Dein(D-in-G)さんの小説

【お題小説】あつめて、くくって、スフィア。(毛糸のカービィ・あつめて!カービィ・星のカービィWii)


秋風も過ぎ、ちょっと肌寒くなってきた季節。
プププランドはちょっとした小洒落た物がブームになっていた。
「はーい!! よってらー見てらー!! アミーボ・アモーレの装飾屋だアモーレ!!」
どこにでもあるような公園。 そのど真ん中で一人の魔法使いの男性がその声と同時にベルを鳴らす。
その音を聞きつけるや否や、公園にはすぐに子供が群がり始める。
「アモーレ!! 今日はどんなアクセサリー?」
「今日は虹色のおっきなビーズを使ったブレスレッドだアモーレ!!」

アミーボ・アモーレの装飾屋(アクセサリーショップ)。 つい先月からプププランド国外からやってきた放浪の男のちょっとした商売だ。
赤、緑、青、紫、黄、オレンジ、白。 様々な色と大きさのビーズを使ったアクセサリーはプププランドの女子や子供に大人気だ。
一見からして高級そうな光を放ちつつも、まるで駄菓子のように――ワンコインで手に入るほどの良心的な価格もその人気を後押しする。
「アモーレ、このペンダントは幾ら?」
「そのペンダントは出血大サービス、30デデンだアモーレ!!」
こうして、アモーレの登場から小一時間も経たないうちにアクセサリーは完売を迎える。 そうして彼はまた風呂敷をたたんで他の街で商売に出かけていくのである。

「アモーレ、最近儲かってる?」
「何を言うアミーボ、一番高くて200デデンの副業。 完売したとしても売上なんか光熱費とかで消え去ってしまうアモーレ。 むしろ赤字に近いアモーレ」
「あはは、そうだよね。 ゴメンゴメン」
土手の上で焼きそばを頬張りながら、カービィとアモーレは地平線を眺めながら呟いていた。 彼らの視線の先には、サッカーで汗を流す子供達の姿。
「そういえば、お前もまた冒険から帰ってきたばかりだって?」
「ははっ、よく知ってるねー」
「お前の破天荒なその行動は宇宙のどこにいても嫌と言うほど耳に入るアミーボ。 知らない方がおかしいアモーレ」
「破天荒の使い方、合ってたっけ?」
焼きそばの皿は既に空っぽになっている。 カービィは皿を持ってきたゴミ袋に入れるとアミーボの横にある箱に目を向ける。
「その箱、売れ残り?」
「いや、材料だアミーボ。 以前お前が集めてくれたビーズの数は何万とあるから、使っても全然減らないアモーレ」
「だろうねー。 僕も良くあんなに集められたと思うよ」
「もう、アクセサリーのネタもつきたアミーボ。 これからは同じ種類を作り回して売らないと、もう無くならないアモーレ」
暗い表情をしながら、アモーレはビーズの入った箱をジャラジャラと振るってみせる。 それを見ながら、カービィは呟いた。
「そのビーズ、幾つかくれる?」
「別に構わないアミーボよ? むしろ大歓迎アモーレ」
そう言いつつアモーレはどこからか取り出した袋に手を突っ込んだ。 そこからは大小、様々な色をしたビーズが握り締められている。
「へへっ、ありがとう」
嬉しそうにビーズを見つめながらカービィはアミーボ・アモーレに礼を言うと二人はそのまま帰路についた。 カービィは少し鼻歌を歌いながら、ビーズの入った袋を振り回してとある場所へ向かった。

「で、ここに来たんだ」
「うん、大王の城にも行ったんだけどね。 『こう言うのは女の方が分かる』って追い返されちゃった」
「ふーん、ビーズのアクセサリーね」
カービィが向かった先。 それはチュチュ・リボンのアパートだった。 彼はアミーボから貰ったビーズを取り出して、彼女達に見せる。
「ふえー、よくこんなの買い集めたわねー」
「いや、売れ残りを譲って貰ったんだけどね」
「へぇ…ところで普通に作ればそれでいいでしょ? なんなの、その歯車みたいな奴」
チュチュの指摘通り、カービィの手には一つの歯車があった。 金色に輝くそれを大事そうにもっている彼も、少し笑みを浮かべながら天井に掲げる。
「これはね、この間の冒険の記念品だよ」
「ああ、マホっちの件ね。 あれ、アンタ達が利用されていたんだよね」
マホロア=スフィア事件。 巷ではそう呼ばれている。
プププランドに墜落した船の主、マホロアが全宇宙の侵略を企てていた事。 カービィは騙されてその船のパーツと動力のスフィアを集めていた事。 本性を出したマホロアは“邪道・プラズマ”で玉砕された事。 そしてカービィがまた英雄扱い。
「うん、それで大王が反省させる為にその船と一緒にマホロアをここに定住させたんだ。 メタナイツの監視つきでね」
「あんたも大王もお人好しねー。 私だとボコボコにして、吊るして反省させるわ」
「チュチュ、それやりすぎ」
リボンのツッコミの横で、カービィはビーズの穴に糸を通し始める。 プルプル震える手つきで、慎重にビーズを入れるそれは何か凄く不安になるほど不器用。
「このでっかい手で、こんな細い糸に通すのは至難よねー。 指ないし」
「あははー、そうなんだよ。 昨日の晩からやってて、まだこんだけ」
そう言いつつ見せた作りかけのアクセサリー。 首飾りでもイメージしているほどの長さの糸には、三分の一にも満たないビーズが付いている。
「やれやれ、これじゃああと何日かかるかしらねー。 手伝ってあげる」
「助かるよー。 こう言う物の見栄えって女の子の方がセンスありそうだから!! チュチュとリボン助かるよー」
チュチュは反対側の糸の先からビーズを通し、リボンが次のビーズを二人に渡す。 女子の慣れた手付きのおかげで、それはハイペースで完成形に近づく。
「ねぇ、カービィ。 もう半分まで出来たけど、真ん中はこのおっきな白いビーズで良いわよね?」
「あ!! ちょっと待って。 そこはこれが良い――」


「ハぁー。 何ナンダろカービィ。 セッカク船の修理ヲしていた所ナノニ」
デデデ城横、巨大な船から出てきた一人の青年は溜息を混じらせながら地上に足を付ける。
マホロア。 そんな彼の眼の前にはあの、桃色の球体。
「やぁ、マホロア。 船の修理はどう?」
「あア、後少しデ完了サ。 デモ、スフィアの数ガ一つ足りナくて」
肩こりでもしているのか、肩をほぐすマホロアを見てカービィはニヤニヤしながら何かを目の前に突き出した。 それに思わずマホロアもそれを凝視する。
「ア――それ」
「プレゼント!! あの時の冒険、楽しかったよ」
笑顔をするカービィの前に光り輝く首飾り。 そこには船のパーツでもあるスフィアがあるから、笑い事ではない。

 ――コノ野郎。
探していたパーツはそれか。 怒りたくなるが、当の本人は悪気無し。 その顔を見るとマホロアは諦めたようにポツり。
「……アリガト」
こうして彼は首飾りを受け取った。 カービィは使命を果たしたように笑顔で外に出ていく。
「ハハ……ヤっパりバカダ」
そう呟き、地上に降りる彼を窓から見届けていた。 ふと、窓に映えてたのは首飾りをした自分の姿。
映った金色のスフィアが眩かった。 ふっと、笑みをこぼしてマホロアは呟いた。
「アリガト、カービィ」
折角だ。 もう少し、このままにしておこう。 彼は心で呟いた。