オトモカービィさんの小説

【しろきつばさだいなぶれいど】 〜第5話〜夢と闇と幻と


「何の異常もありませんよ。正常です」
医者はそう言うが絶対に異常はあるはずだ。何故なら朝食の時間になっても決して食事をねだらないから。
しかし、もう一回やれとも言えない。ここはプププランドの町にある唯一の病院なので普段は混雑している。
そこに無理を言ってカービィを診察をしてもらったのだから流石にもう一回やれとは言えない。
とりあえず城に戻ることにした。カービィに「もう一回やってもらうか」と冗談半分で言ってみると本気にして暴れだしたのでやっぱり何時ものカービィなんじゃないかと思う。
もう一度準備を整えて今度こそダイナブレイドの巣へと向かい始めた。
森の中でダイナブレイドの飛び去る方向を確認したからもう大丈夫。道に迷うことはないはず。
ないはずなのに…
「2人とも、ちゃんとダイナブレイドが飛び去った方角覚えてるの?」
「いや、こっちでいいはずなんだが」
カービィが質問した。アディオスの言うとおり、飛び去った方角は山のほうだからこっちでいいはずなんだけど歩いても歩いても同じ場所にたどり着いてしまう。
何だかお腹が空いてきた。昨日、気絶したときから何も食べていなかったような気がする。考えていると更にお腹が空いてきてしまった。
「腹減ってきたな。何か食べ物でも探すか」
「そうしましょ。私もお腹空いてきた」
どうやらアディオスもお腹が空いていた様子。私はその提案に賛成した。しかし、カービィは黙り込んでいる。
何時ものカービィならここは喜んで賛成するところなんだけど、今日は調子が悪いのかな。
アディオスがカービィに早く答えるように催促すると突然、カービィが怒り出した。
「ケケもアディオスも何を言ってるの! 僕たちはダイナブレイド退治を依頼されたんだよ? 食べ物探している暇があったら先に進もうよ」
確かにカービィの意見はごもっともだった。私たちはダイナブレイド退治を依頼されたのだから食べ物を探している場合ではないじゃないか。
今度はアディオスが黙り込んでしまった。何か考え事をしているみたい。
何を考え付いたのか、アディオスは真剣な眼差しでカービィを見つめていった。
「…お前はカービィじゃないな」
「え…?」
何かものすごく真剣な顔でアディオスが馬鹿みたいな質問をした。
「な、何を言っているの? 目の前にいるのはカービィでしょ。何を根拠にこれをカービィじゃないって言い切れるの」
そうだ。目の前にいるのはピンク色をした丸い球体で素直な男の子。カービィそのものじゃないか。
でもやっぱり一番の特徴はすごい食欲だ。食べ物のこととなるとカービィは夢中になって…。夢中になって…?
「ケケも分かったようだな。そう。こいつはカービィなんかじゃない。カービィじゃない何かだ」
カービィが俯いた。何かを口から発していたが、正体がばれて言い訳を考えているのか、これは本当のカービィで仲間に本物じゃないと言われて悲しんでいるのか分からなかった。
次第に大きくなったその声は笑い声だった。
突然、顔を上げて狂ったように笑い出した。何がおかしいのか。それとも開き直ったのか。
「あはははは! 最高だよ。君たち。奴の技見破ったのは君たちで4人目だ」
これで四人目。ということは私たちよりも先に2人が“奴”の技を見破った…ということか。
辺りが段々暗くなっていった。雷も落ち、木々がどんどん燃えていく。
「でも、正体を見破ったからには… 生かしちゃおけないなぁ」

「げ、幻覚ぅ?」
『はい。ダイナブレイドは幻覚を見せることができるのですが、人を傷つけるためには絶対に使うはずはありません』
アリスは久しぶりの来客が嬉しいのか、何時も以上にお喋りだった。
何時もは俺と2人きりだから退屈で仕方がないのだろう。こんな嬉しそうなアリスは始めて見た。
『詳しいことは分かりませんが、人の幻覚を見せる時はときはある人物の姿を幻覚で変えているらしいです』
それにしてもあのダイナブレイドが町で作物を荒らしているとは知らなかった。あいつはそんなことする奴じゃなかったのにな。
あいつは何時も、優しくて自分よりも相手のことを考えている奴だった。苛められても仕返しはせずに我慢するだけ。
そんな奴がどうやって作物を荒らすんだ。更には人をも傷つけるなんて。
…さて。ここには俺は必要なさそうだし、外にでも出よう。
それにしてもこの階段の長さ、最初はきつかったけれど今となれば普通に上り下りできるようになった。
扉が妙に焦げ臭い。焼けているのか? 誰の仕業だ。まったく…
扉を開いてみるが、どこも燃えてはいない。辺りは闇ばかり。雷も落ちている。
「やれやれ。まったく今日は不幸な日だな。ボンカースが暴れるわ。森が焼けそうになるわ。いきなり天気が変わるわで最悪だ」
「うぎゃぁッ!」
のんきに独り言を呟いているときだった。カービィの悲鳴が聞こえた。
『あなたは… 何をするのです! 放してください!』
…誰かがこの樹の中に進入している? そんな馬鹿な! ここは閉ざされた空間だぞ!
階段を全速力で駆け上るがまだまだ最上階には着かない。こんな時に階段が長く感じる。
侵入者が部屋に入りにくいようにした長い階段が今となって裏目に出た。
やっと最上階に着いた。扉も何時もより重く感じる。腕に力も入らず、体が扉を開けるのを拒んでいるようだった。
扉は10分かけてやっと開いた。中には闇だけが存在していた。闇が濃すぎて部屋の様子がまったく分からなかった。
恐怖に後退る。今にも闇の中から侵入者が襲い掛かってくるような気がしてたまらなかった。
刹那、闇の中から無数の手が伸びてきた。恐怖で足が固まってしまって動かない。その無数の手によって俺は闇の中に引きずり込まれてしまった。
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