オリオンさんの小説

【たたかいの彼方に】 第15話 『胎動』


第15話『胎動』

「今から俺がマルクから聞いたことを話す。しっかり聞いてくれ」
 そう言ったドロッチェと向かい合っている、ナゴ、チュチュ、ピッチ、グーイの4にんは息を呑んだ。横では、妖精リボンや団員達が真剣な眼差しで見守る。
「まず言っておかなければならないことが……カービィはダークマターに捕らえられたことだ」
 その時、4にんの表情が険しくなったように見えた。無理もない。あれほど探したカービィがダークマターに捕らわれてしまったのだから。
ドロッチェはさらに続ける。
「それだけではなく、ダークマターが欲しがるクリスタルは、捕まったカービィと関係していた!」
 周りが驚きの表情を見せた。一方ドロッチェはより真剣な目で話す。
「マルクがダークマターの親玉にこう聞いたらしいんだ。『何故カービィを捕まえたか』と。そして、親玉はこう言ったそうなんだ。『カービィを利用して銀河制覇を成し遂げる!』ってそのためにクリスタルが必要らしい……」
(カービィを利用して、銀河制覇を成し遂げる……しかもそのためにクリスタルが必要?)
 一体どういうことなんだ、と周りが騒然となる。しかし、緑の小鳥――ピッチはまるでダークマターの真意が分かったかのように、深刻そうな表情でこう口にした。
「それは、本当に言ってるんですか? もしそれが本当なら、一刻もカービィを早く助け出さないと……大変なことに……」
 そう言われたドロッチェは、コクンとうなずいて言った。
「俺も多分ピッチと同じ事を考えたと思う。クリスタルを奪われれば、ダークマターの完全支配は時間の問題になるだろう……」
「ちょ……ちょっと待ってよ!」
 チュチュがふたりの会話に入り込んだ。
「意味が分からないよ! クリスタルって悪に対抗する力があるんじゃないの? 何でそれをダークマターに奪われると、パワーアップされるの?」
「クリスタルをそのまま使うわけじゃないんです。僕の考えでは、ダークマターはクリスタルの構造を利用して、本物と正反対の力を持つ物を作ろうとしてるんだと思います」
「正反対の力って……まさか! そんな!」
「チュチュも気づいたか。クリスタルに"悪を打ち消す効果"があるなら、その正反対の力は……"善を打ち消す効果"となるだろう。ほぼ善の心でできているようなカービィに使えば、あいつの心は空っぽ同様。ダークマターはそこにさらに、邪悪な心を埋め込んで、"ダークカービィ"なるものを作りあげるつもりなんだろう。あと、マルクはこんなことも言っていた。『"KD計画"によって"新たな闇の力"が生まれる』と。憶測に過ぎないが、"新たな闇の力"っていうのは、カービィのことじゃないのかな……」
 ドロッチェが言ったこの憶測は、誰もが、言った本人さえ、受け入れたくないと思っていた。しかし、カービィを利用して侵略を進める。しかも、そのためにクリスタルが必要となると、この憶測が一番適当であり、辻褄もあってしまった。壊すためだけなら必要とは言わない。
 しばらくしてから、ピッチが周りに問いかけた。
「それより、これからどうします? ドロッチェさんの言ったことを信じる信じないは別として何か行動を起こさないと、ダークマターはどんどん侵攻を続けますよ」
 すると、座りこんでいたナゴが立ち上がって言う。
「本拠地に突撃するしか無いナゴ。カービィが捕まっているなら、なおさら行かなきゃ」
「気持ちは分かるけど……ダークマターの本拠地はバリアで貼られているよ」
 グーイが言ったとおり、ダークマターの本拠地は戦艦ハルバードをも壊す強固なバリアで覆われていて、外部からの侵入は至難の業だった。
(どうやってあの星に侵入しようか……)
このままではどうすることもできない。ブルブルスターの中にいたひとたちは、焦りと苛立ちを覚えた。
 その時だった――
「おい! あれを見ろ!」
 ドロッチェ団のひとり――スピンが指した方向には、上空から降ってくる大量の爆弾があった。
「みんな逃げろ!」
 ドロッチェの声で、他のひとたちも爆弾が落ちてくる所から一目散に逃げ出す。
「逃がさないわよ」
 上空から、聞いたことのない不気味な声がしたと思ったら、逃げているひとたちの足下から、巨大な針が出てきた。
 巨大な針に吹っ飛ばされ、倒れたひとたちの視界に、魔法使いの格好をした何者かが入った。
「この攻撃はあんたがやったの!?」
 チュチュがその者に聞いた。すると、声高く笑いながら、
「その通りよ。わたくしは"ドロシア"。七星の一角にございますわ」
 自身をドロシアと名乗り、上品そうな口調で言った。さらに、白い目を細めてこう言い出す。
「さて、わたくしはゼロ様から特務を受けています。クリスタルを奪取せよって!」
 言い終わると、縁で飾られたキャンバスを出した――と言うより、魔法で出現させたという表現の方が適切か。
 やがて、そのキャンバスは凄まじい光りを発した。
「ああ! クリスタルが吸い込まれていく!」
 他のひとたちが声のした方を向けば、キャンバスへ向かっていくクリスタルとそれを必死に抑えるリボンがいた。
「させないナゴ!」
 ナゴがリボンの所へかけより、吸い込まれそうなクリスタルを必死に止めた。後にピッチ、チュチュも続き、グーイも伸びる舌で、クリスタルを掴み止める。
「これでも喰らえ!」
 リボン達とは反対方向から、ドロッチェがトリプルスターで、ストロンがパンチでドロシアを攻撃した。しかし、ドロシアは目には見えないバリアを貼っていて、トリプルスターは跳ね返され、ストロンも自身を痛めるだけの攻撃に終わってしまった。
「ホホホ! あなた達の攻撃なんてびくともしないわ! ここで時間は取りたくないから、さっさと終わらせますわよ!」
 すると、縁で飾られたキャンバスがもう一度強い光りを発した。先ほどとは比べものにならない程の強力な引力が生じる。
「だめ……吸い込まれちゃう!」
「クリスタルが……奪われるぅ!!」
 やがて、クリスタルと、それを必死に守ろうとしたナゴ、チュチュ、ピッチ、グーイ、リボンの5にんが吸い込まれ、キャンバスには吸い込まれた"ひと"や"物"の絵が出来上がった。
「こやつ……物体を絵にできるというのか!」
「その通り。復活して、絵を実体化させる能力を極めた結果、対となる能力も得たのですわ。じゃあこれはもらっていきますね」
 そう言ってドロシアは絵画を小さな光りにして自分の体に戻し、笑いながら空を昇っていく。
「クリスタルを返せ!!」
 ドロッチェが瞬間移動でドロシアに近づき、冷却レーザーを当てた。しかし、やはり攻撃は通らなかった。
「ホホホ! さようなら〜!」
 ドロシアは、笑いながら遠い彼方へ飛んで行ってしまった。
(クリスタルが……奪われた……)
 攻撃を加えられないドロッチェは、結局、彼女の小さくなっていく姿を見ていることしかできなかった。
「くそ……くそぉお!!」
 悔しさでいっぱいになったドロッチェは思わず叫んだ。彼の叫び声が、極寒の星ブルブルスターの空で響いた。
 
 ダークマターの本拠地こと、ファイナルスターでは、司令室で会議が開かれていた。親玉のゼロは勿論、ナイトメア、ダークマインド、ダークゼロ、ギャラクティックナイトの4にんもそこにいた。
 司令室でゼロと一緒にいたカービィは居なかった。"KD計画"のため、と言ってゼロがとある場所に幽閉したからだった。
 張り詰めた雰囲気の中、ゼロが第一声を発す。
「臨時召集で申し訳ないのだが……まず報告がある。マルクが倒された。奴を前線で使いすぎたが故の結果だが、七星の一角が崩れたことは大きな損害だ。クリスタルの件はドロシアに任せたのだが、奴も成功するかはどうか分からない……」
「それは杞憂にこざいますわ」
 突然声のした方向に5にんが向いた。するとそこにはドロシアがいた。
「ドロシアか。クリスタルは無事入手できたのか?」
 ナイトメアが尋ねると、ドロシアは"例の絵画"を見せて言った。
「勿論です。クリスタルと、忌まわしい雑魚どもをこの絵に封じて持ってきましたわ」
 ゼロが赤い目を丸くして言った。
「よくやったドロシア! では、その絵を実体化してくれないか?」
 お安いご用と言わんばかりにドロシアは"例の絵画"を実体化させた。吸い込まれた水晶とそれを止めようとしていたひとたちが出てくる。ゼロは念力でクリスタルを目の前に持って行く。
「おお、これがクリスタルか。なんて輝きだ……」
「それより、この雑魚どもはどうしますか?」
 ドロシアが、残ったナゴ、チュチュ、ピッチ、グーイ、リボンの5にんを指して言った。当の5にんは絵に閉じこめられたからか、気を失っていた。
「こいつらは牢屋に閉じこめろ。カービィへの見せしめに使う……だが、この黒い奴だけは残しておいてくれないか?」
「何故です?」
「まず質問しよう。なぜお前達幹部の総称を"七"星にしたか分かるか?」
「……ゼロ様を入れて七かと思いました」
「この"裏切り者"を今こそダークマター軍に入れる時が来たってことだ」
 しばらくして、ドロシアは察したように言った。
「分かりました。では、残りの4にんは牢屋に入れておきます」
 そして、残りの4にんを連れて出て行った。その後、ゼロが、他の七星に対して言う。
「お前達にも仕事がある。まず、ギャラクティックナイトには、脱獄者が出たときのためにこの星全体を見回ってもらう。ダークマインドとダークゼロは、クリスタルの構造を調べろ」
「仰せのままに……」
「我は貴殿に忠製を尽くすのみです」
「俺に任せろ!」
 そう言って出て行ったギャラクティックナイトと、クリスタルを持って行ったダークマインドとダークゼロ。
「私に何かお力になれることは?」
 残ったナイトメアが尋ねると、ゼロは目を鋭くし、白い体に赤い切れ目を浮かべて言った。
「お前はカービィに悪夢を見せろ! 仲間に虐げられ、裏切られる夢を見せるんだ。カービィに、仲間という存在が信じられなくなるような悪夢を見せ続けろ!」
「了解しました」
 サングラスを光らせ、ナイトメアが姿を消した。
 こうして司令室に残ったのは、ゼロと"裏切り者"だけとなった。
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