ヨツケンさんの小説

〜過去の記憶〜【短編小説】エピソードパズル作品


オレンジオーシャン要塞、そこで彼らは必死にある準備をしていた。今日より一週間後、堕落に満ちたこの星を変える為に行う戦艦ハルバードによるプププランド進行計画。総司令官たるメタナイトも指令室でようやく確認作業を終え、ゆっくりと椅子にもたれていた。
「メタナイト様っ!!」
突然指令室の扉を開けてメイスナイトが慌てた様子で入ってきた。仕方なく聞き返すと、メイスナイトはモニターを指差しながら叫んだ。
「カービィが、メタナイト様に話があると要塞前まで来ているダス!!」
「何だと!!」
これはメタナイトにも予想外だった、この星で幾つもの猛者を倒し平和をもたらして来た英雄が、この世界に成ってからメタナイトが自分の陰以外に唯一負けた相手が、今何故この要塞に現れたのだろうか。
「応接室まで通せ、感付かれない様にな……」
「は、はいダス」
今感付かる訳にはいかない、だからこそメタナイトはカービィを要塞の中まで招き入れた、応接室まで向かうと既に部屋の中にはピンク色の球体が珍しく重々しい空気を放ちながら落ち着いた様子で椅子に座っていた。
「今日は何の用だ、最近マジルテで宝物を根こそぎ持って帰って着たとは聞いていたが?」
「うん、そのマジルテで見付けた宝物なんだけど……」
メタナイトはカービィの机を挟んで反対側の椅子に座ると、話を切り出した。するとカービィはゆっくりと頷いて何処からか円錐形の物を取り出した。
「これ、メタナイトは覚えてるかな?」
カービィがそれを机に置いたので、メタナイトはそれを手に取り、ゆっくりと眺めた。何かの牙だろうか、先にゆくほど少し曲がった円錐は乳白色でとても硬く、骨で有ること示していた。
「それで、これがどうした?」
メタナイトが聞くと、カービィは躊躇う様に目を剃らした、しばらく何も言わずに待って居ると、ようやく彼は目をメタナイトにしっかりと向けて口を開いた。
「昔、僕はこれをと同じ物を見たことがある。そう、これはチリドッグの牙だよ……」
「なっ!?」
それを聞いてメタナイトは動揺を隠せなかった、確かにメタナイトは何処かで見たことがあるとは思っていた。しかし、まさかそれと同じ物が一時期自分の額に突き刺さり、自分を眠りに就かせた物だとは即座には思い出せなかった。
「思い出した?」
「あぁ……」
深く頷きながら自らの額き触れる、其処には傷痕は残ってはいなかったが、それでもその辺りの皮膚が熱く疼いた。
「懐かしいよね、僕があのポップスターに来て結構経った位だったね」
「あぁ……」
カービィに言われずともメタナイトは鮮明に思い出していた。大抵週に一度、ププビレッジと呼ばれたあの村では何かしらの事件が起きていた、時には突然季節外れの雪が降り、時には紫外線が異常値を示し、時には敵側の円盤に襲われたりした。そんな事件の一つ、あの世界のデデデ大王がカービィを倒すために呼び出した魔獣チリドッグがデデデ城内を火の海に変えた事件だ。
「あの頃の僕はまだ非力で、追い込まれないと戦えないくらい弱かった」
「だが、それでもお前はずっとあの村を守り続けた、どんなに精神的に肉体的に追い込まれても」
「うん……だからあの事件の時も僕は最初逃げ回るしか出来なかった」
カービィの表情が曇った。
「だから、メタナイトが倒れてしまった……」
あの時、確かにメタナイトはチリドッグに襲われていたカービィを助ける為、チリドッグと対峙した。其れからはチリドッグはカービィでなくメタナイトを執拗に狙ってくるようになった。勿論、メタナイトには理由が判っていた。
「知らなかったよ、メタナイトがソードとブレイドを助ける時に戦った相手があのチリドッグだったなんて……」
「まぁな……」
チリドッグに追われてる最中にあのソードブレイドにメタナイトは会った。彼らは山賊紛いの事をやっており、自らが生きる為、メタナイトからも何か奪おうと迫って来たのだ。メタナイトが彼らと話しているときにチリドッグは3人目掛けて襲って来た。彼らはいきなりの魔獣の襲撃に怯え冷静さを失っていた、それをメタナイトが庇い知力を持ってチリドッグを撃退し、それに恩を感じた彼らがメタナイトに忠誠を誓ったのだ。
「だが、デデデ城内で対峙した時、私は奴に勝てなかった」
「そして……」
カービィが机に置かれた牙を見た。
皆を逃がすためにメタナイトは単身でチリドッグに立ち向かった。迫り来る爪を剣でいなし、僅かな隙を突いてダメージを与える一進一退の攻防、そして最後の打ち込むの時、決着は着いた。メタナイトの剣は避けられ、チリドッグの牙はメタナイトの額に突き刺さり、意識を奪った。
「だが、私は助かった。お前がチリドッグを倒してくれたお陰で」
「でも、それもソードとブレイドが隙を作ってくれたからだよ……」
意識を失ったメタナイトの腰からカービィは宝剣ギャラクシアを抜き、彼らはチリドッグ討伐に向かった。3人係りでようやく河岸に追い詰め、ソードとブレイドがチリドッグに飛び掛かって苦手とする水中へと引き摺り込んで、チリドッグを弱体化させた。そして、ギャラクシアを持つカービィによるソードビームによってチリドッグは2つに切り裂かれ爆発して永遠に消滅した。
「それにお前はそれらを創り出した存在さえ倒しただろう?」
「うん……でもナイトメアは生きていた……」
ホーリーナイトメア本部にてカービィはナイトメア間違いなく倒した。しかし、それから長い時間経った筈のある日、長い旅を終えポップスターと呼ばれるこの星にやって来て暴政を行っていたデデデ大王を倒したカービィを待っていたのはナイトメアとの再戦だった。
「そして、昔のナイトメアとの戦いに着いて僕は情報を集めた」
「……だが、誰も覚えては居なかった。森の長たるウイスピーウッズでさえ」
メタナイトが続きを言うとカービィは頷いた。
そう、あの時代あの世界の記憶を持ってるのはカービィとメタナイトだけであった。メタナイトが何故カービィは記憶が有ると解ったのかと言うと。
「まさか、僕が剣を吸い込んでコピーした事で気付くとは思わなかったよ」
「あの時代あの世界での記憶が無いならそのまま手に取っていた筈だからな……」
初めてメタナイトがカービィと戦った時、カービィは剣をそのまま握って戦った。しかし、魔獣との戦いの中でカービィはソードをコピーする事を覚えたのだ。
「何でみんな覚えては無いのかなぁ……」
「時の流ればかりでは無いな、このポップスターと呼ばれる星も形が変わっている」
「うん……夢の泉なんて無かったもんね……」
夢の泉だけでは無かった、キャピイ族はかつての文明の跡すら残ってはいなかったし、スターロッドも夢の中でカービィがワープスターを吸い込んでのみコピー出来る能力だった筈で、そのワープスターもたった1つしか無かった筈だ、それに、ポップスターの事件の頻発率は異常だった。
「ごめん、そろそろ帰るよ?」
「そうか……」
「ねぇメタナイト?あの時代あの世界は本当に在ったのかな……」
「判らん……」
「そう、じゃあ僕は帰るよ。いつまた何が起こるか判らないからね」
「あぁ」
「……その牙はあげる。じゃあね」
その言ってカービィは特有の音と共に扉から出ていった。
「『いつまた何が起こるか判らない』か、カービィ何故お前はそんなにこの星の為に尽くせる?」
カービィと言う英雄の功績は大きい、だが住民が少しでも緊張感を持っていれば被害が拡がらず、カービィへの負担も最小限に済んだ、それもこれもこの星の堕落した空気のお陰だ。メタナイトにはカービィの様に英雄と成って戦う気には成れなかった。だからこそ。
「メタナイト様、カービィ要塞から離れましたダス!!」
「よし、作戦決行まであと1週間、皆気を引き締めよ!!」
だから、住民に危機感を植え付けると言う不器用な方法しかメタナイトにはする事が出来なかった。
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