オトモカービィさんの小説

【お題小説】おめでとう、そしてさようなら(第2回エピソードパズル)


カービィに倒されて、消滅しかけたダークマインドは彼が使ったディメンションミラーへの願い事で奇跡の復活を遂げていた。
復活したのはいいのだが、ダークマインドはしばらくしてから、ディメンションミラー奥地に閉じ篭ってしまったのである。
それに困った二人は色々なことを試した。鏡の国の住人を集めてパーティの様なものを開いてみたり、部屋の前で呼びかけてみたり。
それでも、奥地から出てこようともしないダークマインド。二人は諦めずに説得し続けた。彼らにとってダークマインドは親のようなもの。その心配もはるかに大きい。
そんなある日、カービィが三人の分身を連れてディメンションミラー内部へとあそびに来た。

「君たち…!」
「よッ、久しぶり!」
四人の中で赤色をしたレッドがシャドーに友達のように話しかけるのだが、彼はそれを面白く思っていなかった。
何時の間にか彼の脳内では、ダークマインドがディメンションミラー億分に閉じこもってしまったのはこの四人の所為という認識になっていた。
「……何しに来たの?」
「今日はね、シャドー君たちと遊べたら良いなって思って皆で来たの」
ピンク色をしたカービィが少し怯えながらも言い切った。
彼が不機嫌なのは、顔に表れている。それもとてつもない殺気とともに。
「……の所為だ」
「え?」
「君たちの所為だッ! 全部! 全部全ブゼンブ! どうせ僕達を、戦いに敗れた僕たちをあざ笑いに来たんだろ! そうだろ? 最初から遊びに来る気なんてなかったんだろォ!」
シャドーは大声で怒鳴り散らした。その目からは多量の涙がこぼれ落ちている。
何事かと見に来たダークメタナイトも彼の見幕に目を丸くしている。普段は、大人しくよく笑うシャドー。自分でさえビックリした。
「違う! 僕らはそんなことするためにここへ来たんじゃない!」
「黙れ黙レダマレェェ! 君たちのせいでマインド様は部屋に閉じこもってしまった! 君たちの所為でェェ!」
シャドーは感情をむき出しにして、カービィたちに襲いかかった。突然の不意打ちに対抗できるわけもなくカービィは蹴り飛ばされてしまった。
ダークメタナイトが止めるために、シャドーを後ろから羽交い締めにするがそれを振り払って再びカービイ立ちを襲い続けた。
自分たちとは別の者の足音が聞こえたが、今のシャドーにそんなことはどうでもよかった。


「何事だ…? 何時もより騒がしいが」

シャドーがカービィたちに襲いかかるのをやめた。
その声の主は他ならぬ、ダークマインドであった。シャドーは、あっさりと出てきたダークマインドを見て呆然としている。
目を何度もこすってダークマインドの方を見ていたが、やがてそれが夢や幻ではないことに気がつくと泣きながらダークマインドに抱きついた。
「マインドさまぁ…グスッ 僕、本当に心配でぇ…グスッ」
鼻をすすり、泣きながらダークマインドの足に強く抱きついた。
ダークマインドはそれを見て、驚いたがその大きな手のひらをシャドーの頭に乗せて「すまなかった」といいながら優しく撫でた。
その光景はまさに親子そのものであった。物心つくまえから親がいなかったカービィはその光景に涙を浮かべながら見つめていた。
「彼らは決して私たちをあざ笑いに来たわけではない。何せ、私が呼んだのだから…」
「え…?」
シャドーはダークマインドの足から顔を上げると、カービィたちは「えへへ…」と言いながら優しく微笑んでいた。
「今日が何の日かわかるかね…?」
ダークマインドは優しくシャドーに問いかける。
今日が何の日かはわからないシャドーはまだ理解しきっていないような表情を浮かべた。
やがて、その表情を見て理解していないのが分かったダークマインドはダークメタナイトに指示を出してパチンと指を鳴らした。
辺り一面が暗くなる。元々暗かったのだが、唯一の光の入口であるディメンションミラーを塞いでしまえば光は入って来れなくなる。
不安がっているシャドーをよそに皆は準備を始めていた。めでたいこの日のために準備していたものを配置につかせたりして。
突然、パッと明るくなったかと思うと目の前には沢山のご馳走が用意してあった。
四人の中で青色をした、オーシャンが天井から垂れている紐を引いた。
それと同時に皆一斉に手にしているクラッカーを鳴らした。
そう、今日はとってもとっても大事な――― シャドーの誕生日だった。

「誕生日おめでとう!」

皆口々にそう言ってシャドーを祝った。
自分でも忘れていた。シャドーは、今までダークマインドのことで頭がいっぱいだったが故に自分の誕生日のことなどすっかり忘れていたのだ。
「ごめんね。黙ってたりなんかして」
「でも、途中から演技じゃなかったの。いきなり貴方が怒り出すから吃驚して言い出すにも言い出せなかっただけ」
「つまり、ナイスタイミングってとこだな。マインドさんよぉ」
「あそこでマインドに出てきてもらえなかったら、本当に危なかったかも」
四人のカービィたちはそう言いながら笑ってはしゃいだ。
そういえば、自分もカービィじゃないか。シャドーは自分の体を見つめる。灰色の球体。色こそ違うが彼もカービィの一人だ。
四人のカービィは鬼ごっこのような遊びをしている。彼はそれに興味をもった。眺めていると、ダークメタナイトがシャドーの目の前に立った。
「マインド様が極秘に誕生日パーティを計画していたのは、知っていた。サプライズのつもりだったんだが…… そんなにお前が辛い思いをしていたとは気付かなかった。本当にすまない」
ダークメタナイトが深々と頭を下げて謝罪した。「そんなの気にしてないよ」と顔を上げさせようとするが、こうでもしないと気がおさまらないらしい。
こんな所も、あの戦士と一緒だな。と、心の中で笑った。ずっと頭を下げさせるわけにもいかなく無理やり上げさせた。
カービィたちの遊びはどんどんエスカレートしていって、ダークマインドの怒りを買うことになった。
追いかけるダークマインドに、逃げるカービィたち。正にこれこそが鬼ごっこ。捕まった者から順にげんこつを食らっていた。それが相当痛かったようで、頭を抱えて走り回るカービィ。
腹を抱えて笑っているレッドの後ろからも一発。これも痛かったようでカービィと同じように頭を抱えて走り回る。
オーシャンとイエローは特に何もしなかったので無事だったが、カービィとレッドは正座をさせられて説教を受けていた。
その、光景が可笑しくて二人は笑った。イエローとオーシャンも入れて四人で笑った。
やっと開放されたレッドは、「よくも笑ってくれたな」と、四人を追いかけ回す。一緒に怒られたカービィもとばっちり。
追いかけ回されながらもシャドーは笑っていた。ここ最近、彼は笑うことが少なくなっていた。久しぶりに笑ったのだろう。
「久しぶりにあやつが笑っている姿を見た。私は幸せ者だの」
「ダークマインド。貴様の寿命はもう残り少ない。決心するんだな」
「そうか… もうそんなに」
ダークマインドのすぐ隣りにはメタナイトが立っていた。
彼も、カービィたちに誕生日パーティの呼び出しを食らったが集合場所には合流せず、ダークマインドの部屋で彼の身体を念入りに調査していた。
ここ最近、ダークマインドは調子が悪かった。呼吸が苦しくなったり、満足に運動もできなくなることがしばしば。原因は老い。それは誰にでも訪れるもの。
ディメンションミラーを使って蘇ったがための代償だった。せめて、息子たちを喜ばせたい。そう考えたダークマインドはこうした誕生日パーティを開いたのだ。
「では、ここで失礼させてもらう」
黒い翼で身を包んだメタナイトは一瞬のうちに消えてしまった。
ギャラクティックナイトが消えたその場所には何枚かの羽が落ちている。自分にはもう時間はない。そう考えてシャドーを見た。楽しそうにはしゃいでいる。
あれなら大丈夫であろう。自分がいなくても。彼には彼を支えてくれる友達がたくさんいる。
「おめでとう… いい友をもったな… シャドー… さようならだ…」
ダークマインドはかすれた声で、とても小さな声でつぶやいた。
そして、音も無く静かに消滅した。
シャドーは楽しく遊びながらも自分の主人… 親の最後を静かに見守った。
「さようなら… マインド様」
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