星のユービィVさんの小説

【お題小説】カービィとアドレーヌのお絵かき大特訓!


プププランドの秋、今日はとてもいい天気だ。
森の中にある大きな切り株の上で画材道具を広げ、絵を描いているのはアドレーヌ。
彼女は数年前にプププランドへ絵の修業にやってきて以来、すっかりこの地に馴染みいつの間にか住人の一人になっている。
「るんるんる〜♪ ラララ〜♪」
とのんびり口ずさみながら絵筆を進ませていく。キャンバスにはあっという間に美しい風景画が描かれた。
一つの絵を完成させたアドレーヌは、鞄からサンドイッチと水筒を出すと一息つくことにした。

少し経って、アドレーヌは再び絵を描き始める。今度は近くにあるリンゴの木を描いてみることにした。
「今日もいい天気ねぇ、こうやって絵を描いてる時間ってすっごく幸せ……」
などと呟きながらのんびり絵を描いているところにカービィがやってきた。
「やっほーアドちゃん、探したよー!」
「あら、カーくんじゃないの。どうしたの?」
アドレーヌは絵を描く手を止め、カービィの話を聞いた。
「アドちゃんに絵を教えてもらいたくて来たんだ。僕っていつも食欲の秋ばかりじゃない、だからたまには絵を描こうと思ったんだけど……」
「思ったんだけど?」
アドレーヌが繰り返す。カービィは黙って小さな画用紙を差し出した。
それを受け取ったアドレーヌは目を通し少しためらいながら言った。
「ね、ねぇカー君……これに描かれている絵って、幼稚園の時に描いたの?」
「違う、さっき描いたの……」
少しの間、気まずい空気が流れてしまいアドレーヌはちょっと罪悪感を感じた。
いくらその絵が本当に下手だったとしても、さすがに"幼稚園の時に"はまずかったようだ。

数分後ようやく気を取り直したカービィが口を開いた。
「でね、僕アドちゃんに絵を教えてもらいたくて来たんだ。せっかく芸術の秋だからさ、僕も絵を描きたいんだ」
そう言われたアドレーヌは、少し考えた後笑いながら言った。
「いいわ! あたしが色々教えてあげる」

数日後、早速アドレーヌの元へやってきたカービィは道具を広げた。画用紙にスケッチブック、絵の具、筆と鉛筆などなど、小学校の授業で使う基本的な道具ばかりだ。
それを一つ一つチェックしたアドレーヌは、まず最初に基本から教えることにした。
「いいカー君。まず最初に鉛筆は全部しっかり削ってね、道具を完璧にするところからが大切なのよ」
「うん、わかった」
すぐにカービィは鉛筆をカッターで削り始める。コピー能力のカッターではなく、文房具のカッターを使ってである。
「それが済んだら次は筆の毛先を揃えるのよ。その次はパレットを綺麗にしてキャンバスを整えて絵の具を出して……」
次々と必要なことを説明するアドレーヌ、それについていこうと必死なカービィ。
聞いたことを一つ一つ、一生懸命やっていく。
数分後、少々不格好だが鉛筆や筆の準備が完了した。

アドレーヌは近くの花を指さして言った。
「カー君、まずはあれをスケッチしましょう。スケッチブックと鉛筆を出して」
「オッケーわかったよ」
すぐにカービィは花の前に寝転がり、絵を描き始めた。だが描き方はひどく、まるでひと筆描きをしているような感じだった。
その様子を少し心配そうに見守るアドレーヌ。彼女の事はお構いなしにどんどん描き続けるカービィ。
「でーきた!」
絵を描き上げたカービィはアドレーヌにスケッチブックを見せる。
そこにはやはり幼稚園児が描いたかのような形の崩れた花が描かれていた。
「あー、うん……まぁ、そのー…………」
今度は何と言っていいかわからず言葉に詰まるアドレーヌだった。
その様子に気がついたカービィ。
「あのー……やっぱり、ダメ?」
「むぅ……」

アドレーヌは鞄から一冊の本を出し、カービィの隣に座った。
そして本を開き、一つのページを読みあげる。
「スケッチのコツ。まず描く対象物をよく見る事」
カービィはスケッチブックのページをめくると言われたとおりに対象物をよく見つめた。
「次に鉛筆を構えて大体の大きさを計ること」
鉛筆を前に構え、大きさを計るカービィ。これでスケッチブックに書くときの大きさの参考になるのだ。
「スケッチするときは一気に描き上げず少しずつ丁寧に、よく見てスケッチすること」
言われたとおりにカービィはスケッチブックと花を何度も見比べながら描き始める。
少しずつ丁寧に、慎重に鉛筆を進めていくカービィ。また横で心配そうに見守るアドレーヌ。
やがて、再びスケッチブックをアドレーヌに差し出した。
そこには、まだリアルさはないが間違いなく上達したスケッチが描かれている。
アドレーヌは驚いた。口で3つちょこっと教えただけなのに彼の描いた絵は大きく上達していたからだ。
「すごいわカー君! 少し上達したじゃない。次は風景画を描く練習よ、筆と絵の具を用意して」
カービィは言われたとおりにする。


「カー君、いいかしら? 風景を描くときは周りの物や遠近法に気をつけて描くのよ、それから色を塗るときは最初に広い部分から塗っていって、それから……」
風景画を描く練習を始めたカービィにスラスラと説明をするアドレーヌ。だが絵の具を使って描く絵はほとんどやったことがなくチンプンカンプンなカービィ。
彼女の言っていることについていくことができず、間違った色を混ぜてしまうわ、バケツをひっくり返すわ、挙句の果てに筆を壊してしまうという失敗までしてしまった。
さすがにアドレーヌも疲れを見せたため、カービィは申し訳なく思った。
「とりあえず、お昼だし休憩にしましょ」
そう言って荷物をまとめたアドレーヌは一旦昼食を食べるために家へと帰ることにした。
カービィも自分の家へと向かって歩き出した。


ところが、午後のレッスンの時間にカービィは遅れていた。
待たされたアドレーヌはイライラしながら座りこむ。
「全く……一体どこで何をしてるのかしら?」
そこへカービィが息を切らせてやってきた。何やらとても慌てているようだ。
「アドちゃんアドちゃん! 大変なんだよぉ…」
「ちょっとちょっと! 落ち着いて、一体何があったの?」
アドレーヌがカービィに水筒を渡しながら言った。カービィは紅茶を少し飲むと一息ついた。
「あのねぇ……」



「えぇぇぇぇ!? ドロシアと絵の腕前勝負をすることになったぁ!?」
カービィが慌てている理由を聞いてアドレーヌは驚いた。
まだ絵の具で絵を描いてすらいないのに勝負をすることになっていたからだ。
もちろん、今の状態のままでは勝負にならないことは明白だ。
「勝負することになったって……カー君まだ練習中じゃないの!」
「うん、だから大急ぎなんだよ! アドちゃんの絵を描く様子を見せて! 全部覚えるから、一生懸命真似して覚えるから!」
必死になって懇願するカービィ。
それを見たアドレーヌは心を打たれた。今までこんなに必死になったカービィは見たことがない。
(カー君がこんなに本気になってるなんて……)
アドレーヌは鞄を開くと、すぐに絵の道具を取り出し準備をした。
「わかったわカー君、今からあたしが風景画を描くから同じように真似して覚えて!」
「うん、アドちゃんありがとう!」

アドレーヌは絵の具をパレットに出し、少し水で薄めてキャンバスに絵を描き始める。それを見ながら同じように真似してカービィも絵の具をかまう。
その作業を何度も繰り返し風景画を進めるアドレーヌ、それを真似して同じように風景画を描くカービィ。
絵の勝負が待っているとなるとどちらも一生懸命である。
アドレーヌはカービィに絵の全てを教えるため、カービィはそれを見て覚えるため……。
やがて、アドレーヌが絵を描き上げるのと同時にカービィも絵を完成させた。
「ふぅ……終わった終わった」
体中絵の具まみれになったカービィが呟いた。
「終わったのね、ちょっと見せてくれるかしら?」
そう言ってアドレーヌはカービィから絵を受け取った。そこには、アドレーヌが描いたものをまるでコピーにでもかけたかのような、そっくりな絵が描かれていた。
絵の具の塗り方や質感まで瓜二つだ。
「すごいわカー君! あなたには言葉で教えるより見て覚えさせた方がよさそうね!」
「えへへ、僕の取り柄はコピー能力だからね!」
それから数日間、アドレーヌは絵を描きカービィはその様子を真似て描くということを繰り返した。カービィだけの特別な絵の特訓法として。


ドロシアとの勝負の前の日、ついにカービィの絵の腕前は一級品に近いレベルまで上がっていた。
「よくやったわカー君。あたしが教えられることはここまで、後は自分の力を信じて行くまでよ」
「うん、わかった。アドちゃんありがとう!!」
そういうとカービィは荷物をまとめて大喜びで家へと帰っていった。
カービィを見送ったアドレーヌは道具を片づけながらふと思った。
(そういえば、元々あたしはプププランドへ絵の修業に来たんだっけ。それがいつの間にか絵を教えることになっているとはね……)
大空を見上げながら自分の故郷や修業中の時の事、そしてこちらでの生活等を振り返るアドレーヌ。
(これも修業のうち。帰ったら日記にまとめておこうかな)
ふと気が付いたら、空が赤くなり太陽は西へ沈みかけていた。
「っと、いけないいけない! あたしもそろそろ帰らなきゃ!」
大急ぎで残りの荷物を集めると、彼女も自分の家へと駆け出していった。その顔には充実感と笑顔を見ることができた……。
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