「なんだなんだ!?」 「どうしたの?」 「あれっ? 空が暗いよぉ!」 いつもはのんきなプププランドの住人達だが、さすがに今回はのんびりとしていられなかった。 空の様子が、いつもと全く違っていたからだ。 「これは一体…」 シミラが、明るくなったり暗くなったり忙しく変わっている空を見上げて、顔をしかめた。 「太陽と月が…ケンカしてるみたい」 「まるでさっきのカービィとシミラみたいだねえ」 「ちょっとポピー、なにそれ!」 「そうですよ、失礼な。それにあれはケンカではなく、お仕置きです!」 『…現在、昼になった回数が42回、夜になった回数が40回…41回』 「…でも、困ったね」 いつもはニコニコ笑顔のカワサキも、今回ばかりは困り顔だ。 「こんな空じゃ、昼か夜かわかんないよ。気軽にお昼寝も出来なさそうだなあ…」 「ええっ! お昼寝できないの!?」 「ウッソ!」 「マジで!?」 「お昼寝、できないの…?」 カービィや、他のプププランド住人もショックを受けている。 彼らにとって、お昼寝は一日にとって一番の楽しみ。お昼寝のために生きている、何てのもいる。 その楽しみが、太陽と月のケンカで消されてしまう。それが相当ショックなのだろう。 「お昼寝しようと思ったら夜になっちゃって、それじゃあもう、お昼寝とは言えないもんねえ」 「朝ご飯食べようとしたら夜になっちゃって晩御飯…今何食食べてるかわかんないしね」 「そういう問題ですか…」 マジメなシミラは、呆れた顔でカービィたちを見ている。 シミラはプププランドの住人の中では異質な方で、彼らほどお昼寝は好きではない。 『昼と夜が混ざり合う。そんなことはあってはならない出来事です。 今までのデータにも、そんなことが起きたと言う情報はありません』 「でも、今実際に起きてる出来事…」 「おい、なんだなんだこれは!」 遠くから、聞き覚えのあるガラガラ声がした。 声のした方を振り向くと、そこにはこの国の大王・デデデが立っていた。 走ってやってきたのか、息が荒くなっている。 「デデで大王様。ご機嫌麗しゅう」 「あ…ああ、うるわしゅう…」 シミラが、デデデに丁寧に挨拶をする。それにつられて、デデデも挨拶を返す。 「…って、挨拶をしてる場合じゃない! どうなってんだこの空は!?」 「僕達にもわかんないよー……デデデ大王ー…」 カービィが、泣きながらデデデの体に引っ付く。 「どうしよう…このままだとお昼寝が出来なくなっちゃうんだよぉ!お昼寝が出来なくなったら…ボクは、ボクはあ…!」 「だあああ、わかったから離れろ! 昼寝が出来なくなってイヤなのはわしだって同じだ!」 『この国の住人の94%の一番の楽しみは「昼寝」です。これがなくなれば、同時に国の活気もなくなるでしょう』 「それってつまりい…どういうことお?」 「今の状態が続いてしまうと、楽しみがない、だらけた国になってしまうと言うことですよ」 「うーん、それは困ったね…。どうすればいいんだろ…」 「ノヴァに頼めばいいのサ」 「…へっ?」 聞き覚えのない、不思議な声が聞こえた。 ガラスのように、透き通った声。 その声の主は、大きな玉に乗っかって、その上をころころと器用に歩きながらやってきた。 彼は、道化師のような格好をしていて、目は大きくぎょろっとしていた。 「君は…?」 「ボクの名前はマルク。色んな星々を旅している道化師なのサ」 道化師―マルクは、一つお辞儀をして、大玉から音もなく降り立った。 「お天道様とお月様のケンカを止めたいんだろ?」 「そうなんです。でも、そんなケンカ、早々も止められなくて…」 「それなら、大彗星・ノヴァにお願いすれば万事オーケー、解決なのサ♪」 「…大彗星、ノヴァ?」 カービィとJ以外はみんな、首をかしげている。 (カービィはまだ、デデデ大王に引っ付いて泣きじゃくっている) 『…ノヴァについてのデータ発見。宇宙のどこかにある彗星で、どんな願い事でも一つだけ叶えてくれるそうです』 「ご名答、ロボット君」 マルクがウィンクをして、話を続ける。 「ノヴァならなんでも願いを叶えてくれる。お天道様とお月様のケンカも、あっという間に止めてくれるサ」 「そっか!そうすれば昼も夜も元通り…」 「お昼寝も出来るようになるの!?」 「ノヴァに会えばね」 マルクがそう答えると、さっきまで泣いていたカービィの顔に、笑みが戻った。 「でも、話はちゃんと最後まで聞かなくちゃダメなのサ」 「えっ?」 「大彗星ノヴァは、ただでは願い事を叶えてくれないのサ。条件が一つある」 「条件…供え物を捧げるとか?」 「ヒミツの呪文を言うのかなあ?」 「一曲歌ってあげたりとか?」 「あなたが歌うと二度と叶えてくれなくなりそうだからやめてください」 「シミラ、どういうこと!?」 「ノンノン。そうじゃないのサ。それよりももっと、大変なことサ」 「…大変?どういうことお?」 ポピーが聞くと、マルクは懐から地図らしきものを出して、それを地面に広げた。 地図には、カービィたちの住むポップスターの他に、いくつかの星が描かれていた。 「これが、キミたちの住むポップスター。…わかるね?」 全員、コクリと頷いた。 「ノヴァを呼び出すには、この7つの星の力をつなぎ合わせなきゃいけない。星たちの力が必要なのサ」 「7つの星?」 「そう。フローリア、アクアリス、スカイハイ、ホットビート、ケビオス、マーチェイ、ハーフムーン。 この7つの星の力を借りて、初めてノヴァが呼び出せるのサ」 「…大変そうだね」 「でも、ノヴァに頼まなきゃ、このケンカは収まらないのサ?」 マルクの言葉に、みんなが上を見上げる。 太陽と月のケンカは、さっきよりも勢いが増しているように見えた。 「…話は全部わかった」 デデデ大王が、のっそりと立ち上がる。 次に、カービィを見て、こう叫んだ。 「そういうことで、お前の出番だ!カービィ!」 「……はあっ!?」 デデデの突然の発言に、唖然とするカービィ。 「こういうピンチのときは、「星の戦士」であるお前がどうにかするんだ!」 「ちょっと待ってよ!何その都合のいい…」 「頑張れ、「星の戦士」!」 「応援してるよ、「星の戦士」!」 「ボクも応援してるさ、「星の戦士」カービィくん♪」 「…みんな…あんまりだよ」 がっくりとうなだれるカービィ。 そんな情けないカービィを見かねたのか、シミラがカービィの傍による。 「私も一緒に行きますよ」 「…シミラ?」 「あなた一人だと、また誰かに迷惑をかけかねませんからね」 「ひどいなあ…」 「シミラが行くんだったらボクも一緒に行くよお」 ポピーも、カービィの隣に座り込んで言った。 「他の星の芸術作品とか、すっごく興味あるんだあー」 「…あのさ、悪いんだけど、僕らもお供してもかまわないかな?」 そう言ったのは、カワサキとJだ。 「ボクも、他の星の食材とか名産品とか、凄く気になっててね」 『シェフ・カワサキを守るのが私の使命。彼と共に私もお供します』 「カワサキ、Jも…」 カービィの目に、再び涙が浮かぶ。 マルクが、笑顔で「いい友達を持ってるんだね」と言った。 * そして、旅立ちの時は来た。 「…なんかワープスター、震えてない?」 「やっぱり重量オーバーなのかなあ…」 「うん…こんな大人数、乗ったことないから…」 『ワープスター。定員数は最大で2人ですが、今回は私を含めて5人。明らかに重量オーバーです』 「これ、飛べるんですか…?」 「だ…大丈夫! …多分」 「…不安ですね」 「ヤア」 マルクが、大玉に乗って見送りにやってきた。 「この星のことは、全てキミ達にかかっているのサ。みんなも待ってる。だから、必ず成功させるのサ!」 「マルク、色々とありがとう。僕達、頑張ってくるよ!」 『…カービィ、あと5秒で発進するようです』 4…3…2…1… 「発進、ワープスター!!」 カービィの合図と共に、ワープスターはものすごいスピードで空に飛びたち、見えなくなっていった。 「…しっかり、やってくるのサ」 |