ヨツケンさんの小説

【短編小説】KNMLコミケ小説本発売決定記念「ノベルズ・ヨツで闇鍋会!!」


「……相変わらずの安易なネーミングだな」
すっかり日の落ちて暗くなった路地を独り歩く青年、ヨツがポツリと呟く。
「しかし、笹店長はこんな夜中に呼び出して何をするんだ?」
また説教だろうか、と思ったヨツの身体が震え店長のにこやかな笑顔とドス黒いオーラ
が脳裏に蘇る、未だにあの恐怖は忘れきれていないらしい。
「(……なるべく早く済むようにしよう)」
そんな事を考えて内にも時間は進み、やがて見馴れた職場が目に映った。と、同時に店
を挟んで反対側から白い影がこっちに向かって歩いて来るのが目に入り、背中の塩酸傷の
跡が痛んだ。
「お〜い、フラ君」
「あれ、ヨツさん?」
ヨツが呼び掛けると、白い影は歩くスピードを上げヨツに迫って来た。
「こんばんは、フラ君」
「こんばんは、ヨツさんも店長に呼ばれたんですか?」
フラービィが何時もの白衣を整えながらヨツに問いかける。
「あぁ、フラ君が呼ばれてるなら説教ではなさそうですね」
「でも、一体何なんでしょうね?」
「さぁ?とりあえず入ってみましょう」
恐る恐るヨツが扉に手を掛け、ゆっくりと押し開けると、店の中から歓声が揚がった。
「遅いですよヨツさん、フラ君」
「待ちくたびれたニャ」
「お待ちしてました♪」
「ヨツ遅〜い、ぼくたちずっと待ってたんだよ〜」
カービィ、笹店長に、球体猫のな〜ビィさんに、カーミラやシミラ、その他にも沢山の
カービィ界の住人や人間キャラ達がヨツ達を待っていた。
「皆さん……どうして此所に?」
「皆、笹に呼ばれたのだ」
「さぁ、始めましょう、一生に一度の闇鍋会を!!」
夜津がヨツに、こっそり耳打ちすると同時に瑠奈がカウンターに立ち上がり、そう宣言
すると、大きな拍手が巻き起こった。
「かんぱーい!!」
威勢の良い掛け声の後に、グラスの触れ合う音が店内に響き渡る。
「あれ、ルナさんは?」
「ルナさンハ、例のあの人と別世界でデートしてルヨ」
「(……何でペイントローラーが知ってるんだ?)」
「【例のあの人】って言うと、頭文字が【ヴ】で始まる闇魔法使いみたいですね」
どうやら、水兵ワドルディは某小説のリド○君の大人状態の事を言いたいらしい。
「最近、陛下が【一頭身手当てを出すぞ】とか仰ってるらしいのだ」
「確かにこの世界に一頭身の生命は多いからね……」
「でも要らないんじゃ無い?レベル8に造りかけのダム同様」
「確かにな……」
「何のはなし?」
「あぁ、実はな…」
メタナイトとドロシア、それにウィズがポップスターの最近の政治について話して居る
と、ウィズの弟のシミラが面白い事を見付けたか様にメタナイト達に近付く。
「ヨツさん!!始めますよ」「は〜い」
名前を呼ばれ、慌てて振り返ると、【カッフェ・笹】の店員が一つの毒々しい位の黒い
鍋を囲んで座っていた、鍋の色が余りにも闇色だったのでヨツは思わず突っ込んだ。
「……この鍋は何でこんなに黒いんですか?」
「ゼロさんから貰ったダークマターの素を入れてみたニャ♪」
な〜ビィが指差した先を見ると、人間形態のゼロが黒いローブを着たアルマと鍋を囲っ
ていた。
「美味しいですか?」
「あぁ、君が取ってくれたからな」
「ありがとうございます、ゼロ様」
「【ゼロ様】は止めてくれ…」
「(ゼロ、幸せそうで良いなぁ……私も彼女欲しいな)」
アルマに【ゼロ様】と言われて僅かに表情が綻ぶゼロを見ながら、ヨツはひっそりとそ
う思った。
「ヨツさん!!」
「はいっ!?」
「ジャンケンしますよ」
「取る順番を決めるニャ♪」
「あ、はい」
「私はパーを出しましょう」
「(店長……まさか心理作戦か?)」
「いきますよ、ジャ〜ン、ケ〜ン」
一斉にみんなが拳を振り上げ、【ポンっ!!】という声と共に降り下ろす。
開いて手のひらのの中に拳を突き出した一人が思わず声を漏らした。
「俺ですか……」
「予想通りです」
「(まさか本当にパーを出すとは……)」
「大丈夫ですよヨツさん、普通に食べられる物しか入ってませんから♪」
カーミラがそう言いつつ、嫌がるヨツに無理やり箸を持たせ、鍋に突っ込ませる。嫌々
ながらもヨツは見えない鍋の中身を探る。
「(これは……卵かな?これにしよう)」
ヨツが卵らしき物を掴み、鍋から引き上げると、現れたのは卵の形をした毒々しい色を
した物体だった。
「……何ですかこれは?」
「これは……ピータンですね」
「ピータンってあのピータン?」
「はい♪」
「絶望した!鍋に入ってるピータンに絶望した!!」
ヨツが引き上げたのはピータンと言って、卵を殻付きのまま発酵させた料理である。
「ヨツさん、引き上げた以上は絶対食べるニャよ?」
「わ、分かってますよ食べますよ!」
な〜ビィに急かされ、ヨツは意を決してピータンを口に含む、と同時にヨツの口に表現
し難い味が広がった。
「……ウボアー!!」
「……大丈夫ですか?」
倒れたヨツの顔を水兵ワドルディが覗き込む。
「大丈夫じゃない……」
「ヨツさん、そんなに美味しかったんですか?」
「美味しく無い……少しトイレ行ってくる」
コーヒーで口の中のピータンを全て飲み込み、そそくさとトイレに向かうと、突然アド
がヨツの前に現れた。
「ヨツさん大丈夫?」
「あぁ」
「ちょっと待ってて」
ヨツを呼び止めると、アドはキャンバスに黄色い箱にラッパのマークの描かれた絵を描
き、実態化させる。
「(コレは……正○丸)」
「はいっ」
「あ、ありがとう」
「お大事にね」
そう言い残してアドが去った後、ヨツはアドに貰った箱から錠剤を取り出し、口に流し
込んだ。
「ふぅ」
その後も延々と闇鍋会は続き、その間にヨツはピータンをあと六つ食べるハメになった。
因みに一頭身手当ては予算的にも支持的にも否決されたそうな
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