大佐さんの小説

【戦士の憂鬱】Stage 4


星のカービィ fourth



「……というわけだ。クーは今頃海岸にでも打ちあがっているだろう」

カービィは悪びれもせず、無線にかたりかけていた。

夕刻。堕ちゆく夕陽が海に映えて、ため息を覚えさせる視覚を作り出し……?

海?

雲に乗った頃、下の景色は一面の草原だったはず。

「おい、リック、カイン! なんで下が海なんだ?」

無線に叫ぶカービィ。しかし返事は―――無い。



「電池切れかよ……」

なぜか単三電池で動いていたらしい無線は、今やウンともスンとも言わない無用の長物に成り果てていた。

「この距離を浮かんで帰るのはかなりの難易度だぞ……」

そもそもカービィは軽く、突風にあおられれば軽く飛ばされるというサダメのもと、生きていた。

陸地が一切無い海のど真ん中。むろん目印など無い。あるのは、雲の進行方向と逆方向に進めば戻れるかもしれない、という憶測と漠然とした方角感覚のみ。

「仕方ない……行くか……」

コピー能力保持者など一人もいない。よって、ウィングorジェットでらくちん作戦は決行前から崩れ去っていた。

まぁ、能力保持者がいたと仮定しても、陸地を始めとする足場がない以上、飲み込むことは不可能である。よって、すっぴんカービィのまま頑張らねばならないといった状況に追い込まれた。

「うおぉおぉおぉおおぉおおおおぉおぉおぉ!!!!」

半ばヤケクソながら、カービィは方角を見誤らず、弾丸……ではなく、風船のように飛び出した。







その頃、クーは絶体絶命の窮地に立たされていた。

「へ、ヘビーロブスターだとぉ!? あの初期段階では無敵を誇る鉄の塊!?」

「鉄の塊って言うなぁ! これでもれっきとした戦闘兵器なんだぞ!!」

ヘビーロブスターの足音が断続的に響く、左翼辺りの貨物庫。



どこから声が聞こえてくるのかクーに知る由は無いが、前回の終盤にクーが吹き飛ばされ、しばらく気を失っている間に空中戦艦『ハルバート』が動き出してしまったらしい。ので、某ゲームで起こしたカービィの立ち回りをクーだけが担うことになったという。

簡単に言うと、メタナイトの逆襲フラグがクーだけに立った……というワケで。



「いっやあぁあああああぁああぁああぁぁああぁ!!!」

クーは見事に錯乱した。

それはそうだ。あのカービィでさえ手こずった……あの青カービィ(仮名)が相手なのだ。もちろんクーにコピー能力は使えない。翼と爪と小手先スキル『羽根飛ばし』でどうやって戦艦を破壊すれば良いというのか。

そうこう思案をめぐらせる間にも、ヘビーロブスターの足音は確実に接近している。

殺らなければ殺られる。―――そんな状況だった。



「おいこのフクロウ! 逃げ回るだけか! あーそうか夜行性か! お前は夜行性なのか! だから弱いのか! よーわーいーのーかー!」



『ブチッ!!』



クーの何かが切れる音がした。

それはプライドか、はたまた自尊心か、はたまたナルシズムの片鱗か……。

なお、今述べた三つのモノにある共通点が存在することは言うまでもない。



「フフン……鉄クズが何かわめいている様だな……?」

「何とでも言うがいい! 強いのは俺だがな!」

……正論である。



「黙れぇ! 羽根飛ばし!!」

クーの両翼が外側に振られ、今まさに羽ばたかんとするような体勢になると、勢い良く翼をでたらめに振り回し始めた。

切り離されながらゆっくりと空間にたゆたう羽根が、いやに幻想的だった。

「その弱々しい羽根ごときでヘビーロブスターに傷すらつけられるとは思えん! 無駄なあがきは死期を早めるぞ! 昼行性フクロウめが!」

どこかから再び声が聞こえる。

「散れ……」

「かっこよく言ってるつもりだろ? パクリだぞ? それパクリだぞ?」

そして一旦、間を置く。クーは翼を広げた姿勢のまま動かない。



「千本―――」



バギャアァァァアアァアァアァアアアァアァアッァン!!



苦情必至のパクリ技を披露しようとしたクーの左側、ハルバートの左翼にあたる部分が突如吹き飛び、バランスが崩れた。

「なぁぁぁぁ!?」

ごろごろと左側に転がるクーを見下ろすレッドスティンガーもといヘビーロブスター。

「喰らえ―――火炎放射!」

ヘビーロブスターから業火が放射され、辺りを焼き尽くしていく。

クーは、迫る炎の手から逃れる術を持たなかった。それと同時に、動くこともままならない。傾いた足場に空という追加設定。おまけにこれ以上暴れると母艦の動力に被害が出る可能性も否定できない。空の藻屑はさすがに嫌である。

目の前が真っ赤な炎で埋め尽くされ、そろそろ星になるときが来たとクーが身構える、一瞬前のことだった。



「せやぁ!!」



ピンク色の悪魔が跳び、クーの目の前に来た瞬間、特大波動砲を発射した。

目も眩む閃光の中、きらめく波動の中にヘビーロブスターが飲み込まれていくのを、ただ、見ていた―――。





「さてさて……説明は後として」

カービィは手足に残るプラズマを振り払うようにして二、三回跳び、クーを見もせずに言った。

「今は……メタナイトの逆襲フラグを消さないとな」



戦闘開始の合図だった。



もちろん、

「や、やばいデスヨ!? カービィが現れたってことはメタナイト様がうpぁkじゃkrrorz……」

「うるさい黙れ! いけ、メタナイツ!」

「いやー! やられるだけって! あのカービィ、前と違って目が怖いって!」



などという会話が主塔で行われていたという事実を、彼らは知らない。





「で、何でカービィ、ここにいるんだ?」

「……空飛んでたら、猛スピードでこの戦艦が体当たり仕掛けてきてな……」

「……生きてるのが不思議だと思うが?」

「……クラッシュで左翼粉砕してうまく侵入した」



結局メタナイツたちは船長と逃亡し、残るは青メタナイト(仮名)だけとなった。

だが、やはりその事実を彼らは知らない。



そして、自分らが向かっているのがメタナイトとの戦場だということも、また然り―――。





Stage 4 fin