ひでぶさんの小説

星のカービィ 外伝『クリスマスプレゼント』


…結局、どんなものが好きなのかも分からなかった。
僕が一緒に過ごしたのはほんの少しの間だけだったから。

そいつは仕事の帰りにいきなり現れた。
今振り返ると、本当に不思議な出来事だったと思う…。


星のカービィ 外伝『クリスマスプレゼント』


「…というわけで、次のソフト制作も民天堂との
共同開発になる。いいアイディアを期待しているぞ。」
久しぶりの会議で、上司からこんな話が出た。
あの、大手ゲームソフト会社『民天堂』との共同開発を
僕がプロデュースする。…大役である。

上司の言葉を胸に、僕は会議室をでた。
こんな胸の高鳴り、入社以来かもしれない。
目の前の自販機でコーヒーを買い、少し心を
落ち着かせた。

よう、マサ。次のソフトお前が監修するそうだな。」
「監修だなんて…そんな大げさなものじゃないよ。」
同期の友人も、自販機でコーヒーを買う。

「プレッシャーをかけるようだけど、会社が危ないこと、
知っているよな?」
「…ああ。」
「俺も、次の制作には参加するが、
もしかしたら…これがPAL研での最後の仕事に
なるかもしれない…。」
「……。」

コーヒーを一気飲みして、隣にあったくずかごへと
投げ捨てた。
「次の作品はきっと大作にしてみせる。
山村さんもこれからは深いゲームを作ろうって
言っていたし。」
「おう、俺もそのつもりだよ。
会社の命運をきめる大事な仕事だしな。」

僕は友人に手を振ってから、その場をあとにした。
「とは言ったものの…。」
僕は悩んでいた。はたして、僕の考えている
次の作品が本当に売れるのかどうかを。

僕はコートを羽織って外に出た。
「冬ももうそろそろかな…。」
その日は曇っていたのに、なぜか富士山がよく見えた。
ふいに、僕はその富士山を眺めた。

富士山はすぐ見えなくなった。
「あ……。」
そのかわりに、粉雪がちらほらと降り始めた。
「急いで帰らないとまずいかな…。」

車のドアにキーをさし込んだ時、よく雪山ができる
丘の方に一筋の光がはしった。
「……?」
ズドォン!
強烈な音と共に、地響きが起きた。

「な、なんだぁ!?」
丘はここからすぐ近く。僕は走ってそこへ向かった。

「このあたりだったような…?」
丘には少しだけどもう雪が積もっていた。
丘をしばらく探ったあと、ついにあの光の主を見つけた。

「なんだこりゃ?」
絵に描いたような五亡星と、ピンク色をした謎の物体。
最初は人形かと思った、けど…。

「う、う〜ん…。」
ピンク色の物体から、発せられたのは『声』。
(もしかして、生きている!?)

とにかく、それはひどい怪我を負っていったようだった。
僕はそいつを抱きかかえて、自分の車があるところへと
向かった。

助席にピンク色の生物と、そいつの所有物であろう
五亡星を後ろの座席に乗せて、車を走らせた。

「でも、どうしようかな、こいつ…。」
完全に気を失ってしまった様子らしく、
弱々しい呼吸音だけが聞こえてくる。
五亡星も、その輝きを失ったようだ。
「なんにせよ…ほっとけないよな。」

家についてから、怪我の手当てをしてやり
僕はそいつを自分の布団に寝かせた。



そいつが起きたのは、次の日の朝だった。
「…う?あ、あれ、ここはどこ?」
最初に驚いたのは、そいつの言葉が分かること。
使っていた言葉は、まさしく日本語だった。

「気がついたみたいだね。君、名前は?」
「ぼくは、カービィ。うう…いたた。」
落下したときの怪我だと思うが、意識がはっきり
してきた今痛み始めたらしい。

カービィと名乗った生物から、そのあとすぐに
腹(?)の音が聞こえた。
「お腹減っちゃったみたい…。」
「よし、何かつくろうか。」

カービィは作った料理を全部一口でお腹に収めた。
「おかわり♪」
「よくたべるなぁ…。」
冷蔵庫の中身が無くなりそうだった。

「君が助けてくれたの?」
カービィが唐突に僕に聞いた。
「まあ、そういうことになるかな…。」

「君はなんて名前なの?」
エビフライを揚げながら、僕は応答した。
「僕はマサヒロ、マサって呼んでいいよ。」
「うん、わかった。」

揚げたエビフライとサラダをカービィの前に置いた。
「マサってお料理上手だね。」
「はは、ありがとう。」

カービィはエビフライは1個ずつ食べることにしたらしい。
「ねえ、カービィはどこからやってきたんだい?」
「ごめん、ちょっとそれは言えないよ。」

カービィは少し悲しげな目をした。
「あ、いいよ。気にしないで。こっちこそ
聞いちゃいけないこと聞いたみたいだね。」
「そんなんじゃないけど…。ぼくは、ちょっと遠い星
からここへ来たんだ。それだけしか言えないの。」

十分、驚ける一言だった。
「じゃあ、宇宙人ってやつなんだ!
いやあ、すごいもんだ。」

数秒間の沈黙のあと、カービィは話を変えようと
するかのように、妙に明るく僕に質問した。
「わぁっ、これなあに?」

…さっきのような問いかけはもうしないでおこう。
そう思った。
「それはファミコンっていう遊びの道具なんだよ。
やってみるかい?」
カービィは目を輝かせながら頷いた。

やらせたゲームはうちのファミコンで初のゲーム、
『ガルフォース』。ビデオアニメの移植だけど、
結構僕は好きなゲームだ。

「うわ〜やられたぁ。」
すぐにゲームオーバーになってしまった。
僕はカービィのために手本を見せた。

「ここは、こうやってやるんだよ、…ほら。」
「あ、そうか〜。」
カービィがゲームをやりこむこと二時間…。

ぐぅぅ…
またお腹が減ったようだ。
仕方がないので僕はまたカービィに料理を
こしらえた。冷蔵庫は、これでもう空である。

「僕の仕事はね、ああいったゲームを作ることなんだ。」
ご飯を食べながら、カービィは僕に質問した。
「それじゃあ今はどんなゲームを作ってるの?」
「いまは…これがそう。」

僕はカービィに発案のノートを見せた。
「ふぇぇ…。いっぱい書いてあるねぇ。
……ポポポ?」
「うん、このゲームはね、ポポポっていう小さな子が
星のかけらを集めるために旅に出るっていうゲームなんだ。」

「楽しそうだね〜。」
「ありがとう、ゲームになったらやらしてあげるよ。」

僕はカービィに聞いてみた。
「よかったら…しばらくここに居てくれないかな?」
「えっ?…うん、ワープスターも壊れちゃってる
みたいだし、嬉しいよ。けど…。」
「けど?」
「…いや、気にしないで。うん、そうするよ、
マサのおうちに少しの間だけいさせてもらうね。」

なにかを気にしていたようだったけど、
カービィは一緒に暮らすことを承諾してくれた。



カービィと暮らすようになってから、
僕は本来の僕を取り戻した気がした。
会社のことで、僕は僕なりに落ち込んでいたはず
だったのに。

幾日が過ぎて、僕の町にクリスマスの雰囲気が
訪れた。広場には、電飾を施したツリーが
設けられている。

その日、カービィと共にこの広場へとやってきた。
「きれいだなぁ〜。」
「カービィのいた星も、こんなことやってたかい?」
「うん、『くりすます』っていうのはなかったけど。
雪のお祭りで、ウイスピーっていう大きな木が
こんなことをしていたよ。」
「木が?」
「マサの住んでる星の木は、生きているんだろうけど
動かないんだね。ぼくの星では動いたり喋ったりする
木もいるんだ。」
「不思議なところなんだね。でも、楽しそうだ。」

ひと気が無くなった所を見て、カービィは僕のコートの
フードから飛び降りた。
「ねえ、カービィはいま何か欲しいものある?」
「えっ、欲しいもの?」
「クリスマスはね、プレゼントをもらったり、あげたり
する日でもあるんだ。だから、カービィは何が欲しいかと
思ってさ。」
「ぼくが、欲しいもの…。」

いきなり、カービィは僕に飛びついた。
「わぁっと。」
「マサ、早くおうちへ帰ろう。
なんだか寒くなっちゃった。」
「そっか、わかった。」



それからさらに数日が過ぎて、クリスマス・イヴが
やってきた。僕はカービィのために毛糸の帽子を
買って帰った。
その日、カービィが別れを告げるとも知らずに。

家について、鍵を開けると、室内になぜか黒いもやが
溜まっていた。
「か、火事か!?」
そうではない。このもやが噴き出ている物が無い。
空中に溜まっているだけだった。
ただ、少しずつそのもやは収縮していた。

「……!?」
やがてその黒いもやは球体となり、
中心から瞳を開かせた…!!

「うわぁあ!!」
その僕の声と同時に、何かが僕を突き飛ばした。
しりもちをついた僕は、本当に不思議な光景を見た。

僕を突き飛ばしたのはカービィだった。
もやの瞳から黒光りする閃光が一閃。
テーブルを吹き飛ばし、窓ガラスを破った。

カービィの手から七色の光が放たれる。
そして、そこからきれいな虹色の棒が現れた。

…いや、棒ではなく、剣。
カービィは、黒いもやの瞳にその七色に輝く剣を
突き刺した。黒いもやは、悲鳴のような音をあげる。

黒い閃光を四方に放ち、そのもやは霧散して、
その場はいつもの僕の家にもどった。
窓ガラスは割れ、テーブルはぐちゃぐちゃになっているが。

腰の抜けて立てない僕のほうへとカービィはやってきた。
「ごめん、マサ。アイツにここにいることが
ばれちゃったみたいだ、だから…。」

気が動転していたけど、なんとなく、カービィの
言いたいことがわかった。
「そっか…。」
冷たい風が外から入ってくる。
カービィはくしゃみをした。

僕は少し笑いながら、まだ、恐怖で震える手つきで、
カービィに帽子をかぶせてやった。
「ありがと…。」
カービィがちょっと下向き加減に、涙をながしていた。

「これ…。」
七色に光るきれいな石を、カービィは僕に渡した。
「ぼくからも、マサへクリスマスプレゼント…。」
カービィの顔を見たとたん、僕自信も、
泣いていることに気がついた。

「もう行かなきゃ…。」
あの五亡星が、いつのまにか光を取り戻していた。
カービィはゆっくりと五亡星に乗った。
五亡星が浮上する。

「この帽子、絶対大切にするから…!!」
「ああ…。」
五亡星はどんどん眩しくなる。
「バイバイ、マサ…。」

その言葉を最後に、カービィは空へと帰っていった…。



…92年が訪れた。
僕は、いつの間にか黙々と仕事を進めていた。
「ポポポ…いや、ティンクルポポの作画は順調?」
「ええ、こんなものでどうでしょうか?」
「…うん、なかなかいいね。」

「初心者向けのソフトとして作っているみたいですけど、
考えましたね。最近のゲームはほとんど難しいですから。」
「エキストラモードも入ってるから、上級者も
多分満足できると思うよ。」

「マサさん、ティンクルポポは日本のユーザーにはちょっと
覚えずらいかもしれません。」
「じゃあ、また名前を変えなきゃいけない、か…。」
「もっとシンプルな名前で多分いいと思うんですよね。」
「募集してみたらどうだろうか、案外いいのがあるかも。」
「逆をついてアメリカで募集してみるのはどうでしょう?」
「いいね、それ。」

「これはちょっと、これもなんかちがう…う〜ん。」
「なかなかいいのが見つかりませんね…。」
「あ、これは…。」
「いい感じのありました?……カービィ?
カービィ…うん、カービィ!いいですね!
しっくりきますよ、これ。そうだ、作画のほうも
シンプルにしちゃいましょう。小さな子でも
すぐに描けちゃうなやつに。」
「あ、待って。じゃあ、こんな感じはどうだろう。」
「…いいじゃないですか、まるかいて、おまめがふたつ
おむすびひとつ…って。」
「色は…ピンクで。」
「ピンク…斬新ですね。」



「『星のカービィ』、マスターアップです!」
「ここまでこれたのもみんなのおかげだ。
本当にありがとう。」
「4月27日に発売開始します。
自信を持ちましょう!きっと売れますよ。」

…『星のカービィ』は、ミリオンセラーの大成功を収め、
シリーズ化することが決まった。

僕は今、ちょっと離れたところからカービィを見ている。
今になって、あのカービィが、何が好きで本当は
何が欲しかったのか気になり始めた…。

でも、もしかしたら、あの時すでに、
カービィは答えを教えてくれていたのかもしれない。
多分カービィは、きっと……。



<END>











ATOGAKI

これにあとがきをつけるのは、良心が痛む。
実はもう10ページいっているんです。(笑)

どうしてもこの小説は一話完結にしたかった。
で、かなり気合を入れて書いたら、こんだけ長くなりました。
それでも短くしたんだけどなぁ。

異色な外伝ですが、アマチュアの僕は
ソフト制作についてなんの質問もしてません。
(できるのか?)なので、これは持てる知識を
出しきって書いた完全なるフィクションです。
まぁ読めば分かると思いますが。(笑)

マサヒロのモデルは、名前の通りもちろんあの人です。
山村さんていうのも、実在の人物の名をモジりました。
これにでてくるカービィは、たぶんゲームのカービィとは
別人(?)でしょう。姿かたちが似ていても。(笑)

上記のとおり本当に変わっている外伝ですが、
こんなのもありかなぁ、と思って。
書いているほうは結構楽しかったですよ。
だけど、載せるほうは大変でしょう。
本当にマジでごめんなさい…うう…。

読んでくれた方からの感想のメールをお待ちしております。
この後のもっと文章の勉強をするための参考にしたいです。
(***)

恐れ多くも(使い方まちがって…ないよね?多分。)
僕は(***)さん、(***)さんのHPで連載をやらして
もらっております。機会があれば、読んでみてください。