麻刈 透さんの小説

【四人四色】邂逅


日が暮れた。西には群青色の空が広がっている。星が瞬き始め、月が光をたたえ出す。
プププランドはすっかり夜の闇に包まれようとしていた。そこへ、帰路を急ぐ者が一人。
「もうこんなに真っ暗だ…急いで帰らなきゃ…」
カービィは暗い森の中を家に向かって突き進む。彼にとっては絶好の遊び場であるこの森。
日頃から慣れ親しんでいる場所だった。しかし、夜の暗闇が彼の勘を狂わせる。
「あれ…?」
カービィは立ち止まった。不思議そうに首を傾げる。おかしいな、いつも通り歩いてるはずなのにな…カービィは思った。
どこまで歩いてもあるはずの自分の家
が一向に見当たらないのだ。ここのことで知らないことはない!という彼の自信も今は揺らぎそうになっていた。
――ぐぎゅるるるる…
「お腹、すいたなぁ…」
何とも物悲しいお腹の音が鳴り、カービィは溜息と共に呟いた。本当ならば、今頃家でカレーを食べているところ…家で待っている華麗なる晩餐のことを想像す
るとますます空腹感は増し、その度に腹の音は切なく辺りに響くのであった。
そんな時、カービィは見つけた。なんと、反対方向から歩いて来る影があるでは
ないか。

「……あ!メタナイト!!」
カービィは友の名を呼んだ。その影は間違いなくメタナイトのものだった。
すると、カービィの呼びかけに気付いたのか、影は立ち止まった。カービィはメ
タナイトに駆け寄る。少し不安だったのだ。このまま帰れない予感がし始めた頃
に差した光明であった。
「ね、どしたの?まさか君も迷子??」
目の前で見ればやはりそれはメタナイト。カービィは安心し、いつものようにお
どけてみせた。
「……」
しかし、何故かメタナイトは無言だった。いつもならカービィの問いかけには必
ず応じていた。明らかにいつもと様子が違う。だが、すっかり安心し切ってしま
ったカービィはそんなこと気にもとめなかった。
――そう、彼は自分に向けられた刃にすら気づいてはいなかったのだ。

それはあまりに突然のことだった。
「……我が剣を喰らうがいい」
「え?」
カービィが疑問符を上げた瞬間、メタナイトはカービィを一瞬にして斬り捨てた

「うわあああああっ!!」
辺りに響き渡る、斬撃の音とカービィの叫び声。

月を覆っていた雲がどこかへと流れていく。
地面に倒れる直前、
カービィは見た。
月明かりに照らされたその姿を。
「メタナイト……じゃない……?」

漆黒の防具に破れたマント。
そして――暗闇に映える赤い目。

「嘘だあ…」
カービィは地面に倒れ込んだ。
最後に見えたのは、
眩い光を放った三日月。
そこで、カービィの意識は真の暗闇へと落ちて――








―――はいかなかった。

「嘘じゃないんだなぁ、これがさ」
「全くだ」
「油断しすぎなのよ…」

「!?」
仰向けに倒れたカービィは自分とメタナイト以外の声に驚いた。だが、声の主を
確かめようとしても、先程の、一瞬にして身体中に電流が駆け巡ったようなショ
ックが未だ離れず立ち上がれない。

「いい加減起きたらどうかしら?」
「あれ?もしかして起き上がれないとか??そりゃ面白い」
女の子のような声の後におどけたような声がした。だが、カービィはやはり人々を認識できない。
「みんなは、誰?」
カービィは尋ねた。
「見れば分かるだろう」
落ち着きのある冷静な声がした。
カービィが困惑していると、
「しゃあない、起こしたげる!」
先程の女の子のような声がし、カービィはぐいと半ば強引に立たせられた。
「ありが……」
礼を言うべく、カービィがそれぞれ声の主に向き合った時だった。


「―――え?」
カービィの動作を停止が完全に停止した。


声の主達もまた、

カービィであった。


「えええええええっ!!?」
カービィは叫んだ。先程斬られた時の3倍くらいの声量であっただろうか。その声
は森中にこだました。

「やっと気づいてくれた?ボク達に」
黄色のカービィがはしゃぎ気味に笑って言う。
「急に大声はやめろ…頭が割れそうだ」
青いカービィは頭を押さえながら言った。
「なーんだ、死んだかと思ったわ」
赤いカービィが多少呆れ気味に言った。
「……」
カービィはしばらくポカンと三色カービィ達が口々に何か言っているのを見ていたが、やがて我に返り、疑問を口にした。

「君達は一体…?」
「そうそれ!!よく聞いて下さいました!!」
黄色カービィは手をパチンと叩くと楽しそうに言った。
「さっき、君は斬られた。本当ならまっぷたつになるとこだよねぇ?」
「うん」
カービィはうなずく。自分でもやられた、と思ったのだ。確かに斬られたはずなのだが…。
「だけどどういう訳か、てか自分で分かるだろうけど君はまっぷたつにならなかった。そのかわり……」
「あんたは何故か分身しちゃって、あたしたちが生まれたって訳」
赤いカービィが言った。
「あぁ、ボクの台詞…」
黄色カービィは最後まで言いたかったらしく、がっくりとうなだれた。
未だに状況が掴めないカービィはきょとんとした顔で更に尋ねた。
「でもさ、メタナイトにもギャラクシアにもボクを分身させるような能力は…」
「確かに、メタナイトにそのような能力は無い」
青いカービィの答えにカービィは言った。
「だったらどうして…」
「奴はメタナイトであってメタナイトじゃない」
「え?」

「奴の名はダークメタナイト。メタナイトの邪悪な心が鏡の世界で実体化したものだ」
青いカービィが鋭い目を更に光らせる。
「かがみのせかい…?じったいか……?」
カービィには全く持って理解不能であった。やれやれ、と呟き、赤カービィが言った。
「そんな説明書の丸暗記みたいな説明じゃ誰も納得しないよ、アオ…」
「な、何だと!?」
「正直、初耳のピンクには分かりにくいよねぇ」
赤カービィと黄色カービィからのダブルアタック。冷静な青カービィは表情を崩
さないが軽く汗をかき始めた。
「そ、そんなことは無いぞ!!な、なぁ、ピンク?」
青カービィはカービィに助けを求める。
カービィは返答に軽く困ったが、言った。
「ごめんね、青カービィ。全く持ってちんぷんかんぷん」
完璧な笑顔だった。
「ガーン!!!」
そう言った青カービィの顔に縦線が入るのが見えたのはボクだけじゃないはず、カービィは思った。

――数分後

青カービィがもとのクールな奴に戻った頃。

「んじゃ、ボク達の誕生記念アンド素敵な出会いを記念してみんな自己紹介しよ
うじゃないかー!!」
黄色カービィが未だに高いテンションで言った。
「ボクはキイロ!発明が大好きなんだー!!悪いけど、この中では一番頭いい自信あるよ!」
「俺はアオ。剣の修行中の身だ」
「あたしはスカーレット!この中では紅一点ね」
「へ?」
カービィは思わず声を上げた。
「キイロ、アオ……スカーレット??君の名前は『アカ』っていうんじゃ」
だがしかし、カービィはその言葉を最後まで言うことはできなかった。

「―――ライジンブレイク」
何かを殴る時特有の鈍い音が響く。

「ぎゃああああああああ!!?」
アカの容赦ない拳を受けたカービィはあまりにあっけなく空の彼方に吹き飛ばされた。
いつの間にかつけていた赤い鉢巻をアカは無言でほどく。

「アカは自分の名前嫌ってるから気をつけてって先に言っておけばよかった…」
とっさに物陰に隠れたキイロは言った。
「…早くピンクを回収しに行くぞ」
そう冷静に言うアオもびっしょりと汗をかいていた。

〔おわり〕
page view: 1904
この小説を評価する:                   (0)