大佐さんの小説

【戦士の憂鬱】Stage 1


その日。



ピンク色の悪魔は、飛び上がった。



何の変哲も無い、『いつもあるべき』光景。



しかし、それは錯覚に過ぎなかった……。



遂に、奴は……裏切り、背き、あまつさえ牙を剥いたのだった。







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戦士の憂鬱            大佐

※カービィは喋れる設定です





「またデデデ大王がスターロッドを盗んだだって!?」

頼れる親分(?)、三色の毛皮とひげを持つハムスター、リックが声を張り上げた。

「全く、奴も懲りないもんだよな……以前あれほど痛めつけたというのに」

次はクー。聡明なふくろうである。まぁ、何故昼に活動する?という質問には答えがたいが。

実はもう一匹、カインという名の魚がいるのだが、生憎彼は喋れないため存在は薄い。

「あぁ、今度は鬼殺し火炎ハンマー(注 ハンマーの技の一つ。その攻撃力は全てのコピー能力の中で一、二を争うほど)で叩きのめしてやらんと……全く、星の戦士は疲れるぜ」

そして、三匹に同心円状のようにして囲まれるのが、

ピンク色の肢体!

大きさ、およそサッカーボール四号!(約二十センチ)

お口の中はブラックホール!



星の戦士らしいが、真偽は不明。カービィである。



しかし、今回ばかりは少し、おかしかった。



「今回はお前らに頼みたいことがある」

いつもは無条件で旅への同行を許すはずのカービィが、ギリギリで話を持ち出すなんて……、いつもの様子からして有り得ない彼の立ち振舞いが、三匹をにわかに恐怖に叩き込んだ。



「お前らは、俺の支援に回れ。今回は単独潜入だ」



「な、なんだって―――!?」

リック、クー、カインは驚きすくみあがった。それはそうだ。いつもいつも、カービィと三匹は仲間であり、同志であった。時に捕まり(そしてIN袋)時に救われ、時に共闘し……。

かけがえのない時間を、過ごして来たはずなのに。



「待てよカービィ! それでもいいさ、ああ! いいとも! だがな、今回は以前とは全く違うんだ!」

リックがカービィに食いついた。自分達を危ない目に合わせないように、というカービィの気遣いなのだと、リックは信じていた。



そう、この瞬間まで。





「黙れ、この足手まとい」





言った。

「確かに、デデデ大王は軍備を拡張した。シャッツオ(無人主砲。破壊は困難を極める)の数も……俺のデータによると、五倍ほどに増やしているそうだ。全くもって、勝ち目は無いな」

その発言に、クーまでもが突っかかる。

「だったら、俺達がその弾幕を潜り抜けてやる! それでプププランドを平和にするのが、俺らの宿命みたいなものだろ!?」

その後ろで、カインが物言いたげに口を動かしていたが、やはり言葉は出なかった。



「青いことを言ってくれるなよ、ハムスターに昼行性ふくろう」



ぐさり。

二人に言葉という最強の槍が突き刺さった。



「忘れたか? 事あるごとに捕まり、袋に入れられるお前らを……助けに行く俺の気持ちが? だからこそデデデ大王への道を放棄し、回り道を繰り返していた……。本当はステージ1のベジタブルバレーから逆の道を辿ればデデデ大王の本拠地だというのに!」



(あ、プププランドはポップスター、惑星にあるんだっけな……)

その場にいた三匹が同時に思った。

「そういうことだ。貴様らの立てる功績はそれに比べると塵ほどだからな。お前らは俺にアイテム物資を補給してくれるだけでいい。UFO(某最強コピー能力の素)をたくさん捕まえてくれればそれでいい」



「「「お前それが目当てだろ」」」



そして、



(((か、カインが喋った!!!!)))



気付いた。カインがただの口下手だっただけであることに。





「では、俺は行くぜ」

「待てよカービィ!」

カービィの典型的な、木の棒に風呂敷包みを引っ掛けるという旅の格好に苦笑するリック。

それを尻目に、クーはカービィに鋭い視線と言葉を投げつけていた。

「これを、持っていけ」

と、一緒に投げたものは、マキシムトマト。

旅の安全を祈願する、お守り。



「それを大事に持って、頑張って…………って」









「今食うなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」





「もぐもぐ(だって体に触れた瞬間食っちまうのが俺の習性だろ?)」



そんなことを考える食いしん坊であった。







「行っちまったな……」

「ああ、そうだな」

リックとクーが語り合う。無論、休んでいる暇など無い。今すぐにカービィを追いかけなければならないのだが……。

「クー、俺をつかんで運んでくれ」

「カイン、俺を口の中に入れて運んでくれ」

「リック、僕を背中に乗せて運んでくれよ」



結局他力本願だった。







一方、カービィは……



「地平線を埋め尽くすシャッツオとマグナム○ラー……。これは無理みたいだな」

どう考えても手下すら通れない状況である。よって、その無人兵器以外何も無い。



「しかしな……俺にもやらないといけないことが……あるんだよ!!!」



そして、生きとし生けるもの全てのものへ……反抗した。



『ソード!』

緑の帽子……某三角剣士が思い出される、鈍色に光る刀身。

「ピピピ……目標接近……射撃許可。」



そして、一斉射撃が始まった。



「うおおおおおお!!!無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁぁぁ!!!」

クー「うおっ! こちらクー! カービィが銃弾の雨霰を抜けていきます!」

リック無線で「何っ!?」

「甘い! 『近づいたら斬ります。近づかなくても斬ります』がモットーなんだよこの剣はなぁ!!!」

無人のはずだったシャッツオ「何だそれはぁぁぁぁぁ!!!」

前が見えないどころか、一瞬でも気を抜いたら蜂の巣になりそうな極限状態の中で、ひたすら刃を振り回して弾丸の軌道を逸らす。ほぼアドレナリンモードだった。



無人のはずだったシャッツオ「ふ……甘く見るなよ。ゲーム内でも俺は無敵! 攻撃力は黒くて刺々しいアイツには敵わんが、近づかなくても遠隔射撃が出来るという利点を持つ! さて、こんな俺が倒せるかな!?」

「勿論……対策はしてあるさ。クー来い!!」



クー「ちょっと待てぇ!! 単独潜入じゃなかったのかぁ!?」

空高くからふくろうが叫んでいるが、図々しいカービィは無視を決め込む。

「こんな時の為に呼んだんだ!」

クー「呼んでねぇよ!! むしろ追い返してただろ!!」

「いいから早く……ごばっ!!」

さすがに疲れもあったらしく、銃弾の軌跡を変えることが出来ずに刀身に命中、そのまま圧力で吹っ飛ばされた。

流石にそこはシャッツオ。威力は半端ではなかった。

クー「ええと、トマトはどこいったっけな」

のシリアスな展開にも構わず、クーはトマトを一生懸命探している。

無人のはずだったシャッツオ「これで終わりだ! いけ! デデデ!」

「ラスボスを呼ぶな下っ端が!!」

この瞬間すらチャンスに転換する、それがカービィクオリティ。

倒れた状態からとっさに手を地面に叩きつけ、それにより生まれた推力(彼は軽いのでよくはねる)を使い、回転、着地(10,0)、飛び退って距離を置く。

2秒にも満たないこの動作の中で、次の動作、次の動作を考えるカービィ。

そこで、クーが叫んでいるのが目視できた。

クー「どりゃ喰らえぇぇぇ!!!」

クーはあるキャラを地球投げ(ダメージ2)してカービィに渡した。

『ミラー!』

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄………………ってあれ?」

コピーしたはいいものの、先ほどのソードの如く突っ込めないことに不満げなカービィ。

クー「反射だ反射!! いいから反射しろ!」

「反射の法則?」

クー「そう、入射角と反射角は同じ……ってちがーう!! お前やっぱ一人で行け! むしろ足手まといはお前だ!!」



やっぱり有人だったシャッツオ「これでどうだ!!」



カイン無線の奥で「高エネルギー反応、確認」

クー「お前何気に役に立つな……」



「無駄だ! この『シャワーオブアロー』で……」

クー「真面目にやれぇぇぇ!!」



高エネルギー反応むき出しシャッツオ「龍王魔滅双殺陣・星雲嵐!!」



三匹の仲間「かっこいー!」



「んなこと言ってないで助けろよぉぉぉ!!!」



効果音「ッッッゴバアァァァァァァァッッッッ………………!!!!」



クー「やったか?」



シャッツオ「お前本当に仲間なのか?」





土煙の晴れる頃、輝き色褪せぬ何かが、弾けるようにして灰燼と化した戦場に舞い戻ってきた。

「……秘技、『ミラーガード』は全ての波動を無効化、または反射する……最強の防護陣だ」



シャッツオ「お前……生きてたのか……アレを喰らって生きている生き物など……」



そして、クーがトマトと勘違いして投げた爆発危険物を飲み込んだカービィが、目も眩む爆炎の中に消え失せた。

戦いの幕開けに、これほど相応しいものもなかった……。



STAGE 1 終幕