オリオンさんの小説

【たたかいの彼方に】 第19話 『豹変』


第19話『豹変』 

クリスタルを奪われたドロッチェ団は、ダークマターによって作られるだろうと考えた"悪の力を持つモノ"対抗するため、クリスタルの力を最大限に引き出すと言われる"夢""希望""愛"の象徴を見つけるべく、ポップスターへと向かうことにした。
「ついた……ここがポップス……!?」
 ポップスターが見えてきたと、宇宙船の窓に顔を出したドロッチェは言葉を失った。光輝いていたはずの星は、不気味な黒い雲で覆われ、禍々しいオーラさえだしていた。
 宇宙船から下りてみれば、緑豊かな土地は見事に荒れ果て、建物も壊されている。民はボロボロの傷を負い、生きる希望を失って、よどんだ目をして道端で座り込んでいた。
 以前この星に来たときの、平和でのどかな風景は、地獄絵図のような怖ろしい世界に変わり果ててしまっていた。
「これは……ダークマターの仕業……」
 ドロッチェの横では、ストロンが眼帯付けていても分かる程表情を歪め無惨な光景に口を開く。他の団員も、豹変したポップスターの景色を何も言わず見つめていた。
「……驚いてる場合じゃねぇ。……一刻も早く三つの象徴を見つけるんだ!」
 やがて、ドロッチェは赤いマントを翻して他の団員達にそう言いかけた。その時――
「あの……君たちは、夢と希望と愛を探しているんですか?」
 後ろから突然声が聞こえてきた。ドロッチェ達がその方へ向くと、そこには、カービィとほぼ同じ体型をしているが、顔の周りは赤く、太い瓢箪のような顔をしていた。
「お前は誰だ?」
「……あ! 先に紹介を忘れました。僕はワドルディ。住んでいるところはダークマターに壊されちゃって……今はずっと路上で暮らしてます」
 とひとつお辞儀をする。ドロッチェ達はいきなり話しかけられ最初は驚いていたが、
「そ、そうか。それより、お前はその夢と希望と愛について何か知っているのか?」
 素っ気なくワドルディに聞いてみた。すると、
「もちろんです!」
 やけに自信満々に言った。一方ドロッチェ達もこんなに早く情報が入手できたと、表情を緩めた。
「僕についてきてください!」
 やがてワドルディがそう言って、歩き出す。ドロッチェ達は互いに頷きあってから、ワドルディについていった。しかしだった――

「おかしいな……迷っちゃったみたい……」
 ついていき、幸いダークマターの被害を受けていなかった森の真ん中まで来たときに、ワドルディがいきなり言い出した。
「迷っちゃったって……あれほど自信満々に知ってるって言ってたじゃないか!」
 スピンが文句を言った。彼の言うとおり、あれほどはっきり言っておいて、後になって無理そうな発言はあまりよろしくない。
「それよりも、のどが渇いたなぁ……」
 今度はひとりのチューリンが、何か飲み物をくれと言い出した。すると、ワドルディはどこから出るのか、水筒を取り出した。
「これを飲んで下さい。のども潤いますよ」
 笑顔でチューリン達に言い、蓋を開けながらそれをカップにして飲み物を注ぐ。
 チューリンは喜んで、注がれた飲み物を口にしようとした。その時――
「それを飲むな!!」
 大声と共に、ドロッチェにカップを奪われてしまった。チューリンが返せ、と喚くがドロッチェはそんなことにものともせず、カップをワドルディに突きつけて言った。
「どういうつもりだ……これには飲むと昏睡する物質が含まれてるだろ? こんなんで騙されると思うなよ!」
 森の中でドロッチェの声が響く。一方、ワドルディは急に奇妙な笑みを浮かべ、こんなことを言い出した。
「クククク……頭良いねぇ、君。このまま眠らせて殺そうと思ったのに……」
 そして、ワドルディの体から、黒い雲が出てくる。一方ワドルディは気を失ったまま横に倒れ込む。
(ダークマターか!)
 黒雲一族が使う憑依を知っていたドロッチェ達にとって、何が起こるかの察しはだいたいついていた。
 しかし、出てきたのは黒いダークマターではなく、白い。そしてサイコロのように面が沢山あり、その面毎に目がついている。普通のダークマター以上に不気味な姿をしていた。
「こうなりゃ本当の姿を現すまでさ。僕はミラクルマター。ダークマター第20番部隊長を務めている」
「第20番部隊?」
「そう。ゼロ様も信頼する選りすぐりの精鋭ぞろいの最後の部隊。ひとりひとりの隊員の力は、最弱の第1番部隊長よりも格上!!」
 そして、ミラクルマターが何か合図を送ったかのような素振りを見せると、背後から、5にんの目玉型ダークマターが姿を現した。
「こいつらを倒せ!」
 ミラクルマターの合図と共に目玉型ダークマター達全員が黒い光線を凄まじい速さで飛ばしてきた。
 これならよけられまい、と声高く笑うミラクルマターだったが、急に笑うのを止め、目を見張った。
(あの星はなんだ!?)
 突然現れた三つ星がドロッチェ達を取り巻き、バリアのようにビームを跳ね返す。団長が持つ、トリプルスターの力だ。
 今度はドロッチェが手をかざして合図を送ると同時に今度は3にんのチューリンがどこからか爆弾を取り出し、ダークマター達に当てていく。
 そして、スピンが素早い身のこなしで手裏剣をダークマターの目玉に当て、ストロンが怪力でなぎ倒していった。
「まさか……こんなに早く倒されるとはね……」
 手下が全員倒されたことに対する驚きを隠し、冷静な口調でミラクルマターは淡々と言う。
「びびったか。降参するなら何も手は加えないが、どうする?」
 ドロッチェが鋭い眼差しをミラクルマターに突きつける。しかし、相手は笑みを浮かべていた。
「ククク……驚いてなんかいないよ。寧ろ、これくらいの強さを持ってくれなきゃ、僕も本気を出せないね! 僕は、全ての力を持つ者。君たちは絶対勝てない!」
 そう言いながら、ミラクルマターはトゲだらけの体に姿を変え、体中からトゲを飛ばし、攻撃を仕掛けた。
「あたらねぇよ!」
 ドロッチェは瞬間移動を使い、ミラクルマターと間を近づけ、氷のレーザーを当てた。しかし――
「攻撃が効かない?」
 何も反応を見せない相手に思わず動揺したドロッチェ。そしてその瞬間、彼の頭に突然重い岩が降りかかった。どうやらミラクルマターはカービィと同じく、コピーこそはしないが色々な力が使えるようだ。
「もっと行くよぉ♪」
 声の調子を上げながらミラクルマターはドロッチェに怒濤の攻撃を仕掛ける。また何十本ものトゲを飛ばし、電撃、爆弾、流水、吹雪、そして沢山の剣や槌がどこからか飛び出し、ドロッチェの体を痛めつける。
「調子に乗るでない!」
 この攻撃を止めようとドクがいつ作ったのかドクの体に丁度良い小型の宇宙船に乗り、そこからビームで攻撃する。
 しかし、相手はこれを見切り、突然鏡のようなバリアを纏い、ビームをはじき返した。しかもそのビームは――
「うわちゃちゃちゃ! 宇宙船が壊れる!!」
 炎となってドクの宇宙船に襲いかかり、やがて爆発し、丸焦げになって倒れるドクの姿が見えた。信じられないことに、カービィの使うコピー能力の一部"ミラー"と"ファイア"をミラクルマターは合成させて使ったのだ。
「さあ、メインディッシュだよ!」
 一方ミラクルマターはさらに攻撃を続ける。炎を纏った岩を振らし、何十本もの氷柱を飛ばし、鎌鼬を起こし、ドロッチェ団にダメージを負わせていく。
「はははっ! 壊すって楽しいねー!!」
 ミラクルマターの凄まじい攻撃は、やがて周りの森林も破壊し尽くし、辺りを見違えるほどの荒れ地に変えてしまった。
(くそ、強すぎる……こいつは……化け物だ……)
 ミラクルマターの予想外の強さに、手も足も出ず、やがて地に倒れたドロッチェ達。立ち上がろうとしても立ち上がれないほどの激痛にも負われていた。
 使える能力が増えたり、合成が出来るところから、かつてリップルスターで、カービィと戦ったときとは格段に強さが増していた。これはミラクルマターに限らず、"七星"の復活した面々にも当てはまることだった。
「トドメに、水と爆弾をミックスした素敵なモノをあげるよ」
 やがてミラクルマターは、倒れて何も言えないドロッチェ達にとんでもないことを言った。水と爆弾――水素と爆弾――"水爆"――それは、遠い星の生き物が開発した強力な兵器と同じ仕組みで出来ており、辺りを瞬く間に壊滅させ、直撃すれば完全に死ぬ。そんな危険なものだった。
「喰らえ!!」
 黒くて小さい球のような物質を、ドロッチェ達に向かって飛ばした。時間が経てば、それは大爆発を起こし、ドロッチェ団だけではなく、ポップスターの土地をも蝕むだろう。
 しかし、彼等は諦めなかった。
(クリスタルを必死に守ろうとした奴がいる。仲間を助けるためダークマターと戦ってきた奴がいる。……俺達はこんなところで負けるわけにはいかない!)
 ドロッチェは必死に手を伸ばしながら、手放した、前に落ちているトリプルスターを掴もうとする。しかし、体は動いてくれない。
(くそ……俺の体なんてどうでもいい! 頼むから……動いて……くれ……)
 激痛をこらえようと必死に前へ這いずろうとするドロッチェだったが――時は彼を許さなかった。
 小さい球のような爆発性物質から、突然強烈な光が発した。そして、そこから凄まじいエネルギーがあふれ出す。
「残念でしたぁ♪」
 ミラクルマターの憎たらしい声と共に、辺りは瞬く間に爆発の光に吸い込まれていった――

 一方、ダークマター本拠地内では、ギャラクティックナイトとデデデ大王が一対一の勝負を通して賭けを行っていた。デデデ大王が勝てば、
捕らわれた妖精達は開放される。しかし負ければ皆殺し。一かバチかの賭けであった。
(くそぉ。やはり剣は扱いづらい……)
 戦局は、デデデ大王達にとってバチに転がりそうな状況となっていた。剣を全然使ったことのない初心者が銀河最強の戦士と戦うのだから、そうなってしまうのも無理はないが。
「さっさと降参しろ!」
 ギャラクティックナイトの剣閃が、大王の体を斬りつける。された方も負けじと剣を振るが防ぐことはできず、とうとうデデデ大王は叫び声を上げながら、剣を手放し、仰向けに倒れ込んでしまった。
 騎士は剣を下ろし、倒れている大王を見て、やがてゆっくりと喋り始める。
「決着はついた。……俺の勝ちだ。約束通り、お前等をここで皆殺しにする。まずは、このペンギンから……」
 ギャラクティックナイトが剣を振り上げ、そこからデデデ大王の頭を切ろうとした。その時――
 座っていたアドレーヌが突然立ち上がり、デデデ大王が落とした剣を拾い、ギャラクティックナイトの剣を払った。
「貴様……どういうつもりだ!?」
 怒りを込めた口調で、ギャラクティックナイトが問いかけると、
「あなたは……銀河最強の戦士なんかじゃない! 自分が持てない弱いひとよ!!」
 アドレーヌは真剣な眼差しで、相手に向かってそう言った。
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