ひでぶさんの小説

外伝 〜I’m missing〜 後編


リボンもカービィも、同じ事で悩んでいるのに、
相手のこと意識しすぎたのよね。そんなんじゃちっとも
解決にならなかったんだから。
『ノリカカッタフネ』ってやつだから、
あのままあたしはお姉さん風吹かせていたんだけど、
ポップスターに帰ってみても、相変わらず、カービィは
しょんぼりしたまんま。もう、ホントにカービィらしくないの。
溜め息なんかついちゃってさ。
そうこうしているうちに、プププランドで大きな雪祭りが開かれたの。

〜I’m missing〜

後編

カービィは家にこもりっきりになっちゃったから、
仕方なくカービィ抜きで雪祭りを見に行くことにしたの。
みんなカービィのこと随分心配していたけど、
ウジウジして、女の子に悲しい思いをさせるやつなんか
放っておいちゃっていいんじゃないかと。

大体、あの時のリボンのことを思うと、
全部カービィが悪いような気がしてくるわ。
あんなにかわいいのに、リボンたら目が真っ赤に
腫れるまで泣いちゃったんだからね。
あの子に代わって、あたしがカービィをひっぱたいてやりたかったよ。

そんなこんなで、雪祭りの場にやってきて、
氷の滑り台とか迷路とかで遊んでいたら、
リックが「やっぱりカービィも連れてきたほうが楽しい」とか
言い出したわけ。あたしは反対したんだけど、みんな、
あのことを知らないから、カービィの家に走っていっちゃった。
カービィのためにも、たまには1人にさせてあげるのも
いいと思ったんだけどなぁ。

リック達はしばらくしてから帰ってきたけど、案の定、
カービィの姿はなかった。ドアさえ開けてくれなかったみたい。
あたしに「カービィ、何があったの?」ってチュチュが聞くもんだから、
つい言い出してしまいそうになったけど、これはあの2人の問題だし、
他のみんなには黙っておいたわ。
でも、カービィがずっとこの調子だと、やっぱり心配する人がたくさん
いるから、仕方ない。ちょっと叱ってこよう。

あたしは、「用があるから」と言付けて、その場を後にした。


リボン、決心がついたみたいだったのに、その日、
リップルスターでちょっとびっくりしちゃうことがあったのね。

別にその場にいたワケじゃなかったからよく分かんないけど、きっとこんな感じ。

リボンはお姫様の承諾を貰って、すぐさまポップスターに
来ようとしたんだけど、宇宙船の発着場に着く前に、あのアンクって
いう男の子に会ったのよね。

「どこに行くんだ?」
まるで、アンク君は知っていて言っているみたいだったと思う。
分かっていたけど、信じたくなかったんだろうね。

あの子はカービィ並みに鈍感だから、
正直に「カービィと仲直りしに行く」って言った。
そんなこと言われたら、アンク君はもちろん慌てるわ。

「何でだよ、あいつのこと、嫌いになったんじゃないのかよ!」
「だから、仲直りしにいくんです。わたしはやっぱり、
カービィとまた一緒に遊びたい。カービィがどう思っていても、
わたし自身がずっとこんな気持ちなのは、もう許せないの」

アンク君は立ちはだかるようにしてリボンのことを止めていたんだろうけど、
リボンの本当の気持ちを聞いて、すごくショックを受けたでしょうね。
「じゃあ、俺はどうなるんだよ」

こんな時にそれを言ったアンク君のこと、ちょっと卑怯にも思った。
……でも、男らしいのかもしれないわね。時と場合はどうあれ、誠実に、
自分の想いをあの子に伝えることができたのだから。

「俺は、リボンのこと、ずっと好きだったんだぞ!
それなのに……別の星からやってきた奴が簡単にお前のことを
攫っていくのなんて、俺だって、絶対に許せない!」

その時のリボン、どう思ったのかな?
芯が強いから、パニックを起こすような子じゃないだろうけど、
前から近かった存在にそんなこと言われるなんて、
どんな子でも動揺する。純真なリボンなら、余計に。

アンク君はその場からいなくなったけど、リボンは
もう気分が壊れちゃって、ポップスターへやってくる勇気を
なくしちゃったのね。よく分かるから、あたしは責めはしない。

「アンクが、わたしのことを……?」
結局、リボンはまた布団の中で眠れない時間を費やしていたのね。


あの子から手紙がきて、ようやくあたしはそのことを知った。
ちょっとかわいそうだったけど、冷たく引き離す感じで返事を書いたの。
もう、これはリボンが思う一番の気持ちを、アンク君にぶつける以外
方法はないのだから、あたしが口出しして、もしそれがあの子にそぐわない
アドバイスだったら、あの子、絶対に後悔しちゃうもん。

リボン、どうするんだろう。


さて、カービィの家の前までやってきました。どうしよっか。

とりあえず、カービィに会わないと話は進まない。
そう考えて、家のドアをノックしてみた。……返事はない。
「カービィ、いるんでしょ?開けなさいよ」
……やっぱり、返事はない。

絶対にカービィはここにいるのだから、居留守を使っているに違いない。
強行手段。あたしは常備スケッチブックにクラッコを描いて、具現化させた。

どっかーん!
稲光がカービィの家のドアを吹き飛ばした。
ちょっと罪悪感を覚えながら、あたしはカービィの家に足を踏み入れた。

どうもおかしい。いつものカービィだったら、クラッコがドアを壊した所で
かなり大声でおどろくはずなんだけど。
――もしかして、本当にいないのかな?
そう思って、家の中を見回してみたら、あたし、すっごく驚いた。
カービィはいたの。ベッドの上で、下を向いてた。
存在感っていうものが、その時のカービィにありはしなかったのね。
今にも消えてしまいそうな雰囲気を出していて、人形のように
表情を変えないの。それも、すごく暗い顔。
こんなの全然、カービィらしくない!!

「カービィ、立ちなさい」
カービィは、あたしを無視して、動かなかった。
あたしはカービィの手を引っ張って、無理矢理カービィを起こした。
「何するんだよぉ……」
第一声だった。カービィは掴んだ手を振り払い、面倒くさそうに立ち上がった。
肩掛けの鞄に入れておいた絵をカービィの前に、あたしは置いた。
カービィがこんな風になってしまった場所の、最近の風景の絵を。

「これは……」
「なんでリボンに会いにいってやらないの?」

リップルスターの、森の広場の絵から、カービィは目を背けた。
カービィが、「どうしてぼくから……」と小さく呟いたのを、
あたしは聞き逃さなかった。

「……あんたねえ、何甘えてるの!?
リボンに会いたいって思うだけで何もしないで、そうやってイジケて、
いつまでもここに引き篭もっているつもりでしょう……臆病者!」

「何で知ってるの?」って顔は一瞬だった。
すぐに口をヘの字にして、悔しそうに奮えていた。
そして、大声で、あたしに言ったの。今にも泣き出してしまうんじゃないかと
思うような声色で。
「じゃあどうすればいいんだよ!!
ぼくだって、もう一度、リボンと仲良くしたい。
でもリボンは、ぼくの事は、もう嫌いになっちゃったんだ!
嫌われちゃったのに、会いになんか……いけるはず、ないじゃないか……」

「相手に嫌われちゃったら、自分の気持ちは犠牲にするんだ。
身を退いたワケね。偉いじゃない。でもね……怠慢ともいうのよ、そういうの」
あたしは体を、出口の方に向かせた。
敷居の一歩手前で、最後に、あたしは振り返って言った。
「その絵、あげるわ。カービィ、どうすべきなのか、どうしたいのか、考えなよ」


カービィだって、リボンだって、思っていることは一緒だった。
一緒だったからこそ、相手を気遣って、余計に距離を置いてしまった。
傍目からみるとすごく簡単に解ける問題なのに、
悩んでいる本人達には、とてつもなく難問。
カービィがカービィらしくなくなるのも、無理ないのかもしれない。
でも、無難な道を選んじゃったら、きっと後悔してしまうと思うの。
だからカービィ、自分の気持ちに強がっちゃダメだよ。



雪祭り最後の日の夜だった。今日もカービィの姿はない。
でも、もう心配する必要はなかったんだ。

リボンは、ついに決心したの。
発着場には、あれからいつもアンク君がいた。
リボンがここに来ることを、決して認めないつもりで。

でも、あの子は、もう迷わない。
前だけを一心に見据えて、ゆっくりと、アンクの前に立った。

「アンク」
控えめだったけど、しっかりとした声だった。短く、彼の名前を呼んだ。

「あなたの気持ち、すごく嬉しい。わたしだって、
あなたのこと、大好きです」
「リボン……」

「でも、わたしは、カービィとあんな風になって、
体が引き裂かれそうだった。今まで、感じたことのなかった想いだった。
いつの間にか、カービィはわたしにとって、すごく大事な人になっちゃったの。
だから……わたしは、カービィに会いに行く。わたし自身のために」

アンク君はリボンの眼を見た。その眼は、凛々しくて、いつも以上に
リボンはきれいだったでしょうね。
自分が好きなリボンの想いが、誰に向けられているものなのか。
アンク君も、ついに知ってしまった。
もう、あの子を止めることはできなかった。

「行けよ」
短く言って、アンク君は前進した。そしてリボンとすれ違い様に。
「絶対に、うまくいかせろよ」
雪がちらほらと降り出した発着場から、アンク君が去って行った。

アンク君の背中にリボンは頷いて、宇宙船のチケットを握りしめた。


ポップスター。カービィは、あたしの言ったこと、リボンのこと、自分のことで、
頭をぐるぐる回していた。ベッドの上で、からだをごろごろと転がせながら、
必死に考えた。ベッドから落っこちて、足が当たったテーブルがひっくり返り、
画用紙が一枚、ひらひらとカービィの顔にかぶさった。
手にとって、それを眺めた。……あたしの描いた、リップルスターの風景。
「ぼくは、甘えていたんだ……。
そだよね、ぼくは、リボンがきっと会いにきてくれると思っていたんだ。
でも、そんなの、勝手すぎだった。ぼくは自分から、何も動こうとしなかった。
ぼくが思っていることを、ぼくからしなければ何にもならないじゃないか。
……リボンに……」
カービィは立ち上がった。
「会いに行こう!」

雪の降る道を、最後にワープスターを降りた場所まで走るカービィ。
宇宙船にのって、遠くないポップスターを眺めるリボン。
2人の気持ちは、やっと前みたく、同じになった。

失意のまま、着陸したあの山について、雪で見えなくなった
ワープスターを必死にカービィは掘り起こした。
自分の体が雪で埋まるのすら気にせずに、ただひたすら雪を掻く。


ポップスターの大気圏に入ったとき、その重みに耐えながら、
窓に映った、山の頂上で埋まりかかっているピンク色の体を、
決して見逃すことはなかった。
シートベルトを外し、あちらこちらに体をぶつけながら、扉にしがみついて、
力いっぱい、ドアを開いた。熱が、扉の外から入ってくる。
それでもリボンは、摩擦熱の幕へと体を放り出した。
服がこげて、リボン自身もきれいな1つの光の筋となる。

ぴかっ
流れ星を、光の筋を、カービィは眼にした。
あまりにきれいに輝いているので、カービィは思わず見惚れてしまった。
光の筋は、勢いを無くさずに、カービィのいた、山の頂上に
落っこちた。何層にも降り積もった雪が、光の筋を抱きとめた。

光の筋の創った穴からでてきたのは、カービィが今一番会いたかった女の子。
顔も服も煤だらけで、とても好きな子に会いに来たようには思えないけど、
その女の子……リボンは、相手の顔をみて、泣き笑いの表情を浮かべながら、
そのヒトにくっついた。

カービィは、最初、あっけにとられていたけど、しばらくしてから
落ち着いて、静かに言った。
「リボン、ぼくのこと、嫌いにならないで。…いや、嫌いでもいいから!
ぼくが、会いたいときに、気が向いたらでいいから、嫌々でも会ってくれないかな?
ぼくが言ったひどいこと、許してくれなくていい。だから、お願いだよ」

リボンは、首を振って、こう言ったの。
「嫌いになんかならないよっ!わたしは、カービィと一緒にいたい。
わたしこそ、許してもらおうなんて思いません。だけど、どうか、
カービィ、また、前みたく、嘘でもいいから……一緒にいさせてください!」

2人は、眼を見合わせたの。
それから、やっと気がついた。どっちも、嫌いになんてなっていなかった。
好きなまんまだった。どんなに、幸せなことだったか。
その幸せを噛み締めるために、再び、カービィとリボンは抱き合った。


ホラ、ね。だから、簡単だって言ったでしょ?
……でも、今は、そんなこと言う必要はないよね。
さらに仲良くなった2人に、もっと大きな幸せが訪れることを……。

I don't want a lot for Christmas
There is just one thing I need
I don't care about presents
Underneath the Christmas tree
I just want you for my own
More than you could ever know
Make my wish come true...
All I want for
Christmas is you...


めでたし めでたし