オリオンさんの小説

【たたかいの彼方に】 第18話 『賭け』


第18話『賭け』

 ファイナルスターでは、ダークマターの銀河制覇の計画が順調に進められていた。かつて何度もダークマターを苦しめてきたポップスターの英雄カービィを捕らえ侵略に利用すべく、奪い取ったクリスタルの構造を利用し、善の心を打ち消し悪の心を増幅させる"ダーククリスタル"を作りあげた。
一方、捕らえられたカービィを助けようと、戦艦ハルバードに乗ってファイナルスターへと向かった者や、ドロシアに連れてこられた妖精リボンは、全員牢屋に閉じこめ、銀河制覇はほぼ絶対となっていた。
 しかし、とある牢屋で、ダークマター側にとって予期せぬことが起こった――

「脱獄者を引っ捕らえろ!」
 叫びながら、ファイナルスターの暗く不気味な通路を駆け辺ぐるダークマター達。デデデ大王、アドレーヌ、そしてリボン以外のリップルスターに住む妖精達を閉じこめていた牢屋で脱獄が起きたのだ。
「……さすがダークマター共、対応も早い!」
 逃げ出したうちのひとり――デデデ大王が、先の見えにくく下の六角形の形の床が朧気に光る通路を駆けながら口走る。先も見通しにくく、何があるか分からない恐怖の中を、彼等は走り続けていた。
「牢屋から出たのは良いけれど、これからはどうするんですか?」
 リップルスターの妖精のひとりが飛びながら大王に聞いてくる。
「ファイナルスターの出口を探すのだ! まずはお前達をここから開放する!」
 出口を探し、妖精達をここから出すのが、デデデ大王の目的のようだった。
「じゃあ、あなた達はどうするのよ?」
 他の妖精がまた大王に聞く。
「残る。わしにはまだ助けなければいけない仲間がいる」
「仲間?」
「そうさ。そこにはお前達とはぐれたリボンもいる。必ずお前達とも顔を会わせてやるからな」
 頼もしそうに言うデデデ大王に、妖精達は重く頷いた。
 その時、先頭を進む大王の視界に、何者かが写った。といってもファイナルスターの暗い廊下では、はっきり姿を確認することはできない。
 しかし、その何者かは、だんだんとデデデ大王達のところへ向かいやって来る。
「まずい! 前からか!」
 脱獄者を捕らえるために出動されたダークマターだと察すデデデ大王。
 しかし、そこにいた者は――
「……そこを止まれ」
 ――やがて黒の緞帳から出てきた者は、メタナイトのように仮面を付け、羽を生やし、剣を持っている、騎士のような見た目をした者であった。
「相手はひとりだ! 突っ切れ!」
 デデデ大王が声をあげながらその者の横を通ろうとした瞬間――
「止まれと言っている」
 謎の騎士は、持っていた剣を振り、瞬間に大王の首に当たる寸前にまで持ってきた。
 剣を突き出されたデデデ大王は、恐怖のあまり動きを止めた。逃げていた他のひとたちも、その騎士のただならぬ雰囲気に圧倒され、その場に止まってしまった。 
「あなたは……誰……?」
 アドレーヌがおそるおそる尋ねると、謎の騎士は、デデデ大王に剣を突き出したまま、
「俺は、ギャラクティックナイト。七星の一員……幹部みたいなものさ。脱獄者を引っ捕らえろと命令が下されてここへ来た」
 自身をギャラクティックナイトと名乗り、突然、もう一方の手で無線らしき機械を取り出した。そして――
「本部、本部。脱獄者は無事引っ捕らえた。出動したダークマター達は元の持ち場に戻ることを伝えてくれ」
 ギャラクティックナイトはそう言って無線を切った。一方デデデ大王達は彼の言動に呆気にとられた。無理もない。すぐさま武器で斬りつけられ、再び牢屋へぶち込まれる未来を想像していたひと達にとって、彼の行動は、まだ捕らえてもないのに捕らえたと言い、さらに他の出動者を帰投させるという予想の斜め上よりも上を越えるものだったから。
「お前は、何がしたいのだ……」
 デデデ大王が、声を震わせながら尋ねると、ギャラクティックナイトはずっと突き出した剣を下ろす。
「生憎俺は、装備も何もないような無防備な奴等を痛めつけるような下劣な奴ではない。ここは1つ賭け事をしようではないか」
 えっ、とデデデ大王達は驚きの表情を見せる。
「……賭け事とは何だ?」
「貴様等の中のひとりが俺と戦うだけのことだ。貴様等が勝てば、ここから開放してやる。だが、負けた場合は、すぐさま皆殺しにする」
 その時、妖精のひとりが言いに出た。
「……そんなの絶対あんたの勝ちじゃん! わたしたちは武器も何もないんだよ? そんな賭け事に乗るなんて絶対ヤダよ!」
 言われたギャラクティックナイトは、どこからか別の剣を取り出し、床に突き刺した。
「この剣を使えば少しは有利に戦えるだろう。さあ、誰でも良いから俺と勝負するんだ!」
 騎士の声を闇のような壁が吸収し、無音の空間を作り出す。
 デデデ大王達にとって、これはチャンスである。しかし、負ければ一巻の終わり。戦う者は重度のプレッシャーを負うことだろう。
 だが、それに臆さず立ち上がった者がいた。
「……わしがやろう。わしが勝てば、この妖精達をファイナルスターから出してくれるんだな?」
「勿論……だが、そのかわりだ! 残った者どもは、一切此処を動くな! 戦っている隙を突いて逃げようなどとした場合は、すぐさま賭けは中止。一気に殺しにかかるぞ。こちらも『脱獄者を引っ捕らえろ。または殺せ』と言う命令を受けている」
「分かった。……しかし、お前はダークマターの手下でありながら何故そんな正々堂々の勝負を望むのだ? お前には何か理由があるだろう?」
「……そんなもの、貴様等には関係ないことだ」
 そうかと言わんばかりに剣を構えたデデデ大王。横ではアドレーヌ達がそんな彼の姿を見守る。
「わしは絶対に勝つ! 行くぞ!」
「ふふ、"銀河最強の剣士の力"を見せてやろう……!」
 やがて、ファイナルスターの廊下で、それぞれの思いを乗せて戦いが始まった。

 一方、ブルブルスターに取り残されていたドロッチェ団のメンバーは、奪われたクリスタルを取り返すべく、今の自分たちに出来ることを考えていた。しかし、
「くそ! あの変な魔女め……思い出すだけでイライラしてきやがる!」
 肝心の団長が、舌打ちをし、叫び声を上げている。クリスタルを奪われたのが余程屈辱だったのか、今に至るまでずっとこんな感じだった。
「ドロッチェさん。落ち着こうよ。ここでイライラしても何も始まらないと思うよ……」
 3にんのチューリン達の中のひとりが団長をなだめるが、こんな時に落ち着いていられるか、と王道少年漫画の熱血主人公のような台詞を言いながら喚き散らす。実力はあるが、冷静さに欠ける団長である。
 そんな時、ずっと黙っていたストロンがこんなことを言い出した。
「ドロッチェさん……落ち着いて。そんな恐い顔していると、リボンさん泣いちゃいますよ」
「はぁ?」
 呆気にとられたドロッチェは、口をポカンと開けた。
「……こんな時にお前は何呑気なことを言ってるんだ……あんな妖精が今関係有るのかコラァ!」
 ストロンを一発ぶん殴ってやろうかとも思ったが、拳には力が入らなくなっていた。それどころか、今までのイライラが全て吹っ飛んでいくような気分になっていく。
(あれ……なんで……だ……?)
 しばらく呆然としてしまったドロッチェ。しかも、どうしてか周りはくすくすと笑っているひともいる。急に団長の態度が変わったからか。でも、それだけではなさそうに見える。
「ドロッチェ。大丈夫か?」
 スピンが団長の目の前で首に巻いてあった赤のマフラーをひらひらとさせると、団長は急にスピンのマフラーをどかし、
「……大丈夫だ。ちょっと熱くなりすぎただけだ」
 と言いながら帽子を深く被り直す。ようやくドロッチェは冷静さを取り戻した。
「……で、クリスタルがダークマターによって奪われたわけだが、これによって、"新たな闇の力"ってやつが生まれる。もしそうなったら、はっきり言って俺達に勝ち目はなくなる」
 ドロッチェの憶測では、クリスタルは反対の――悪の力を秘める性質を持つモノを作るために必要だということである。彼等は知らないが、この憶測は見事に当たっていた。
「捕まったカービィ殿が悪者となるわけですな。あの強者が敵に回ったら……確かに敵わぬなぁ」
 団員のひとりである、体に合わない眼鏡をかけているドクが、ため息をつく。
「でも、諦めるのは早い。俺はリップルスターをこっそり探索していた時に面白い書物を見つけた」
 元々は、クリスタルをドロッチェ団の物にしようとしていたため、リップルスターでの探索も何度か行われていた。その時に盗んだという書物をドロッチェが取り出す。
「何が書いてあるんだい?」
「これには……この星の秘宝クリスタルは、強大な光の力が秘められている。"夢、希望、愛が重なりし時、真の力よみがえらん"……と書かれている」
「夢、希望、愛があるとクリスタルが強くなるの?」
「待てチューリン。まだ続きがある。夢は泉に沸き、希望は虹より現れ、愛は民の心から出づる。鍵を握るは、平和の乱れない永遠の星……五芒星型の惑星にあり!」
「五芒星の星!?」
 ドロッチェ以外の団員が一斉に声を合わせる。ドロッチェ団全員には、心当たりのある星があった――
「そうさ。おそらく夢、希望、愛っていうのはポップスターにあるはずだ! まずは、みんなでそれを手に入れるんだ!」
「流石ドロッチェさん! やっぱりオラ達の団長だ!」
「手に入れて……一刻も早くダークマターからクリスタルと平和を取り返さないとね!」
「ドロッチェ殿。宇宙船の準備は出来ております」
「でかしたドク。……さあ、夢、希望、愛を手に入れるぞ!」
 ドロッチェのかけ声と共に、大いなる力を手に入れる怪盗団は宇宙船に乗り込み、ポップスターを目指した。
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