ヨツケンさんの小説

【カッフェ・笹】第3話


「吸血鬼とメイド服」

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「朝か……」
朝、目覚まし時計の音で目を覚ました青年は眠たそうに目を擦りながら歯を磨き、何時も
仕事の時に来ている服を身に纏うと、早々と家を飛び出す。
「とりあえず、コンビニで何か買って行こう……」
寝ぼけた頭でそんな事を考えながら、コンビニに入り、店主である水兵帽を被ったワドル
ディと彼の何時もの笑顔で挨拶を交わす。
「おはようございます!!」
「ワドおはよう……相変わらず元気だね……」
棚からおにぎりを八、九個とジュースを一本カゴに入れ、レジに出す。
「ヨツさんこそこんなに大量に買ってるじゃ無いですか」
「このぐらい食べないと持たないんだよ……燃費悪くてさ……」
「そうなんですか……1580円に成ります♪」
「そうなんだ……えっと80円……有った!!」
「ちょうどお預かりします」
「それじゃまたね」
「ありがとうございました!」
コンビニを出て、何時もの道を何時ものように進みながらおにぎりに食い付く、そして四
個目を食べきったと同時に仕事場に着く。開店三十分前、何時も通りの時間だ。
「ヨツさん、おはよう」
「フラ君……おはよ……」
店に入って突き当たりの更衣室に入り荷物を置いていると、まず最初に姿を現したのは白
衣を着た少年、フラービィだ。この間の一件でついた背中の傷が疼く。
「珍しく早いですね」
「何時もこのぐらいだと思うんだけど……」
「コラ、早く開店準備手伝うニャ!!」
いきなりの声に二人が振り返ると、そこには猫のような丸い生き物がしてやったと言う顔
で立っていた。
「な〜さんか……驚かさないで下さいよ……」
「ごめんごめん、でも目は覚めたニャしょ?」
「それはそうですが…」
「それより早く準備しますよ!」
「判ったよ……店長に怒られるのはもうこりごりだからな……」
実際、フラービィにやられた怪我よりも、店長に怒られた数時間の方が彼にとっては辛か
った。おかげでヨツは人気アニメ、「アニメの中へ」を見逃してしまい、仕方なく動画サ
イトで見たのである。
「皆さん、集まって下さい」
開店準備が終わりくつろいでいた時、店内に響き渡る店長の声に店員達が集まると、何時
も一人で来る店長の横に、美しい金髪の女性が死神を思わせる黒いローブを着て立ってい
た。
「まずはおはようございます」
「おはようございます(ニャ」
「色々言うことは有りますが、まずは新しくこの店で働いて下さる、カーミラさん」
「はい」
店長が声を掛けるとカーミラと呼ばれた女性は、甘く囁く様な声で返事をして店員の前に
立つその動作にすら気品が感じられた。
「カーミラ・ロードです♪」
「カーミラさんには今日から働いて貰います、仲良くして上げて下さい」
「宜しくお願いします♪」
「(か、可愛い……)」
カーミラが頭を下げる。彼女の金色の長い髪が空気の抵抗を受け軽やかに舞い、彼女が顔
を上げにっこりと微笑むと思わずヨツの意識は薄れていった。
「今日、私は別の用事が有るので後は頼みます」
「あの、笹店長」
「はい?」
「カーミラさんの制服は……」
「あぁ、そうでしたね……ヨツさん!」
「ふぇ!?は、はい!」
余韻に浸ってヨツは急に話掛けられ少し驚きながらも返事を返す。
「な〜さんが入る時に間違って買わせておいた服が有りましたよね?」
「あぁ……有りましたねぇメイド服が……」
「何故メイド服……」
「多分、ヨツさんの趣味だニャ」
ヨツはこちらの世界でも女好きの変態である。先ほど上がった「アニメの中へ」もヒロイ
ンの女の子見たさに見続けているのだ。
「何故メイド服何ですか……まぁ、良いでしょうそれをカーミラさんに渡して下さい」
「承りました……」
「あぁ、あと私は今から別の用事が有るので後は頼みます」
「はい」
「ではこれで…」
そう言って店長が後ろを向くと、ヨツは服を取りにロッカールームへ向かう。そして、笹が扉に手を掛けた後に振り
返り、こう一言付け加えた。
「あぁ、あとカーミラさんは半吸血鬼なのでお気をつけ下さい、では」
「えっ……」
店長が出ていくと同時にヨツが戻って来る。その手にはメイド服がしっかりと握られてい
る。
「はいっ、カーミラさんサイズが合ってるか解りませんが……」
「わぁ……ありがとうございます♪」
「(多分、サイズは合ってるだろうけど……)」
メイド服を受け取り、喜ぶカーミラを見ながらヨツはひっそりとそう思う。実はこの変態
男、一目見た瞬間に彼女のスリーサイズを見切っていたのだ、やはり変態である。
「じゃあ、着替えて来ますね♪」
「では、私も……」
「何でヨツさんも行くんですか!」
「バレたか……」
カーミラの後について、ロッカールームに行こうとしたヨツをフラービィが引き留める。
どうやらこの男は彼女の着替えシーンを覗こうとしたらしい、やはり変態である。
「お待たせしました♪」
しばらくしてロッカールームからメイド服を着たカーミラが出てくる。その姿はまるで彼
女のために服を誂えたかの様に似合っていた。
「ヨツさん?」
「ふぇ!?」
「そろそろ開店しますよ?」
「は、はい」
それからはお客さんが入り、みんな忙しく働き始める。カーミラも初めてとは思えない程
テキパキと仕事をこなしていた。しばらくしてお客さんが居なくったので、今のうちに休
もうとヨツが休憩室に入ると、カーミラが疲れた様子で壁にもたれ掛かっていた。
「大丈夫ですかカーミラさん!!」
「ヨツさん……」
カーミラが顔を上げ、上目遣いでヨツを見つめると、ヨツは何故か身体が動かなくなり、
カーミラはそのまま彼に近づく。
「か、カーミラさん?」
「いただきます……」
そう言うとカーミラはヨツの首筋をペロリと一回舐めた後、そのまま彼の首筋に牙を突き
立て、血をゆっくりと吸う。カーミラの柔らかい唇が首筋に触れた後、チクリと痛みがヨ
ツに走る。
「ごちそうさまでした♪」
やがて、ある程度血を吸って満足したのか、カーミラはヨツから離れ、そそくさと店内に戻る。一人残ったヨツはふ
とカーミラの唇がさっきまで触ていた部分を触り、鏡を見る。その場所には痛みも傷痕も
残って居なかった。
「なんだったんだ……まぁ良いや、とりあえず仕事に戻ろう」
少し嬉しい様な気分に浸りながらヨツは再び仕事に戻った。
それから数日の間で、「カッフェ笹」の利益が1.5倍に上がっていた。どうやらカーミラ
目当てのお客さんが多数来るらしい。
そして、ヨツはカーミラに血液供給媒体として毎日カーミラに血を吸われる運命と成った。
本人は「可愛い女の子に必要とされてるだけで十分!!」と言っている、やはり変態である。
「みんな、お疲れ様ニャ〜」
「お疲れ様です〜」
数時間後、ようやく店が終わりヨツが電源を落とし、帰ろうとすると、その後ろをカーミ
ラがついて来る。
「カーミラさんも帰りこっちなの?」
「はい♪」
「ふーん……そういえば、カーミラさんは何でこの店で働こうと思ったの?」
「それは、笹さんが誘ってくれたんです」
「店長が!?」
「はい♪」
彼女の話によると、カーミラが明るい性格に成ったのは笹店長のカウンセリングのおかげ
らしい、だからカーミラも笹が誘った時「笹さんがいるなら……」といってカッフェ笹で
働く事を決めたらしい。
「へー……あの店長がねぇ……」
「優しい人ですよ♪」
俺には厳しいがねぇとひっそりヨツは思った。
「では、私はこっちなので♪」
「あぁ……さよなら」
「お休みなさい♪」
離れて行く彼女を見ながら、ヨツは明日も頑張っても良いかなとひっそり思った。
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