麻刈 透さんの小説

【エピソードパズル】四人四色番外編・バタービルディングにて



「あーあーあーあ………こりゃ随分と派手にやってるねぇ」

やっぱりな、とでも言うようにキイロは言った。
それに対してアカは頭に着けた赤色のリボンをふわりと揺らして振り向く。

「余裕かましてる場合じゃないわよ。あたし達がなんとかしなくちゃいけないんだからね、アレ」

そう言ってアカが指さした先は、目の前にそびえ立つ塔のてっぺんの更にその上。
普段ならば青空が広がっているのだが、今は違った。昼間の青空になったと思えば、瞬きをした次の時には夜の闇が塔を包む。なんだかデジャヴだな、カービィ達は思った。
それもそのはず、先ほどアカが指さしたこの塔――バタービルティングの上空では、

Mr.シャインとMr.ブライトの喧嘩が繰り広げられていたのだから。

しばらくして、上空から降下してくる者があった。ピンクだ。

「やっぱりダメー!ホバリングも、ハイジャンプでもジェットでもてっぺんに届く前に力尽きちゃうよー……」

地に舞い降りた彼は息を切らせながらそう告げた。

「……やはり地道に内部から登っていく他に手立てはないか……」

アオがため息混じりにそう言った。

「しょうがないね……じゃあ、いっちょ行きますか」

ああ、そうね、うん。ピンクの言葉に青、赤、黄のカービィ達はおのおの、個性のある返事をすると目の前にそびえ立つ塔を見つめた。

―――
内部の通路は、外観からは想像がつかないように複雑に入り組んでいた。よって、四人はそれぞれ別々の通路に分かれ、おのおの屋上へ辿り着くためのルートを模索することした。

「ここが一階の第一フロアね……」

扉を開け、部屋の中に入る。すると、中には誰もいない。それを確認すると、ふぅ、とアカは緊張を解いた。

「なーんだ。バタービルディングっていうと各階各部屋にお邪魔キャラさんがいるのかと思ってたけど……そんなこともないのね」

しかし、次の瞬間

(――何かいる!)

表情が一変、アカは何者かの気配を瞬時に感知し、

「―――隙ありぃ!!」

そのまた次の瞬間には、勢いのよい叫び声とともに、「気配」は天井を突き破って落下する。そして、鈍重な巨体が姿を現した。

巨体が現れた所はアカが先程までいた地点。もし気配を感知できず、素早く飛び退いて回避することをしなかったら、間違いなく巨体の下敷きになっていただろう。

「その俊敏さ……さては貴殿、ニンジャの使い手か……!?」

かわされたことを悟った巨体――Mr.チクタクは尋ねた。

「いいえ、おじさま。あたくしはニンジャでもなければ『貴殿』と呼ばれる身でもありませんわ。ただ――」

目を丸くするMr.チクタクに対して、アカはにこりと微笑み、言った。

「あたくし、邪魔する奴にはとことん容赦ない、武道家ですの」

――その頃、二階・通路

「うわああああああああああああ!!?」 

そこには血相を変えて必死に走るキイロの姿があった。そして、そんな彼の後ろを大勢の敵キャラが追う。

「待てやコラアアアアアアアアア!!!」
「誰が待つかあああああああああ!!!」

――二階・第三フロア

「わあああああああ!!!」

怯えの混じった叫び声。
そして静かな斬撃の音の後、柱が倒壊する派手な音が塔を揺らした。

「外したか……」

さも不満足そうに柱を睨みつけ、対象との距離をじりじりと詰めていくアオ。

「何!?いきなり何するの!?ボク何もしてないのにいいいい!!!」

斬撃から逃れるべく別の柱に登り、必死にしがみつく対象――Mr.フロスティ。

「いちいち騒ぐな……耳に障る」

表情からだけではなく言動からも読み取れる。アオは先程の攻撃でフロスティを仕留め損なったことで未だに苛々していた。俺の剣技が何故こんな鈍重そうな、しかもビビリ屋なコイツにかわされたのか……アオは一人、ピリピリとしたオーラを放ち続ける。

「ひ、酷いよお……」

半泣きのフロスティは柱にしがみついたまま、アオに言った。

「ボクは…ボクはただこの部屋にいただけなのに……君に危害を加えた訳でもないし、抵抗すらしようともせずにこうして大人しくしているのに……」
「大人しく、という割には随分とやかましいがな」

アオの冷静な突っ込みが入るが、多言なフロスティは止まらない。

「君が脅すからだろ!?……こんな無抵抗なボクを木端微塵にしようなんて……あんまりだああああああああ!!これじゃゲームタイトルが『鬼のカービィ』に変わっても文句言えないよおおおおおおおお!!!」
「オイちょっと待て!お前はこのフロアを守っている訳じゃないのか!?」

先程から話がかみ合っていない気がしていたアオは、遂にその疑問を口にした。
するとフロスティはきょとんとした顔でアオを見る。

「え?ボクはただこの部屋でぼーっとしていただけだよ?」
「はあ!?」

何てことだ。紛らわしかったこともあるとはいえ、一般人に攻撃を仕掛けてしまったことは星の戦士失格と言われてもしょうがないほどの失態ではないか……アオは自分の思慮に欠けた行動を恥じた。

「……すまなかった。許してくれ」

謝罪の言葉を口にするアオ。

「しょーがないなー、特別に許してあげるよ」

フロスティの先程とはうってかわっての高慢な態度が鼻についたが、非があるのはこちらなのでアオは黙ることにした。

「邪魔をしたな」

そう言い、アオがフロスティに背を向けた、その時。

「………残念だねぇ」

先程とは大きく異なるフロスティの声質。そして、アオの背に襲い来る巨大な氷塊。

「詰めが甘いよぉ?」

フロスティが笑みを浮かべた――その次の瞬間。

「……お前がな」

その言葉とほぼ同時に、巨大な氷塊は姿を消した。そして、宝石のようにきらきらと輝く多量の氷の破片が雨のように降り注いだ―――。

――三階・第四フロア

「いやー…みんな派手にやってるみたいですねぇ……」

ピンクは呟いた。先程からずっと、上から、下から、隣から……派手に暴れているような音がする。たまに「ラアアイジイイインブレエエエイク!!!」とか聞こえてくるのは気のせいか。

「……でもお前もこれから奴らみたいに暴れ回るんだろう?」
「あ、分かっちゃう?」

既に分かりきったことかのように言うボンカースに対して、ピンクは微笑んだ。

「……悪いが手加減はしないぞ?お前を負かすことが俺の目的なんだからな」
「分かってるって!でも、こっちも全力でいくからね!」

すると、ピンクはどこからかとある物体を取り出した。ボンカースはそれをいぶかしげに見る。

「何だそれ?」
「へへっ、キイロが作ってくれた『コピールーレットのもと』!さて、何が出るか……ルーレット、スタート!!」

ボンカースは気が気でなかった。もしハンマーなんて出て、それで自分が負けたら自分にはハンマーの才能すらないことになってしまうと思ったのだった。

「決まった!」
「決まったのか!?」

ピンクは言った。そのコピー能力の名を、高らかと。

「コピー能力、『ライト』!!!」
「………」

かりそめの満面の笑みだった。

――数十秒後、そこには床にひれ伏すピンクの姿があった。

「……元気出せよ」
「やっぱりボクはすっぴんで戦うしかないのかああああ………」

―――
「どうしてお前はいっつもそうなんだ!この頑固者!!」
「それはこっちのセリフだ!!頭堅いんだよお前は!!」
「なんだってぇ!?」

「そこまでだ!」

Mr.ブライトとMr.シャイン……永遠に続くかと思われた小競り合いに終止符を打たんとする者が現れた。

「誰かと思ったら……」
「カービィ!?」

ブライトとシャインはこの展開を予想だにしていなかったようで、二人揃って目を丸くしている。
そんな二人を湯気を立てて怒りつけるアカ。

「もう!あんた達のせいでプププランドはめちゃくちゃだし、あたしの休日も台無しよ!いい加減にしてよね!!」
「まあ、休日も何も、この国は毎日が休日のようなものだがな」

冷静に突っ込みを入れるアオ。
それに対して、ブライトとシャインは顔を引きつらせながらも言った。

「ふ、ふん!それがどうしたってんだよ!それに」
「オレ達を止めようったって、ここまで届くはずが……」

「あるんだなあ、これが」
「!!?」

どこからともなく、声がした。
すると間もなく、地響きが鳴り――

塔がジェットを噴射し、浮いた。


「「ええええええええええええ!!?」」

あまりの事態に絶叫するブライトとシャイン。しかし、彼らに考える隙も与えずに、

「いっけえええええ、バタビルロボおおおおおおおおお!!」

浮遊状態にあった塔から手足のようなものが生える。その姿はまさにロボットだった。
かつて塔であったロボットは、その腕を引き、構えの姿勢を取る。
そして、またもやどこからともなく声がして―――

「陰陽粉砕拳!!!」

ブライトとシャインは遙か彼方まで、吹っ飛んで行った。

――
「完璧だった!これ以上ないってくらい、ナイスタイミングだったよキイロ!!」

ピンクは興奮覚めやらぬ様子でキイロに言った。

「あはは……変形機構はずっと前から改造を加えてたから出来上がってたんだけどね。回路の取り付けに思ったより手こずってさー……」
「でも本当に凄かった!キイロのこと少し見直したわ!」
「見直したって何だよ見直したって!」

楽しそうにはしゃぐピンク、黄、赤のカービィ達。一仕事終えた後の達成感に浸っているのだ。
そんなカービィ達に、アオは言った。

「さて、太陽と月を回収に行かなくてはな」
「「「あ」」」

昼と夜が滅茶苦茶になることはなくなったものの、そこには月も太陽も失った暗闇の空が広がっていた。
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