オトモカービィさんの小説

【しろきつばさだいなぶれいど】 〜第6話〜英雄の決断


寒さで目が覚めた。
僕は何時もとは違う部屋の中を見渡す。頑丈そうな壁。足に鎖でつながれている重り。そして、完全に締め切った扉。どうやらここは何処かの牢屋のようだ。
「あ〜らら。やっと目覚めたのかい?」
扉の向こう側から声がする。いや、声だけではない。扉の隙間からこちらの様子を伺っている。
その眼球は赤と黒の不気味な組み合わせをした色だった。怖い。今まで戦ってきた敵たちとはまるで格が違う。それに、こんなに“殺意”を剥き出しにしている敵も初めて。
「ホォ。君は僕との格の違いがわかるようだね。だからあえて戦おうとはしない。賢明な判断だが、果たしてそれが英雄サマの下す判断なのかねェ」
挑発的な話し方。正直言ってウザい。この人は僕に戦えといっているのだろうか? 英雄なら逃げるのではなく武器を取れと言いたいのか? それともただのからかいに過ぎないのか。
気がつくと扉の隙間からあの不気味な瞳が消えていた。それに安堵して、ため息をつきながらその場に腰を下ろす。
耳を澄ましてみると話し声が聞こえる。さっきの人が違う人に僕にしたような会話をしている。複数いるということは他の人もここに捕らえられているということだろうか。
だとしたら、一緒にいたアリスやロックたちは無事だろうか。アディオスとケケは何をしているのだろうか。
ずっと考えていた。こういう時に自分の心配よりも他人の心配を先にした自分に驚いた。昔のマルクが聞いたら反吐が出ると言われただろう。
それにしてもこうも外界と遮断された不自由な空間だと自由が恋しくなってくる。プププランドでの毎日はご飯を食べて、みんなと遊んで、そしてそこで悪戯をして叱られる。それが日常だった。
再び隙間から不気味な瞳がこちらを見つめていた。あまりにも突然だとびっくりしてしまう。ていうか本当に怖い。
「ダイナブレイドが呼んでるよ。話があるってよ」
そういって扉は開かれた。しかし足につながれた重りはそのまま。奥にあった大きな大きな鉄格子の中にダイナブレイドはいた。
その姿は全身傷だらけのボロボロ。体中に鎖をつながれて身動きも取れない状態であった。そんな中でダイナブレイドは警戒しながらも僕たちをじっと見つめている。
『貴方が…カービィ?』
「は、はい!」
頭の中に、直接言葉を送る。アリスと同じでテレパシーだ。
ダイナブレイドは僕がカービィである事を確認すると表情を緩めた。
『まずは自己紹介からいきます。私の名はダイナブレイド。…それは知っていますね。そして、そこにいる者の名はブラスコピー。星の戦士です』
この人が星の戦士…。まさかとは思ったけれど本当に星の戦士だとは。
ダイナブレイドからは一切、敵意を感じない。その代わりブラスコピーからはもの凄く敵意を感じる。
自己紹介をされてから長い時間、沈黙が続いた。時間がたつにつれてブラスコピーが苛立っていく様子がわかる。
『ここは見ての通り地下牢です。貴方の仲間もここにいる』
「本当? みんなは無事なの!?」
思わず身を乗り出していた。その途端に足につながれていた重りの所為で転んでしまったが、立ち上がってダイナブレイドの目を見つめる。
『はい。ここには貴方の仲間は捕らわれています。………』
最後のほうが聞き取れなかった。何を言っていたのかわからない。もう1度聞き直そうとするとブラスコピーが抑止してきた。
そして片手でひょいと持ち上げられて自分の牢に入れられた。また何もない不自由な空間。何もない。何もない、空っぽな空間。
時々除いてくる不気味な瞳におびえながら長い時間が経過した。どれぐらい経ったのかも分からない。そういえば今日1日ご飯を食べていない。
思い出すとおなかが減る。また考えなないようにするが、1回考えてしまうとなかなか忘れられなかった。
『……ん。…ィさん。カービィさん。聞こえていますか?』
突然、ダイナブレイドのテレパシーが飛んできた。
『声は出さないでください。私と貴方が会話している事が知られたら大変な事になってしまいます』
僕は頷いた。こんな危険を冒してまで僕に伝えたい事があるのだったら素直に聞こう。

『今回の事の発端者はブラスコピー。彼の目的はあまりにも残虐的です。世界征服なんてまだ可愛いものです。彼の目的は全人類をこの手で抹消する事。私は可愛い雛たちを人質にとられてしまい、何も抵抗する事ができませんでした。しかし、それではいけないと考えを改めて私はブラスコピーに講義をしました。そして後は先ほど見たとおりです』

ダイナブレイドの話は十分に信用できる話だ。あの不気味な瞳を持ったブラスコピーはやはり悪者だったか。
だが、後は先ほど見たとおりってものすごくボロボロだったがブラスコピーにどんなひどいことをされたのだろうか。
しかし、そんな事を思ってもいられない。あいつが敵だと知った以上はこの場所から抜け出さなくてはならない。しかし、どうやって抜け出そうか。
ダイナブレイドからはもうテレパシーは飛んでこなかった。
そして、突然後ろに気配を感じた。そこにはブラスコピーがいた。
「さっきの会話、聞かせてもらったよォ。色々と知っちゃったみたいだねェ」
「―――ッ!」
飛び退いて扉に手をかける。ガチャガチャと音はなるものの、開きはしない。大変な事になってしまった。
扉を何度も開けようとするが、決して開こうとはしない。そうしている間にもブラスコピーは迫ってくる。ブラスコピーは、僕が焦っているのを楽しんでいるようだった。
ここはもう、決意しなければならない。
「ガァッ!?」
僕の拳にブラスコピーは部屋の隅まで殴り飛ばされる。何事もなかったかのように立ち上がってくるが、その瞳は血走り、血管も浮き出ている。そう、“怒っている”
「やってくれるじゃァないか。英雄サンよオォォ!!」
「これが僕の…英雄としての、カービィとしての決断だ。僕はお前と戦う!」
ブラスコピーの背後の影から無数の手が伸びてくる。
「黙れェ! 黙れ黙レダマレェェェ! これで死んでしまえェェ!」
影から現れた無数の手は僕めがけて襲い掛かってくる。

―――地下牢内に轟音が響き渡った―――
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