オリオンさんの小説

【たたかいの彼方に】 第11話 『逃げて奪われ』


第11話『逃げて奪われ』

 ダークマター軍の侵略は止まることを知らず、遂に、ポップスターと友好関係にあった妖精の星"リップルスター"を占領し、
そこに住んでいた妖精は、一斉捕獲された。
 ダークマター軍が狙っていたのは、妖精達では無く、リップルスターのどこかに隠されている秘宝"クリスタル"。
しかし、その秘宝はどこを探しても見つからず、ダークマターの親玉ゼロも焦りと苛立ちを募らせていた。

「何故だ……何故クリスタルが見つからない! 大量のダークマターどもを送りつけているのに……」
 ゼロが目を鋭くして言った。マルクの勝手な行動も兼ねて、機嫌は最悪だった。そんな時――
「ゼロ様! 朗報でございます!」
 目玉型ダークマターが入ってきた。息を切らしている様子からとても重大な情報と取れる。
「朗報とは何だ? 言ってみろ」
 息を整えた後、ダークマターは言った。
「遂に……遂にクリスタルの場所が分かりました!」
 ゼロが目を丸くする。
「なんと! 何処だ、何処にあった!?」
「……それが、桃色の髪の妖精によって、持ち出されていることが分かりました。第3番部隊員からの情報です」
「ククク……そうか。ならば、その忌々しい妖精からクリスタルを奪おう。……第14番部隊に命令を下す。
 桃色の髪の妖精が持ち出したと言われるクリスタルを奪い取れ! あと、リップルスター侵略に関わった第3,4,5番部隊は
 近隣の星を全て、ダークマター軍占領下にしろ!!」
 ゼロの声が部屋中に響いた。

 一方、桃色の髪の妖精――リボンは、クリスタルを抱え宇宙を飛び続けていた。
 ダークマターのリップルスター侵略が始まった時、リボンは自身の安全を犠牲にして、一目散にクリスタルのある場所へと行き、
中にあったそれを持ちだし、とにかく逃げたのである。
 行く当ては無い。ただ、いつダークマターが襲って来るか分からない恐怖に襲われながら、必死に広大な宇宙を飛んでいた。
 しかし、その恐怖は、とうとう現実となってリボンに襲いかかろうとしていた。
 捜索命令を下された第14番部隊。その隊長――ダーク・リムロが、リボンを発見してしまったのだ。
「……見つけた。青色に輝く物を持っている。あのピンク髪の妖精で間違いないだろう……皆の者! こいつから水晶を奪え!」
 リムロがそう叫ぶと同時に、大量のダークマターがリボンに襲いかかった。
(どうしよう! 気づかれちゃった!)
 リボンもダークマターの襲来に気が付き、飛ぶスピードをあげた。起動を大きくそらして、襲ってくるダークマター達を揺さぶり、
背後から飛んでくる黒い光線も体を回転させながら、かわし続けた。
「こいつ、意外とすばしっこいぞ」
「くそ! 何でこんな妖精1匹ごとき捕まえられないんだぁ!」
「落ち着け。我々に不可能はない! しぶとく追い続けろ! そうすれば、その妖精も疲れてくるはずだ!」
 リムロの隊長の風格漂う声で、配下のダークマター達を指揮する。
 キレて暴走する第1番部隊長ダーク・リムル。女の子との接触を露骨に望む変態の第8番部隊長ダーク・リムラとは違い、抜け目の無さそうな隊長であった。

(はぁはぁ……疲れたよ……)
 ダークマターの追跡はしぶとく続けられ、リボンも体力を、かなり消耗していた。
(でも、ここでクリスタルを奪われるわけにはいかない!)
 その思い1つで彼女はここまで体を動かし続けていた。しかし、もうそれだけではどうにもならない程にまで疲れ果てていた。
「妖精も疲れを見せ始めている! このチャンスを見逃すな!!」
 リムロの言葉と共に、追いかけるダークマターの速さがさらに増す。もうダメ、と、リボンには諦めの気持ちが表れ始めていた。
 その時、後ろから大きな爆音と断末魔が聞こえた。
 思わず振り返るリボンの視界には、赤い帽子を被り、マントを羽織ったネズミと、ボロボロになったダークマター達がいた。
「やい、誰だお前は! 俺達の計画を邪魔しやがって……ただじゃおかねぇぞ!」
 ダークマター達の中のひとりが怒鳴り散らす。しかし、謎のネズミはものともせず、どこからか爆弾を出してダークマターを攻撃した。
先ほどの爆音は、どうやらその爆弾が原因のようだ。
「皆の者! こんなわけの分からない奴にひるむな。まずは、全員であのネズミを消せ!」
 リムロがまた指揮をとり、配下のダークマター達は一斉にビームを放った。しかし相手はたじろく様子もなく――
「それで俺を倒す? ……あまり笑わせるなよ」
 と言いながらステッキから巨大なレーザーを発射した。レーザーは黒いビームをはじき返し、予想外の出来事に動揺した
ダークマター達に見事直撃。そして直撃した者達は氷付けになり、身動きが取れなくなっていった。
「……くそ。ここはまず退却だ……引き上げるぞ!」
 やがてリムロはしぶしぶと、レーザーに当たらなかったダークマター達を引き連れて逃げていった。

(助かった……?)
 宇宙空間に残った者はリボンと、ダークマターを追い払った謎のネズミだけとなった。結果的にクリスタルは無事に済んだのである。
 しばらくして、助けてくれたひとにお礼を言おうと思い、リボンは話しかけた。
「あの……誰かは分かりませんが、助けてくれてありがとうございます」
 すると、無言だった者は急にリボンに襲いかかった。彼もまた――クリスタルを狙うひとりだったのだ。
「ふふふ……馬鹿な奴め。俺は、お前を助けるためにあの変な黒い奴を追い払ったんじゃないんだよ……さあ、そのクリスタルをよこせ!!」
「えっ。じゃ……じゃあ、あなたは、だ……誰ですか!?」
「俺はドロッチェ。大いなる力を求めて宇宙を駆けめぐる怪盗……泥棒だ。リップルスターとかいう星にあると言われたクリスタルを
 狙ってここらへんの宇宙を彷徨ってた。するとお前がちょうど良く持っていてね……妖精。運が悪かったな!」
 ドロッチェと名乗った者は鋭い目つきと、恐怖を煽る口調でリボンを圧倒し、彼女の抱えていたクリスタルを強引に奪った。
「返して下さい!!」
 奪われることに抵抗したリボンを、ドロッチェは思いっきり吹っ飛ばし、
「返せと言われて返す泥棒がいるかってんだ!!」
 と捨て台詞を吐いて、猛スピードで遠い彼方へ飛んでいった。

「ふぅ。早くストロン達の所へ帰らないとな……」
 ドロッチェがそう呟く。彼の口から出たストロンというのは彼の仲間であり、他にも発明家のドク、素早い身のこなしのスピン、
活力のある沢山のチューリン達をメンバーとする"ドロッチェ団"なる怪盗団を作っていた。勿論、ドロッチェはそのリーダーである。
 他のメンバー達は、リップルスターの近くにある極寒の星、ブルブルスターにアジトを作り、リーダーと共に、クリスタルを手に入れるために、隙を見計らってリップルスターの潜入しては散策を行っていた。目的は強大な力を手に入れるため――と、ダークマター達と似ているものであったが、あちらが目標として掲げている銀河征服などの野望は一切持っておらず、寧ろ珍しい物への単純な興味も混じっていた。目的が同じと言って、ダークマター達と協定を結ぶことも全くしていない。
 しばらくすると、メンバーのストロンから通信が来た。
「……ストロンか。とうとうクリスタルが見つかったんだ! 目的達成だぜ!」
 クリスタル入手の喜びを伝えるドロッチェだったが、相手側はそんな状況ではなかった。
『ドロッチェさん! 大至急アジトに戻って下さい! 変な黒雲達に襲われて、とにかく大変なんです!!』
「何? ……分かった。今すぐ行くから待ってろよ!!」
 何事かと思い、ドロッチェは猛スピードでブルブルスターに向かって行った。
page view: 1636
この小説を評価する:                   (5)