オリオンさんの小説

【たたかいの彼方に】 第1話 『行方不明者』


たたかいの彼方に

第1話『行方不明者』
  
「はぁ〜今日もよく寝た〜」
 あくびを1つした真っ黒いおにぎりのような形をしたカービィの同居――グーイは、家のドアを開け、緑だらけの景色を見てため息をついた。
(カービィ・・・今日も帰ってこないな)
 カービィが、散歩に行ってくると言ってから、ずっと帰ってこなかったからだ。
 それでもグーイは、帰ってくるのを毎日独りで待ち続けている。
 ドアを閉め、ベッドでまたもう一眠りをしようとしたとき、急にドアを叩く音がしたので、グーイは驚きながら開けてみた。すると、
「グーイ。今暇? 久しぶりに遊ぼうと思って、おいらとクーとカインでやって来たんだけど」
と尋ねる巨大なハムスターのリックがいた。
「久しぶり、リック。僕はこの通り暇だよ。でも、カービィが15日前に家を出て行ったきり戻ってこないんだ」
「え? ・・・・・・じゃあ、カービィはどこ行ったんだよ?」
「分からない。『ちょっと散歩する。すぐ帰るから』って言ってそれっきりなんだ」
 そう言われた3にんは不思議に思い、周りはしんとする。
「・・・・・・これは、何かあったのかもしれないな」
リックとグーイはさっきの声の主、クーの方に顔を向ける。
「クー。何かあったって、一体何があったんだよ?」
「そんなことは分からないさ。ただ、カービィがわざわざ嘘をつく奴にも見えないし、何らかの事情があると思うのが普通だろう」
「いや、実は嘘を平気でつくひとかもしれないよ」
 冗談半分に言ったカインは、クーを始め、皆から冷たい視線を浴びてしまう。
「・・・・・・ごめんなさい。でも、仮に何かあったなら放っておくわけにはいかないよ。これからずっと帰ってこなかったら、困るのは僕たちだと思いません?」
 今度はカインが険しい表情に変わる。
「もし事件が起きたら大変ってか? でも、こんなあきれ返るほど平和な町で、そうそう起きるものなのか?」
「平和ボケしてるぞリック。過去に何度事件が起こったと思っているんだ。幾度となるダークマターの襲来。 それに、月と太陽がケンカしたときも、"マルク"っていう変な道化師がこの星を征服しようとしてたんだぞ? あと空の上にある鏡の国が大変になったことや、世界が絵に変えられそうになったこと。全て、カービィ の活躍で事件はおさまってるんだ」
「そうかもしれないけど、みんな考えすぎだよ。・・・・・・そうだ。それならみんなで競争しようぜ。カービィを探せ。一番始めに見つけたひとには、おいしいご馳走用意してやる! ・・・・・・コックカワサキに頼んで」
「おまえが作るんじゃないのか?」
「クー。リックの作った料理なんてまずいに決まってるから、そういうツッコミは駄目だよ」
「まずいとは限らないだろ!」
 そんなやりとりの末、リック、クー、カイン、グーイの意見の合致でカービィを探す競争が始まった。

 赤く照らされたプププランドの草原に、7にんのへたばっている姿が見えた。
「ふにゃ〜疲れたナゴ。全く、誘いを受けるんじゃなかった」
「僕も疲れました。・・・・・・もう帰っていいかな?」
「ピッチは飛べるからいいよ。私なんかもう歩く気もしないわ」
途中で出会った猫のナゴ、小鳥のピッチ、スライムのチュチュをも誘ってカービィを探す競争を夕方までしていたのだ。
「ん〜、何でどこにも居ないんだろう・・・・・・」
と草原に寝転がりながらリックが言い、他の6にんもしかめた顔をしていた。
 その時・・・・・・
 どこかで大きな爆発したような大きな音がした。何やら悲鳴も聞こえてくる。
 7にんはさっきの競争も忘れ、急いで音のした方向へ走った。すると――
「お前は・・・・・・ダークマター!」
 そう言うクーの視界には、"ダークマター"と呼ばれた、剣を構えた1つ目の者がいた。過去に2度もポップスターを襲った、
因縁の敵でもある。そのダークマター襲来から星を救った英雄こそ、今、行方の知れない"星のカービィ"であった。
「フフフ、そうだ。我々はもう一度、この星を征服するために復活した」
 そう言ってダークマターは剣をもう一度振り、近くにあった家を全壊させた。
「何で、復活したナゴ?」
 と尋ねてみるが、
「そんなことをお前等に教える必要などない!」
 と言いながらダークマターは剣を突き刺して襲いかかった。
7にんが、危ない、と思ったその時、風を切る音がした。
 そして、剣で斬る音がした。斬られたのは7にんではなく、ダークマターだった。
「皆・・・・・・無事か?」
 気が付けば、目の前にいたのは、青いマントを着たカービィと同じくらいの体型をした者だった。
「あなたは、誰?」
 カインがおそるおそる尋ねる。すると、たたずんでいた者は振り返り、
「私はメタナイト。最近突如出現した、暗黒物質を倒すために、プププランド周辺を渡っているのだ」
 騎士の風格を漂わせる口調で話すメタナイトは、さらにこんなことを言い出した。
「しかし、最近それだけでは侵略を防ぎきれなくなりつつある。
 カービィはいるか? あいつは確か何度もその暗黒物質と戦った と聞いている。あいつに戦闘の準備をさせるんだ」
 と言った直後、メタナイトは首をかしげた。目の前にいた7にんが急に深刻そうな顔をしていたからだ。
「カービィ、いないのよね」
「おいら達、ずっと探しているのに」
「それよりカービィは、15日前くらいからずっと帰ってこないんだ」
 それを聞いたメタナイトは仮面越しでも分かるほど険しい表情に変わった。
「いないだと? それは困る! このままだと暗黒物質の侵略を止めれない。
 しかも、奴等。なぜだか分からないが異常なまでに士気が高いんだ。一刻も早くカービィを見つけ出すんだ。でないと・・・・・・」
「カービィさん、もしかして僕たちにも言わずにダークマターを倒しに行ったのでは・・・・・・」
 とピッチがメタナイトの話の途中に、こう切り出した。
「ピッチ。なんでそんなことが言えるんだ?」
 とクーが尋ねてみる。
「最近、カービィさんは僕たちを頼りにしなくなったと思います。最近、カービィさんはいつも独りで冒険に出る。僕たちには何も言わないで・・・・・・だから今回のダークマター襲来も、カービィさんはあらかじめ知っていて、みんなに言わずにひとりで立ち向かって行った。そんな気がするんです」
「それは本当なのか、ピッチ。私はできる限りの情報を入手しておきたい」
「それは分かりません。でも、そうしか僕には考えられません。だからそう言ったのです」
 カービィの失踪は、ダークマターの襲来と繋がっている。それはピッチに限らずこの場にいた者全員が感じ取っていた。
 しばらくして、リックがこんなことを言った。
「・・・・・・助けに行こう! いくらカービィでも独りじゃ心配だ!それにまたダークマターがこの星を侵略するなら止めなきゃ!」
「おっおい! まだ本当かどうかも分からないことを信用するな」
すかさずクーが突っ込むが、リックも負けじと言い返す。
「でも、このまま何もしないわけにはいかないだろ?」
「それはそうだが、やっぱりここは事実を確認してからの方がいいだろ。カービィは実は散歩に夢中になってただけかもしれないし・・・・・・」
「確認できるの?」
と今度はカインが落ち着いた口調で会話にはさまった。
「確かに、ダークマターは今回かなり力をつけている。僕たちだけで行くのは無謀かもしれないね。
でも、やっぱり先にダークマターを倒しに行く方が良いと思う。ここは落ち着いて行動しようって言うクーの気持ちも分かる。でも、ぐずぐずしてる暇はないと思うよ。それに僕も・・・・・・カービィがダークマターが復活したことを知っていて、それを僕たちに言わずに、ひとりで全て背負い込んで特攻している予感がしてたまらないんだ!」
 そう重い感じで話すようになっていくカインに、周りはしんとなる。しかし、そこでチュチュがみんなに檄をとばした。
「決まりね! カービィを助けに行くわ。私達はカービィの仲間。ここでおじけついたら、情けない、って言われるわよ。」
「僕もカービィを助けに行きたいナゴ!」
と他のひとたちもダークマターを倒しに行くことを決意し始める。そして、しばらく無言で佇んでいたメタナイトも、
「・・・・・・十分な理由だ。ダークマターを倒しに行こう!」
 剣を掲げ、大声で言った。


「すごいねぇ〜メタナイトさんは、こんなすごい戦艦を持っていたんだ〜」
 メタナイトに、とある地下室に連れてこられ、その中に勇ましく佇んでいた戦艦――ハルバードを見た7にんは、驚きの声を上げていた。しかし、
「でもグーイ。艦首のほう見てみろよ。自分のマスクつけてるぜ・・・・・・」
 とリックが笑いをこらえながらグーイにそう言った。
 その瞬間、リックは感じた。背中にある寒気を。
 おそるおそる後ろを振り返ると、沢山の毛が、ばっさりと・・・・・・
「あの艦首を馬鹿にしてはいけないナゴ・・・・・・」
 とナゴを始め、毛がないチュチュやカインでさえ、身を震わせていた。
その中で、生真面目なフクロウもいた。
「お前等、よくそんな気楽に居られるな。今から戦いに行くって言うのに」
 そんなクーに対し、
「もしかして、怖いのかな?クーは寧ろ独りに強い方だと思ったけど・・・・・・」   
 とにやけながら言うカインだったが
「違う! もう少し気を引き締めたらどうだ、って言ってるんだ。俺は仲間のためなら命をも捨てる気で行くからな!」
とあっさりクーは言い返した。そして、仲間のためなら・・・・・・という言葉は他のひとの心に銘記されていた。
 それ程激しい戦いになると、8人は予想していたからだ。
 戦艦ハルバードに乗り込んだ頃の彼等にはもう笑顔はなかった。
「これからは宇宙の旅になる。皆、心してかかれよ。」
「メタナイトだったっけ? 目的地ちゃんと分かっているのか?」
そう口にした後、それは杞憂だったとリックは思った。パネルに写った銀河の隅に、どす黒い星が写っていたから。
「私の予想が合っていれば、あの黒い星がダークマターの本拠地。目的地はそこだ。準備はいいな!」
 過去にカービィと共に冒険した仲間達は同時に、声を上げた。
    
 しかし、カービィが急に姿を消したのは、ダークマターを倒しに行ったわけではなかった・・・・・・
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