オリオンさんの小説

【たたかいの彼方に】 第13話 『クリスタル』


第13話『クリスタル』

「あなた達の憑依が解けたのは、クリスタルの力なんです……」
 裏から突然声が聞こえ、ドロッチェが振り返るとそこには、桃色の髪の妖精――リボンがいつの間にかいた。 
「うわ! お前はあの時の妖精? 何でここにいるんだ? 何でここにクリスタルがあるって分かったんだ!?」
「あなたに突き飛ばされて、その後必死に追いかけたんですよ。あと、クリスタルはとても輝きますから余程の距離でないと見失いません」
「チッ……全くしつこい妖精だな! もう一度ぶっ飛ばしてやろうか!!?」
 殴りかかろうとするドロッチェだったが、それは止められた。後ろにいた巨漢のストロンに、体ごと腕で押さえられてしまった。
「おい、ストロン! その手を放せ!」
「ドロッチェさん。野蛮なことは止めましょう。こんな子をぶん殴ろうなんて、それでも男ですか?」
「うるさいぞ! お前はそれでも泥棒か!? 例え相手が女の子だろうと……」
 だろうと……でドロッチェは言葉に詰まった。そして、とあるダークマターと戦った時のことを思い出した。
(これじゃあ、あのリムロとか言う奴と一緒じゃないか……)
『目的のためなら手段は選ばない』そう言ったリムロと同じ考えを持っていたんだと、彼は少し恥ずかしくなった。
 息を整えて、ドロッチェはリボンに言った。
「……すまない。盗むのに血眼でそれしか頭に無かった。そこまでクリスタルに執着するってことは余程の事情があるんだろうな。だから……それを俺たちに話してくれないか?」
 するとリボンは、パッチリした目を細めて言った。
「はい。まずクリスタルには、すごい力があります……悪を打ち消す力、外に追い出す力が……」
「成程。だからワシらは途中で心を取り戻せたということですか」
「そう。でも、そのクリスタルをダークマター達は何故か欲しがるのです」 
 その時、チューリンが驚きの声をあげた。
「何で? あのダークマターは悪い奴じゃないの? なんで悪い奴が"悪を打ち消す"物を欲しがるの!?」
「それは、分かりません。でも、わたしが住んでいた星……リップルスターは、ダークマターに襲われ、他の妖精達は全員捕まってしまいました。その時に、ダークマターはクリスタルを使って、さらなる悪事を行うって言ってたんです!」
 周りがいつになくしんとする。彼女の深刻そうな表情がそれをさらに助長したかのように見えた。
(さらなる悪事を行うか……)
 邪悪を打ち消す力のあるクリスタルをダークマター達はどう利用するのか――アジトにいたひとたちは、必死にそのことを考えていた。
 すると、その時――
 上からドガンと爆音が聞こえ、部屋が揺れた。何者かがアジトに攻撃を仕掛けている。
 このままでは危ないと察したアジト内のひとたちは、急いで、今までいた地下室から階段を駆け上り、アジトを――出た。
 するとそこには、道化師の格好をしている者が宙を浮いていた。
「おい! アジトに攻撃をしたのはお前か!?」
「ご名答。僕はマルク。君たちを消すためにやって来た魔法使いサ」
 自身をマルクと名乗った者が、怒鳴るドロッチェに言い返した。
「このアジトに何か用か?」
「お前達が持っているクリスタルを奪うためにここへ来たのサ!」
 そう言ってマルクは、口から極太のビームを吐いた。そしてそれはアジトに直撃し、アジトの真っ白の壁を煤けた灰色にし、見るも無惨な形へと変えた。
「さあ、おとなしくクリスタルを渡せ。じゃないと君たちもこんな風になるぞ?」
 と滅茶苦茶になったアジトを顔で指しながら、得意げに言う。しかし、ドロッチェは言い返した。
「渡さないに決まってるだろ? それに、お前はクリスタルを使って何をするんだ?」
 すると、マルクは嘲笑うかのように息を払い、言った。
「欲しがってるのは僕じゃないね。欲しがってるのは、ダークマターの親玉ゼロ! クリスタルを使って"KD計画"を実行するって言ってたのサ!」
「KD計画? それは何だ?」 
「その計画によって"新たな闇の力"が生み出されるんだ。ゼロはそれを使って銀河制覇を達成させるって言ってたのサ!」
「新たな闇の力ってのは一体何だ?」
「――これ以上は喋れないね。どうしても知りたいなら僕を倒せばいい。ま、絶対無理だけどね!!」
 そう言いきった直後に、マルクはもう一度、口からビームを吐き不意打ちを仕掛ける――が、止められた。
「マルクは俺が倒す! その間に、お前達はその妖精とクリスタルを守りながら逃げろ!」
 ドロッチェが冷却レーザーでビームを止めながら、他のみんなに呼びかける。
「了解! 絶対負けるなよ! 俺たちも妖精とこの宝ずっと守り続けるから!」
 とスピンが返事をしたのを最後に、団員とリボンは、逃げていった。
 残った者は、ドロッチェとマルク。ふたりだけとなった。周りは、雪が積もる白の世界。真っ白の画用紙に色のついた点2つ付けたような情景となった。
「……追いかけないのか?」
 降り続く雪の中、ドロッチェが尋ねる。すると、マルクが馬鹿にするように笑いながら返事した。
「わざわざ追いかけるなんて無駄過ぎるのサ。僕は空間移動使えるし、もうとっくにクリスタルが奪われているかもしれない。もうすぐ沢山のダークマター達がやってくるのサ。この星の近くにある星は占領下にされてるのサ。ウルルンスター、ホロビタスター、コレカラスター、リップルスターは ぜーんぶ僕たちダークマター軍の物になってるんだよ」
「……それは、本当に言ってるのか?」
「僕は嘘が大好きだけどこれは本当の話なのサ。時期にこのブルブルスターを占領下にしようと、ダークマター達が沢山やってくる。クリスタルどころか、逃げた奴等の命すら奪われてるかもしれないよ」
 他のひとたちを逃げさせたのは正しかったのか。マルクにそう言われたドロッチェはここに来て、自分の決断に自信を無くしてしまっていた。
「プクク、顔が強ばってるぞ? 助けに行くか? ま、行ったところで無駄だけどね!」
「いや、あいつ等は絶対負けない。……俺は仲間を信じている。俺はせめてお前だけでも倒してやる!」
「フフ……その意気込み、根からへし折ってやるのサ!」
 そして、ドロッチェのレーザーとマルクのビームがぶつかり合った。 

 一方。ドロッチェ以外の団員とクリスタルを抱えているリボンは、変わらない景色の中をずっと逃げ続けていた。
「みなさん。こんなに離れちゃって……ドロッチェさんと合流できるのですか?」
 リボンが飛びながら尋ねる。すると、見ていて疲れが非常に分かる程の顔をしているドクが返した。
「……ワシが作った無線がある。これでドロッチェ殿と通信をとれるから大丈夫だ……それより、何故ドロッチェ殿の名前を……」
「わたしがクリスタルを持って逃げているときに、ドロッチェさんと出会ったんです。そのときは、クリスタルを無理やり奪われて、気性も荒くて
 怖いひとだって思ってました。でも、いざという時はとても頼りがいがあって、すごく強くて……どこかが、"カービィさん"と似てるなって思いました」
 リボンがそう言ったとき、他のひとたちは驚きの表情へと変え、そのうちのひとり、ストロンがおそるおそる尋ねた。
「あ……あんた、カービィを知ってるのか!?」
「そうだけど……あなた達もカービィさんを知ってるんですか?」
「知ってるぞ! あのピンクい玉のやつだろ? オラ達はカービィとは友達なんだ」
 予想もしなかった事実に、リボンは唖然とした。ドロッチェ団とカービィは知り合いだった。それでもしばらくすると、ホッとした気分になっていくのが分かった。
自分の仲間と知り合いなら、より気軽に話し合えると思ったからである。
 リボンがそんなことを思っていた時、上空から、大量の黒い光線が降ってきた。上を見るとそこには、大量の人型ダークマターがいる。
「おとなしく、お前達が持っているクリスタルをよこせ! ゼロ様からの命令だ!」
 と剣を突き出す。ブルブルスター侵略を兼ねて、そこに逃げ込んだ妖精からクリスタルを奪えという命令も下されていたようだった。
「さもないと、お前達の命は無いぞ!」
 しばらくして、多数のダークマターが一斉に襲いかかってきた。思わず逃げたくなるほどの威圧感がある。
 しかし、大いなる力を求める怪盗団は、これにたじろくことは無かった。
 まず、ストロンが巨大な体から出る強力なパンチを、ダークマターにお見舞いした。すると、今度はドクが、なにやらひとつ目の生き物を模した機械を彼の体の何処から出るのか、取り出し、起動させた。その機械は、手の場所からビームを発射し、ダークマター達にダメージを追わせていく。
 しかし、ダークマター側も、これで諦めるほどヤワではなかった。
「待機している援軍は総突撃しろ!」
 どこかでそう声が聞こえたと思ったら、今度は上空から黒い玉に1つ目玉をつけ、まわりにオレンジ色の鱗をつけたような姿をした目玉型ダークマターが、先ほどの人型よりも遙かに多い数で、空から飛んできた。こちら側は指で数えれる程のひと、に対し、ダークマター側は、何百ものの隊で襲いかかってくる。それに援軍まで来てしまっては、どんなに力持ちでも、どんなに優秀な機械があっても、相手に押されてしまうのはほぼ確定となった。
 だが、やってきたのは、どうやら待機していたダークマター達だけでなかったようだ。
 どこから現れたのか、ネコが、七色に輝く剣を振り、電気を帯びた小鳥が2つ目があるダークマターのような物体にラジコンで操作をされながら動きまわり、五芒星の乗り物に乗ったピンク色のスライムが突撃で、黒雲に怒濤の攻撃を仕掛けていった。
「リボンだったっけ? 私達が来たから大丈夫だよ!」
 妖精リボンの方も、誰が来たのかがすぐに分かった。何度もポップスターに訪れていたうちに知り合ったひとたち――かつてカービィと共に旅をした冒険者達だった。
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