星のカービィ third 「……たけぇ〜……」 カービィは空高くに居た。 本来水蒸気の塊のはずの雲に乗り、飛ぶ。 まるで綿菓子のような雲は、自分を拒否するどころか温かく受け入れてくれたような気になり、あちこちで飛んだり転がったりして遊ぶようになる。実際雲とカービィの相性は良かった。 しばらく遊んでいると、 クー「オイてめぇ。リックを差し置いて2回連続で登場してしまったことに罪悪感を感じるクー様がここにいるぞ。さっさと先に行け」 クーが現れた。 「ち、せっかく旅の途中のオアシスと戯れていたというのに……」 クー「何がオアシスだ、さっさと歩け! 飛べ! むしろ落ちろ!」 クーはやはり焼き鳥にされそうになったトラウマがあるのだろう、口調は鋭い。 「今回は絶対アイツが登場するんだよな……」 クー「そんなの知ったことか。今ここで隕石の刑(バーニングでカービィを火の玉にし、地面に叩きつける刑)に処してやってもいいんだぞ。俺が代わりに旅をする」 「クゥー♪ 合体したいな♪」 カービィがクーに擦り寄ろうとし、口調も急に猫なで声に発展する。 これほど怖気づく光景が他にあるものか。 クー「黙れボンカス。ぺらぺら喋ってる暇があったら歩け。さっさとケツを上げろ。ボケ。いい加減にしないと下剋上を起こすぞ」 リック無線で「クー荒れてるねぇ」 カイン無線の奥で「さしづめ途中でふられたんだろ。10年に亘り告白し続けた人の子、アドにでも(かなり小声で)」 クー「もぉぉぉ怒ったぁぁぁぁぁぁ!!!!(図星)」 クーは急に怒り狂い、自分に向かって突進してきた……とカービィは思ってしまった。 自分に近づく者の精神状態を見て、その行動が適切か、悟る。 一瞬……間を置き、クーと自分の距離が3mを切るころに……始めた。 『スープレックス』 リック無線で「やれやれー!」 カイン無線で「どっちだ、どっちだ?」 無線は自分の声を伝えるか、相手の声を伝えてもらうかのどちらかの機能しか使えないため、操作が無い今、相手に声が伝わることは無いのだが、ここでは割愛しておく。 「その行動……尋常のものとは思えん。遠慮なく、斬らせてもらう」 クー「だらっしゃぁぁぁあ!!」 クーは翼を広げ、力の限り羽ばたいた。 羽根と共に風が舞う。それは瞬く間にかまいたちとなり、カービィに襲い掛かる。 「ちっ……流石は仲間なだけあるぜ」 カービィはとっさにスープレックスを外し、その星で攻撃を相殺した。すぐさま身を翻し、運よくその辺を飛んでいた鳥を飲み込む。 『ウィング』 「吹き飛べ吹き飛べ吹き飛べぇぇぇぇ!!!」 華麗に空を舞う美技と評価が高い、ウィングを手にしたカービィは言葉通り、舞う。 時にゆっくり、時に素早く。 分身したかの如く目に焼きつく映像は、全てを超越していた。 クー「空中戦なら俺に分があるぜ!!」 弾かれたようにクーも飛び上がる。 カイン無線だがカービィたちには聞こえない「実況中継のカインです」 リック無線だが同じく彼らに声を伝える術は無い「同じくリックです」 カイン「始まりましたね、カービィ×クー、頂上決戦。早速どきどきしてきましたよ」 リック「全くです。ウィングで空を飛べるので、クーと同程度の実力は持ったのでしょうが、やはり空の道化師クーに敵いますかね」 カイン「先ほどの状況説明と全く噛み合ってない称号ですね。マジで」 リック「いいんじゃないですか? ベテランと名高いふくろうですし」 カイン「はぁ……今夜中に納得できるよう精進します。まぁ効果音から察知すると」 リック「風を切る音が良く聞こえますね。風を用いたアツい戦いになっているということは容易に察せられます」 カイン「ええ。その通りです。翼で斬りあい、羽根を飛ばし、かまいたちを従え……。ああ、本当に近くで見れないのが残念です!!」 リック「これ以上アツい戦いは滅多に見られないでしょうに……本当に悲しいです」 その頃、クーとカービィは…… クー「でりゃぁぁぁ!!」 「おりゃああああ!!!」 仲良く二人プレイを楽しんでいた。 クー「これで142匹! ふ、『羽根飛ばしミラクル』の前ではどんな魔物も一瞬で血風散華だぜ!」 「143匹! 『プラズマ』の波動砲の威力の前ではどんなボスも灰燼と化すぜ!」 クー「ふ! いい好敵手(ライバル)を持ったもんだぜ、俺もよぉ!」 「ははははは! 愚問だ! 互いに競り合うことでライバルは強くなるもんだ!」 そして戦い終わり―――。 クー「カービィ。俺とお前は、トモダチだ」 「ああ……」 そして夕陽をバックに、クーとカービィの短い手が繋がり…… 「波動砲!!!」 一瞬で砕け散った。 クー「手が微妙にピリピリすると思ったらプラズマかよぉぉぉぉ……(キラーン)」 カイン無線で「おーい。誰か返事してくださーい」 リック無線で「二人で延々戦いについて語ってたら二人とも気配なくなっちゃいましたよ。風の音もかまいたちではなく天然物だったし……」 カービィ無線を使用中「ああ、お前達無線なんて使ってたのか」 リック「カービィ! クーとの戦いに、勝ったのか?」 「ああ、そうなるな。(不意打ちで)」 カイン「で、クーは今どこに?」 「…………」 リック「どこなんだ?」 「…………多分、どこか遠くの……国にでも飛んで行ったのでは……」 その頃、スカイハイから遠く離れた海岸に、クーの姿が見受けられた。 クー「ここはどこだぁ!」 ただし、『海岸に打ち寄せられた母艦の上に』だった。 リック無線で「とにかく、ここでは無闇に動くな」 リックは、全てを知っているかのような口ぶりだった。 「何故だ?」 リック「勿論決まっているじゃないか。足場が崩れたらどうするんだ。雲を突き抜けたら」 「浮かんで戻る」 リック「………………」 カイン無線の奥で「邪魔だリック! 白目を剥いたまま固まるな!」 「あー、分かった。ハムスターのくせに雲の上に立とうと考えた末、転落の人生を歩むことになったのね!」 リック「…………」 カイン「図星だそうだ」 その頃、クー方面では何が起こっているのか!? 実況担当の川路さん、よろ(以下略) クー「何だこの母艦は……」 「行け、『ヘビーロブスター』」 クー「何っ!? まさか―――うわぁぁぁあぁああぁぁあぁぁあああ!!!」 突如現れた巨大な体躯。そして吹く猛烈な突風にあおられ、クーの姿は宙を舞うことになった……。 Stage 3 fin |