オトモカービィさんの小説

【闇と鏡】一章 ―リンゴの木―


一体、どれ程歩いたのだろうか。
ダークメタナイトは、シャドーカービィを背負ったままひたすら森の中を走り続けていた。
立ち止まって辺りを見回す。何度も見てきた光景が広がっていた。何度も通りかかったので、木の本数も覚えてしまった。
「……どうやら、この森も俺たちをあまり歓迎していないようだな」
そう呟いて、再び走り出す。ダークメタナイトの体力は限界に近かった。だが、ここで立ち止まるわけにはいかない。
直ぐそこまで迫っているのかもしれない追手から逃げるために、長時間立ち止まることは許されなかった。
背中で寝ているシャドーカービィに目をやる。泣き腫らした瞼が痛々しかった。ダークマインドに裏切られたと思っているのだろう。
しかし、シャドーカービィに真実を話してやることはできない。ダークマインドが身を挺して自分等を逃がしてくれたことを知れば、一目散に鏡の国に帰ってしまう可能性があったからだ。
「あそこダ」
「ニガスナ」
「つカマえろ」
両脇の茂みからダークマターが一斉に飛び出してくる。
「クッ……」
咄嗟に、地面を蹴って跳びあがる。ダークマター達は玉突きのように、互いにぶつかり合い、弾き飛ばされた。
すかさず、全速力で走った。体制を整えたダークマターから次々と追いかけようと走り出すが、直ぐに見失った。いや、見失わされた。
ダークメタナイトが曲がったはずの曲がり角が
――――消えていた。

ダークマター達を振り切ることには成功したようだったが、更に奥深くに迷い込んでしまった。
「こんなところで何をしておる」
唐突に、声が響いた。しかし、それらしき人影は見当たらない。きっと、疲れた所為で幻聴でも聞いてしまったのだろう。
「何を無視しようとしておる。ここじゃ」
声がした方を振り向いてみても、巨大なリンゴの木以外何もなかった。いや、リンゴの木には目と口と思われる穴が開いており、丁度その間に鼻のように枝が生えていた。
もしかして、このリンゴの木が喋っているのだろうか。……あり得ない話ではない。鏡の国にも、似たような老人がいた。巨大な柱に人の顔のような窪みができた、キングゴーレムという名の老人が。
試しに、枝を切っ先でつついてみた。
「これ。出会い頭に鼻をつつく奴があるか」
口と思われる穴が動いて、声を発した。間違いなく、声の主はこのリンゴの木だ。
「何の用だ」
出来るだけ、声のトーンを低くして言った。まだ、敵ではないと決まったわけではないのだから、心を許していいわけではない。
「全く…… 近頃の若者は礼儀がなっとらん。誰のおかげで逃げられたと思っておるのじゃ」
来た道を振り返ってみると、何本もの木が生い茂っていて通れそうになかった。このリンゴの木は道を塞いだのか。……見知らぬ俺のために?
「カー坊から聞いておるよ。鏡の国でできた友達だとな。それにしても、話に聞いていた通りメタ坊ともカー坊ともそっくりじゃな」
リンゴの木の目が驚いたように大きく広がった。……ような気がした。カー坊とメタ坊とは恐らく、カービィとメタナイトのことを言っているのだろう。
かつて、ダークマインドが鏡の国を征服しようとした時のこと。俺はあいつを四つに分けた。それでも、あいつは……あいつ等は力を合わせてダークマインドを倒した。が、止めは刺さなかった。
手を差し伸べたのだ。完全に止めを刺すことができないのは、正義のヒーローとしての性なのか。それとも、何か思惑あってのことなのか。
「ウィスピーさーん! 今日もモデルになって欲しいんですけどー!」
そう言いながら、森の奥からベレー帽を被った人間の少女が現れた。右手には画材道具。左手にはキャンバスを持って走っていた。……実に走りにくそうだ。
「ほっほっほ。いいじゃろう。だが、客人が来ているのでな。少し待っててくれんかのう」
リンゴの木が愉快そうに笑いながら言うと、ベレー帽の少女は俺とシャドーの顔を何度も見比べていた。
「あなた達が、カー君の言っていたシャドーさんとダークさん?」
どうやら、俺達はプププランドでは割と有名人らしい。カービィは一体、どれ程の人に俺達のことを言って回ったのだろうか。
「思ってた以上に似てるから、びっくりしちゃった。初めまして。アドレーヌです」
ベレー帽の少女がアドレーヌと名乗った直後、上空から二体のダークマターが現れた。
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