オトモカービィさんの小説

【闇と鏡】四章 ―僕が守ろう―


「大王様!」
ワドルディに覆いかぶさるようにして、デデデは気を失っていた。
背中には大量のガラス片に酷似したものが突き刺さっている。ワドルディの頬に赤い液体が垂れてくる。血だ。
「大変だ! 大王様が……っ!」
城の者が次々と駆けつけてくる。次第に、その数は十を超え最後には城の全員が集まった。デデデの人望を確かめることができる瞬間であった。
ワドルディが覆いかぶさっているデデデを引きずって、部屋の外に出る。デデデの惨状を見ると、皆が騒ぎ立てた。皆、口々に自分の考えを言ってまとまりが無くなっていた。
「お、落ち着いてください!」
場が静まり返る。ワドルディが、震えた声で叫んだのだ。目から大粒の涙を流し、膝も震えている。
「医者を、呼ぶのでは、うぇ…… 遅、すぎます。ズズ…… まず、ボンカ、ひっく…… ボンカースさんと、フロスティさんが大王、様を、背負って病院まで」
泣きながら話しているものだから、嗚咽も交じって何を言っているのか分からなかった。だが、その姿に心打たれたものが大勢いた。
ワドルディに呼ばれた二人は、手際よくデデデを担架に乗せて走り去る。皆は既に、落ち着きを取り戻し次の指示を待っていた。きょとんとしているワドルディの前に、バグジーが歩み出る。
「メタナイトさんと大王様がいない今、大王様の側近でもあり、友人でもあるアンタの指示に従うよ」
訳も分からなく、涙が出た。泣き続けるワドルディを見て、皆は笑いだす。
「やっぱり、いつものワドルディだ」
「珍しく格好いいと思ったのに」
ワドルディも、つられて笑った。

「では、僕の指示に従ってください」
皆が僕を注視している。僕の一言で、皆は動くんだ。大王様は病院に連れて行った。じゃあ、後は……
「ハボキさんとブルームハッターさんは大王様の部屋を掃除してください」
「了解」
「よしきた」
二人は、気持ちのいい返事を返して大王様の部屋に入っていった。
「メタナイツさん達は城の警護を」
「了解した」
ソードナイトさんとブレイドナイトさんが同時に返事をして、通信機を取り出す。広場には、瞬く間にメタナイツが集まっていた。ソードナイトさんが指示を出すと、半分は城の外に。もう半分は城に残って警護を始めた。
「そして、他の人達は……」
皆の顔を見回してみる。しっかりと目を僕に向けて、次の指示を待っている。
「他の人達は、いつ大王様が帰ってこられても良いように準備しておいてください」
「単純だが、結構重要なことだな」
与えられた指示が、以外に他の指示よりも重要だということに気付いた皆は次々と自分の持ち場に戻っていった。
どっと疲れが溢れてくる。指示を出すなんて、簡単なことだと思っていた。だけど、実際に体験してみるとこんなに緊張するものだとは思わなかった。大王様は、いつもこの緊張や恐怖と戦っていたのだろうか。やはり、凄い人だ。
誰にも気づかれないよう、静かに自室に戻った。壁のボタンを押す。すると、本棚が横に動いてもう一つの部屋が現れる。
「ここに入るのも久しぶりだなあ」
広い部屋の真ん中に、ぽつんと台座が置いてあった。そこには、槍が置いてある。カービィさん、メタナイトさん、大王様と僕の四人で一緒に冒険をした時に使った槍。あの時に、初めて誰かを傷つけるときの心の痛さを知った。
それから、自分は戦わないようにと決めていたのだ。しかし、状況が状況だ。そうもいかなくなった。ダークマターが復活したということは、ゼロとゼロツーも復活したってことだろう。それに、ナイトメアが復活した可能性もある。
「よいしょっと……」
槍を手に取って振り回してみる。うん、腕は衰えていなかった。
「デデデ イなイ」
「コこ?」
部屋を隠し忘れた。気が付けば、二体のダークマターが部屋に侵入してしまった。
「デデデ チガう」
「ワドルディ てキ」
二体のダークマターが襲い掛かってくる。だけど、その剣技は何度も見てきたメタナイトさんの剣技には遥かに劣るものだった。避けられる。今なら、避けられる。
僕は、攻撃を避けながらぴょんぴょんと飛び跳ねた。目で追って剣を振っているようなダークマターには、ぴょんぴょん飛び回る予測不能なものは戦いにくいだろう。
片方のダークマターが剣を思い切り振る。だが、剣は空を掻いた。力のやり場を失って、体勢を崩した。すかさず、槍の先端で胸元を突く。
「ウぅ」
そのまま、傷口から黒い気体を吐き出して倒れる。もう片方のダークマターが怒り狂って突進してきた。甘い。力任せに攻撃しても、しっかりと技術を用いた攻撃の方が遥かに効果的なのだ。
「こっちだよ」
槍の柄でダークマターの側頭部を思い切り殴る。気を失ったのか、そのままの勢いで床に倒れこんだ。
「悪者でも、良い気分はしないや」
台座に、槍と一緒に置いてあった青色の布を手に取る。この布は、大王様がカービィさんにリベンジした時、マホロアさんの宇宙船のパーツを集める時にしていたバンダナだ。背後で物音がする。倒したはずのダークマターが起き上がってきたのだ。
ダークマターが破裂する。ガラスの破片に似た物が部屋中に飛び散る。大王様は、この不意打ちにやられてしまったんだ。でも、僕があのタイミングで部屋に入らなければ良かったのでは?
……気に病んでいても仕方ない。大王様に迷惑をかけてしまったのなら、僕は僕なりの償い方をしよう。バンダナを頭に巻く。
今まで、僕は大王様に守られてきた。カービィさんに守られてきた。皆に守られてきた。なら、今度は僕が。
「僕が大王様を守ろう。カービィさんを守ろう。皆を守ろう」
僕は、そう心に誓ってバンダナを強く巻き直した。
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