麻刈 透さんの小説

【四人四色】いざデデデ城へ!!



「えーっと…あい、えぬ、ぶい、あい……?

ゴメン、やっぱわかんないや☆」
「オイ!」

舌を出すピンクに即座に突っ込みを入れるのはアカ。 

「ったくもー、読めないなら読めないで初めからあたしによこしてればいいのに…ほら、貸してよ!」
「むうー…」

ピンクはしぶしぶアカに白い封書を渡した。
それは、前回デデデ大王から突如送られてきた謎の手紙。

「えーっと、どれどれー?」

得意げに笑みを浮かべながら封筒に書かれた文字を読み始めたアカ。
しかし………

「えーと…あい、えぬ、ぶい、あい………うぐっ英語……」

瞬く間にその笑みは歪み、苦悶の表情となり………

「ねえ、読め………」
「わからーーーんっっ!!」 

ピンクの声を遮り、赤色の球体は遂に叫び声をあげた。
もしこれが漫画だったら茹で上がったタコのように真っ赤になって湯気を出しているようになるのだろう。
しかし、何せ元が赤いものだからそれを表すことはできないだろうな―――ピンクは思った。

「えっ?でもさっき、読めるって……」
「うるさい!てか何これ訳分かんないんだけど!!デデデのやろー……っ!!

こんな手紙、こうしてやるうううう!!!」
「ああっ!?待ってよアカ、やめ……」
「あたしはスカーレットだああああああああっ!!」

手紙を破り捨てようとするアカ。そしてそれを必死で止めるピンク。

そんな二人の喧騒をよそに、少し離れた場所では戦いの火蓋が、今まさに切って落とされようとしていた。

「………んっんー、木端微塵にされる準備はオッケー?」

それは見ている側も清々しくなるような無邪気な声に相反して、口にしている内容は物騒であった。
メタナイト―――のような外観をする機械。
実際に言葉を発しているのは機械の頭頂部にある操縦席に搭乗するキイロであった。

――「アレ」はロボットと言えるのか……?と、機械関係には疎いアオでさえも、その機械の風貌には違和感を隠しきれない。
デザインが例の仮面の騎士だというのも勿論、気に食わない。製作者が、自分と奴との間に因縁があることを知っているキイロだというから尚更である。嫌がらせか。
しかし、それ以上に気になる――というよりは、それには異様さを感じさせるものがある。

機械の両腕に搭載されるは鎌のような形をした鋭い刃。
よく見ると至る所に装備されているチェーンソー。
両手にしっかりと握られているのは巨大な機械に見合う大きさの剣。
見るからに物騒な『それ』からは製作者の狂気がいやというほど滲み出ていた。
ロボットというよりは殺人マシンという表現がよく似合う。
平和なプププランドの景色には到底似合うとは言えない物騒な装備をした機械を前に、アオはキイロが本気で、自分を科学の力でぶちのめそうとしていることを悟った。
ぶちのめすどころではない。殺す気か。それも、これまでに例を見ないほどにむごたらしく……そう考えると、キイロの無邪気な笑みが別の意味を持っているように思えてくる。
アオは正気か、と小さく呟いて言った。

「……その『ハリボテ』、粗大ゴミ……いや燃えるゴミに出しやすい大きさに切り刻んでやる」

相手の腹の内が読めたからか、至って冷静な返しだった。多少、口調に苛立ちが混ざっている気もするが。
すると、『ハリボテ』という言葉に黄色い科学者はいたくプライドを傷つけられたようで、不適な笑みに青筋が浮き立つ。

「ふーん…随分と言ってくれるじゃんね……

でも」

その時、キイロの駆る機械の機影が、消えた。
アオの表情が強張る。

(上か!)

一瞬にして状況を把握したアオ。
機械はジェットを噴射して、宙に浮いたのだ。
透明な半球状のカバーで覆われた操縦席に座るキイロはあははははは、と心底愉快そうに笑ってみせた。既に目の色が普通ではない。

「――そんな『ハリボテ』にこないだぼっこぼこにされたのは

一体どこの誰だったっけかなああああああああ!!?」

叫び、急降下。異様なまでの速さで機械はアオのもとへと特攻していく。
ただでさえ物騒な鉄の塊の両足の裏に、これまた鋭利な針のムシロが現れる。
どうやらそれでアオを踏み潰そうとする魂胆らしい。
一体どこまで悪趣味なんだ、アオは溜め息をつこうとしたが
最早機械の足は眼前に迫っていた。

「ちっ…」

代わりに出たものは小さな舌打ち。
すぐに地を蹴り機械と距離を取る。
見上げて目に入ったのは愉悦に浸るキイロの顔。

「いやぁー、気ぃ抜いちゃあ駄目だよー?まあ、こないだみたいにミイラにされたいのかなあ?ならしょうがないけど、せっかくだしさあ……

もっと楽しませてよねええ!!」

追撃。どうやら何が何でも踏み潰して仕留めるつもりのようだ。
腕や手についている装備は飾りか、アオは内心笑ったが、言葉にするほどの余裕はなかった。
距離を取る。詰められる。ひたすらそれを繰り返す。
一進一退の追いかけっこであった。

「……なんだ、逃げるばかり?つまんないの」

やがて、キイロの駆る殺人マシンが止まる。
アオも距離を取った状態で止まって、身構えた。
やがてキイロは退屈そうに言葉を繋げた。どこか嘲り笑うかのように。

「そんな弱腰だとはねぇ……興ざめだよ、ア」

しかし、その言葉が最後まで放たれることはなかった。
それを途切れさせたのは、一つの鋭い斬撃の音。
そしてそれを起こしたのは当然のことながら、

「何度も同じようにいくと思うな……」

青い球体。
キイロがその声を捉えた瞬間、機械の四肢はバラバラと分解した。
ズシャン、と鈍い音がしてキイロの乗っていた操縦席が地に触れる。
どうやら操縦席の強度は素晴らしいものだったようで、あくまでキイロは無傷である。
それどころか、ニヤニヤと笑いを浮かべる余裕まであるようだ。

「へぇ、さすがだね剣士サマ」

皮肉。このキイロの台詞はその二字が適切であろう。
剣を鞘に収めたアオはキイロに歩み寄り、言った。

「まあ、所詮ポンコツだったしな」

対して、挑発。この二人は多少似通った点があるようだ。その場の意地に任せてやたらと虚勢を張りたがる。
しかし、さすがのキイロも自ら科学力を馬鹿にされるのだけは耐え難いようで、唇を噛み、露骨に悔しそうな様子で、笑った。

「……むぅ、まだまだ改良の余地はあるみたいだね……!次は負けないよ!!」
「いつでもかかって来い。また相手してやる」

それを受けて、アオもふっと笑った。

二人とも、本当は気付いている。
口には出さないだけで。照れるから?いや、言葉にする必要がないから出さないのだ。

自分達は互いに親友であり、家族であり、最強の敵同士であるということ。
言わば、それは――

「……アオ」
「何だ、負け惜しみか?」
「………お腹空いた」

「………そうだな」

互いが必要不可欠なものであるということなのだ。

――――

「えーっと、じゃあミーティングするわよー」
「ねぇアカ、ところでミーティングとブリーフィングの違いって一体……」
「どっちでもええわ!」

いつもの森の中、四色のカービィ達は大きな切り株を囲んで話をしていた。
今日の話し合いを取り仕切るのは紅一点のアカのようだ。

「こないだ言ってた、デデデからの手紙のことなんだけど……」
「ああ、あの『果たし状』?」
「またいつもの科学的センスの欠片もない極めて原始的かつ単純明快なとらっぷ?」
「見え透いた罠だな」

各々見解を述べるが、どうやらどれも違うらしい。アカは首を横に振った。

「あたしも初めは疑ったんだけどね……違うみたいなの。ほら、みんなも見てよこの手紙の内容」

アカが広げた手紙にはこのようなことが書いてあった。

『カービィ達へ
封筒の表に書いてあった英字は読めたか?
まあ、アホのお前らのことだからきっと読めなかったに違いな

「……あー、やっぱりこの手紙切り刻んでいいわよ、アオ。無かったことにしてしまいましょう」
「了解した」
「ちょ、ちょっと待ってよアオ、ア……スカーレット!!」

焦って二人を止めたのはピンクだった。

「ボク、最後まで読んだよ。アカも読んだんでしょ?デデデは

ボクらをパーティーに招待するって言っているんじゃないか!」
「「え」」

キイロとアオは驚いて短く声を上げた。
それも無理はない。手紙の主は「あの」デデデ大王なのだ。
カービィ達が知る限りでは、ケチで、わがままで、自己中心的。他人の迷惑など顧みない大悪党。さらに……

「そこまで言うか!?」

まあ、デデデ城の方から抗議の声が聞こえてきたのでこれ以上は言わないでおこう。

アカはいぶかしげな顔をした。

「……もし、罠だったら?」

しかしそれに対してもピンクはにっこり笑って言った。

「その時はその時だよ!それに、ボクらの冒険はいっつも予想外な展開ばかり。今回も予想外のことが起こるのは当たり前なんだから、

楽しまなきゃ、損でしょ?」
「………」

「……まったくもってその通りだな」

初めに同意したのはアオだった。キイロもそれに続く。

「……絶対っていうものは有り得ないからね。まあ、この事実も絶対ではない訳だけど」
「……キイロ、訳が分からないよ?」

ピンクは首を傾げるが、キイロは知らん顔だ。
残ったアカはというと……

「……分かった!分かったわよ!!どーせあんた達はバカだからあたしがどんなに止めても行く気なんでしょ!?もう、勝手にしなさいよ!!」
「それって行っていいってこと?」
「……そうよバカ!行けばいいじゃない!!」
「やったー!」

ピンクは大喜び。罠だろうとなんだろうと賑やかなことが大好きなのだった。

「……じゃあ、とりあえず持ち物にコピー能力のもとDXは外せないよね?」
「一応疑ってるのか」
「もちろん」

しかし、そんな彼であっても今までの経験から、準備は抜かりない。

それにつられるかのように、アオは剣を研ぎ始めた。剣といってもかなりある。洋刀、太刀、小刀……その他もろもろあって、ダガーナイフに包丁などと見事なまでに取り揃えてある。一体どこにしまってあったのか。
ピンクは興味津々にそれを見る。

「わー何これRPGの武器屋さん?」
「違うわ!」

一本頂戴、というピンクの頼みは即座に断られた。

アカはリボンをしっかり結び直す。

「ア……いやスカーレットはパーティーに向けておめかし?」
「いや
いつ戦闘になるか分からないからね……」

アカのリボンはファイターのハチマキになるのであった。

「よし、みんな準備万端?」
「大丈夫だ」
「問題ないわ」
「オッケーだよ!」

それぞれの返事が聞こえてきた所でピンクは元気いっぱいに言った。

「よし、じゃあいざデデデ城にしゅっぱーつ!」



4人が出発した後、少ししてから再びそこに現れた者があった。

「……んー、工具箱はいつも通り持っていくとして、暇つぶしのためにデカルトの『みずからの理性を正しく導き、もろもろの学問において真理を探究するための方法についての序説およびこの方法の試論(屈折光学・気象学・幾何学)』も持って行こうかな……あーでもやっぱりそれだったらこの試作品を持って行った方が……」
「早くしろバカ!」
「あっ、ま、待ってよう!」

少しアホな黄色のマッドサイエンティストは、急いで仲間の後を追いかけるのであった。


〈つづく〉
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