ひでぶさんの小説

外伝 〜I’m missing〜 中編


お元気ですか?
わたしは、あんまり元気じゃないみたいです。
それもこれもみんな、全部、自分のせい。

あなたがあの時思ったでしょうことが、
いつも気にかかるようになりました。
始めは、少しか、わたしだって悪くないって思ってた。
ううん、ちがう。それだって、あなたに、
自分のわがままを押し付けた証拠なんでしょうね。
だって、あなたを心の中で詰れば詰るほど、
どうしようもないひんやりとしたものが、
あなたを傷つけたわたしを包み込むんですから。

できることなら、もう一度あの時のことを話し合って、
もう一度あなたと一緒に遊びたい。
でも、それができないのは、あなたにひどいことを言った
わたしに与えられた罰なのだと思います。
あなたはいつか、わたしを許してくれるでしょうか?

〜I’m missing〜

中編

あなたが帰ってしまってから、
わたしはアンクと他の男の子に何度も謝りました。
この時は、正直、まだわたしはあなたのとった行動が
信じられなくて、ただ一方的に決め付けていて、
この子達にあなたのことを話すこともなく、ひたすら
「ごめんなさい」と言うだけでした。

そんな時、ひとりの男の子が、ハッとしたように、
「あいつ、黒い雲の騒ぎのときの奴か?」って、
わたしに問い掛けたんです。

わたしは黙ってました。でも、その男の子の
一言がきっかけに、みんなしきりに「そうにちがいない」って
言い始め、それからたちまち、あなたのことをけなし始めました。

「この星を救った奴があんな乱暴者だったなんて」
「あんなのがしょっちゅう遊びにきたら、
あいつのいいなりになるほかないよ」
「いや、もしかして、この星に恩を売るつもりだったんじゃねえ?」
「ありえるな。あの黒い雲自体あいつの仕業なんじゃないのか?」

あまりにも大げさに、自分に正義があるように、
男の子達が言ってるのを聞いて、わたしは、ちょっと
頭にきたけど、でも、わたしだって、あなたに
似たような酷いことを言ったのだから、
人のことは、やっぱり言えませんでした。
でも。

「おい」
アンクがふいに静かな声で言ったんです。
「黙れよ」

アンクが、わたしに気を使ってくれたんだと思います。
みんな、アンクのほうを向いて、ひきつった顔を
浮かべてから、何か小さくぼやきながら、
向こうにいってしまいました。

ポケットに両手を入れて、急ぎ足で帰ろうとする
アンクに、わたしはもう一度謝りました。
「ごめんなさい、アンク。わたしが連れてこなければ、
この広場は、ちゃんと平和だったんでしょうね。
黒い雲をやっつけるような、まるで違う人なんて、
反則もいいところだった。
ケンカは、よくないけど、でも、それにしても、
公平じゃなかったですよね……本当に、ごめんなさい」

アンクは立ち止まって、でも、こっちを向かないで、
短く言ったんです。
「知ってたさ、あいつがそうだって」
「……え?」

それから、一際小さい声で、多分、わたしに
聞かれないように。
「だから、許せなかったんだ」
そう言い残して、今度こそアンクは行ってしまいました。

アンクは何故、カービィのことが許せないのかな?
家に帰ったわたしは、ふとんにもぐり込んで、
ずっとそのことを考えていました。

ガキ大将って言われていた頃もあったし、たまに今でも
そんな素振りをみせる(でもそれは、決してアンクが願って
やっているわけではない)けれども、あの集まりの中で、
アンクただ1人だけは、年下の子達の面倒見もいいし、
好かれてもいたはずだ。カービィとはまた違うけど、
アンクにはアンクの優しさがあった。
それに、森の広場にいる子達の中でもアンクは一番強い。
アンクが怒ったら、あの中の誰もが抗えないはずだ。
それだから、ちょっと意地の悪い考え方だったけど、あの時は
カービィとアンクが仲良くしてくれることが一番だと思った。
でも結局それは、叶うことはなかった。
なんでだろう?
男の子達がかけっこやいろんな遊びでカービィに負けたから、
みんな不機嫌になった。
でも、カービィは多分、わたしが喜んだりしたから、きっと、
あの時たくさん勝とうと思ったんだろう。
ケンカが始まった時だって、わたしが男の子に捕まったから。
カービィだって、いたずらに自分の力を振るうことはないんだ。
やっぱり…わたしのせいだ。


それからしばらくして、初めて雪が降った日に、
久しぶりにアドさんが、リップルスターにやってきました。
リップルスターの今の風景を、みんなに見せるんだそうです。
ポップスターよりも早い冬に、アドさんは驚いて、
同時に嬉しく思ったみたい。

旅で、同じ女の子として友達になったわたしは、
アドさんにリップルスターを案内しました。
丁寧に、時間をかけて、アドさんは色々な風景を
スケッチブックに収めていきました。
雪をかぶった街に、氷の張った湖、ソリ滑りを
楽しむことができるようになったいくつもの山。
そして、あたり一面真っ白になったあの森の広場。

やっぱり、森の広場は、アドさんも気に入ってくれたようです。
秋に咲く桃色の花の代わりに、電飾を着飾った木々は、
まるで宝石の実をならしているかのようにきらきら輝いていました。
雪の上に折り畳みのイスを置いて、アドさんはそこの風景の
絵を描き始めました。

「随分ときれいな場所ね」
「わたしもここが好きなんですよ」
下絵の為の鉛筆描きは、他の場所よりも
ゆっくりとやっているみたいです。
目の前から視線を逸らさずに、一点を見据えながら。

「まるでクリスマスツリーだわ。ホラ、前に飾り付けをしたことが
あったじゃない。なんていう星だったっけ……?」
「ブルブルスターです」

みんなでクリスタルを探していたときに、立ち寄った雪の星で、
大きな「もみ」っていう木に、鈴や、人形や、この星でもやっている
ような電飾をくっつけて、カービィのスパークでライトアップした
ことがあったんです。すごく、きれいで、楽しかった。

飾り付けはアドさんが教えてくれたんだけど、
あの時のアドさんはちょっとキビシくて、それを思い出して、
わたしは何だか可笑しくなって、笑ってしまいました。
「ど、どーしたの?」
「……あ、なんでもないです」

「楽しかったよね、あれ。……リップルスターも
こんなことやるんだ。それなら、カービィとか
大王ちゃんとかも連れてくるんだった」

カービィは、きっともう、ここには来てくれないだろうな。
名前を聞いたときに、そう思いました。
その時に浮かべたわたしの表情、アドさんが絵に集中していても
勘付くくらいに、うんとひどい顔だったみたい。

「やっぱり、カービィとなんかあったのね」
鉛筆を置いて、アドさんがこっちを向きました。
アドさんがわたしたちのことを考えていたなんて、
全然分からなかったから、わたしは驚いて、一緒に、
ひどく悲しくなりました。こらえようとは思ったけど、
どうすることもできなかった。アドさんの隣りで泣いちゃったんです。

アドさんは、そんなわたしに、本当のお姉さんみたいに
やさしく声をかけてくれました。
「話してごらん。いつまでも自分の中に閉じ込めておいたら、
せっかくのかわいい顔が台無しじゃない」

アドさんに抱きついて、大声をあげて泣きました。
ちょっと恥ずかしかったけど、でも、嬉しくて。
わたしを抱きしめてくれているまま、わたしの言う事を、
アドさんは全部聞いてくれました。
もう、自分でも何をどう言ったか覚えてないけど、
きっと、アドさんは最初から分かっていたんでしょうね。
わたしの気持ちも、どうすればいいかも。
うんと優しく、教えてくれました。
「『クリスマス』は、わたしがポップスターに来る前にいた星の
お祭りなの。その日だけは、心がきれいな人なら、欲しい物を、
サンタクロースっていう妖精が持ってきてくれるの。
でもね、そういった、あなた自身が何かをしないといけないものは、
サンタクロースは持ってきてはくれないのよ。
カービィがあなたのことを嫌いになっても、それでもリボン……
あなたが、大好きなカービィとまた仲直りしたいのなら、
カービィがどう思っていたっていいの。あなたの想いをぶつけなさい。
きっとまた、ううん、前よりももっと仲良くなれるはずだから」

アドさんの胸から顔をだしてうなずくと、アドさんは、
静かに歌を唄ってくれました。

――クリスマスにはたくさんのものはいりません
欲しいものはひとつなんです
もみの木の下にあるプレゼントなんて気にならないの
ただあなたが、わたしのそばにいてくれるだけでいい
わたしのこの気持ち、あなたは気付いていないんでしょうね
でも、どうかわたしの願いを叶えてください
クリスマスに望むものは、あなただけ……

とても綺麗な歌声で、とても素敵なメロディー。
アドさんが唄ったこの歌を、わたしは今も忘れずに覚えています。


ポップスターにアドさんが帰ってから数日後。
わたしは、決めました。
カービィが、わたしを嫌っていても、わたしは
わたしのためにカービィに会いたい。
お姫様に外出許可をもらって、クリスタルに祈りました。
カービィと、仲直りできるように。

カービィ、きっとまた、一緒に遊んでくれるよね。


後編へ