あかびぃさんの小説

【427字の物語】本文(427字の掌編集。12作品)


若者と平和な国  〜星のカービィ タイトル〜


 巨大な星に乗って見下ろす若者を、春の風が出迎えた。
「うわあー……!」
 眼下の景色に感嘆の声を上げる。
 遠目でもわかる雄大な自然の数々に、おいしい空気。
 旅人も一度は訪れる、という前評判通り──むしろ、それ以上に思えて、若者の口は大きく開いている。まるで景色すべてを食べ尽くしそうだ。
 ……この若者の場合、比喩と言いきれないのが恐ろしい。
 一頭身の球体という小柄さとは裏腹に、底知れぬ胃袋を持つのだ。
「──ん?」
 ふと、若者が視線を移した先に、住民であろう者たちがまばらに座りこんでいる。
 表情は見えないものの、元気がないのは感じ取れた。
「……事件なんて百年に一度、とも聞いていたんだけどなあ」
 自身の事件遭遇率に苦笑するが、すぐ楽しげな表情に変え、
「よおし、いっちょ、お節介にいきますか!」
 乗っている星がチカッと光った。
≪暴れすぎないように≫
 相方の『言葉』に笑って返す。
「この国のひとたちはどんなカオを向けてくるかな。いっくよー!」
 巨大な星が、国の入り口へと急降下した。

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敵か味方か、謎の影  〜夢の泉の物語 雲ステージ〜


 綿菓子のごとくふわふわした雲。
 空をたゆたう、いくつもの風船。
 三本目のスターロッドを手にやってきたのは、やさしい夢の中のような、不思議な地、グレープガーデン。
 が、黒い砲台やトゲトゲしい生きものが、現実へと引きもどす。
 シャッツオとゴルドー。どちらも、いかなる攻撃も効かない厄介者だ。
「うーん……やっぱりだいぶ警戒されてきているなぁ……」
 厳重な警備をどうかいくぐるか、頭を悩ませるカービィの前方に、突如、ひとつの影が舞い降りた。
 カービィが目をぱちくりさせて、
「……キミは?」
 と問うも、影は答えず、なにかをスッと置いたかと思えば、そのまま音もなく消え去ってしまった。
 呆然と立ちつくすカービィの眼前で、ペロペロキャンディーの星飾りが、小さく光を放っている。
 ──無敵効果のあるアメを置いた影は、たたずむ桃色球体を遠目で眺めながら、
「それを使うも無視するも、お前次第。
 ──だが、私を失望させるなよ?」
 と呟いて目を細める。
 ここで倒れられては面白くない、とでも言いたげに。

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闇の塊  〜星のカービィ2 VS.リアルダークマター〜


 剣士の体が四散し、飛び散った塊が徐々に消えて──
 いや。一ヶ所に集まっていく!
 安心しかけたカービィに緊張がもどる。
 塊はどんどん膨張し、カービィより一回り以上になった時。
「真の姿を見た者には、死あるのみ」
 抑揚のない声が、宇宙で響いた。
 中心の一つ目がカッと見開き、塊の周囲にいくつもの鱗が生える。
 花のような見た目とは裏腹の威圧感に、カービィは小さく息を呑んだ。
 塊が目を細めて、
「オレを真形態にしたとはいえ、流石に怖いようだな」
「真……形態……?」
 呆然と聞き返せば、塊──リアルダークマターはクク、と笑い声をこぼした。
「さっきまでの姿も口調も、仮のモンさ。
 つまり、ここからが本番ってことだ」
 一瞬だけ視線を下へ向け、
「虹を取り戻したいなら、大気圏へ突入する前にオレを倒さねぇと、焼き餅になるぜ」
「……それはイヤだなあ」
 冷や汗を流しつつ剣を構え直すカービィに、ますます目を細め、
「さァ、決着を着けようじゃねぇか。星のカービィ!」
 嬉々とした声が、決戦の火ぶたを切った。


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ぶつかり合う意地  〜スーパーデラックス 戦艦ハルバード 艦内〜


 傾く艦内でよろけつつエレベーターを降り、広い場所の中央へ踏みこんだカービィの頭上を、四つの影が覆った。
「待て、カービィ!」
「ここから先には通さないダスよ!」
 アックスの斧とメイスの鉄球をスライディングで避けた先に、ジャベリンとトライデントが立ちはだかる。
「メタナイト様の下へは行かせん!」
「ここで大人しくしていてもらう!」
 形の違う二つの投げ槍をかがんで回避したところへ、メタナイツが一斉に飛びかかる!
「さすがに必死だ……ねっ!」
 カービィは手早く地面にヨーヨーを立てるや、ヒモを上へ伸ばしながら回り出す。
 発生した星の塊ともどもモロに食らい、バラバラに吹き飛ぶ四人。
 しかし、カービィが着地した時には、四つの武器が一直線に向かってきていた。
 ──連続で使うヒマはない!
 瞬時にダッシュし、逆立ちして回転を加えることで、迫る武器を弾き飛ばす。
 すでに予備を構えているメタナイツに向き直り、
「がんばりは認めるけど──この国を征服なんてさせないよ!」
 ぐ、とヨーヨーを握った。

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夏といえば  〜星のカービィ3 海ステージ〜


「青い空!」
「白い雲!」
 砂浜で両手を広げ、声を上げるカービィとリックのほほを、潮風がなでつける。
 この時点で、ここがどこかわかるだろう。
 二人の傍らには、持参した浮き輪やビーチボールが出番待ち状態だ。
「お二人とも元気ですね〜」
「ぐずついた天気が続いていたから、なおさら嬉しいんだろうなぁ」
「ミスターブライトも張りきっているみたいだぞ」
 グーイとカインが笑いつつ、ゆっくりと二人へ歩み寄る。
 照りつける日差しに目をすぼめながら、ビーチパラソルとイスを持ったクーも後に続いた。
「あ……暑いニャ……」
「もー、しっかりしなさい! ほら、海岸に着いたわよ!」
「頑張って下さい。あと少しで水浴びできますよ」
 その後方で、だれるナゴを支え、日傘を差して歩くチュチュ。並んで歩くピッチがエールを送る。
 カービィとリックが振り返り、
「みんな、今日は思いっきり泳いで遊ぶよー!」
「でもって、かき氷食いまくるぞー!」
 それぞれ拳を上げると、他のメンバーも(ナゴは弱々しく)拳を上げるのだった。

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ある星の末路  〜星のカービィ64 こうじょうけんがく〜


 ガシャンガシャン。ゴゥンゴゥン。ギギギギギ。
 あちらこちらから響く機械音が、聴覚をつんざく。
「ふわー……大きい工場だなぁ」
「今まで以上に、クリスタルの回収が難しそうですね……」
「危険がいっぱい、って感じっスよ……」
「敵も多いようだしな……こりゃあ骨が折れそうだ」
 カービィ、リボン、ワドルディ、デデデ大王があたりを見まわす中、アドレーヌだけは静かに工場内を見つめている。
「アドちゃん、どうかした?」
 気づいたカービィが声をかけると、ハッと我に返った様子で、
「あ、ごめんね、大丈夫よ。
 ……ただ、あたしの故郷も、機械化が進めば、いずれはこうなるのかなって……」
 語るまなざしは、ひどく寂しげだ。
 ここに来る前のデパート同様、働き手はおらず、機械だけが動き続ける建物。
 先住民も生物もいなくなり、文明の利器のみが残った状況である。
「……その結果のひとつだろうしな、この星は」
「あれ、大王ってば、めずらしく真面目だね」
 目を丸くするカービィの頭に、デデデの拳がゴツンと落ちた。

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崇高で未熟  〜夢の泉デラックス 中ボスタワー〜


 さほど広くない部屋で飛び交う爆弾を難なく避ける様は、まるで踊っているかのような華麗さ。
 思わず見入った敵は、迫る剣に気づくのが一瞬遅れた。
「ハァッ!」
 気合い一閃。
 まともに食らった敵、ポピーブロスSr.は仰向けに倒れた。
 直後、なにもなかった空間に扉が現れる。
「成程。部屋の主に勝つと出現する仕掛けか」
「その通りー……」
 呟きに、大の字になったままのシニアが力なく答え、大きく息をついた。
「あーあ、また負けちゃったよ……。
 カービィの時も全力で挑んだのになぁ」
「まだまだ修練が足らぬという事だろう。──私もだが」
 こぼれたのは自嘲の笑い。
「……キミみたいなひとでも、負けるのは悔しい?」
「無論だ」
 おそるおそるの問いに即答し、
「だが、こうして修行の旅へ出たのは、その様な私怨に二度と駆られぬよう、己を鍛える為でもある」
「二度と?」
「ああ。……一度だけ、躍起になって奴を追い回したのだ」
 苦笑する騎士に、シニアは目を瞬かせ、やや引いて、
「……ストーカー?」
 ふたたび剣が閃いた。

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違うところもあるけれど  〜鏡の大迷宮 森・自然エリア〜


 鏡を見ているようだ、という言葉が頭に浮かんだのは、ここが「鏡の国」であり、前を歩く三人が自分の分身だからだろうか。色や性格は違うが。
「あ、きれいな花だー」
「こら、観光に来たんじゃないんだよ」
「まあまあ、そうカッカしないで」
 呑気な黄。真面目な赤。穏やかな緑。
 なじみの騎士に突然斬りかかられ、分裂した三色とともに、騎士を追ってこの国へ入ったカービィ。
 どうやらあの騎士はよく似た別人とわかり、目的を探るべく冒険開始となったのだが……
「……変な感じだなぁ」
 あらためて分身たちを見ると、妙な気分である。
「どうかした?」
 視線に気づいて振り向いた黄と目が合い、カービィはどぎまぎしたが、
「あ、いや……
 この状況、おかしいよなぁ、って」
 正直に答えた途端。分身たちが目を瞬かせ──吹き出した。
「たしかにねー」
「ちょっと不気味かもね」
 同意する赤と緑、しかし言葉とは裏腹に楽しげだ。
 黄までもがクスクスと笑っている。
 こんな事態でも楽しむ様は、やっぱり自分だな、とカービィも笑った。

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より強いのは  〜参上!ドロッチェ団 ドロッチェ団のテーマ〜


「その宝箱をこちらへ渡してもらおう」
 ハッと振り向いたカービィの目に映るのは、大きな耳のネズミ集団。
 初めて見る顔ぶれである。
「……キミたちは?」
「宇宙を股に駆ける盗賊『ドロッチェ団』だ。
 大人しくそれを渡せば、何もしない」
 赤い帽子とマント姿のネズミが発する声は、先ほどと同じ声だ。
「もし抵抗するなら──」
「力づくで、奪うまで、だ……」
「素直に渡したほうが、身のためじゃよ」
 サングラスをかけた黄のネズミが手裏剣を取り出し、巨体な青のネズミが軽く指を鳴らし、UFOに乗る緑のネズミが眼鏡をクイと持ち上げる。
 カービィはたじろぎつつも、彼らをにらむと、
「渡すのも痛いのもごめんだねっ!」
 言うなり全力でダッシュした。
 おやつのケーキを奪ったのはあの国王であり、もう食べられているとも思うが、手に入れた宝箱の中に入っているかもしれない。彼らをまいて、中身をたしかめるのだ。
 遠ざかる桃色の球体を、ドロッチェ団が追いはじめる。
 宝への執念。ケーキへの執念。勝るのは果たしてどちらか?

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『最高』を目指して  〜ウルトラスーパーデラックス ヘルパーたちの休息〜


 遠くのコロシアムを眺めながら、傘を持たないほうの手で、ワドルディは汗をぬぐった。
「まさか四戦目で、大王さまが出てくるとは……」
 突拍子もなく開催された格闘大会。一戦終えるたび、この休憩所を挟む。
 付近の木々には、体力を全快させるトマトが五つ用意されているものの、優勝条件が十三人抜きである以上、むやみな消費は厳禁だ。
 先ほどの戦いで受けたダメージ量は多めだが、

 ──お前が強さを求めるのは、アイツの助けとなるためか?

 主催者であり、仕えていた王であり、親友のライバルである人物との会話を思い起こす。

 ──オイラは、相棒になりたいんス

 答えると、王は満足そうに笑っていた。
 大会を開いたのは退屈しのぎらしいが、
(オイラの野心を、見抜いていたんスかね……)
 苦笑しつつ扉のほうへ向き、傘を強く握る。

 ただ助け合うだけではなく。
 互いに背中を預け、時には強敵となる存在。
 この程度で回復していては、きっと一生なれないであろう。
 気合いを入れ直して、ワドルディは次の戦いへと挑んでいった。

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新たな力との出会い  〜星のカービィWii 必殺!スーパー能力〜


「ん?」
 洞窟を出てすぐ、カービィの目は前方に釘づけとなった。
「どうかしまし……って、何スか、あれ?」
「ありゃあ……ブレイドナイト、だよな?」
「……ああ。しかし、どうも様子が違う」
 バンダナワドルディ、デデデ大王、メタナイトも立ち止まり、目の前の光景を凝視する。
 剣の使い手でおなじみの敵キャラ。その頭部に星が飾られ、剣士自身とともに光を放っているのだ。
「……コピーできるかな」
 カービィは慎重に近づくと、斬りかかられるより先に吸いこみをはじめた。
 抵抗する間もなくブレイドは口の中へと消えていき──
 飲みこんだカービィの体に、異変が起きた。
 通常の『ソード』とは少し違う帽子と剣。そして、輝く体。
 剣を振るった瞬間。これでもかと巨大化した剣が、ドゴォ! と大地を粉々に砕いたのである。
 当人や仲間たち、モニターで観察中のマホロアも、呆然とする。
「……コンナ力を、易々と使えるナンテ……」
 目を弓のように細め、
「──さすがダネェ、星のカービィ」
 クックッ、と、愉快そうに笑った。

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夜明けの決心  〜トリプルデラックス この星をかけた魂の戦い〜


 デデデ大王とタランザの手によって、『ビッグバン』の状態となったカービィは、前方を見据えた。
 巨大な一輪の花と化したセクトニアもまた、虹色に輝く球体へと体を向けている。
「……勇者様!」
 張り上げられた声に、カービィは意識だけ向ける。
 タランザが言葉を続けた。
「我らの女王を……セクトニア様を、楽にしてあげてほしいのね!」
 従者の、決意に満ちた声色を受けて、
「わかってるよ」
 と、頷く勇者の顔も、覚悟を決めた表情である。
 美と欲に支配され、異形と成り果てた、フロラルドの女王。
 元にもどすことは、もはや不可能。
 ならば、できることは──ただひとつ。
 カービィの両手に、力がこもる。
「……おい、カービィ!
 この俺様がここまでしてやったんだ、ヘマすんじゃねぇぞ!!」
 発破をかけるデデデの声は、緊張のせいか少し硬い。
 カービィは安心させるように笑みを浮かべて頷くと、駆け出した。
 女王の本体を倒し──肉体を滅ぼし、その魂を、解放させるために。
 陽が昇りはじめる中。最後の戦いが、幕を上げた。