かにさんの小説

【リボン イン ナイトメア】stage12


リボン イン ナイトメア

stage12

「ピッチさーん、返事してくださーい・・・。」
私はゆっくりと穴の中を下りながらピッチさんの名前を呼びました。
無論、返事もありません。
穴は深くなるごとに暗くなっていきます。
「・・・この穴、一体何処まで続いてるんだろう・・・?」
私はふと、そう思いました。
穴の底は未だに見えません
私は完全な暗闇の中を虹のナイフのわずかな明かりを頼りに進みます。
「・・・あっ。」
と、遥かな下の方にわずかな明かりが。
私は落下スピードを少し早めます。
しばらくすると私は明るい所に出ました。
そこは丁度真下を水が流れていました。
でも、それより印象的だったのは・・・。
「・・・臭い。」
本当に匂いました。
鼻にツーンと来ました。
私は2人を捜して辺りを見回します。
「・・・あ。」
居ました。
ムーンさんが。
私はムーンさんに近寄ります。
ムーンさんは私にすぐ気が着きました。
「あらリボンちゃん、ようやく追いついたみたいだね。」
ムーンさんは私を見てそういいました。
「・・・ここ、何処だと思いますか?」
私はムーンさんに聞いてみます。
「あれを見てみな。」
ムーンさんは流れの反対側を指差します。
「・・・うっ。」
それを見た私は嫌悪感に襲われました。
それはネズミの水死体でした。
しかも私達は今、アリさんサイズなので大きく見えます。
ネズミの死骸は通路の3分の1を覆っていました。
「ネズミが居るって事はここは下水道と言うのが相場って者だろ?」
ムーンさんはそう言ってた気がします。
・・・『気がする』と言うのはその時私は吐き気に襲われて
話を聞いてる余裕なんか無かったからです。
「ピッチはここには居ないねえ・・・。」
ムーンさんは辺りを見回します。

タタタタタ・・・。

と、私達の居る通路を挟んで反対側にネズミさんが通りかかりました。
「おや、ダークマター以外の生物なんて久しぶりに・・・。」
ムーンさんはそう言ってビックリします。
私もビックリです。
何故なら、ネズミの口にはピッチさんがぶら下がっていたからです。
「ぴ、ピッチさん!?」
私は慌てます。
「ちっ、何で世話のやける小鳥だい!」
ムーンさんは舌打ちしてネズミさんを飛んで追いかけます。
「あっ、待って下さい!」
私も後を追いかけました。


「うわああああ!?」
ピッチさんはネズミにぶら下げられたまま叫びました。
どうやら、さっきまで気絶していて今気がついたようです。
「こら〜待ちなさい!」
私とムーンさんは全力でネズミを追いかけました。
しかし、ネズミは意外とすばしっこいです。
障害物を素早く避けて逃げていきます。
「ああ、少しは止まってよ〜!」
私はそんな光景を見る度にそう言ってたような気がします。
しかし、それもいつまでも続かない。
ネズミは遂に下水道の端っこに追いつめられました。
これぞ文字どおり袋のネズミです!
「さ、さあ、観念してピッチさんをこっちに渡しなさい!」
私はネズミにそう言いました。
しかし、ネズミは諦めません。
ネズミは辺りを見回すと何かを発見しました。
「チ、チチッ!」
ネズミは何と下水の方にジャンプしました!
まさか、ヤケになった!?
一瞬そう思いましたがそれは違いました。
ネズミさんは下水に引っかかっていたカップメンの容器に飛び移ったのです。
「あっ!?」
ネズミが乗っかった衝撃でカップメンは再び流れ出しました。
流れに乗ったカップメンはそのままピッチさんを乗せたまま流されてしまいました。
「・・・以外とあのネズミ、頭良いじゃない。」
ムーンさん、感心している場合じゃないですよ!
早く追いかけないと!
「とりあえず、何か良い物は無いかねえ・・・。」
ムーンさんは辺りを見回します。
・・と、上手い具合に寿司づめが入ってたであろうパックを見つけました!
「さっすが下水道!こういう物には事書かないねえ!」
ムーンさんは寿司づめの容器に飛び移りました。
寿司づめは今にも流れそうです。
私はそれに乗るのにためらいますが・・・。
「どうしたんだいリボン?そこでじっとしてたらネズミの餌食だよ。」
ムーンさんは踏ん切りの着かない私に向かってそう言いました。

キキッ。

この言葉を聞いた私は後ろからネズミの鳴き声が聞いた気がしました。
・・・私は勇気を出して寿司づめの容器に飛び乗ります。

ムワッ。

私の鼻は凄い匂いに襲われました。
酸っぱくてツンと来る香り。
どうやら醗酵した酢飯の香りみたいです。
「何やってるんだいリボン、さぁ、行くよ!」

トンっ。

リボンはそう言うと寿司詰めの容器に軽く衝撃を与えます。
寿司づめはゆっくりと流れに乗り出します。
私達は寿司詰めの容器に乗って下水下りを始めました。


「ちゅー。」
その頃ネズミはピッチさんを食べようとしていました。
ピッチさんにネズミの牙が近づきます。
「・・・ん、ううん・・・。」
と、運良くピッチさんは意識を取り戻しました。
「・・・うわああああ!?」
この時ピッチさんはまた気絶しそうになったそうです。
ネズミの牙が眼前まで迫ってたといいます。
ピッチさんは慌てて逃げようとしました。
「・・・な、何これ〜!?」
そこでピッチさんは自分の周りの状況に気が付いたそうです。
周りは下水、向こう岸は全く見えない。
ピッチさん人生最大のピンチです!
「ちゅ〜v」
ネズミはピッチさんを追いかけます。
「うわー!?」
ピッチさんは全力でカップメンの容器の上を逃げ回ります。
しかし、狭いカップメンの上・・・。
ピッチさんはすぐに追いつめられてしまいました。

ネズミの牙がまたピッチに近づいたその時でした。
「ピッチさーん!大丈夫ですかー!?」
ピッチさんは私の声を聞いたのでした。
「!?」
驚いたピッチさんはカップメンの縁から身を乗り出します。
そこに写ったのは寿司づめの容器に乗る私達の姿だったそうです。
「ピッチさーん!こっちに飛び移ってくださーい!」
私はピッチさんにそう叫びます。
「う、うん!」
ピッチさんはそう言って飛び移ろうとしますが・・・。
下は激流、足場はない。更に寿司づめの容器はピッチさんの居る位置からかなり離れています。
この状況で私達の居る足場まで羽ばたいていくには危険な状況。
ここは羽を広げて滑空するのがセオリーですが・・・。
もし届かなかったり着地点を飛び越えてしまったら、命の保証はありません。
ピッチさんは躊躇しますが・・・。
「チ、チィッ!」
ネズミは今にもピッチに飛び掛かりそう、
もう、迷ってる余裕はありません!
「エエイッ!」

バアッ!

覚悟を決めてピッチさんが飛び上がるのと、
ネズミがピッチさんに飛び掛かるのは殆ど同じタイミングでした。

スウーッ。

ピッチさんは小さな羽を広げグライダーのように滑空します。
「チィッ!」
タイミングがずれたネズミの爪は空を切りました。
そしてネズミは・・・。

バッシャーン!

哀れ、下水に落ちてしまいました。
え?ピッチさん?
ピッチさんは無事にこちらへ向かってきてますけど・・・。
「うわっ!?」
着地地点がすし詰めの手前だった為ピッチさんは下水に落ちそうになりました。
勿論、ムーンさんと私がピッチさんの羽を捕まえて事無きを得たんですけどね。
「し、死ぬかと思った・・・。」
ピッチさんはガタガタ震えています。
でも、ま、命があっただけましですよね。
私はピッチさんを寿司詰めの容器の中心に連れて行きます。
「・・・とりあえず、一難は去ったねえ。」
ムーンさんはそう言います。
「・・・所で、これ、何処に向かってるんですか?」
私はムーンさんに聞いてみました。
流れは段々速くなっています。
何気にやな予感が・・・。
「後先考えないで乗ったのに知ってるわけ無いだろ?」
ムーンさんの答えは予想通りともいえました。

バアッ!

その時、周りが突然明るくなりました。
お空に丸いお月様が浮かんでます。
・・・でもそれより気になったのは軽い無重力間でした。
例えるならエレベータが下り始めた時のような・・・。
・・・私達はすぐ気が付きました。
空中に放り出されて、そのまま落下してるって。
「キャアアアアアア!」
私達は寿司詰めの容器に乗ったまま落下していきました。


続く