の信念に基づき、目的を達成させるべきか。ゼロの言うまま従い続けるべきか……)
 考えていくうちに、ギャラクティックナイトは心に渦巻く葛藤に悩み始めた。七星として無難な復活後の生涯を歩むべきか、強く怖ろしいゼロに逆らう、という危険を顧みず心に押し込んだ自分のやりたいことを優先すべきか。
 しかし、デデデ大王のある一言が、騎士を動かした。
「このままゼロの侵略に加担していいのか? あいつが銀河の覇権を握れば、全て奴の思い通りになってしまうぞ。お前が生きるか死ぬかもゼロによって決められるのだぞ!?」
 騎士はハッとした。あのゼロがこの世界の頂点に立てば、この世は暗黒の時代へと突入する。もし、そうなったとしたら、最早自分の目的どころでは無くなってしまう。そう考えた。
 そして、ギャラクティックナイトの脳裏に、偶然会った、牢屋に閉じこめられたメタナイトが言った、ある一言が浮かんだ。
『このままだと、いつしか私達は殺されてしまう! そうすれば、お前の願望も一生叶えられなくなるんだぞ?』
(……そうだ。今は、ゼロの侵略に加担する場合じゃない!)
 ギャラクティックナイトは悟った。
(メタナイトともう一度戦うため、そして銀河最強の剣士の名を取り戻し宇宙の強者と相見えるため、まずは、この世を脅かす悪を倒さなければならない。そのために……)
 ギャラクティックナイトはデデデ大王達に言った。
「……俺は……俺は、今までゼロの操り人形として生きてきた。自分のやりたいことも、全て捨てて……ゼロの目に支配されながら復活後を生きてきた」
「復活後? どういうことだ?」
「俺はかつて、メタナイトと戦いそして敗れた。死んだかと思った。しかし、俺はゼロによって命を取り戻した。その代償として、今まであいつの言うことを聞いてきた。……でも、それはせっかくもらった命を無駄に使っている、ということを貴様等に気づかされた。自分の目的を達成すべく、俺は七星を脱退することにする!」
 そう言って、ギャラクティックナイトは、手持ちの無線を思い切り床に落として、壊した。覚悟を決めたようである。
「では……私達は殺されずにすむのですか?」
 リップルスターの女王が、おそるおそる騎士に問いかける。
「ああ、賭けは無かったことする。任務も放棄だ!」
 その言葉を聞き、緊張で強ばっていた妖精達の顔が初めてゆるんだ。
「これからは自分の信念に基づき、道を歩むことにする。まずは、ゼロを倒すため仲間を集める……」
 すると、デデデ大王が待て、と咄嗟に言いに出る。
「それだったら、わしらと行動を共にしてくれないか? お前がいると心強い」
 しばらく黙っていたが、やがてギャラクティックナイトは、
「……良いだろう。倒さなければいけない巨悪を討つのだからな。連むつもりは無いが、俺も剣素人に気持ちを読まれてしまうような弱者故。お互い力を尽くそうではないか」
 そう言って、騎士は、デデデ大王と拳を合わせた。
こうして、ギャラクティックナイトは、デデデ大王達と行動を共にすることを決めた。

「よし。ここが武器庫だ」
 ファイナルスター内を知っているギャラクティックナイトは、まず、デデデ大王達をその場所に連れて行った。騎士が扉についていた数々の南京錠を剣で壊し――開ける。するとそこには――
「これは……わしのハンマー!」
「あたしの画材が描かれた紙がこんなところに!!」
 自身が持っていたアイテムを見つけ、驚いたデデデ大王とアドレーヌ。牢屋に捕まったとき、ダークマターによって没収させられた武器は、全てこの部屋に保管されているようだった。
「まずは戦うために、武器を用意しなくてはな。……ペンギンは、やはりハンマー使いだったか。剣の振り方を見て、もしかしたらと思っていた」
「……わしにはデデデという名前がある。そういうお前は何て言うのだ?」
「忘れたのか? 俺は、ギャラクティックナイトだ」
「ぎゃらくてっく……言いにくいな。略して"ガラクタ"でいいか?」
 すぐさま騎士が低いトーンで『止めろ』と言う。一方大王は、久しぶりに冷たいツッコミを喰らった、とうなだれてしまった。
「それより……小娘はその紙を使って何をするのだ?」
 ギャグが空まわったデデデ大王を無視し、騎士は、視線をアドレーヌに向けてそう尋ねた。すると、彼女は紙に描かれたキャンバス、三色絵の具がのっているパレット、筆を実体化させた。
「うお!? 紙から色んな物が……」
「驚いた? あたしは描いた絵を本物にすることができるの」
「魔法が使えるのか……君、名前をなんという?」
「こら、お前! わしにもそう尋ねんかい!!」
「貴様は黙れ」
 その一言で、デデデ大王はとうとう四つんばいになっていじけ始めた。それを慰める妖精も出てくる始末。
「……アドレーヌというのか。変わった名前をしてるな」
「あなたも変わった名前してるけどね……"ギャラさん"て呼んで良いかな?」
「ああ……"ガラクタ"の千倍マシだ」
 それを聞いたデデデ大王がまた精神的ダメージを受け、とうとう、うつぶせに倒れてしまった。
(お前の名前、言いにくいんだよ。この"ガラクタ"がっ!!)
 言葉に出したらまた辛辣な返答しかこないと思い、大王はギャラクティックナイトに向かって、頭の中でそう言ってやることにした。

「ギャラクティックナイト……あいつめ……」
 一方、司令室で武器庫内の様子をモニターで見ていたゼロは憤っていた。部下が脱獄者たちの味方につき、武器庫の扉を壊すようなことをすれば当然であるが。
(……一刻も早くあの裏切り者を消さなければ!)
 そう考えたゼロは、隣に佇んでいた"赤い剣"を持つ、普通の人型ダークマターよりも遙かに強力な――神秘的な力を秘めたダークマターに命令を下した。
「"ミスティックマター"よ。ギャラクティックナイトの代わりに、脱獄した奴等を捕まえ、そして殺せ!!」
 ミスティックマターと呼ばれた者は深く頭を下げて言った。
「了解しました。"七星の一角"としてその任務、必ず成功させて見せます!」
「……期待してるぞ」
 ゼロの言葉を背中で受け取り、ミスティックマターは司令室から姿を消した。
page view: 1828
この小説を評価する:                   (0)