星のユービィVさんの小説

【読みきり】魔女の子と絵描きの子(後編)


私は魔女の子である。
伯父の家から逃げ出し、小さな町にたどり着いた。
そこで出会った絵描きの女の子、アドレーヌと仲良くなった私は彼女と友達になった。
アドレーヌは私のためにアパートへの手続きも済ませてくれた。
私が持ってきた荷物も箒も森の中から見つけてきてくれたし、感謝していた。

アドレーヌと別れてから数日後、私は早くもこの町での暮らしに馴染んでいた。
ここの人たちはみんな親切で新しくきた私を温かくもてなしてくれました。
この国の王様はちょっと顔は変だけど、とても大きな存在にも思えました。


そんなある日、町の人たちが何かこそこそと話をしていました。
何事か聞いてみると、時々町にやってくる浮浪者のことだそうです。
町の人は私にも注意するよう言ってくれました。

その日の昼ごろ、私は商店街で買い物をしていました。
持ってきたお金でなんとかやりくりをしていこうと計画的にする必要がありましたが。
ところが、ふと向かいの店の脇を見るとそこに人だかりができていました。
どの人もなぜかこそこそとしていましたが、様子を見てひょっとして例の浮浪者だろうかと思いました。
私も少し気になったので見に行ってみることにしました。

人だかりの前に無理やり割り込んで見た光景を、私は信じられませんでした。
その浮浪者こそ、私を助けてくれたアドレーヌだったからです。

彼女の周りには、たくさんの絵が飾られていました。
きっと絵を売って生計を立てようとしているのだなと思いました。
でも見ている人たちは彼女のことをよく思っていないようです。

ひそひそと悪い噂を話している人もいます。 空き缶を投げつける人もいました。
さらには暴行を加えている人も見かけました。

(あんなことしたら、アドレーヌ死んじゃうわ…)
でも、私には止めることができませんでした。
せっかく町の人に気に入ってもらえたのに、アドレーヌをかばうことで私も嫌われてしまうと思ったからです。
私は、とても臆病でした。 アドレーヌは私が見ていることに気が付いていました。
きっと、私はアドレーヌに嫌われてしまったと思います。

雨が降る日も、風の強い日も、アドレーヌは毎日同じ所で絵を売っていました。
私はとても愚かでした。 私が困っていた時に助けてくれた恩を返すことができないなんて…。


そんなある日、いつも通り私はこっそりアドレーヌの様子を見ている時、
1人の男の人が彼女の前に立ち止まりました。
丸い仮面をつけて剣を持った、騎士のような人です。
アドレーヌはその人に、小さな声で言いました。

「あの…、絵を買いませんか? 1枚100デデンです…」
とてもよわよわしい声に、私は胸が張り裂けそうでした。
きっとあの男の人もそう思ったに違いありません。
懐から財布を取り出しました。

ところが、その人は絵を受け取りませんでした。
じゃぁ、あの財布は何のために…?

「…金が欲しいんだろう?」
騎士はそう言いました。
アドレーヌは何も言いませんでしたが、きっとお金は欲しいと思っているはずです。
騎士は財布からたくさんの札束を取り出しました。
そしてそれを辺り一面にばらまきました。

「ほらよ、金だ。 拾いたきゃ拾うがいいさ」
騎士はきつく言いました。
周りの人たちは、じっとして動きません。
アドレーヌもじっと動きませんでした。
でも、少し経つとアドレーヌの手は落ちている札をとろうとしました。
そしてまるで何かに取りつかれたかのように必死にお金を拾い集めました。
それを見ていた周りの人たちは大笑いしました。 中にはトマトを投げつける人もいます。

「それみろ! 貧乏人は金さえあればこうやって這いつくばってでも拾おうとするのさ!」
騎士はアドレーヌを馬鹿にする口調で言いました。
アドレーヌの目からは涙があふれています。
私はとうとう我慢ができなくなり、勇気を出して言おうとしました。
「や、やめ…」


「やめろよ!」
声をした方を振り返ると、そこには4人の男の子と1人の女の子がいました。
まん丸の体に短い手足。 色が違うだけでみんなそっくりでした。
どうやらやめろと言ったのはピンク色の子みたいです。

ピンクの子は、騎士に近づいていきました。
その後ろを、赤色、黄色、青色そして緑色の子がついて歩きます。
「メタナイト、いくら君が大金持ちだからってこの子を馬鹿にすることはないだろ!
それに町のみんなもだよ! こないだ来た黒服の女の子は歓迎するのに、この子は軽蔑してみるなんて…」
ピンクの子が大声で言いました。
そしてアドレーヌの方を振り返って言いました。
「元気出してよ、僕は君が描いた絵が大好きだよ」

メタナイトと呼ばれた騎士は後ろを振り返ると、こう言いました。
「カービィ、なぜお前はそのような貧乏人にかまう?」
「貧乏でも大金持ちでも、この町に住む人はみんな友達だ」
カービィと呼ばれていた子は、自信満々に答えました。

私はあの男の子に関心してしまいました。
他人を思いやる優しい気持であふれていたからです。

「さぁ、みんな。 行こうか」
カービィは後ろにいた4色の子どもに言いした。
4色の子どもは、みんな頷き立ち去ろうとしました。

「と、その前にアカービィ。 その金は拾うな」
赤色の男の子はポケットからさっきメタナイトがばらまいたお金を出しました。
「ちぇ、わかったよ。 で、どうすればいい?」
赤の子、アカービィはカービィにお金を渡しながら言いました。
それを受け取ったカービィは、アドレーヌからもお金を受け取りました。
そして、それをメタナイトに渡しながら言いました。
「メタナイト、僕らは友達かもしれないけど、今後こういう行動は一切やめてほしいね」
「ふん、そうしといてやる…」
そう言って、メタナイトは去って行きました。

やがて町の人たちはアドレーヌの元に立ち寄りました。
そしてみんなは彼女に謝りました。 中には土下座をしている人も見かけます。
アドレーヌの目には、また涙が輝いていました。 でももう悲しみの涙ではありません、喜びの涙です。


それから数日後、アドレーヌの服はまだつぎはぎだらけだけれど、彼女の顔には満面の笑みがうかんでいました。
それも私が見た精一杯の笑顔ではなく、自然の笑顔でした。
今、彼女には友達がいます。
私とカービィ、それに黄色の子キービィ、緑の子ミービィ、青の子アオービィに赤の子アカービィ。

私はお金を出して、アドレーヌに恩を返しました。
新しい服を用意したり、髪をきれいにしてあげました。
まだ栄養失調だけれど彼女はとても美しく思えました。
それを見たあの騎士、メタナイトがアドレーヌの恋人になりたいとまで言い出す始末です。
散々馬鹿にしておいて、アドレーヌがきれいになったら惚れるなんておかしな話ですね。

その後、メタナイトの協力でアドレーヌの家はきれいに建て直されました。
アドレーヌがどうしても返せなかった借金も全て返済し、食事代も出してあげていました。
おかげでアドレーヌはすっかり元気を取り戻し、今でもみんなと楽しく、仲良く暮らしています。


これは今から4年前。
私、ケケが11歳のときに経験したお話でした…。


END

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