オリオンさんの小説

【たたかいの彼方に】 第16話 『絶体絶命』


第16話『絶体絶命』

 目が覚めると、突然周りの景色が暗くて不気味になっていることにグーイは驚いた。
「やっと目が覚めたか……裏切り者よ」
 おどろおどろしい声のした方向に向くと、白い球体で目は赤い、ダークマターの親玉ゼロがいた。
「ゼ、ゼロ……なんでここに……?」
 声を震わせながら尋ねるグーイにゼロが言った。
「お前は、ダークマター本拠地……ファイナルスターに連れてこられたのだ。ドロシアの魔法でクリスタルと共にな……」
(ドロシア……)
 グーイは思い出した。彼女の、物体を絵に封じ込める力によって、クリスタルが奪われそうになったことを。そして、結局クリスタルを守れず、キャンバスに吸い込まれてしまったことを。
「じゃあ……クリスタルはどこに行った? ピッチ達をどうした? 僕と一緒に絵として連れてこられたはずだぞ!」
 ゼロはグーイを脅すように体を近づける。
「残念ながら、クリスタルはダークマターの物となった。そして、お前と一緒にいた奴等は全員牢屋に閉じこめた」
「そんな……じゃあ、なんで僕だけを残したんだ?」
「黙れ!!」
 ゼロからただならぬ気迫が漂った。近くにいるだけで体中がピリピリするような感覚をグーイは覚えた。
「お前は何故……善良な心を持って生まれてきたのだ? 何故2つ目を持って生まれた!? 余を……ダークマター一族を裏切り、何故あんな忌々しいピンク玉のしもべとなった!?」
「しもべじゃない! カービィとは仲間だ!」
「仲間……余は仲間という言葉が嫌いだ。グーイ。お前も本来は余の程では無いが、強力な力を持っているのだぞ。なのに、何故お前は仲間を作るなんて臆病なことをする!?」
「仲間を作ることは臆病じゃない!」
「臆病さ! 独りで戦える勇気が無いから仲間を作るのだろう。弱いくせに、自分を高めようとせず、仲間という言葉を使って逃げているのだろう。余はな、そんな弱者が出しゃばる今の世界を壊すために生まれた。弱い奴は死ぬか従うかの世界を作るために生まれたのだ!」
「ゼロは何も分かってない! 例え強くても、独りじゃできないことだってたくさんあるんだよ! ゼロにだって仲間はいるでしょ? マルクやドロシア、沢山のダークマター達も、ゼロは、仲間だと思ってないの?」
 すると、ゼロは嘲笑うかのようにひとつ息を吐く。
「……あいつ等は余の目的のために使っている"駒"に過ぎない。強者に必要な物は、自分にひれ伏す配下だけでいいのだ! そしてお前も……余の配下になる時が来ることを覚えておけ……」
 ゼロは、直視するだけで発狂してしまいそうな位、怖ろしい眼差しで言った。
 
 一方、マルクのブラックホールによって捕まえられ、姿を眩ましていたリック、クー、カイン、メタナイトの4にんは、まとめて、とある牢屋に閉じこめられていた。
壁は、赤がかかった黒色で、床はファイナルスター独自の、真ん中に細胞の核みたいな丸いものがある赤、青、緑の六角形を敷き詰めたような模様。独りでは無いとはいえ、居心地の良い場所ではなかった。
「ああ……腹が減った……グーイ達は大丈夫なのかな……」
 リックがかすれるような声で言う。
「このまま……死んじゃうのかな……マインの顔もっと見ておけば良かった……」
 我が妻を思いながら嘆くカイン。そんな彼の横には、目を細めて無言で佇むクー。 
「……宝剣ギャラクシアも無くなっているし……もうどうすることも出来ないのか……」
 冷静さが取り柄の仮面の騎士メタナイトですら、不安そうな言い草をしている。4にんはそんな絶望状況に陥っていた。
 その時だった。
(ん! あいつは……かつて私と戦った銀河最強の剣士……何故あんなところに……)
 見回りを担当されたギャラクティックナイトが牢屋の前を通って行くところをメタナイトは見た。
(まさか、私を倒せなかったことに無念を抱いて復活したのか……)
 この時、メタナイトはある作戦を思いついた。
(上手くいけば……ここから脱出出来るかも知れない!)
 メタナイトは、ギャラクティックナイトを呼び止める。相手も、呼ばれたことに気が付き、振り返った。
「……メタナイト! 何故貴様がそこにいるのだ?」
 口調こそ冷静だったが表情は椎茸のような仮面を付けていも分かるほど驚いていた。
 メタナイトは閉じこめられている鉄格子に顔を近づけて言う。
「お前が復活したことを聞いて、戦うためにここへ来た。しかし、見ての通り、私たちは捕まってしまった……」
 メタナイトの言っていることは紛れもない嘘だった。銀河最強の剣士の復活も知らなかったし、戦う気も本当は無かった。
 ただ、もし相手がメタナイトと戦いたいという気持ちがあるなら。彼は、そこにつけ込み、牢屋から出してもらう作戦を考え出したのである。
 しかし、現実は甘くなかった。
 ギャラクティックナイトは、何かを察したような目をした。
「……分かったぞ。確かに俺は貴様に倒されたことに無念を抱いている。でもな、それで貴様を牢屋から出すような馬鹿では無い。……俺は忙しい。貴様と剣を交える余裕なんて無いのだよ」
 やがて彼は踵を返し、細長い廊下を歩き出す。
「待て!」
 メタナイトが顔をさらに鉄格子に近づけて言う。
「このままだと、いつしか私達は殺されてしまう! そうすれば、お前の願望も一生叶えられなくなるんだぞ? せっかく復活出来たのに……お前は、私よりも強い銀河最強の剣士だってことを示したくないのか? お前にプライドというものは無いのか!?」
「プライドも何も……俺はもうすでにお前より強い。こんな牢屋に閉じこめられるような無様な奴なんて最早眼中に無い!」
 ギャラクティックナイトは、メタナイト達に背中を向けたままそう言い、やがてどこかへと行ってしまった。
「……くそっ」
 やがてメタナイトはうなだれるように、鉄格子にもたれかかった。
(このまま……ダークマターの思い通りとなってしまうのか……)
 不気味な牢屋の中で、時間が経つにつれ、絶望が深くなっていくように4にんは感じていた。
 
 一方、デデデ大王、アドレーヌ、そしてリップルスターに住んでいた妖精達を閉じこめていた牢屋では、怖ろしいことが起きようとしていた。
 牢屋の前に来た人型のダークマターが話し始める。
「リップルスターの妖精達と、ひとじちとして捕らえられたふたりに報告がある。クリスタルは無事、我々ダークマターの物となった。お前等の同種と思われる桃髪の妖精は、変な小鳥、猫、スライムと一緒に、とある牢屋に閉じこめた。そこで、用無しとなったリップルスターに住む妖精達を、一斉処刑することに決めた。我らの剣による、斬首刑だ。 残りのふたりも、捕まえられたカービィへの見せしめとして連れて行く。処刑は1時間後。楽しみにしていろ!」
 そう言って、ダークマターがどこかへ行った後、妖精達のすすり泣く声がした。無理もない。用無しというくだらない理由で殺されてしまうのだから。
「ダークマターめ、調子に乗りやがって……それに、あのダークマターの話、聞いたか?」
 泣き声がする中、鉄格子の傍で座っていたデデデ大王が、隣の、共に連れてこられたアドレーヌに聞いた。
「うん。本当にカーくんが捕まってたなんて……それに、変な小鳥、猫、スライムって……」
「ピッチ、ナゴ、チュチュ、のことに違いないな。さらわれたカービィを助けようと、ダークマターに立ち向かって行ったのだろう。しかし、彼等やリボンもダークマターに捕らえられ、クリスタルも奪われてしまうとは、このままでは、本当にマズイぞ……」
 こう話している間にも、処刑と言う名の死が近づいてくる。この牢屋の中にいたひと達に、大きな絶望を与えていた。デデデはハンマー、アドレーヌは画材一式が描かれた紙を没収させられ、脱獄もほぼ不可能となっていた。
「……あたし達、このまま死んじゃうのかな……」
 アドレーヌは俯き、涙を浮かべていた。デデデ大王は、せめてもの慰めと彼女の肩を叩くが、彼女は余計に涙が出てきてしまい、やがて、涙をポタポタと赤い六角形の不気味な床に落とした。
 その時、アドレーヌは自分が落とした涙を見てあることを思いついた。そして、牢屋全体の床を見渡すと、鉄格子に近いところは、赤い六角形が敷き詰められ、奥を見ていくと、緑、青へと色が変わっていくのが見えた。
「アド、どうしたんだ……」
 そんな彼女の行動が気になった大王は尋ねてみた。すると、彼女は目尻を手でこすりながら言った。
「良い方法が思いついたの。上手くいけば、ここから脱出出来るかも知れない」
 この一言に大王は目を見張り、理由を聞く。
「……遠い星に居たとある絵描きさんは、涙で床に絵を描いたって伝説があるの。だから、あたしも床に涙で絵を描く。それで実体化が出来れば、希望も見えてくるはずよ」
「成る程! ……でも、色はどうするんだ?」
 すると、アドレーヌは顔で床を指した。床には、赤色、青色、緑色の六角形模様の床がある。そして、赤色の六角形の真ん中にある細胞の核みたいな円形は黄色っぽい色をしている。
「色の三原色は、見た感じ床に全部そろっている。まず、絵の具、パレット、キャンバスボードを描いて……」
 ふと気が付いたようにデデデ大王が尋ねる。
「白はどうするんだ? ワシでも色を混ぜて白が出来ないことは知っているぞ」
「ここに描けば白い紙ができるよ」 
 アドレーヌは緑色のスモックを捲り、下に着ていたワイシャツを見せてそう言った。
「……そうか。アド、頑張ってくれ。このままダークマターの思い通りには絶対させたくないからな」
 アドレーヌはコクンと頷き、やがて真剣な目つきで、床に落ちた涙で、絵を描き始めた。
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