麻刈 透さんの小説

【ダークマターさんち】第2話 最終決戦



「遂にここまで来やがったな…カービィ!!」

ハイパーゾーンと呼ばれる虚無の空間。
暗闇に響く重々しい声。

「出たな、ゼロ……!ポップスターを元に戻せ!」

それに答えるは星のカービィ。
ゼロと呼ばれた白い球体、重々しい声の主はその赤い単眼を不機嫌そうに細め、言いました。

「ハッ、そう言われて素直に聞く俺様だと本気で思ってんのか?」

が、その細めた目は次の言葉を発した時、

「……諦めな、テメェはここで地獄に堕ちるんだよ!!」

一気に見開かれました。
しかしカービィは脅える様子も怯む様子も見せません。

「諦めるもんか………ボクにはみんながついているんだ……!ボクには、みんなの『こころ』が詰まった、『これ』があるんだ!!」

そう言い、カービィは自らの手にある杖――『ラブラブステッキ』を高くかざしました。
ゼロは怪訝そうにそれを見ます。

「んぁ?何だそれ?んなもんがあったからって何が…」

ゼロがそう言いかけた瞬間でした。

「ティンクル・ポポポ、ポヨポヨヨー!!」
「!!?」

暗闇の中、カービィの声が高らかに響き渡り、カービィの周りは桃色の煙に包まれました。

「クソッ、奴の姿が見えねえ!!何だよ……何なんだよこれ……!?」

突然の出来事にゼロは困惑します。

(星のカービィがこんな能力まで持っているなんて、ダークマターの報告にはなかったぞ……!?)

その時でした。

「ふふふふふ、驚いているようね!ゼロ!!」

突如、どこからともなくカービィの声がしました。
カービィを包んでいた桃色の煙は消えましたが、彼の姿は最早そこにはありません。

「カービィ!?どこに行った!!姿を見せやが…」
「上よ、上」

狼狽するゼロが、カービィの声の導き通りに上に目をやると……

「!?」

途端、ゼロの瞳は驚愕のあまり、再び見開かれました。


「素敵に無敵に大変身!魔法少女ティンクル☆ポポ、ここに見参!!」
「……ええええええええ!?これっ……どういうことだよっ……!!?」

説明しよう!
星のカービィはポップスターの『こころ』が詰まったラブラブステッキと魔法の呪文により魔法少女ティンクル☆ポポに変身するのだ!

「オイ!聞いてねぇぞ、んな設定!!!」

ますます動揺するゼロ。
しかし、カービィ……いや、魔法少女ティンクル☆ポポは容赦ありません。

「うふふふふ……残念ながらどの攻略本にも乗っていないわ!食らえっ、ラブラブビーム!!」

ラブラブステッキを振り回し、果敢にもゼロへ向かっていきます。

「嫌だああああ!!そんな何かハートまみれのビームなんかに当たってたまるかよおおおお!!」

一見可愛いように見えるこの攻撃も、ダークマター族には脅威です。
ゼロは身体能力の限りを尽くして必死に避け続けます。

「ちぃっ、当たりなさいよ……えいっ、えいっ、えーーいっ!!」

避けてばかりのゼロに痺れを切らしたティンクル☆ポポ。
頭には女の子(?)らしからぬ青筋が浮かんでいます。

「嫌だあああああああ!!!」

ゼロは泣きながらティンクル☆ポポの猛攻から逃走を続けます。
ラスボスとしての威厳はもうどこにも見当たりません。

「当たれ当たれ当たれええええええええ!!」

すぐ後ろに迫るは鬼。
藁にもすがる思いでゼロは叫びました。

「うわあああん!!ゼロツー助けてよおおおお!!!」

即座に答えが別の空間からでしょうか、どこからともなく返ってきました。

『――無理だ』
「諦めんじゃねえええ!!このままじゃ間違いなく俺様死んじゃう!!」

ゼロ、大泣き。
しかしピンクの球体は残酷にも同情の余地など見せません。
ラブラブステッキをブンブンと振り回し、ゼロを追いかけ回します。

「えいっ、うりゃりゃりゃりゃりゃ!!!」
「しかも何かあいつ半どっかの仮面の騎士化してんだけどおおおお!!?」

ゼロツーの半ば諦めたような声が返ってきました。

『――これも宿命だ……』
「お前もか――っ!!!」

やがて、長い長い「おにごっこ」も終わりを迎える時がきました。

「はっ……えっ!?もうここがハイパーゾーンの果て!?え、ちょっと待てよ!!?何でこんなとこに壁が……」

ゼロはもう逃げられません。
ティンクル☆ポポはゆっくり、ゆっくりと近づいてきます。

「やっと追い詰めたあ……っ」

ゼロはもう逃げられません。
ティンクル☆ポポはゆっくり、ゆっくりと近づいてきます。

「……これで、終わりいいいいっ!」

ゼロはもう逃げられません。
ティンクル☆ポポはゆっくり、ゆっくりと………

「イヤ―――ッ!!?」

最後に見たのは、残忍そうに微笑む桃色の「鬼」の姿………

「……ばあいばーい☆」



「――お願いだから来ないでえええええっ!!!」

自分の叫び声で目が覚めた。

「主ぃ!!?」
「兄さん!?いきなりどうしたの!?悪夢でも…」

周りにいる奴らが驚いたような顔して俺様を見つめてやがる。
何だよ。リアル形態のダークマターにダークゼロ、雑魚共じゃねぇか。
そう認識してからやっと思い出した。
迫り来るピンクの悪魔。

『ばあいばーい☆』

俺様としたことが……情けねぇが、思い出しただけで未だにぞっとする。
しかしここはハイパーゾーンじゃない。俺様の家。

「あれ…もしかして……

今までの全部夢だった……のか?」

俺様のそんな呟きに、ダークマターはすぐに答えた。

「主、悪夢でも見ていたのではございませんか?先程からずっとうなされておりましたよ」
「……なーんだ、そういうことだったんだぁ!!」

途端、安心した。
口がガキ臭くなっている自分に気がつくが今は気にしないことにする。
それにしても本当に夢でよかったぁー……って、あれ?
これってもしかして………

「………夢オチかよ!!」

不思議そうに俺様を見るダークゼロ。
そうだよな、俺様が勝手に見た悪夢だ。
こいつらに分かる訳が……

すると、物影に隠れながらもゼロツーがこちらをしっかりと見つめている。
何だよ。テメェは一体何なんだよ。
気持ち悪ぃと怒鳴ってやろうとしたその時だった。

「………うりゃりゃりゃりゃりゃ」

確かにそう言った。
よく聞こうとしなければ聞こえないような、小さな声だったがゼロツーは間違いなくそう言った。

フラッシュバック。

『えいっ、うりゃりゃりゃりゃりゃ!!!』

あの光景が鮮明に蘇ってくる。
気味の悪い杖を振り回して襲いかかってくるピンクの悪魔の姿。
それも、どこか楽しんでいるかのように。
怖い、怖い、怖い……。
震えが止まらない。
そして襲い来る閉塞感。

「……主?」

リアルダークマターが俺様を心配そうに見ているがそんなこと気にしてる場合じゃなかった。
嫌だ、こっちを見るな黒い球体。思い出すから。奴を思い出すから………球体……球体……!?


「…………うぎゃあああああああああああああああああっ!!!」


その日、ダークマターさんちに断末魔の叫びが響き渡った。

――――

○月×日
久々にリアル形態をとってみたら何故かゼロが僕を見るなり失神した。
少し落ち込んだ。もうリアル形態をとるのはやめようと思った。
ゼロは珍しく大人しく部屋に戻っていった。
球体を見ると駄目らしい。自分も球体のくせに、どうしてだろう?


「あれ……そういや、ゼロの部屋には確か鏡があったんじゃ………」

日記を書き終えたダークマターがつぶやいた刹那、

「うぎゃあああああああああああああああああああっ!!」

今日も静かなファイナルスターに本日ニ度目の断末魔が鳴り響いた―――。


〈つづく〉
page view: 2461
この小説を評価する:                   (0)