ひでぶさんの小説

外伝 〜I’m missing〜 前編


リップルスターって、そんな遠い星じゃないんだけど、
なんだか、ぼくにとっては、まるで「なんまんこうねん」も
離れているような感じがするようになった。

そう感じるようになった理由はわかっているんだ。
なんであんなこと言っちゃったのか、
今になって、ホントに悔しい思いをしてる。
……でも、どうしても、ゴメンって言えなくて。
そのまま会わなくなっちゃって。それっきり。
リボンは、もう、ぼくのこと、忘れちゃったのかなぁ。

X’mas in 2001 外伝 〜I’m missing〜

前編

その日は、久しぶりにリップルスターにいって、
リボンに会って、それから一緒にピクニックに出かけたんだっけ。
リップルスターにある、秋になると桃色の花が咲くっていう
不思議な森に。

他の子達もたくさんきてて、普段だったら静かな森らしいけど、
随分とにぎやかに思った。でも、そのほうが、ぼくも楽しかったし、
そこにリボンみたいなかわいい子と一緒にきてることを考えると、
何だかすごく嬉しかったな。

みんな森の広場でなわとびをしていたり、かけっこをしていたり、
ぼくとリボンもその中に入れてもらって、ぼくがかけっこで
一等賞になったり、なわとびで一番長く跳んだりしたら、
リボンもはしゃいで喜んでくれて、本当にぼくは誇らしかった。

リボンは新しい友達として、
みんなにぼくのことを紹介してくれた。
リップルスターで悪者と戦ったのはそう昔のことじゃ
なかったから、ぼくを見たときはみんな、目を丸くしていたっけ。
知り合った子達は優しくて、みんなぼくと仲良くしてくれた。
ご飯を一緒に食べて、リボンとどこで会ったかとか、
その時の冒険とかを話して、そのあとは、
楽器ができる子が奏でる演奏にあわせて、
みんなでダンスを踊ったりした。
たくさんの子と仲良くなれたぼくは、幸せでいっぱいだった。

そんな時。
何だか、わざとらしく大股を開きながら、
リップルスターの、リボンよりちょっと年上の男の子達が、
あたりを睨みまわしながらやってきたんだ。

曲を弾いていた子達は急に演奏をやめて、楽器を放り出して、
みんな走ってどこかへ行ってしまった。
ぼくと手をつないで踊っていた子も、反対側で笑顔していた子も、
みんな表情を変えて、その森の広場からいなくなった。

残ったのは、ぼくとリボンだけだった。

「ねぇ、みんなどうしたの?」
「うん…。」
リボンはうつむいたまま、何も言わなかった。

やってきた男の子の1人が、やけに大声で、
「ほぉ〜」って興味ありげに、落ちている楽器を
手にとって、乱暴に拾い上げた。

「あいつら、こんなものを持ってやがるなんて知らなかったな。」
「でも、置いていったってことはいらないんだろ。お前、もらっちまえよ。」

楽器を手にした男の子は、最初それをちょこちょこっと弄って
いたけど、すぐに、「つまんねぇ」と短く言って放り投げた。
がしゃん。と、不気味な音色を最後に、その楽器は、
もう二度と音を奏でることができなくなった。

「ああ……!」
思わずぼくは声を漏らした。
リボンはそんなひどいことに目をそらして黙っていたけど、
男の子達の中でも一番年上そうな子が、リボンの前にやってきた。
ぼくに痛いくらいの冷たい視線をぶつけながら。

「よぉリボン。」
「こんにちわ、アンク……。」
リボンはひどく震えていて、無理に笑い顔を作っているようだった。

それから、ようやくぼくの方を向いた。
さっきよりも、ぼくのことを鋭く睨みつけて。
「……誰だ、お前。」

慌ててリボンが、ぼくのことを紹介した。
「あ、あのね、わたしの友達で、カービィっていうんです。」

さっきとは打って変わって、とても挨拶したくなるような
相手じゃないけど、リボンがぼくの代わりに紹介してくれたから、
ぼくもちゃんと自己紹介をした。
「ぼく、カービィ。よろ……!?」

気がついたときには、ぼくは宙を飛んでいた。
アンクっていう子のがっしりと握った拳が、
ぼくのほっぺたに思いっきりめり込んだんだ。
ぼくは不意打ちにびっくりして、受け身もとれずに
地面に転がった。

「カービィ!!」

リボンが駆けつけて、ぼくが起きるのを助けてくれた。
「ったぁい…。」
起き上がって、くらくらするあたまを振ってから、ぼくは叫んだ。
「何でこんなことするんだよぅ!」

「ふざけた丸い玉のくせに、何でしゃばった真似してんだ?」
そう言って、アンクという子はぼくを嘲笑った。
「でしゃばった…?」
ぼくは、ここにきて、何をしたか思い出した。
そう言えば、リボンが喜んでくれるのが嬉しくて、
随分とがんばって一等賞を取った…。
よく見てみると、そのときの、なわとびやら、かけっこやらで
参加していた、他に参加している子よりも年上で、やけに
自信たっぷりだった子達が、今この場に何人かいて、
ぼくのことをアンクとかいう子の後ろで笑っている。
――そういうことか…!

思わずぼくは、自分の手に力を込めた。
「カービィ。」
リボンが、こっちを見ないで、小さな声で言った。
「…やめて?」
力が込められた手を、リボンは優しく握ってくれた。
ぼくはリボンの顔を見て、すごく真剣な顔をしていることに
気付いて、何だか自分が恥ずかしくなった。
そしてぼくは、全身の「ちのけ」が穏やかになった。

リボンが、真直ぐに飛んで、アンクの前で止まった。
ぼくはリボンを止めようとしたけど、リボンが振り向いて
ニッコリ笑ったので、何も言う事ができないで、ただ、
その場に立っているしかなかった。
小さな体を震わせながら、リボンは、勇気を振り絞って、言った。
「お願いです、アンク。ひどいことをしないでください…。
きっと仲良くなれると思うの。」

そう言われたアンクは、困ったように人差し指で
頬をかいたけど、他の男の子達が、黙ってみてはいなかった。
「うるさい、生意気な口きくな!」
「そうだそうだ!」
「お前なんかこうしてやる!」

リボンに、男の子達が群がった。髪の毛を引っ張って、
腕をつかんで、リボンのことをひっぱたいた。
「……!!」

ぼくは無言で、そいつらのもとへと走った。
…もう許せない!

そこへアンクが立ちはだかって、さっきのようにぼくに
右の拳を繰り出した。ぼくはこれでも、君達が困っていた
ダークマター達と戦ったことがあるんだぞ。
分かっていれば、食らうもんか!

アンクの拳をかわして、空中でアンクの顔面に
回し蹴りを放った。アンクは吹っ飛んで、そのまま
木にぶつかった。

着地と同時にぼくはリボンの髪の毛をひっぱる男の子の腹に
数発ジャブをかまして昏倒させ、左右の腕を羽交い絞めにしていた
奴をスピンキックで張り倒し、リボンをひっぱたいた、
中でも一番許せなかった奴に、サマーソルトを食らわせた。

決着は、数秒だった。ぼくの圧勝で。
気を失った男の子や泣き喚く男の子を見て、
ぼくはふぅっと一息ついた。

ぼくはきっと、リボンは喜んでくれると思った。
とうぜん、「ありがとう」って言ってくれると思ったんだ。
だけど。

「どうして……ねえ、カービィ……どうして、こんなことしちゃうの?」
草の上に手をついて、息を切らしているリボンが、そう言った。
「え、どうしてって…。」
だって、君のことを苛めたじゃないか。
心配だったから、君のことを助けるつもりだったんだよ。
…でも、今にも泣きそうな顔をしたリボンを見て、
それを言うことはできなかった。

「カービィが強いのは、わたしだってわかってます!
でも、この子達に手を上げたら、自分より弱い子に
手をあげたら…乱暴者じゃないですか!カービィは
優しいひとだと思ってたのに…。
ひどいよ…カービィなんて、大っ嫌い!」
びっくりした。悲しくなった。それで、謝ることすらできなかった。
そして、その代わりに、その時言わなければならなかったものと
全然別の言葉が、ぼくの口から飛び出した。

「なんて言い方だよ!ぼくだって殴られて、痛い目見たんだぞ!
でも、リボンのためにやめたのに!ぼくがこうしなきゃ
いけないって思ったのは、リボンが危なかったから心配して
やったことなのに!そんなことまでそういう風に言われるなんて、
もういいよ…ぼくのほうこそ、リボンなんか大嫌いだ!」
リボンは大きな目をいっぱいに開いて、それからすぐに涙をこぼした。

「…帰って…帰ってよ!」
「こっちこそ、二度とくるもんか!」

飛んできたワープスターに飛び乗って、
ぼくは全速力でリップルスターを後にした。
めがしらが熱くなって、思わず込み上げてくるものを
必死に手で拭いながら、ぼくはポップスターに向かって
飛ばしつづけた。



――それから随分経って、ポップスターが、冬になった。
ぼくは、あの日からもう、リップルスターにはいっていない。
それだから、もちろん、リボンとも仲直りはしてない。
でも、怒って、言いたい事を言って、
結局最後に残ったのは、大きな後悔。
このままもやもやしているものを、一生背負ってぼくは
生きていかなければいけないんだろうか?

ねえ、リボン。ぼくは、どうすれば、君とまた仲良く遊べるの?


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