アカツキさんの小説

【エピソードパズル】45 たいようのゆびわ 〜ほんとうの持ち主〜


古の洞窟、マジルテにうっかり迷い込んでしまったカービィは、迷い、時に魔人などに襲われながらもなんとか脱出し、現在プププランドにある自宅にいた。


ドーム型のカービィの自宅は、カービィがマジルテを脱出する過程で手に入れたお宝で溢れていた。

「・・・どうすんだよ、これ」

洞窟の大冒険をカービィと共にしたナックルジョーが、呆れながら文字通りのお宝の山を見上げる。

「うーん、捨てるには勿体ないよねぇ」

持ち帰った張本人は、のんきに笑っているが、流石に自分の家を宝に占領されるのは嫌であるらしい。
笑顔が引き攣っていた。
食べ物に直通するものは別として、いわゆる“金銀財宝”の類は、カービィにとって換金か飾ること以外、使い道はほぼ皆無に等しい。
兎に角、2人は持ち帰った宝を改めて確認することにした。




「この指輪、どうしよっかなぁ」

カービィが宝の山から取り出したのは、指輪だった。

「ポップスターがひっくり返っても、おまえが身に着けるようなもんじゃないな」

ナックルジョーの言う通り、まんまる手足のカービィに、指輪などはつけられない。

「なんて言ったっけ?この指輪。いち、じゅう・・・そうそう!800000Gだったてのは覚えてるけど」
「なんで金額だけ覚えてるんだよ!たいようのゆびわだろ!」
「あ、そうだった」

カービィは、指輪を見て呟く。

「太陽があって、月はないのかな?」

カービィの脳裏には、あの太陽と月のコンビの姿がよぎる。

「そうだな・・・そりゃ考えものだな」
「太陽のことは、やっぱり太陽に聞く、ってのはどう?」

カービィの提案を聞き、ナックルジョーは飛び上がらんばかりに仰天する。
空で燦々と輝く太陽が、物を言うわけがない!と思ったからであったが、カービィはナックルジョーが考えていることがわかったようで、訂正する。

「太陽って、Mr.ブライトのことだよ。ほら、バタービルディングにいる」
「あぁ、そっちの太陽のことか」

それを聞き、ナックルジョーは正直ほっとした。
彼の脳裏には、既にワープスターに乗って太陽に向かって問いかける、カービィの姿がありありと描かれていたからである。
こいつならやりかねない、と彼は思っていた。




早速、2人はバタービルディングへ向かった。
無論、タックなどの泥棒共が喉から手が出そうなほど欲しがりそうなお宝の山があるカービィの自宅は、きっちりカーテンから窓、ドアまで閉め、鍵をかけた。
だが、あのカービィの家に金銀財宝がうず高く積まれているなど恐らく誰も想像すらしていないに違いない。

食欲旺盛なカービィのこと。山積みなのは食い物の方だ。

恐らく、皆、カービィの家で山積みにされているものは?と問いかければ口を揃えてそう答えるだろう。

バタービルディングを、今更わざわざ自分の足で登るカービィではない。
ワープスターに乗り、あっという間に塔のてっぺんまで行った。
だが、塔のてっぺんにはMr.ブライトはおらず、月の化身Mr.シャインだけがいた。

「ん?カービィか。何か用か?」
「うん。ブライトに用があるんだ。ブライトはどこ?」

シャインによると、ブライトは塔の中らしい。
シャインがカービィ達がここに来た理由を訊く前に、カービィはさっさと塔の中へ入って行ってしまった。

「相変わらず慌ただしいひとですね」
「わりぃな。ブライトの居場所を教えてくれて、ありがとよ」

カービィの代わりにナックルジョーがシャインにお礼を言い、カービィの後に続いた。


塔の中に入ると、Mr.ブライトはすぐに見つかった。

「お、カービィじゃないか。どうしたんだ?」
「えっとね、これ、たいようのゆびわって言うらしいんだけど・・・」

カービィが太陽の指輪を取り出して見せた途端、ブライトの表情ががらりと変わった。

「そ、そそそれをどこで見つけた!?」
「ん?マジルテって地下の洞窟だよ。いろいろとよくわからないからさ、太陽のことは太陽に訊くのが一番だと思って」




「それは俺の指輪だぁぁぁーっ!!」

「えーっ!?」「なんだとぉっ!?」


太陽の指輪は、元々ブライトの物だったと判明し、カービィとナックルジョーは驚愕の声をあげる。
一方ブライトは、もう一生会えないものに会ったような表情だ。目に涙まで溜めている。

「ずっと・・・ずーっと探していたのに、なんで伝説の地下洞窟にあるんだよ」
「そんなのボクが知るわけないじゃん」

無論、カービィ達は知らないが、元々ブライトのものである太陽の指輪は、ある日泥棒のタックによって盗まれてしまった。
隠し部屋に置いていたにもかかわらず、である。
やがてそのタックは、マジルテに迷い込み、金銀財宝を目の当たりにして狂喜し、喜んで持ち帰ろうとしたが、魔人ワムバムロックに見つかり、ボコボコにされた挙句、今まで手に入れた財宝と盗品をすべてワムバム一族に奪われたのだ。
そして太陽の指輪は、光り物と財宝好きのワムバム一族の王、ワムバムジュエルの目にとまり、マジルテに安置された。

それが巡り巡って元の持ち主であるブライトの手に渡るとは、何とも数奇なものだ。


「で、具体的にどういう代物なんだ?その指輪は」

ナックルジョーが、腕を組んでブライトに訊く。

「あぁ、これはな」

ブライトは、2人の目の前で指輪を嵌める。

「太陽の化身たる俺の本来の力を引き出すものなんだ。シャインの奴は常に身に着けてろってうるさいけど、どうも面倒臭いから着けていなかったんだけどなぁ・・・着けてなかったら、盗まれるわ、カービィにぶっとばされてスターロッドとられるわ、盗まれて以来、シャインの奴にジャンケンから腕相撲まで勝てないわで散々だったぜ」

それで夢の泉の件の時、シャインよりあっけなく倒せたのか、とカービィは思った。
2人の目の前で、ブライトの炎がより一層燃え盛る。

「よっしゃーっ!久々のフルパワーだ!これでシャインの奴に腕相撲で負ける気がしねぇ!カービィ、ありがとよ」

だが、お礼を言われたカービィは、どこか口惜しそうな表情である。
ナックルジョーは、そんな彼の心中を察してしまう。

「・・・まさかカービィお前、自分が見つけたから自分の物って主張したいのか?」

するとカービィははっとして、大仰に手を振り、体全体で否定する。

「そ、そんなわけないじゃん!持ち主が見つかったんだからよかったよー。あはは、指輪なんて、ボクには嵌められないし、あのままじゃ宝の持ち腐れってやつだったからねー。よかったよ、ほんと」

図星だったようで、セリフは若干棒読みであるし、態度が明らかに怪しかった。
ナックルジョーはそんなカービィを見て、呆れ果てた。

(おいおい・・・。じゃあ、さっさとあのお宝群は、持ち主がいるならちゃんと返さないとな)

彼は、持ち主がいるお宝は、持ち主に帰すまでカービィに付き合おう・・・そう誓ったのだった。

よもや、あのお宝の中に、異世界のものまで混じっているとは、夢にも思わずに。








太陽の指輪を取り戻したMr.ブライトは、この後久しぶりにMr.シャインから、ジャンケンから腕相撲まで勝利を収めることになる。

だが、後にある者の野望によって太陽と月が喧嘩をし、その喧嘩が拮抗し続ける原因になるとは、この時化身である2人も、カービィ達も夢にも思っていないのだった。
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