オトモカービィさんの小説

【お題小説】 〜被り物〜節分とメタナイト


ここは地球から遠く離れた星、ポップスター。
ポップスターにはプププランドという王国がある。
王国といっても王様が独裁政治をしているわけでもなく、王様が悪者から狙われたりもしない。
そう、一言でまとめると平和なのだ。どれくらい平和かと言うとあくびが出るほど平和。でも、事件がおきたりもするので適度に平和な国である。
戦艦ハルバードの自室で私――メタナイトは起きた。今日が何の日か、カレンダーを確認すると黒い文字で節分と書かれてある。
「そうか、今日は節分だったな」
起きたばかりの私はもちろん仮面など被ってはいない。寝ているときまで仮面を被っていたら蒸れてしまう。寝ているとき、仮面は棚の上に置いてある。
しかし、
「む。おかしい、確かにここに…… あれ、仮面がない……?」
思わず口に出してしまった。だが、おかしい。確かに棚の上においていたはずだ。
寝る前に何度も確認を済ませた。床を探しても見つからない。棚の裏も、カーテンの裏もベッドの下も。隅々まで探したがまったく見つかる気配がない。
どこへ置いてしまったのか。どこへ行ってしまったのだ、マイマスク。部屋中探しても見つからない。
不味い。これは不味い。このままでは素顔を見られてしまう。駄目だ。それだけは絶対にあってはならない。
何故かって? それは…… 恥ずかしいからに決まっている。どうしよう、このままでは節分の豆まきにすら参加できない。
「ノオオォォォォオォォォ!!」
大声で叫んでみた。しかし、そんなことで見つかるはずなんてない。
それでも、大声を出さずにはいられなかった。とにかく、焦りすぎて何も分からなくなってきた。
「メタナイト様! 一体どうしました!?」
廊下で、部下が慌てて走ってくる音が聞こえる。
不味いぞ。これは本格的に不味い。何かこの窮地を脱出できるものは……、あった。あったのだが、これを被るにはいささか抵抗を感じる。
昨日、カービィに「いつも同じ仮面かぶってるんだからたまには違うものでも被りなよ」と言われて渡されたものである。
これを被ってしまうと今日のイベントの主役にされかねない。だが、しかし。素顔を晒してしまうよりはましだ。背に腹は変えられん。

「それで? 部下には不審者だと間違えられ、待ち行く人々には豆を投げつけられ、もう散々だと」
陛下は私の話をよく聞いてくれる。もう、三十分は話しているが嫌な顔一つせずに聞いてくれた。
一隊をまとめる隊長にとってお互い信頼しあっている部下から不審者だと間違われるのは結構、傷つく。おまけに、しばらく気まずい雰囲気が流れることにもなる。
陛下は少し困った顔をしながら頭を掻いていた。何か言いにくそうなことでもあるかのように。
「あー、メタナイト。折り入って頼みがあるんだが」
嫌な予感しかしなかった。
「こんなときにスマン。今日の節分の鬼役をやってくれないか」
私にそう言って、陛下は頭を床に打ち付けそうな勢いで土下座をした。

土下座なんてされたら断ろうにも断れないじゃないか。しかも、国をまとめる陛下にだ。
私も私で、ギャラクシアの代わりに棍棒を持って走り回っていた。
「本望ではないが素顔を晒すよりはましだ。素顔を晒すよりはな」
大事なことなので二回言いました。そろそろいつものような調子を忘れてしまっている。
いけない、いけない。大きく息を吸うと、私に向かって豆を投げてはしゃいでいる子供たちに向かって叫びながら走った。
「ガオォォォ!! 貴様らを食べてしまうぞォ!!」
「ねぇねぇ、メタナイト。何してるの?」
声をしたほうを振り向くと、後ろにはピンクボール。この状況下で、一番出会いたくない人物に出会ってしまった。
とりあえず、他人のフリをして子供たちを追い掛け回した。しかし、ピンクボールはしつこくついてくる。まるで悪魔。流石はピンク色の悪魔。その名に恥じない悪魔っぷりだ。
放っておいてくれ。貴様がくれた面がもう少しまともなものだったならこんなことにはならなかったのだ。
「昨日プレゼントしたときは絶対被らないって嫌がってたのに。何かあったんでしょ?」
「カービィ、やはり貴様はいい奴だった。こちらこそすまない」
「えっ。なんのこと?」
鬼のお面を渡したのも、悪気があったわけではないのだろう。
カービィはプププランドを幾度となく救った英雄だ。相談してみるのもいいかもしれない。
「カービィ、笑わないで聞いてくれ―――」

全てカービィに話してみると、タックの仕業かもしれないと断言された。
薄暗い森の中を歩いていくと、木で作られた小屋があった。どうやらここがタックの隠れ家らしい。
カービィは立ち上がろうとする私を手で抑制すると、タックの隠れ家の目の前に立った。
そして、あろうことかノックをし始めたのだ。何をやっているんだ。そう言いかけて私は黙った。何か考えているに違いない。少しの間が開いて、扉が開いた。
「ありゃ、これはこれはカービィじゃないか。ひさしぶりだなぁ」
「うん、久しぶりだね。今日は聞きたいことがあってきたんだけどさ、今日は何を見つけたの?」
カービィは、客を装っているのか邪気は一切感じられない。
「ああ、それがだね。今日の朝、手に入れちゃったんだよ! ほら、これこれ」
タックはそう言いながら家の中に戻ると何かを探し始めた。しばらくして、咳をしながらタックは出てきた。その手には私の仮面が握られていた。
「ほら、今日の掘り出し物はこの仮め―――」
私の仮面を我が物顔で自慢し始めようとするタックに怒りが抑えきれなかった。いつの間にか、隠れていた茂みから跳びだしていた。
「その仮面を返せ。嫌だと答えたら貴様をここに埋めてやろう」
「メタナイト!? いつになく殺気立ってるよ? 落ち着いてよ。ねぇ、ねぇってば」
カービィが焦って手を引っ張っているがそんなことはお構い無しだ。
「イエスかノーで答えろ。仮面を返せ」
服の胸倉を掴んで顔を引き寄せる。被っていたのが鬼のお面だったこともあって、タックの怯えようは凄まじかった。その怯え方は惨めで、滑稽で、無様だった。
「い、い、イエス! イエスです!」
胸倉を掴んでいた手を離すと、タックは仮面を手渡しして小屋の中に戻ってしまった。
カービィの方に目線を向けるとカエルが蛇ににらまれたときのように動かなくなっていた。
「……どうした?」
「言っておくけど、僕は共犯者じゃないからね」
何だ、そんなことか。大丈夫だ。私は貴様を共犯者だとは思っていない。感謝してもしきれないくらいに感謝している。
口に出すのは恥ずかしいので、心の中で呟いていた。
少しの間、黙っていたらカービィが歩き出した。続けて私も仮面を手に、街へ戻った。
子供たちのはしゃぐ声が聞こえた。鬼は外。福は内。
「たまには、こういうのもいいかもな」
「どうしたの? 今日のメタナイト、なんだか変だよ」
「気にするな」
笑いながら返すと、カービィは大きなため息をついた。
二人で顔を合わせると、大きく笑いあった。今日も色々なことが起きたなぁと。
今日は節分。鬼は外。福は内。
このままでもいいな。さて、仮面も取り返したことだし陛下から頼まれた仕事を再開させるとしよう。
「ガオォォ!! 貴様らを食べてしまうぞォ!」
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