Dein(D-in-G)さんの小説

【エピソードパズル】呪われた刀?


 めいとうサムライ。 かつては、「呪われた刀」と呼ばれていた呪具である。
この刀を手にした者には、まるでとり憑かれた様に不幸に見舞われたという。
時には足を奪われ、時には空から襲われ、時にはその刀を前に謝りを請うたと言われる。
特に最後の言い伝えは、聴き方からすれば実に滑稽であるが「呪い」と語り継がれている辺り、昔の人々はその呪具に大いに恐れたという。
とある言い伝えでは、「刀の持ち主が、狂って刀に土下座したべー!!」だとか、何だとか…。


「おい、カー坊!! 珍しいな、お前が武器屋に来るなんて」
プププランド、城下町。 カービィはデデデ城からの帰りに武器屋に立ち寄った。 そもそも、コピー能力を使える彼にとって武器など無用の長物だが、「何となく」立ち寄った辺りか。
「んー、暇潰しにねー。 君も暇そうだね、ブレイドナイト」
「ああ、お前と一緒に地底探検したり、銀河まで冒険したのが懐かしいぜ…」
カービィとブレイドナイト。 彼らは古くからの旧友だった。
時にはあの暴君の喧嘩にタッグで挑み、時には怪鳥を鎮めるために山に出向き、時には宇宙の星を駆け巡った。
その後、ブレイドは結納を結び、今となっては武器屋を営んでいる。 が、経営は不調のようだが。
「近い内に、剣術大会があるんだ。 だから、ちょうどいい刀とかないかなーって」
「なるほど、それだったらちょっと面白い“いわくつき”があるぜ」
そう言いながら、ブレイドは棚から箱を取り出した。 カービィの丈の倍ほどはありそうな、その長い箱のふたを開くと、一本の刀がそこにはあった。
「こいつは、めいとうサムライ。 かつて“トウヨウ”の大剣豪が愛用していたって言う珍しい刀だ」
「へー、この刀凄いの?」
「まー、武器は刀に限らず使う奴の実力次第で、一長一短だからな。 でも、お前だったら使えるはずだ……ただし、この刀はちょっと不穏な噂もあってな――誰も引き取り手がなかったんだ」
ブレイドの話を聞いているのか否か、カービィは刀を手に取りながら「ふーん」とか「ほー」と適当に相槌を打つだけだ。
「まぁ、呪いとかは単なる噂だろうけどな。 でも、今となってはそいつも大した骨董価値も無いし、譲ってやるよ」
「本当に?! いやー、ブレイド横っ腹だねー」
「それを言うなら太っ腹だ」



 こうして、カービィはめいとうサムライを譲り受けたのである。 しかし、月日が経てど経てど、ブレイドの言うような「呪い」は彼の周りには起きなかった。 そもそも楽天家な彼が気づいていないだけじゃないかと言われそうだが、それでも彼は平常生活を送り続けていた。
「いやー、昨日は包丁が見つからなかったから、この刀で人参を切って料理したんだよー」
「それ、いつか罰当たるんじゃない、カー君? あ、ちょっとアソコの店の服カワイイー」
「あ、アドー?! ……あーあ、一人で行っちゃったよ」
プププランドの都心部で、そんな世間話をしている時だった。 何だかどこかから不穏な騒ぎが聞こえてくる。 時々、悲鳴も聞こえてくるが――。
「強盗だー!! 銀行強盗だー!!」
「ぎ、銀行強盗!?」
思わず声のする方を振り返ると、確かに全身黒ずくめの男がこちらに走ってきていた。 頬かむりをして、背中に背負っているカバンには札束。 手には拳銃が一丁。
「ひょひょひょひょー!! 邪魔だ邪魔だ、ドケドケー!!」
「タック!? これはオシオキせねばなりませぬなー。 んーっフッフッフ」
その泥棒を目にした瞬間に、カービィはめいとうサムライを取り出した。 鞘からその白刃を取り出した後に鞘を後ろに放り投げる。 カランと地面に柄が転がる音がした。
「うひょ?! カービィ?」
「タック、そこを止まれー!!」
カービィはそう言うとめいとうサムライを振り回してタックに威嚇する。 もう数センチのところで、タックとカービィが相対するところまで来るが、その瞬間タックは大きく地面を蹴り上げた!!
「な、にぃ!?」
カービィは驚愕する。 タックが超人的な跳躍力でカービィの頭上を通過していくと、彼はそのままきれいに着地してまた走り出した。
「うひょひょー!! あーばよ!! この俺様の足に追いつきたいんだったら、ホイールの能力かウィリーバイクでも用意するんだなー」
「……チクショウ!! まーてー!!」
悔しそうに歯ぎしりをしながら、カービィはタックを追いかけようとした、その刹那だった。 彼の足元には、先ほどめいとうサムライを抜き取る際に投げ捨てた、鞘。 それを、彼は見事にその短足に引っ掛けた。
「うわぁ!!」
勢いよく走り出そうとしていたもので、カービィはそのまま成すすべなく大転倒する。 それと同時に、鞘は宙を翻して大きく飛び、彼の手からは名刀サムライがすっぽ抜けて、鞘と刀は都会の空へ大きく翻す。
「うわー!! 刀が空を飛んだー」
「危ないぞ!! 逃げろー」
ギャラリー達は刀に当たらないように逃げる中、カービィはゆっくり起き上がってタックの後ろ姿を捉えていた。
「チクショー。 僕がホイールのコピーのもとDXをもってないと思ったら大間違いだ――」
そう言いつつ、ホイールのコピーのもとを手にした瞬間、彼の目の前に愛刀のサムライが落ちてくる。 それはカービィの目の前の地面に突き刺さる。 その突然なサプライズに、カービィは思わず身を震わせて飛び跳ねる。
「ひゃぁ!! あ、なんだ……サムライか。 危ない、危ない――さて、これも抜いてから追いかけ――」
ここまでくれば、誰だって容易に展開は予想できていた。 空には、カービィにまっすぐサムライを収める鞘が回転しながら――。
「ひでぶっ!!」
次の瞬間、彼の後頭部に鞘はトドメというべきベストなタイミングで直撃した。 急所にでもあたったのか、彼は地面に突き刺さるサムライを抜き取る前に前のめりに倒れて、そのまましばらく気絶しているのだった――。


「ごっめーん、カー君!! ちょっと色々洋服選んでたら遅くなっちゃったー……」
しばらくした後、アドが洋服屋から帰ってくると、そこには頭にタンコブを一つ作りながら、地面に突き刺さった刀に土下座のような体制で突っ伏しているカービィの、それはそれは滑稽な姿があったという。
一体自分が店にいる間に何が起こったのか、僅か数分たらずの間で変わり果てた友人の姿を、アドは特に駆け寄ることすらせずに、携帯を取り出すとシャッター音が鳴らした。 そして、無表情で携帯を弄りながら、独り言。

「……友人が、刀に土下座しているなう。 と」