ヨツケンさんの小説

【闇の聖母】第2話


「私はゼロ、貴女に仕える為に生まれました」
「ゼ……ロ?」
魔法陣の中心に現れたそれは、そう名乗ると少女の前に移動し、赤い瞳を閉じ、御辞儀
をするかの様に俯いた。
「私は貴女に創られました、常に貴女の側で貴女を支えるのが、私の使命です」
ゼロの前に赤いエネルギーが集まり、一本の紐の様な形に成ると、少女の胸元に飛んで
行き、其処でリボン結びに成った。
「貴方は私の側に居てくれるの?」
彼女は暫く胸元の赤いリボンを眺めた後、キョトンとした顔でゆっくりとゼロに問いか
けた。
「はい」
ゼロが答えると、少女は急に泣き顔になり、ゼロの丸い身体にすがり付くと、初めて誰
かに優しい言葉を掛けて貰ったのが嬉しかったのか、涙を流し始めた。その涙はゼロの白
い身体を伝い、後を残しながら床へとゆっくり落ちていった。
「ぐすっ……」
「あの……」
しばらくしてようやく彼女が泣き止み、ゼロが声を掛けると、彼女はローブの袖で涙を
拭い、ゼロをじっと見詰めた。
「なに?」
「貴女の名前を知りたいのですが……」
ゼロがそう言うと、今まで一度も名前を聞かれた事の無かった彼女は、途端に泣き顔か
ら、無邪気に嬉しそうな表情になり、自分の胸元に手を当て、初めて自らの名前を口にし
た。
その笑顔は生まれて初めて彼女が本当に微笑んだものだった。
「マナリティア!」
「では行きましょうマナリティア様、貴女の行きたい所へ、行きたい様に」
ゼロがそう言うと、マナリティアの身体がと浮かび上がり、ゼロの上に乗ると、彼女を
柔らかな光が包み、胸元のリボンが風に舞った。
「うわぁ」
彼女の前に合った扉が開き、朝日が彼女の幼い顔を照らす。彼女はその眩しさに暫く目
を閉じていたが、少しずつ目を光に慣らしながら扉の向こうを見ると、風を受けて揺れる
草原の向こうからまるで、彼女を見守るかの様に優しく彼女を照らしていた。
「きれい……」
「まるで貴女の心を見ているようです」
ゼロがそう返すと、少し頬を赤く染め、恥ずかしがって彼女は微笑みながら少し怒った
様な感じで、ゼロの身体を優しく叩いた。
「行きましょうマナリティア様」
「うん!」
マナリティアが頷くと、ゼロは彼女を乗せたまま扉から飛び出す、その時の彼女の瞳は太
陽の光を浴びて輝いていた。
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